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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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053 森の秘密を知りました

 こちらを窺う森林狼の群れ。

 一際大きなアルビノ種に率いられている。

 反撃を赦さないと、牙を剥き出しにする狼もいた。

 そんな群れに囲まれている私達。

 どうも、アルビノ種の狼は私と話がしたいようである。


『大地の恩恵を受けし娘。森を荒し、我を捕らえようとした愚か者に味方するか?』

「いや、その気はないけど。阿呆の身柄を要求するなら、置いていくよ」

「おい。何を決めつけている。奴等は、冒険者ギルドが裁く。こんなのでも、けじめはつけないとならない」

「だって」


 成り行きに任せようかと判断していたら、レードさんに咎められた。

 おどけて、肩を竦めてみた。

 森林狼の声をレードさんも聞こえているようだ。


「森を荒しかけた責はとる。すまないと、謝罪する。しかし、これ等は人の法で裁かせて貰いたい」

『白虎の男。だが、それ等は幼き人の子を囮にした。人が人を騙し、己の欲を満たそうとした。我等にとり、恥ずべき行為だ。森の掟に従い、放置すればよい』

「確かに、オレ達が救援に来なかったら、これ等は森に淘汰されただろう。しかし、また同じような手段を繰り返す輩に対しての、楔にしなければならない」

『……白虎の男の意見も分かる。だが、人の欲は果てしない。ほとぼりが覚めたら、また繰り返すだろう』

「それは、一理ある。だか、それでも俺達冒険者ギルドは、見捨てる訳にはいかないんだ」


 何だかなあ。

 悲壮感丸だしなんだけど、要はギルド員が犯した犯罪はギルド員が取り締まる。

 他の手は借りない。

 そう言いたいのだろうけど。

 犯罪者を裁く権利って、領主にあるんじゃないのか?

 この場合、無知な子供が巻き込まれたのだけど、ライザスの街の子だしね。

 街の治安や周辺街道の警備を担う領主に保護責任があると思うのだが、間違っているかな。

 まあ、冒険者ギルドの言い分も分かる。

 今、冒険者ギルドも変革しなくてはならない岐路に立っている。

 自らの自浄作用が働かなければ、瓦解する。

 女王国の冒険者ギルドは辛うじて設備が機能しているも、いつ運営の手助けしてくれている精霊に見放されてもおかしくはない。

 だから、犯罪を犯したギルド員を自ら裁いて、対処しなくてはならなくなった。

 見せしめもあるだろう。

 上手くいけば、幼い子供を利用した抜け道を塞げるのではないか。

 そうした目論みも出てくる。


『大地の恩恵を受けし娘。そなたはどうするか、森を荒す者を赦すか?』

「私に意見を求めるのは、何故か分からないけど。やらかしたお馬鹿さんは、人の法で裁くべきなんだろうね。囮にされた子供は、多少のすり傷はあれど生きているんだし、実害が自分自身の怪我だしね」

『そうか。大地の恩恵を受けし娘に、同意する。愚か者は、連れ帰るがいい』


 囲みの一角が開ける。

 私が駆けてきた道、農園へと続く方角だ。


「ビクター、リージェス、セルド、運べるか?」

「一人ずつ運ぶか」

「この方角だと、何処に繋がるんだ?」


 レードさんのパーティ仲間が、歩けるだけの治癒をされた阿呆な冒険者を其々背負ったり、肩に担いだりする。

 彼等も、森林狼の威圧に耐えてはいるものの、早く解放されたいみたいだ。


「道なりにいけば、私の農園に行き着きます。そこで、逃げ出したお馬鹿と囮にされた子供を保護してあるから、引き取って行って」

「白夜の星?」

「あちら様は、まだ私に用があるみたいだから」


 森林狼のアルビノ種、多分群れの長だろう。

 その狼の視線が私から離れない。

 レードさん達と帰還しようとすれば、道は閉ざされる。

 だとしたら、実力行使だなんて勝ち目のない戦いが待っているのはごめんこうむりたい。


『白虎の男。大地の恩恵を受けし娘には、まだ用がある。汝等は、去れ』

「……争い事ではないんだな」

『然り、余人を交えぬ話よ。汝には、関わりがなきこと。居残れば、汝等を帰さぬ』

「分かった。白夜には守護者がいる。オレ達は

帰還しよう」

「レード? 良いのか」

「ああ、オレ達が居残れば居残るほど、白夜の帰還が遅くなる」


 断腸の思いで語るレードさん。

 あらやだ。

 心配されてるよ。

 治癒師の女性が、胡乱な眼差しでこちらを見ている。

 レードさん狙いの肉食お姉さんかな。

 私が見ていると分かりやすく、レードさんの肩に手をかけ耳打ちしていた。

 お姉さんの秋波に気付いたレードさんも、沈黙して頷いて返す。

 ここで、私を庇ったら修羅場になりそうだ。

 恋愛感情を抱いた女性が周りにいるのに、他の女性を名残りおしげに見たらどうなるか。

 朴念仁らしきレードさんも、理解しているだろう。

 手近にいた冒険者を背負って、振り返りもせずに歩き去った。

 んで、私達以外誰もいなくなると、また森林狼に囲まれた。

 僅かに、レオンが怒りかける。

 口約束を破る気はないらしく、長のアルビノ種が長い息を吐き出した。


『あー。やっと行った。あいつ、小難しく考えすぎて、相手をしたくないんだよねぇ』


 随分と、フランクな話し方に換わったよ。

 やれやれと言いたげに、頭を数回振る。


『本当に、嫌になるよ。ボクなんて白虎の男より若い個体なのに、長だからと威厳がどうのって古株に言われる始末だし。あー、やっと自分をさらけ出せるよ』

「マスターの御前だ、少しは見習えばいい」

『大地の御方も、厳しいなぁ。いいじゃんか、甘えても』


 態度がころっと換わったアルビノ種は、レオンとも旧知の仲かな。

 いや、しかし。

 レオンは最近まで活動休止状態になっていたし、アルビノ種は若い個体だと言っていた。

 つじつまが会わない気がする。


『お姉さん。不思議に思っているね。でも、仕方ないか。知らないんだから』

「前置きが長い。さっさと、話すように」

『はいはい。大地の御方は、緩いのはきらいだったね。まあ、結論から言うとね。ベルゼと名が付いた森を統べる個体はね、代々の長の記憶を引き継ぐんだ。だから、大地の御方とは、ある意味旧知の仲だね。記憶だけだけど』

「マスター。ベルゼの森には、三個体の長と呼べる種がいる。この森林狼種は、南側の農園近隣の範囲を統べる個体だ」

『そう。他の種も近々、挨拶に来ると思うよ。だって、お姉さんは待ち望んだ解放者だからね』


 代々記憶を引き継ぐとは、何かしら森には秘密が隠されているとは思ってきたけど。

 大事な予感がしてならない。


『ここはさ、所謂魔力の源である魔素が溜まりやすい土地なんだ。だから、魔法を極めたい魔導師が住み着き易い土地でもある』

「……理解した。腐れ外道な魔導師の棲み家があると言いたいんだね」

『半分当たり』


 ダレンを苦しめた元凶の棲み家が、この森にあった。

 八つ当りに、行けるかもだ。

 けれども、半分の意味が気になった。


『外道魔導師の棲み家は、神々の逆鱗に触れて跡形も無くなったけどさ。災害級な迷宮(ダンジョン)がさ、発生しちゃったんだよね。それで、ボク等や他の種の長の個体が、封印の要になっているんだけど。外道魔導師の弟子みたいな見習いが、棲み家を聖地であるとしたためた古文書が残されているんだ。だから、魔法を極めたい魔法師や魔導師が聖地奪還とか、曲がりくねって財宝が隠されているとか、密かに広まっているんだ』


 頭が痛いと、アルビノ種が訴える。

 そうか、腐れ外道な魔導師には弟子がいたのか。

 大元を潰しても、小者を残していたら意味がない。

 人外さん。

 間抜けすぎだから。

 私まで頭痛がしてきた。


『それで、無謀な輩が森の深淵に辿り着いてしまって、裏街道を生きる輩には公然の秘密になっていたりする。まあ、表に住まう輩も、迷宮から湧きだす魔物の討伐で、一攫千金を狙っていたりもするから一概に言えないのだけども』


 つまり、稼ぎのよい狩り場な訳だ。

 納得した。

 ライザスの街は其なりに発展しているが、ランカの土地は耕作地に適さない荒れ地に見えた。

 これは、土地の魔素や竜脈から得られる力をベルゼの森に搾取されていて、森が豊かな分他が荒れていく典型なパターンであると。

 それで、大地と樹木の大精霊がいる我が農園は、次第に両者の眷属も増えて土地のエネルギーが徐々に戻ってきているけれども、大地と樹木の恩恵は我が農園以外は潤わさない。

 そうなれば、食を何処から支えるかと言えば、冒険者が持ち込む素材の転売しか道はない。

 豊かさを求めて、冒険者が無謀な稼ぎの場にでばるのは仕方がない。

 ただし、森の深淵には封じられている禁忌な場所があり、アルビノ種等はそこに至って欲しくはない。

 アルビノ種等は定期的に、深淵から湧き出る高額な素材になる魔物を間引いては、中間層に追い払ってはいる。

 魔物の中には、共存しあう魔物もいる。

 今回標的にされたハニービーも、森に淘汰されながらも生き延びていた。

 やるせないなぁ。

 これって、結局は堂々めぐりにしかならない。

 神々も、外道魔導師の棲み家を処分できても、自然発生した迷宮は潰せない。

 そこまで、干渉は出来ない。

 だから、封印しておくしかない。

 本当に、やるせない。

 ふと、思考に耽っていたら、眼前に翠の球体が浮かんでいた。


『それは、ボクが預かる迷宮の封印の宝珠だけど、お姉さんに託すよ。本当は、時空の御方に預けたら頼もしいのだけど』

「自分が頂いても、マスターに献上するだけです」

『うん。そうなるから、お姉さんの秘密な場所に仕舞っておいてください』


 プレーヤーが保有するアイテムボックスを指しているのだろうね。

 本人ではないと、取り出すことは不可能な場所だね。


『ボク等も森の掟に従い、いつ淘汰されてもおかしくはないし。もしかしたら、無謀な輩に人海戦術でこられたら負けるだろうし。その点、お姉さんには心強い味方もいるから、どうこうされはしないから安心だね』

「そう言うのは、他力本願って言うから」

『しょうがないよ。お姉さんの来訪は、封印の解ける時代だとの神託もあるよ。好意的な神々もいれば、対抗する神々もいる。お姉さん自身を指して、災害をもたらすだなんておおぼら吹く神もいる』


 そうですか。

 まあね、分かってはいた。

 伊達に、六柱の大精霊の主人ではないからね。

 私がその気になれば、災害級の天災をもたらすのは可能だ。

 実際には、やらないけどさ。

 そんなの、面倒くさいだけである。

 全世界に犯罪者と指名手配は、嫌だし。

 何より、人外さんの面目を潰す行いはしたくはない。

 黙って宝珠を受け取り、即アイテムボックスにしまいこんだ。


『あれ? 随分と素直に受け取ってくれたね。ごねられると思ったのになぁ』

「私だって、空気を読むんだよ」


 失礼な。

 たまには、私も真面目になります。

 おそらく、他の二種も接触してくるのは分かる。

 何だかんだ理由を着けて、宝珠を押し付けるのだろう。

 なら、受け取るのがセオリーだ。

 未踏破な迷宮に心踊るが、我関せずがベストである。

 勿論、冒険者ギルドに黙秘な意向でいい。

 噂が噂を呼び込むのは目を瞑る。

 無謀な輩には自然の摂理にお任せして、噂が下火になるのを祈ろう。

 厄介事が満載になるだろうけどね。



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