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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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066 お姉様のおみ足は凄かったでした

「大変申し訳ありませんが、どのようにしてギルド内の騒動が起きたのか、理由はお分かりでしょうか」


 ぷんすかお怒りモードの下位精霊に纏わりつかれて金米糖を配っていたら、スクエア型の眼鏡を掛けた理知的な眼差しをした男性に質問された。

 上階から降りてきた私の姿が、騒動が起きたと思わしきタイミングで現れたから、そりゃあ何かと繋がるよね。

 又、精霊視できる人材なら、ギルド運営に携わる精霊が一同揃って突然ストライキ起こして、私に群がるからねぇ。

 原因が私にあると言っている証だわ。


「レードがオリバーを探して連れていったのも、皆が見ていました。それも、関係がありますか?」


 受け付け窓口では、設備が起動しなくて焦りを見せる受け付け嬢と、苛立ちを露にする冒険者達がいる。

 彼等も、本部冒険者ギルドと数ヵ国の冒険者ギルドの機能が停止したのは耳にしているだろう。

 女王国内では、数ヵ所のギルド機能停止だけに留まり、ここライザスの街は難を逃れていた。

 それが、時間差で機能停止になったのではなく、何らかの事象で起きた事件だと推測されたのだと思う。

 折しも、復帰したギルド長が客をもてなしている最中、応対していたレードさんが事務方の優男を有無を言わさず拉致して行った。

 そして、招かれた客は、ミスリル級のギルド証を所持する精霊魔法師である。

 不興を買ったであろう精霊魔法師が、精霊に指示を出したとしてもおかしくはない。

 できれば、話し合いで解決できるなら、それに越したことでなし、といった具合いかな。


「もしかしまして、オリバーや我々ギルド側が、貴女に何らかの悪意を見せてしまったのでしたら、謝罪を致します。いかような賠償にも応じます。ですので、精霊を巻き込んだ報復は……」

「勘違いするな。マスターは、何ら瑕疵はない。ちび達が率先してやっている行動をマスターのせいにするな」

「精霊が率先して?」

「では、どうして精霊が助力してくれなくなった? 我々は、一度として奉納を欠かしたことはない」


 理知的……インテリ眼鏡を遮ったのはレオンで、私と彼との間に割って入って威嚇した。

 レオン的には、私が侮辱されたと感じたのだろう。

 へりくだっている様で、上から目線で話すインテリ眼鏡を気に食わないだけかもしれないけど。

 足下では、お子様ズも頬を膨らましている。

 さりげに、ファティマは守護結界を張り、フィディルは眷属を呼び止めている。

 レオンの感情に誘発されて大地属性の下位精霊が、地味にシャドーボクシングをしたりしている。

 インテリ眼鏡と加勢した厳つい男性(多分実働部隊の責任者だろう)が、レオンに食って掛かる。

 外見は細身の少年体だからか、威圧すればおとなしくなると判断したのか、厳つい身体にあった容姿の男性は、強面な顔面を益々怒らせて迫ってきた。

 相手にするの、馬鹿らしくなってきた。

 奉納云々の話ではなく、精霊がどうしてストライキ起こしたかが問題なんだろうが。

 話の論点をすり替えるなっての。


「おい、あんた。あんたが、やらかしているのか。なら、すぐに止めさせろや」

「俺等は、一仕事終えたばかりなんだぞ。設備が起動しなくて、依頼達成したか分からない。分からないから、依頼料が支払えない。んな、馬鹿なことがあるかよ」

「こっちもだ。鑑定結果は出来てるのに、ギルド証に反映出来ない。こっちは、ランクアップがかかってるんだぞ」

「いつもなら、あっと言う間に終わることができない。今すぐに、止めやがれ」


 ほら。

 事態を把握出来ないお馬鹿な輩が騒ぎ出した。

 敵意を剥き出して、私に責任を押し付けてくる冒険者の数が増えてくる。

 インテリ眼鏡が、うっすらと微笑しているのが分かった。

 厳つい男性なんかは、さも当然と言わんばかりに腕を組み、騒ぎ出した冒険者を静める気はない態度。

 囃したてる冒険者の中に、サクラがいるんだろうね。

 あんた等、初めから謝罪する気はなかったね。

 数の暴利で、小娘をやり込める気でいたんだろう。

 やっぱり、冒険者ギルドは腐っていたよ。

 前領主と癒着して悪さをしていた奴を発見した。

 どう料理してやろうかな。

 内心でほくそえんでいたら、突然インテリ眼鏡と厳つい男性が真横に吹き飛んでいった。

 あら?


「この、あほんだらぁ! 貴様等、何の権限でもって、お客様を不快にしやがるかぁ! そして、冒険者を煽動してお客様に責任を転嫁する輩ども、貴様等の顔は見飽きているぞ。全員、ギルド職員だろうが。副ギルドマスター権限で、解雇してやらぁ‼」


 一気呵成に言い放ち、しなやかなおみ足で回し蹴りをお見舞いしたのは、可憐な受け付け嬢だった。

 良く見たら、私が最初に登録しにきて受け付けてくれ、メモで注意をしてくれたお姉様であった。

 二十代前半の金髪碧眼で、容姿に恵まれ、スタイル良しなお姉様は、周囲をぐるりと見渡して、秀麗な顔立ちに不似合いな青筋を露にし、睥睨した。


「ねぇ、誰か教えて頂戴。私、間違えている?」

「「「「いいえ、お姉様。違った、副ギルドマスター。一部の阿呆なギルド職員による責任逃れであります」」」」

「「「「そうです、レアーネ様。俺達、良い子であります。時間を気にすることなく、待っていられます」」」」


 お姉様の問い掛けに、他の受け付け嬢とギルド職員に、静観していた冒険者達がこぞって返事を返す。

 呆気に取られている間に、暴動していた冒険者達が縛られ床に転がされていた。

 インテリ眼鏡と厳つい男性も、手早く捕縛されていく。


「そこの阿呆は、懲罰室に放り込んできて。序でに、煽動していた奴もね」

「「了解であります」」

「れ、レアーネ副ギルドマスター。自分はギルドの為に……」

「喧しい。ギルド長の身内だからと言って、横暴は赦しがたい。大方、誰ぞの入れ知恵で、此方のお客様の資産没収とか抜かしやがったのを、知られてないとでも?」

「なっ、何でその事を」

「貴様等の阿呆な企みは、精霊様が教えてくれたわ。私が、単なる受け付け嬢から副ギルドマスターに昇進したのも、精霊様との親和性が高くて、精霊様のお言葉を拝聴できるからよ。忘れたの? それから、今回の精霊様の行いは、ギルド長が馬鹿をやらかしたからであって、お客様の責任ではないのよ。だから、精霊様との信頼を築けないギルド職員は、精霊様のご助力を頂けない。逆に、ギルド内にいるだけで、精霊様が不機嫌になる職員は、即解雇が規則にあるのよ。そして、貴様等とギルド長は、その規則に抵触した訳。お分かり?」


 お姉様が丁寧に教えてくれていると、インテリ眼鏡と厳つい男性が顔面蒼白になっていく。

 そうか、実力で職に就いた訳ではなく、ギルド長の身内びいきによって忖度された結果な訳か。

 縁故による就職で、ギルド長の権威を笠にきて幅を聞かせてきたのか。

 序でに不正をしてたりしていたのかもね。

 決定的に欠ける証拠がないから野放しになっていただけで、監視はされていたと。

 んで、私の案件は、ちょうど良く不正を暴ける機会であったりするのかな。

 裏事情を知ったら、うちの子達が不機嫌になるだけでは済まされないことになるかもだけど。

 何やら、うちの子達だけに伝わる念話をしているっぽい。

 レオンが納得いかない顔付きで、フィディルを見やる。

 お子様ズも不承不承といった感じで、またもや頬が膨らんでいく。


「お客様。うちの阿呆な職員と、地位と責任に相応しくない軽はずみな発言を致しましたギルド長が、大変に失礼を致しました。先だって、頭の中が筋肉で詰まっている、ギルド員が偉いと勘違いしている阿呆に引き続き、ご迷惑をお掛けしましたことを、お詫び致します。又、副ギルドマスター権限でもって、今回のギルド機能停止にお客様は何ら関係がないことは、全職員並びに、ギルド員に徹底して通達させていただきます」

「「「「大変申し訳ありません」」」」


 お姉様が直角に腰を折り、謝罪をしてくれた。

 倣って、ギルド職員も立ちあがり、頭を下げてくる。

 勢いに乗せられて、関係がない冒険者までもが謝罪をしてくるんですけど。

 これで、赦さなかったら、私は悪役かいな。

 溜め息が出てくる。


「マスター。フィル兄が、見放すのは止めておけって言う」


 レオンが愚痴をこぼす。

 風のジルコニアは、冒険者ギルドは必要な組織であるから眷属の助力は継続する構えでいるしね。

 時空のフィディルも、眷属には指示を出さないでおくらしい。

 大地のレオンは、私を侮ったギルド職員が気に入らないが、フィディルから待ったを掛けられて保留にするしかなくなった。

 フィディルが何を思案して、静観するかは分からないが、私も見逃すしかないなぁ。

 苦笑して、私の周囲に浮遊する下位精霊に話し掛けた。


『おちびさん達、怒ってくれてありがとうね。だけど、まだ暫くは冒険者ギルドに手助けしてあげてくれないかな。私も、その内に利用したい組織だしね。ただし、おちびさん達を利用するだけ利用して感謝の念を忘れたり、不当に拘束して縛り付けたりするギルドがあったら、そこは見放していい。又、疲れたらうちに遊びに来てもいいよ。いつでも、おいでね』


 精霊言語による説得は、下位精霊に浸透していった。

 両手で抱え込んでいた金米糖を消費して、魔力を補給した下位精霊がギルドの設備に潜り込んで行く。

 すると、機能停止していたシステムが起動していき、窓口業務が復帰していく。

 慌てることなく、受け付け嬢達が一礼して窓口業務に戻って行った。


「お客様、精霊様へのご助言ありがとうございます。副ギルドマスターとして、お礼を述べさせて頂きます」

「まぁね。おちびさん達が、ストライキじゃない、職務放棄したのは、ギルド長さんの軽口だけじゃないし。私にも、やっぱり責任はあるだろうしね。慕われるのは嬉しい半面、面映ゆいね」

「だからと言って、貴女の行動を制限し、強制し、苦言を呈する行いは、誰にも出来ません。貴女は貴女らしく、日々を送っているだけでいいのです」

「それ、冒険者ギルドの副ギルドマスターらしからぬ発言だと思いますが?」


 まるで、聖職者の目線だと思う。

 お姉様はにこりと微笑して、爆弾発言をした。


『こう見えまして、私は彼の枢機卿猊下の弟子でございます。貴女様が目指すスローライフを脅かす者どもを、排除するのも私の役目でございます』


 はい?

 何ですと?

 もしかしまして、人外さんの仮の世姿の枢機卿のお弟子さん?

 とすると、お姉様がいたからライザス近隣に私は降ろされたのかいな。

 いやいや、ユーリ先輩が私に寄越した土地の隣に、人員を配置していただなんて、予測ができるかっての。

 いや、神様だから予知できていたんだろうけど。

 驚く私に、してやったりとお姉様は麗しく笑った。

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