表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/349

068 獣人種は脳筋でした

「姉ちゃん、お帰り」

「お姉ちゃん、お帰りなさい」

「ミーアさん、お帰りなさいです。で、結局のところギルドの用件は何でしたか?」


 暫くして、ナイルさん一家がリビングに入室してきた。

 労働してきた割りには、清潔な身形りをしている。

 まあ、ブラウニー達のどちらかが、生活魔法のクリーンを使ったのだろうな。

 ケットシーのララとリリも、後ろの方で頭を下げている。

 そういや、灰色君の姿がない。

 彼は番犬の役割がなんたるかを、レオンに調教されていた。

 きっと、広大な未開発な農園部分の見回りでもしているのだろう。

 シェライラが推薦してきた家畜を飼育する女史の事前情報により、最適な環境になる場所にて家畜小屋を建設中でもある。

 農園部分とはかなり、離れた位置にあるので、ベルゼの森側に近い。

 家畜の匂いに釣られて森の魔獣が出没しない様に、マーキングしていて貰っている。

 偶に、追い払えなかった魔獣を狩ってきては、食卓にお肉を提供してくれる賢い狼になってきている。

 まあ、灰色君自身が伸び伸びと行っているので、決して強制はしてはいない。

 あまり、あれから突っ込んではいないが、群れから離れて柵から解放されたのは良かったのかもだ。

 後で、何かと面倒を見ているレオン辺りが、説明をするだろう。

 決して、除け者にしている訳ではない。


「あっ。狼さんは、パトロールだって。お話しは後で聞くよって言ってた」


 ロイド君とエメリーちゃんも、何かと灰色君のお世話をしたがるので、仲良しな関係を築いていた。

 ララとリリが拗ねたりしないのか疑問であったが、ララとリリも率先してお世話しているので愚問だった。

 どうも、辛い境遇にて育ってきた環境からか、仲間意識が強固で、身内と判断されたらとことん甘くなる性質みたいである。

 灰色君も精神をすり減らす群れにいた反動で、甘える行為に戸惑いがあったようだけど、害がないと分かると適度な距離感を保ちながら兄妹達と付き合っている。

 仲良しなのはいいことである。


「ん。ありがとう。じゃあ、ちょっとナイルさんに重要なお話があるので、ロイド君とエメリーちゃん達は隣室にいてくれるかな。これは、街に行ったお土産ね。皆で、食べて頂戴な」

「うん、分かった。大人の話だな。俺達だけでも、畑仕事をしてもいいぞ」

「大人が休憩している間で、子供達だけお仕事させるには忍びないので、ロイド君達も休憩して」


 聞き分けの良いロイド君に脱帽する。

 今日はギルドに呼び出されなかったら、新たに開墾した区画で種蒔きする予定だった。

 こちらは、エスカが精製した種ではなく、ライザスの街で手に入れた種を蒔くつもりでいた。

 夏野菜の種と成長が早い品種改良された小麦を蒔いて、成長過程の違いを見ようと思ったのだ。

 何せ、エスカ精製の種は、凄まじい成長を見せて、あっという間に発芽し、ついにはエメリーちゃんの背丈を越した。

 これには、エスカも驚いていた。

 歪な種を産み出したのではないかと、落ち込んでいた。

 しかし、レオン曰く、大地と樹木の下位精霊が協同して成長促進を促していた結果だった。

 大地の精霊達は、奉納を怠った冒険者ギルドに酷使された疲れを癒しに、我が農園に来ていたと思っていたのだけど。

 どうも、忖度されていたらしい。

 下位精霊の力は大して脅威はないのだけど、塵も積もればを地でいった訳である。

 しかも、樹木の大精霊が精製した特殊な種だったから、威力は倍増した。

 ので、普通に売られていた種だったら、どの様な成長を見せるのか。

 試してみたくなったのだ。

 アンナマリーナさんに、摩訶不思議農園の始りだとは、言われてしまったが。

 話がずれた。

 根っからの農民気質なロイド君も興味が湧いて、観察日記をつけると言うほど期待を寄せていた。

 けれども、灰色君が農園内をパトロールしてくれてはいるが、また招かざる客が来ては難癖つけてくるのは避けたい。

 農園の結界も、招待されない客は通したりはしないが、視界までは誤魔化したりは出来ない。

 保護者がいない状態で、子供達と希少種のケットシーだけで農作業はさせられない。

 まあ、ロイド君もエメリーちゃんも、見知らぬ他人の言葉には騙されたりはしないだろうけどね。

 ただ、私への人質となり得るだろうから、なるべく危険は排除したいしね。

 農園の結界も万能ではないのは自覚している。

 あのユーリ先輩が組んだ術式であるから、何かしらの悪意を孕んでいる可能性だってある。

 少しずつ術式に干渉してはいるが、それらしい兆候が現れてはいないので、手を出しにくいのが辛い。

 ファティマが言うには、誓約魔法はユーリ先輩だけの魔力波形とは違う、上位の神の力も乗せられている。

 私や私に属する者を守護する誓約は、神の意志も加わっているので、私への悪意は抹消されている確率が高いそうだ。

 私がユーリ先輩を過剰に警戒しているだけで済むなら、一安心だけど。

 ナイルさん一家やこれから派遣されてくる女史の安全面は、徹底しておかないと気が治まらないのが私である。

 必要な素材が集まれば、結界石を要所要所に埋めておこうと決めた。

 まあ、うちの子達の目を盗んで悪さはされないだろうけどさ。

 何気に、お子様ズも兄妹を気に入っているから、警護用の精霊をつけてはいそうだしね。


「ロイド。お前が付いていてエメリーに怪我を負わせたりはしないだろうが、大人の目がない場所で農具を使用しないと約束しただろう? それに、本日分の農作業は終わっている。じゃあ、次はアンナさんから言い渡された勉強をしないとね。その前に休憩してからだけど」

「兄ちゃん、エメおやつ食べたい」


 ナイルさんに諭されるロイド君の横で、エメリーちゃんが釘付けで見ているのは、私がアイテムボックスから出した揚げ菓子。

 所謂、ドーナツ擬きのお菓子である。

 油で揚げる料理が発展していて良かった。

 バリエーション豊かな料理を作っても物珍しく思われたりはしないだろう。

 米食もさほど忌避されていないし、料理無双はやらかしたくはない。

 ただでさえ、六柱の大精霊が守護者なのだ。

 これ以上、悪目立ちはご免被る。


「うん。俺も食べたいから、休憩する。それで、勉強する」

「エメも、絵本よむの」

「なら、うちらはお茶を淹れるにゃ」

「エメリーと一緒に絵本読むにゃ」


 ロイド君はかなり空気を読める賢い子供だ。

 また、妹思いで優しい。

 エメリーちゃんがロイド君を差し置いて、自分一人だけでは甘いお菓子を食べないのを理解している。

 日々の食事も、ナイルさんやロイド君を見て、量をセーブしているエメリーちゃんである。

 幾ら、お代わりしてもいいと伝えていても、我慢してしまうのだ。

 私やブラウニーが作る食事により、痩せ細っていた身体も標準よりに戻ってきてはいるも、まだまだ細い身体付きをしている。

 そんな外見で農作業をしっかりしているのだから、恐れ入る。

 ついつい甘やかしたくなるのも、分かろう。

 ただし、限度を超える農作業は厳禁である。

 適度に休憩して、適度におやつ食べても罰にはならない。

 今は、その休憩時間である。

 存分に甘味を堪能しておくれ。

 揚げ菓子が入った袋をにこにこ笑顔で受け取り、ロイド君に促されてエメリーちゃんとケットシー達が隣室に行く。

 ブラウニーのアンジーが、後を追うのでお世話は任せた。

 私達には、クリスがお世話係になってくれる。


「それで、子供達には聞かせられないお話とは?」

「ぶっちゃけると、フォレスト領とロンバルディア国との戦争が勃発しそうなんだよね」

「確かに、母上からは国境沿いに集まりつつあった隣国の兵士が、規模を縮小したかに見えたものの、未だに常駐してはいると連絡があった」

「一時期はすぐにでも、一触即発な雰囲気でしたが。司令官らしき人物が呼び戻されたとの情報もありました」


 それは、私白夜の存在を王都の精霊が公表したから、攻めあぐねていたのだろう。

 まさか、架空の私ではあったが、種族の恩人が住まう国に攻めて、万が一にも負傷されでもしたらとか、損害を与えてしまったらとか考えさせられていてもおかしくはない。

 しかし、過去の恩人は過去の人。

 好戦的な性質の獣人種が、恩より欲望を優先する派閥もありそうだ。

 そうした集団が、フォレスト領の国境沿いにいるのだと推測する。

 調べた所、ロンバルディア国は力は余りあるが、繊細な作業には向いてはいない獣人種が多い。

 農作業に従事する獣人種もいるにはいるが、人族に裏切られ、奴隷扱いする人族の知識を利用するのを厭う。

 見様見真似で始める農作業では、収穫量も期待する量に満たない。

 となると、他国から食料を買い求めるしかなくなる。

 そして、その代金はどこから捻出されるのかに行き着く。

 ロンバルディア国が出した結論は、他国への出稼ぎと略奪。

 略奪相手に丁度良い隣国は、ロンバルディア国を助ける裏側で病を広めた憎い女王国。

 意趣返しには適した相手となる。

 また、実力主義の獣人種が出稼ぎで稼げる職種には、冒険者という荒くれ者が集う場があった。

 冒険者ギルドを設立したのは彼の女王国だが、利用してやるだけ。

 現に、冒険者ギルドは時間をおかずに、女王国とは袂を別ち、迷宮都市に本部を置いた。

 女王国の役に立つ仕事をしなくて良くなった獣人種も、迷宮都市に移動していく。

 直に、衰退していくだろうと思われていた。

 けれども、女王国には大精霊が期せずして揃い踏みしていて、精霊の恩恵により国力を増していった。

 ならば、その富は奪えばいい。

 ロンバルディア国が略奪する相手は、女王国だけとなる。

 獣王が何かしら、女王国に手加減して襲わせている節があるが、略奪する場面では命令を無視して略奪すればいい。

 実際、やり過ぎて大打撃を受けた反撃にあったが、司令官は謹慎だけで済まされた。

 戦場で、生き残れば何とでもなる。

 そんな、お馬鹿な思考の獣人種がいるのだから、始末に負えない。

 獣王、全然統制とれてないじゃないか。

 そして、軍規が曖昧で、到底軍隊とは呼べない夜盗の集団と化していたのが判明している。

 あー、やだやだ。

 頭の中味が脳筋の、実力主義という名に隠された思考放棄のお花畑の阿呆でしかない。

 精霊が集めてくれた情報を開示すると、アンナマリーナさんと騎士ワイズさんは怒りで身体を震わせていた。

 初代女王が残した負の遺産により、フォレスト領は戦渦にまみれた。

 ロンバルディア国も女王国に対する反抗が、当初の理念から外れているのが残念だ。

 これ、私が盛大に鉄槌下しても、人外さん達神様に怒られたりはしないだろう。

 フォレスト領の住人の怒りを思い知れっての。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ