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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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056 お説教が始まりました(前)

「それで、いきなりミーア姉ちゃんの悪口ばかり言うから、アンナ姉ちゃんが怒ったんだ」

「あの娘、細工師の実力をしらないだろうから、言いたい放題馬鹿にしていたからね。細工師の守護者が大暴れしない為に、怒らざるを得なかった訳」


 招きたくもない客がいなくなり、鉄柵を乗り越えて帰還すると、あの一団が何をしたか教えてくれた。

 私が森に行き、すれ違いにレードさん等が戻ってくる前に、同年代の子供がいるとより安心できるだろうと、ロイド君とエメリーちゃんが呼ばれていた。

 うちの子達?

 ほら、外見は保護した子供達より幼くみえるから、逆に幼子を酷使する悪人にみられてしまわない配慮である。

 アンナマリーナさんと騎士ワイズさんは、囮にされた子供を保護して安全地帯に退避したから、農園は安全であると安堵したそうだ。

 しかし、エスカが排除した魔物の死骸が山積みになっていたのを見て、本当に安全か疑わしいと女治療師が喚いた。

 そのせいか、ファティマの判断で農園の結界に弾かれ、鉄柵の内側に入れないでいた。

 まあ、レードさん等を受け入れたりしたら、森の依頼を受けた冒険者の休憩場所と認定されてしまう。

 レオンの眷属情報では、一時期は冒険者ギルドとライザスの住人との仲がぎくしゃくしたが、復帰したギルド長の独断で無料奉仕を打ち出したりして、険悪な仲は払拭しつつある。

 あの女治療師も態度があれだったから、選民意識が強めだったとみる。

 治療師に適した属性持ちながら、優越感に浸ってたから罰があたったな。

 精霊に嫌われて加護を無くした。

 結果、治療師でいられなくなった。

 自業自得である。


「マスター。騎士の一団が門前に来た」

「ん。敵意がないなら、入場許可する」

「では、自分が案内してきます」


 雑事に細やかな判断をするナイルさんが、駆けていく。

 あの人、身分的には爵位継承者なのに、フットワークが軽いんだよね。

 人を使う立場になっても、自らが率先して動きそうだ。

 騎士の修練より、上に立つ貴族の常識を叩き込まないといけないんじゃないかな。

 今の処、恩返しが済むまで、農園での労働に従事したいと言われている。

 ロイド君は農民ではいられなくなったのを、アンナマリーナさんの授業で実感しているも、座学より鍬を振るっている方が生き生きしている。

 エメリーちゃんに至っては、お婆ちゃんを思い出すと、アンナマリーナさんの授業を無難にこなしている。

 やはり、貴族のマナーをそう思わせない範囲で学んでいた。

 貴族であった誇りが受け継がれていた。


「あのぅ。俺達はどうなる?」


 地べたに直に座るのは汚れるからと、ピクニックシートに座らされて飲食を提供されていた子供達が不安な眼差しで見上げていた。

 子供達の身形は薄汚れた着古した衣服で、靴は穴が空いている。

 みるからに、孤児と思われた。

 最初は差し出されたクッキーを全て食べずに、養護院の仲間に食べさせたいと持ち帰る素振りを見せたので、追加のお菓子を出した。

 飲み物も、柑橘類を絞ったジュースを空き瓶に詰めて渡したそうだ。


「そういえば、君達報酬は貰っているのかな」


 質問に質問を返すのは悪いが、質問したら揃って首を振る。

 ぴきり。

 誰かの堪忍袋が破れた音が聞こえた。


「一人幾らの報酬だった?」

「一人じゃなくて、持ち帰る素材の売却代金の一割だって言っていた」

「ふむ。じゃあ、一割の意味は分かっているの?」

「……銀貨一枚だと、銅貨一枚?」


 五人のリーダー格らしき男の子が一人の男の子を見ると、その男の子が答える。

 最低限の計算が出来る子がいた。

 だから、対価をはっきりさせない依頼だったが、受け入れてしまった。

 何か、訳ありみたいだね。


「本当は、ただの荷運びだって言ったんだ。それも、場所は初心者冒険者が行く狩り場だって。だから、受けたんだ」

「他に手が空いている子がいたら、参加してもいい。仲間を呼べって言われた」

「用意された背負子も小さいし。何かおかしいと思って、仲間を加えるふりしてギルドに密告させた」


 成る程。

 救援者が間に合った背景には、子供なりの連携があったのか。

 そして、不安は的中して、囮にされた。

 幸いにも、大地を統べる大精霊が間近にいて、情勢を把握されたことと、うちの農園に武芸に明るい人員がいた。

 レードさん達より早く対処ができたものの、私の指示がないから保護しか出来なかった。

 いやいや、上出来だから。

 良くやったと、誉められるべきだから。


「いつもの冒険者が長期の依頼で町にいなかったから、あまりよく知らない冒険者の依頼を受けちゃったんだ。俺が悪いんだ。他のは、誰も悪くないから」

「違うよ。母さんの薬の為に、選りごのみしたのは皆の意見だ。マイクは悪くないから」

「ごめん。テッド、ジェイク、エラム、シオン。でも、俺が決めたんだから、俺が悪い」


 悲壮感を漂わせてマイク君が、涙に濡れはじめた目をこする。

 ありゃ。

 断罪されると思われたかな。

 ライザスの住人だから、裁判官はシェライラだよね。

 ランカの土地を貰ったからと言って、私に裁く権利はないし、裁く気もない。


「バーシー嬢。遅くなって済まない」


 逡巡していたら、見覚えのあるシェライラの護衛騎士さんが馬上から声をかけてきた。

 急いで駆けつけてくれたのだろう。

 馬が汗まみれで荒い息を吐いている。

 ギースさんは、すぐに降りて馬の頚筋を撫でる。

 お供の騎士は三人で、うち一人の騎士さんとナイルさんが同乗していた。

 その人達も降りて、相棒の馬に果物を食べさせる。

 水分補給かな。


「【アースコントロール】」


 大地を制御する精霊魔法を展開して水飲み場を作製する。


「はい、お水」


 次の魔法を展開する前に、ユリスが水を満たす。

 水の気配を察した馬が、勢いよく飲み始める。

 序でに、余っていた柑橘類入りの水を、ナイルさんが騎士さんに差し出した。


「ありがとう。助かる」

「貴殿の出で立ちは、従騎士かな。その気配りを、うちの従騎士に見習わせたいな」


 お供の騎士さんに褒め称えられているナイルさんは、従騎士を飛び越えて領主になる人ぞ。

 あまり、ぞんざいに扱うな。

 領主代行の方から、苦情がいくぞ。


「お前達。失礼だぞ。その人は、平民の従騎士ではない。訳あって詳しくは話せんが、身分的には騎士爵より上の方だ」

「そ、それは失礼致しました」

「いえ、構いません。まだ、平民ですから畏まらないでいただきたい」


 春と秋の年二で、叙爵式がある。

 次の秋で、私とナイルさんは貴族の仲間入りしないとならなくなる。

 まず、ナイルさんは実母の子爵位に返り咲き、数年の後にアルバレア侯爵を継ぐ予定でいる。

 これは、領主の教育をされていないナイルさんに配慮した形になる。

 もしかしたら、ナイルさんは子爵位だけに止まり、ロイド君が侯爵位を継ぐ可能性の方が高い。

 それか、エメリーちゃんの婿さんがかもだけど。

 女王国は女性でも、爵位を継げる。

 その辺りは、アルバレア侯爵家との折衝になるだろう。

 初っぱなから、印象が最悪なモノだっただけに、どうなるかは分からない。

 下手したら、アルバレア侯爵が別な人物になるかもしれないが。

 アンナマリーナさんとシスコンだったお兄さん達は、アルバレア侯爵家を継ぐ意思はなく、正統な聖剣の所有者がいるのだから、ナイルさんが継ぐのが妥当であると、親族を諭しているそうな。


「お前達、その辺で止めておけ。バーシー嬢。その男の子達が保護した子供であると解釈して良いかな」


 いつまでも、謝罪大会になる恐れがあるのを止める騎士ギースさん。

 厳つい騎士の視線に、肩身が狭くなり集う子供達。

 怯えを含んだ瞳で、騎士ギースさんを見上げている。


「行きに、冒険者ギルド所属の監察官に会った。犯罪を犯したと思われる輩が、我々を見て助けを懇願したので、副隊長と数人をあちらに同行させた。犯罪を犯した者の処罰は領主の役目だが、あちらは聞き入れない。冒険者ギルド員が犯罪を犯したなら、ギルドが裁くとの一点張りだ。囮にされた子供は、バーシー嬢が保護しているので、迎えに行ってくれと宣う。何様かと憤るが、子供達の保護者が事態を知り、病の身で無茶をして捜索に加わり倒れた」

「! 母さん、母さんが倒れたって」

「あんなに熱を出しているのに……」

「ごめんなさい、母さん」


 子供達が口々に母さんと言っているが、兄弟にしては似てない。

 髪色や瞳の色も違うから、養護院の職員か経営者だろうか。


「君達は、翠の宿り木と命名された養護院の子供達だな」

「「「はい」」」

「はい、そうです」

「ならば、父親の鉄拳が待っているので、私は叱るのは止めておく。だが、これだけは言わせてくれ。ベルゼの森は魔物の蔓延る危険な森だ。冒険者ギルドでも、ゴールドランク以上ではないと活動はできない。確認したが、君達を騙した保護者は一人がゴールドランクで残りはシルバーとカッパーだった。それでは、依頼は受けられない。彼等は、何と言って君達を雇った」

「ベルゼの森近くのランカに、ハニービーの巣が見つかったから採取に行くって。森近くだから、魔物はでるけど、ゴールドランクがいて、退治はできるから安心しろって言われた」

「だけど、森の中に入っていくし。逃げようとしたら捕まって、背負子に細工されて、変な臭いがしたら魔物がよってきた」

「俺達ばかりに魔物が寄ってきて、冒険者が退治していたけど。寄ってくる魔物が多くて、一人が怪我をして防戦一方になったら、この人が来た」


 恐怖の時を思い出させるのは心苦しいけど、事情は説明しないとね。

 で、男の子が指差したのはレオンだった。


「魔法であっと言う間に壁が出来て、逃げ出せました。でも、魔物は追ってきて、無我夢中で走ったら、ここに辿り着きました」

「初めは、入れなかったけど。大人の人が来て、入れてくれました」

「まだ、仲間がいると言ったら、大人の人が出ていって、おちびさんが木の魔物を召喚して、魔物を追い払ってくれました」

「僕とマイクは逃げ遅れて、取り残されたと思ったら、女の人と男の人が来て、助けてくれました」


 次に、アンナマリーナさん大人組を指差して、偽りなく的確に報告する。

 順番に話す子供達は、悄然としている。

 病の母親が自分達の行いで、倒れたと聞けばそうなるか。

 騎士ギースさんが、曰くありげに私を見る。

 情に訴えても、子供達の母親を看たりしないよ。

 それをするのは、領主のシェライラの勤めでしょうが。

 私を頼らないでくれないかな。

 ナイルさんの事は、事前にロイド君の庇う行為があったから返したまでのこと。

 治療能力があるからといって、治療師ではないのだから、そこの処ははき違えないで欲しい。


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