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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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055 火花が散っていました

 さて、では帰ろうか。

 留守番組も気になるし、離脱したレードさん等も気になる。

 森林狼の囲いを解いて貰い、アルビノ種に別れを告げる。


「じゃあ、帰るね。また、何かあったらレオン経由で連絡頂戴な」

『分かったよ。愚弟をよろしくね』


 手を振り、来た道を戻る。

 灰色狼が殿(しんがり)で、暫く歩いていく。


「さっきも言ったけど、うちの住人と揉め事は禁止。だけど、君を貶したり、矜持を傷付ける行為をされたら報告ね。そうした場合は、喧嘩両成敗が基本だから」

『了解した。番犬呼ばわりだけは、遠慮して貰いたい。群れの爪弾き者だったが、狼の誇りは失いたくない』

「君さ、お兄さんの為か、自己の為かしらないけど。わざと、愚者を演じているでしょ」

『……。兄に似た毛色だしな。兄を追い落としたい勢力を一網打尽にするには、持ってこいな立場であった』

「兄弟が二人しかいないのも、他の子は淘汰された?」

『母を実父から奪った祖父にな。まだ、森の中だ。これ以外は言えない』


 ありゃ。

 複雑な家庭環境がやはり、あったか。

 となると、祖父狼に要注意だな。

 警戒を怠らないでおこう。

 レオンを見ると、眷属に何やら指示を出していた。

 大地に生きる生物は大地の精霊の監視の目から逃れることはない。

 精霊が入り込めない環境があれば駄目だが、概ね森に棲息している限りは精霊を出し抜くのは難しいだろう。

 フィディルもいるし、大体は全体をカバーできるでしょ。

 自衛手段に乏しいロイド君とエメリーちゃんには、護衛者がなければ森に入るのは注意しておくか。

 まあ、エメリーちゃんには、精霊が側にいる。

 無断で行動する子ではないが、もしもがあったら彼女が事態を訴えてくるだろう。

 エメリーちゃんが、早く精霊視を入手できるのを願う。

 鬱蒼と植生していた木々がまばらになり、農園の鉄柵が見えてきた。

 そして、鉄柵に弾かれているレードさん等を発見した。

 そういや、留守番組の子に念話で入場許可をだしていなかったや。


「エスカ、ユリス、セレナ、ただいま」

「「マスター、お帰りなさい」」

「……お帰りなさい。お客様、入れていいの?」

「すまない、白夜。幼子達に、入場を阻まれた。少し安全地帯で休ませて欲しい」

「農園に行けと言ったわりには、手落ちもいいところね」

「何を甘えた発言しているの。無断で入ろうとした侵入者に、慈悲はいらないわね」


 鉄柵の中と外で女同士の火花が散っている。

 レードさんの仲間の女治療師とアンナマリーナさんと、険悪な気配を撒き散らしているのだが。

 何があったし。

 誘引する虫箱の効果が切れているから、新たに魔物が寄ってくる気配はないから、そのままお帰り頂こうかな。

 わらび餅さんだったアンナマリーナさんの為、人柄は知っている。

 弱者には優しいフェミニストだったが、あらかさまに敵意を剥き出しにしているのは許容できない行動があったからと推測した。


「マスター。このお姉さん。あれしろ、これしろと命令してきた」

「お水寄越せ、食べ物寄越せだって」

「……お水とお菓子。子供にあげたの」


 プンスカモードのエスカに、女治療師を敵視しているユリスに、珍しく怒っている感情を見せるセレナ。

 やはり、お帰り頂こう。


「灰色君、入場許可。無茶振りする方々は、不許可。さっさと、帰ってくれる? ああ、お子様達も連れ帰ってね。後日、保護した経緯は報告に行くよ。では、さいなら」


 私の指示に、灰色狼はジャンプして鉄柵を越える。

 私も身軽に飛び越えて、フィディルとレオンが続く。

 先に帰還していたナイルさんも私の意を酌んで、捕らえていた痩せた冒険者を鉄柵の外に放り投げた。

 縄で縛られていた痩せた冒険者は、受け身を取れずに落下してうめき声をあげる。

 子供を持つ親のナイルさんは、子供を囮にした輩には容赦がなかった。

 まあ、自業自得だ。


「ま、待ってくれ、白夜。此方の人数では、捕縛した冒険者と子供を無事に街に護衛できない。できれば、白夜の手勢を貸してはくれないか」

「分かった。子供は、領主様が派遣してくれている騎士に預ける事にする。それまで、保護しておく。それから、アンナマリーナさんと騎士ワイズさんは他領の人で関わると、厄介なことに発展するからお薦めしないし、うちの農園従事者に荒事を指示する謂れはなし。だから、とっとと帰れ」


 未だナイルさんの身分は農民である。

 従騎士見習いであったからと言って、冒険者ではない人物に護衛させれないよ。

 剣を所持しているから、剣士だと思ったかな。

 自衛の為に、所持している一般庶民だっている。

 勘違いするな。


「白夜。不快に思わせたのなら、謝罪する。子供の件は任せた」

「レード、何を謝罪する必要があるのよ。私達は間違っていないでしょ。戦える術を持った人材がいるなら、助力は当たり前じゃない。それに、私達にも休息が必要だわ。休息出来る時にしないと、いざという時に対処が難しくなるわ」

「カレン。お前さん、本気で言ってるのか?」

「ビクター?」

「ギルドから馬鹿をやらかした冒険者を捕縛依頼をされたのは俺達だ」

「セルドまで、こんな娘に味方するの」

「違う、道理を説いているんだ。なら、カレンは依頼料を差し引いて礼金を支払うのか? したことはないだろう。いつも、レードに引っ付いて我が儘言い放題して迷惑をかけているのに気付いていない。今回の依頼は、カレンの適正を確かめるモノでもあった。自分は、パーティ間の不和にしかならないと判断した」

「リージェスに同意する。あんたはパーティクラッシャーだ。待遇を破格の扱いにする目的で、リーダーにすりより身体を使って取り入ろうとする。パーティの仲がぎくしゃくするのを見て、悦に入るきらいがあるな」

「皆、酷い」


 あのさ。

 第三者がいる場での断罪は止めてくれないかな。

 お子様に、修羅場なんか見せるなっつうの。

 アンナマリーナさんが気を利かして、お子様達を家に導いていく。

 助けられた恩があり、比較的素直に従うお子様達である。

 リーダー格ぽい男の子が一度だけ振り返ったが、醜い争いをする大人達を胡乱な眼差しで見て歩き去った。

 女の醜い部分を見せられて、辟易したかな。

 ナイルさんと騎士ワイズさんに目配せして、先に行って貰う。

 シェライラが手配した騎士の対応をお願いできるかな。

 そろそろ、やって来そうだと、レオンから念話がきた。

 お子様ズが、私の側に寄る。


「【氷水(アイスウォーター)】」

「「「ぎゃっ?」」」

「きゃあ、何?」

「……白夜?」

「いい加減、醜い争いを止めてくれないかな。パーティクラッシャーがどうの、適正がないだとかどうの、私には関係がないし、端からみたら多勢で女を苛めている現場でしかない。まあ、その女は自業自得みたいだけどさ。冒険者ギルドも質が落ちたと吹聴しているようなものだと理解したら?」


 私の指摘に、グゥの音も出ない彼等だ。

 女治療師も、助け舟出されたと思ったみたいだけど違うからさ、喜色ばらないでくれるかな。


「あのさぁ。内輪揉めに巻き込まないでくれる? 心底どうでもいいし、見苦しいから」

「返す言葉もない」

「謝罪されても、ちっとも有りがたくないね」


 この期に及んで、謝罪するだけのレードさんに何ら感情が沸かない。

 復職したギルド長にお灸を据えられた意味がなかったね。

 役職を解いて、下っ端からやり直したら?

 無関係な者に指摘されて怒り出さないのは誉めてあげれるけど、やっていることは弱い者苛めと同じだ。

 ギルドの教育が行き渡っていないのを、暴露してどうするよ。

 恥晒しじゃんか。

 何で、理解できないんだろうか。


「もう、本当に帰ってくれない。後、うちの農園は休憩場所ではないのを通達して。あんた等みたいに森でお仕事して、水の補給やら食べ物を強請るのが増えたら、容赦なく叩き出すのを覚えておいて。また、うちの住人に八つ当りなんてしたら、私の持てる手段で仕返しはする。ああ、それから。何か、女王陛下が爵位くれるっていってるから、貴族に無茶振りされても対抗するだけだから、その辺りも広めて構わないよ」

「……分かった。本当に済まない。後日、ギルド長が目通りを願うかも知れんが、寛容な対応をお願いしたい」


 然り気無くお願いされた。

 抜け目がないなぁ。

 ただし、受け入れるかは私次第なのを、忘れないで欲しい。

 一応、冒険者ギルドに登録したけど、それ1本で食べていくつもりはない。

 なら、何で登録したと問われたら、あれだけど。

 ユーリ先輩が考案して設立した制度に、精霊が巻き込まれているか確かめたかったのもある。

 果たして、時空と大地に風の精霊が酷使されていた。

 あの人が残した制度の行く末を判断して、ぶち壊してやりたかったのもあった。

 まあ、為るように為ったけど。

 冒険者ギルド本部はいずれは、瓦解する。

 システムが復帰できなくて、責任転嫁を女王ちゃんにしてくる阿呆な集団である。

 大精霊と再契約は到底無理。

 聖地を探す素振りが見えてこないのだから、継続する意思がないと判断した。

 助けを請うてきても、見放す所存でいる。

 地位に胡座をかいた権力思考な輩に、誰が協力するか。

 長年精霊が受けた痛みを思いしればいいんだ。

 レードさん等は、まだましな部類だ。

 奉納を怠らず、精霊の離反は逃れた。

 まあ、ややライザスの住人を見下していたのもあるが、充分軌道修正ができているんだしね。

 これから、でしょ。

 私に反論しようとする女治療師を威圧で黙らせ、引きずる様に鉄柵沿いに帰還していく一行である。

 どうせ、途中で派遣された騎士と行き合うのだから、捕縛した冒険者を運んで貰えるだろう。

 その際に、私の悪口を女治療師が言い出しそうであるが、すかさず弁明もされるだろう。


「あの女の人。マスターの悪口を言うから、光の精霊の加護なくなった」

「そうなの、ユリス」

「うん。水の精霊の加護もあるみたいだから破棄したら、光のも止めるって」


 ユリスを抱っこしたら、そう教えてくれた。

 私の元で、光と闇の大精霊が休眠しているせいか、はたまた称号の結果か分からないけど女治療師の未来が明るくなくなった。

 私が出会う治療師にまともな人がいないのが、笑えてくる。

 それだけ、治療師は特権階級にいるのだろうね。

 人から感謝されて自分は偉いと勘違いする。

 あの女治療師も、適性はあるものの精霊と契約は出来ずに加護止りなのも分かる気がする。

 傲り高ぶり、他者を見下したら精霊は興味をなくしていく。

 私も、うちの子達大精霊に見放されない努力を惜しまないようにしないとね。

 いい、反面教師になったね。


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