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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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060 怒りな内容でした

 さて、大人数が入れそうなリビングに、場所を移して話そうか。

 アンジーは兄妹につけたので、クリスがお茶の準備を行う。

 ブラウニーのハウス限定魔法で、コの字型のソファーセットに座る。

 勿論、お誕生日席に私が、対面する様にシェライラとアナスタシアちゃん、アンナマリーナさんと背後に騎士ワイズさんが控える型になる。

 ナイルさんは、アンナマリーナさん側に座って貰った。

 アルバレア家絡みなので、ナイルさんを省いたら駄目だろう。

 関係がないとは言えない、話題になるのは確かだからいてもらい、現状を把握しないとね。


「まず、アルバレア家分家に纏わるお話しをいたしますわ。何故に他家のわたくしがでしゃばるかは、聞き終ってからに質問を受け付けますわ」

「興味本位な関わりではないと、いうことね」

「そうですわ。わたくしが間に入らないと、シアはまともに貴女と会話が成立しないでしょうし」

「それには、同感する。アナスタシアちゃんは、自己を護る為に貴族らしい話し方をするみたいだね」

「ミーア様が推測された通りですわね。嘆かわしいことに、アルバレア家筆頭分家の座をウィンチェスタ家に奪われたファレル家は、アナスタシアを返り咲きする道具の駒にしていますわ。ご存知ないかと思われますが、自滅したアルバレア家後継者を名乗っておられた方に、十代前半で嫁がされるまで、追い込まれていたのでしてよ」

「オーガスタに?」


 挑発的なシェライラの会話に、アンナマリーナさんは訝しげに眉を顰めた。

 如何にも、分家を気にしなさすぎである。

 アナスタシアちゃんと自滅したオーガスタ氏とは年齢差が有りすぎだろう。

 ナイルさんが三十代だから、それぐらいでしょ。

 貴族の間では、年齢差のある婚姻は希ではないだろうけど、オーガスタ氏が独り身だとは思っていない。

 所謂、血を保つ為の愛人ではなく、家の野心による自由意思がない婚姻だったはず。

 他家とはいえ、シェライラが憤るのも理解できた。


「わたくしと、アナスタシアは同門の徒。錬金術を修めず、守護者がいないアンナマリーナさんを出し抜くには、容易な手でしたわ。しかし、わたくし達の師が手を回し事なきを得ましたが、アンナマリーナさんの母君が代理領主になられた次は、貴女の兄君に差し出される手筈になっていましたのよ。師が強引に引き取らなければ、薬物によって理性を無くした兄君と既成事実を済し崩し的に、となっておりましたわ」

「……あの義伯母がやりそうなことだ。オーガスタの葬儀に、アナスタシアを兄にと縁談があったと聞いた。まさか、薬物まで使ってだなんて………」


 アンナマリーナさん的には武芸で身を立てる気でいたから、そうした権謀術数は与り知らない領域なんだろうな。

 お母さんも、アンナマリーナさんに知らせる事なく潰してきたのだろう。

 それと、シスコンだったお兄さん達もだろうな。


「従兄弟同士の婚姻は血が濃くなり、健康な次代に恵まれないと、私はオーガスタと婚姻は無理だったからなぁ。そのぶんが、アナスタシアに期待されたのか」


 呻くように述懐するアンナマリーナさん。

 外見が女性でも、中味が男性思考だからか、自身の婚姻は無理だと判断していたそうだ。

 だからか、性的思考は男性にあるから、好意を抱く相手が同性になるか聞いたことがある。

 答えは、NO。

 神々の悪戯で女性になってしまったけど、中味が異性だけにそうした恋愛感情は芽生えないようにフォローされているとの事だった。

 異性、同性に好意を抱いても恋愛には発展しないそうである。

 私も他人事ではないが、恋愛感情に揺れ動く感覚はないとみた。


「シアが傲慢に振る舞うのは、母親に対抗してそうするしか身を守れなかったからと、守護者が少年体であるからですわ。今は、ミーア様という先駆者が現れ、騒がれているのはご存知ですわよね」

「それは、聞いている。六柱の大精霊が守護者であり、初代錬金女王陛下の守護者も保護されている。多分だけど、我が女王国には十三柱の大精霊が集っていると噂があがっているのもね」

「ええ、わたくしの風の大精霊たるジルコニア。宰相閣下の火の大精霊たるアリス。そして女王陛下の嵐の大精霊たるエルシフォーネ。ミーア様が保護なされた光と闇と炎の大精霊。残る一柱の大精霊も、ミーア様のお側におられます。そんな、ミーア様の元に、次代のアルバレア家後継者と分家筆頭の娘が居を同じくしている。アナスタシアへの八つ当りめいた折檻を、貴女は知らないでしょう」

「折檻? あの義伯母が?」


 シェライラの説明に、アンナマリーナさんが驚愕の声をあげた。

 アナスタシアちゃんは俯き、何かに耐えるかの如く、唇を噛み締めていた。

 毒親がこちらにもいたよ。

 ファレル家が栄える為という貴族の本意であろうが、アナスタシアちゃんの母親は逸脱した行いをしていそうだね。

 自分がでなく、娘すら政略の道具にする。

 貴族らしい考え方なのだろうが、常軌を逸したやり方に憤る。

 よく、アナスタシアちゃんが壊れなかったと思うよ。

 あのツンデレも、精神を破壊させない手段だった。

 ダイアナが少年体だとばれたら大騒動に発展し、より高みを目指す道具にされていたなぁ。お師さん、グッジョブだ。


「躾と吹聴して、鞭で叩く。期待に応えられなかったら、食事を抜くのは日常茶飯時でしてよ。わたくし達の師が介入しなければ、シアは肉体的にも精神的にも壊れていましたのよ。他家のわたくしが気付いた事態に、身内である貴女方が気付いてあげられないなんて、どうかしてましてよ。わたくしが、怒りたくなるのも理解できましたか?」

「流石に、言い過ぎでは……」

「ワイズ、発言は止めて。私を擁護したいのだろうけど。甘んじて批判は受けないとならないのよ。それだけ、アルバレア家と領民を守るだけにしか、私達は動かなかった。ファレル家が何やら画策していても、大事に至らないだなんて笑い話にさえしていたのよ。それが、実態はこれだなんて、穴を掘って埋まりたいぐらいだわ」

「アンナマリーナお姉様」

「アナスタシア。ごめんなさい。私達ウィンチェスタ家は、ファレル家を甘く見下していただけだわ。母上が領主代行に指名されて、正統な後継者を探させた。縁があり、見つけることができた」


 アンナマリーナさんの視線が、ナイルさんに向く。

 居心地悪そうにしていたナイルさんも、話しを聞くと痛ましげに表情を歪めている。

 毒親を放逐でもしない限り、ナイルさんがアルバレア家を継いでも、騒動の種になるだけである。

 早いところ、何かしらの対策を立てないと兄妹の身の安全が保証されない。

 マーベル家にはケットシーもいるしね。

 絶対に、マーベル一家に害になるだろう。

 どうするかな。


「今すぐ、ファレル家を断罪するには至らない。アナスタシアの証言だけでは、貴族院も罰する事は出来ない」

「ええ、それが心苦しいのです。例え、シアの身体に残る折檻の後があっても、躾と言われてしまえば、それで終わってしまいます。今は、錬金術の位階をあげる時期だからと、シアは師の元に保護されていますが。連日の様に、帰還を促す使者がやってきますの。ですから、わたくしが矢面に立ち、バウルハウト家に招いていますわ」

「それが、無難でしょうが。いつまで持つかが、鍵となりますね」


 アナスタシアちゃんは未成年だから、親の保護下におかれるのが不可欠だ。

 親の特権を使われたら、幾ら身分が高い錬金術師も貴族院の法律には従わないとならないそうである。

 アルバレア家を継ぐ予定のナイルさんも、正式な叙爵を受けていないから、アルバレア家がファレル家を抑えるには無理がある。

 厄介な問題だね。

 領主代行の采配にも、従わない素振りが見え隠れしているとの事だし。

 少しだけ悪戯してみようかな。

 大精霊の威を借る事になるが、マーベル一家の為にも排除するのが吉となるはず。


「はぁい。ユリスもやるー」

「エスカも、やるー」

「……セレナも、やるー」


 私の両脇に陣取ったお子様が、片手を上げた。

 ん?

 もしかして、口に出してたかな。


「マスター。ものスッゴく、意地が悪い顔して言ったぞ。因みに、俺もやる」

「あら、仲間外れは嫌ですわ。わたくしも、お手伝いします」

「では、自分もですね」


 レオンやファティマ、フィディルも名乗りをあげた。

 大精霊六柱の嫌がらせだ。

 ファレル家、潰されるだけではなくなったな。


「あ、あのっ。お手柔らかに、お願いいたします。母や兄はどうなっても構いませんが。屋敷で働くメイドや執事は味方になってくれる者もいるのです。彼等は除外してくださると、助かります」

「オッケー、了解した。無害な人材は避けておくよ。さあ、どうやってくれようかな」


 アナスタシアちゃんは、ファレル家でも孤立はしてはいなかった。

 そこは、重畳だ。

 身内はどうでも良さそうで何が起きるか、関心がない様子をみれば、家庭内がどうあるか知れたな。

 ふふ、伊達に似非細工師と言われてないぞ。

 嫌がらせは任せてくれたまえよ。

 こちとら、大地と水の精霊魔法に長けているからね。

 ファレル家関連の土地の恵みがなくなり、水が干上がり、その原因がファレル家にあると知れたら領民達の批判が向くよね。

 アルバレア家も、領民を救うという大義名分で調査に乗り出せるよね。

 アンナマリーナさんの母親にリークすれば、切れ者そうだから手加減なく断罪できるだろう。

 まあ、できなければ、第二弾の策を労するだけだしね。

 初戦は、領民に被害がいきそうだけど。アルバレア家に支援の準備をしてもらえばいいだけ。

 そこに、ナイルさんも投入して名声を上げさせれば、御の字かな。


「あのバイカル市街戦の策だけはよして欲しいが、聞いているかな?」

「バイカル市街戦?」

「ああ、ここではない遥か遠い地での市街戦で、この細工師はやたらめったら意地が悪い罠細工を施した。伊達に六柱の大精霊を守護者にしていない。広域戦略級大精霊魔法を行使した結果、王都クラスの街が半分以上荒野と化した。まあ、その市街の住人には被害はなかったのだけど。住む家が無くなり、仕事も失った流民となったけどね」

「それは、聞き捨てならないんだけど。言っておくけど、バイカル市街って犯罪者の街として有名で、住人も何かしら犯罪を犯して集まり、勝手に自治区にした街だったんだよ。周辺諸国連合から依頼されて落としただけなんだからね」

「だからと言って、あれはやりすぎだ。まあ、確かに犯罪者は少なくなったが、無害な家族も捲き込んだだろうに」


 他人の血で購った財で、養われた子供には恨まれたけどさ。

 財や親を奪われた無実な子供はどうしたらいいのさ。

 私に依頼した依頼人は、自分と同じ目に合わせてくれと懇願した。

 たかが、ゲームのNPCだとは思えない嘆きに、私は決行した。

 後悔も慚愧の念もなかった。

 犯罪者の中には、自分が犯罪者だとはばらされずに生きていた者もいた。

 市街の悪名も、発展を妬むからだと信じていた。

 荒野と化したバイカル市街で、途方に暮れていた家族は何百といた。

 そうした家族に追い討ちをかけたのは、自国の王族だった。

 彼は悪評を一身に引き受け、バイカル市街の成り立ちから悪名をいただいた経緯を周知した。

 最終的に、バイカル市民は更正施設に行くか、悪名のレッテルを貼られて生きていくか選択をしなければならなくなった。

 その後がどうなったかは、詳しくは知らない。

 ただ、バイカル市民は離散したとだけ聞いた。

 そして、彼の王族は暗殺されたとも聞いた。

 犯人がバイカル市民かは知る術はなく、有耶無耶のうちに消えてなくなった。

 バイカル市街は周辺諸国連合によって、半壊状態から全壊状態にされて騎士の駐屯所があるだけになった。

 後味が悪いイベントだった。

 それで、二度とはそうしたイベントには参加しない方針となった。

 あのイベントみたいには、しないよ。

 軽く水脈を変えたり、土地の恵みを衰えさせるだけだから。

 安心してとは、アンナマリーナさんは納得しないかも。

 それだけ、私もやらかしているからだね。

 ちょっと、反省するかな。


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