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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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069 策を考えて見ました

再開が遅くなり申し訳ありません。

 ちょっと、ブレイクタイムに入ろう。

 アンジーにとっておきの茶葉で、淹れて貰う。

 お茶請けには、街で買ってきたお土産の揚げ菓子を出す。

 さっき、エメリーちゃんにあげたのと同じやつである。

 うちの子達は、飲食可能な高性能な錬金人形であるので、お子様ズがさっそくパクついている。

 後方で、レオン達も食べているであろう。


「はあ。甘いモノで落ち着くわ。けれど、このやり場の行き先がない怒りをどうしたらいいのかしら」

「まさか、ロンバルディアとの諍いが、あの様な事情があったとは。領地の住人には教えられないです」

「ミーアさんが自分に話した経緯を鑑みると。直に襲撃される諍いが、自分の初陣になるのでしょうか」


 一息つくアンナマリーナさんと騎士ワイズさんと違い、ナイルさんは固い表情をしていた。

 無理はないよね。

 ナイルさん自身は、徐々に現状を受け入れ始めているものの、従騎士見習いの修練をしただけで、戦の経験はない。

 ただし、農業の傍らで、亡くなった父親とベルゼの森の浅い場所での動物を狩った経験はある。

 まあ、動物と人相手の戦を一緒にしたら駄目だろうけど。

 ましてや、ナイルさんは一介の騎士ではなく、統率する側であるアルバレア家を背負う立場にならないといけない。

 指揮者の役割をこなさないとだろうが、まだ正式な御披露目が為されてはいない。

 ぽっとでの人間に、率いられる騎士達が素直に従うかが不安視される。

 週末にフォレスト領での騎士鍛練や、侯爵家の仕来たりなんかを学んではいるも、爵位を持つ分家の数家とはあまり良い関係を築けてはいないらしい。

 領主代行や、宰相閣下のお墨付きはあれど、元が爵位を剥奪された農民との実情が暴露されて、選民意識が高い貴族には受け入れられてはない。

 まあ、アンナマリーナさんの情報によれば、そうした分家はファレル家が潰されたのを目の当たりにしていたから、直接的な攻撃はしてくることはなく、ねちねち嫌味を言うぐらいだそうだ。

 領主代行のオレリアさんと宰相閣下との話し合いにより、まずナイルさんには母親の生家の子爵位を返還して貴族の一員に復帰して貰い、数年経過したらアルバレア侯爵家を正式に継いで貰う手筈になっている。

 その間は、領主代行のオレリアさんが内政を担い、ナイルさんに必要な人材を雇用していき、息子さん(アンナマリーナさんのお兄さん)二人が補佐を行う準備期間となっていた。

 まあ、家宝の聖剣は既に、ナイルさんに継承されているし、侯爵となる人物しか入室出来ない神聖な部屋はナイルさんを認証している。

 なので、ナイルさんがアルバレア家を継げないと、アルバレア家自体が消滅するしかなくなる危機に見舞われるのだ。

 アルバレア家に寄生する分家は嫌味を言うしか手段がない。

 騎士ワイズさんによれば、ナイルさんが聖剣を所持して正統に扱う姿を見ているので、従騎士見習い仲間は反感は抱いてはいないのだけど。

 年配の騎士は、ナイルさんが魔法適性を偽られていたり、家のいざこざにより従騎士見習いの資格を剥奪されたりとした出来事を、見てみぬ振りをしていた後ろめたさがあり、今一つ距離が空いている状態だそう。

 なら、今回のロンバルディアとの諍いは、連帯感を生み出す好機になるな。

 順序が逆になるけど、ナイルさんを御披露目する絶好な機会でもある。

 ふふん。

 私とうちの子達がついているのだ、ナイルさんには傷一つつけることなく初陣を飾ってみせよう。


「細工師。その不敵な笑いは、何かしらよからぬ企みを思い付いたのでしょうね」

「まあね。思い上がるロンバルディアに鉄槌を下し、ナイルさんの初陣を華々しく勝ち戦にしてみせようかなとね」

「ミーアさんも、参戦する気でいらしたのですか?」

「うん。始めからそのつもりだよ」


 ナイルさんが驚いている。

 いや、この話を持ってきたのは私である。

 私が参加しなくて、どうする。


「ですが、精霊は戦に参加は出来ないでしょう」

「ナイルさん。この細工師は、一流の精霊魔法師でもあります。大精霊は守護に徹して、自身だけで戦場に突貫していくのが当たり前のやり方でもあるわ」

「ミーアさんは、戦場を経験されていたのですか」


 アンナマリーナさんが話す戦場は、ゲーム内での領土権争いの奴だけどね。

 だから、ナイルさんが考えているのとは違うのだけどさ。

 生身での戦場に、私の精神が保たれるかは疑問視があるのは確か。

 しかし、今回は切った張ったの戦にはしないつもりである。

 前段階の時点で、獣人種にしか効かない小技を施して、白夜の星に対する恩を思い出すか試してみたいのだ。

 それでも侵攻してくるなら、容赦はしない。

 戦略級精霊魔法を食らわしてあげよう。

 序でに、ナイルさんの活躍の場も盛り上げてみたり。


「血生臭い戦場ではなかったけれども、それなりに場数は踏んでいるよ。私自身は生命を奪う行為を忌避したりはしてないし。だからといって、無闇に罪のない生命を奪うのは躊躇うけど」

「ああ、そうね。細工師は私と違い、生命のやり取りにそうそう出くわしてはなかったわね」


 アンナマリーナさんは生まれが生まれだけに、貴族の何たるかを学んでいる。

 血気盛んな気質である獣人種の国ロンバルディアとの諍いに、女性だからと逃げなくて、騎士を率いて出陣している。

 伊達に、二代目騎士姫と二つ名をいただいてはなかった。

 私は、何気に先頃のベルゼの森での魔物退治が、初陣と言えるかな。

 あの日は、何ら感慨も湧かなかったなぁ。

 ただ、適度な運動をしたとしか思わなかった。

 この新しい身体になって、肉体だけでなく精神耐性も、人外さんから特別製のを貰っているのかも。


「ある意味、ナイルさんと同じく初陣になるね。だけど、負ける気はしないよ」

「しかし、ミーアさんはフォレスト領民でもないのに、自ら関わりを持つ意味が分かりません」

「あっ、それに関しては。別の意味で関係者になってるんだよね」

「別の意味とは?」

「白夜の星が獣人種につけられた、私の二つ名です」


 自分から暴露してみた。

 すると、ナイルさんが大きく口を開けた。

 これは、二つ名の意味を知っていたな。

 代々とロンバルディアと諍いをしているから、従騎士時代に打開策を模索して情報収集はしているだろう。


「以前に、その話題にも説明したけど。フォレスト領の数少ない獣人種の住民からは、獣王よりも慕われている恩人だと説明されているわよ。細工師、何をしたの?」

「実際にしたのは、うちの子達らしいのだけどさ。初代女王がしでかした愚策に対抗して、獣人種を助けたのが始まりみたいだね」

「初代女王陛下の愚策ねぇ。歴史家でも、賛否両論があるのは知っているわ。大精霊を従えて国を興し、迫害される者を助け、虐げられている女性の為に聖母教会を設立し、職にあぶれた荒くれ者に仕事を与える為に冒険家ギルドを設立し、邪道とされていた錬金術を世に知らしめた聖女。かと思えば、特権階級制度を作り、貴族を優遇する法律を制定して、庶民から税金をむしり取り贅沢三昧を享受していたとかね」


 やっぱり、あの人らしい性格を表している。

 ちやほやされるのを好み、他者の功績を自分の手柄にして称賛を浴びる。

 まともに、国の運営が出来ていたとは思わない。

 だけど、今現在女王国は繁栄しているから不思議である。

 その繁栄が大精霊を犠牲にしてだから、いずれは破綻していただろうな。

 聖母教会のシステムに組み込まれていたレットとレッタに、地下のマグマを制御していたジュリエットは、補給がままならず器を喪う羽目に陥った。

 私の顕現が間に合い、休眠状態に移行できたのは僥倖だった。

 大精霊が如何に隔絶した能力を保有していても、力を消費するだけでは存在が消失していくだけ。

 ユーリ先輩は、大精霊を使い潰す方策を選んだ。

 そんな女王国が、精霊に見放されなかったのは、奇跡に近い。

 精霊は良き隣人。

 その事だけを庶民に流布させたのは、褒め称えてもいいかな。

 さぞかし、頭のキレる逸材が支えていたのだと思われる。


「因みに、ロンバルディア国は初代女王が仕出かした愚策の巻き添えになったから、女王国を信頼できる隣国とは見れないみたいだね」

「ロンバルディア国が、列強国の奴隷狩りにあったのに、手助けしなかった恨みを買っているとは聞いているわ。それから、初代が獣人種だけに流行る病を流行らせたんだっけ」

「同時期に国を興していましたから、列強国の圧力を交わす為にロンバルディア国を隠れ蓑にしたとの見解は事実なのでしょう」

「うん、そう」

「「マスターの言う通り」」

「……言う通り」


 揚げ菓子を食べ終わったお子様ズが、合いの手をいれる。

 この子達も当時は、自由に活動していたから生き字引である。

 また、ユーリ先輩を毛嫌いしていたから、対抗して獣人種を助けてみたのだろう。

 マスターだったら、絶対にこうすると試行錯誤して、助力したのが丸分かりである。

 お子様ズを順番に撫でておく。

 はにゃっと笑み崩れるお子様ズ。

 可愛いなぁ。

 癒される。


「そのお話は当代女王陛下や宰相閣下は、ご存知なのでしょうか」

「アリスちゃんや、エルちゃんから伝えて貰うよ」

「アリスちゃんは火の大精霊」

「……エルちゃんは嵐の大精霊」


 エスカ、ユリス、セレナが片手をあげて発言する。

 アリスとエルシフォーネとジルコニアの三柱の大精霊が、交代して女王と契約して女王に仕え、国の舵取りしていたという。

 うちの子達は、一時でも私以外のマスターは不要として、頑としてマスター候補を受け付けてはいなかった。

 頑固者の大精霊は、助言されれば手助けはしていたらしいが、群がるマスター候補には見向きもせずに、私を待っていてくれていた。

 その期待には応えてあげたくなる。

 永く平穏な日々を守る意味でも、女王国を侵攻するロンバルディア国にはお灸を据えないとね。


「我が国は大精霊の恩恵もあり、資源には事欠かない。近頃、富を独占出来ないかと、未婚の女王陛下の王配目当てに、縁談が殺到しているとか。秘匿はされていますが、ロンバルディア国からも打診はあるそうです」

「それは、裏でかなり悪どい謀がありそうだね」

「はい。女王陛下が身罷ると王配の地位も返上されるのですが、これ幸いと王位を狙うかもしれません」


 地位に目が眩んで、固執する輩に発展する可能性は低くなさそう。

 女王の添え者としての認識不足による地位の固執は、厄介だからね。

 相談役としても、女王ちゃんには相応しい男性を王配に迎えて貰うよう見定めてみても罰当たりにはならないよね。

 さて、次回のロンバルディア国の諍いの代償に、人身御供的な王配候補が差し出されたら、有無をいわさずに退場を願おう。

 そうして、ロンバルディア国に対する対処を話し合い、アンナマリーナさん達をひきつらせる策を話題に出す。

 難色をしめす真面目な騎士ワイズさんを言いくるめて、私は一人高笑いしてみた。

 更に、アンナマリーナさん達を引かせたのは言うまでもなかった。

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