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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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049 話が伝わらなく困りました

 ツンツン少女の登場に、執務室は慌ただしくなってきた。

 領主の前で友好な仲である他家の少女が、実力行使をした。

 これは、罷り間違えば、大事になってもおかしくはない事件なんだけどなあ。

 分かってやってるとは思えないが、猪突猛進な行いは罰せられても仕方がなし。

 取り合えず、吹き飛ばされた騎士が反撃する前に黙らせるか。


「こら。先ずは、騎士さんにごめんなさい、は?」


 溜め息を吐き出して、然り気無く少女に近寄った。

 実妹を思い出させる少女の頭に、チョップをかます。

 大して力を入れてはないし、敵意はみせてないので、少女の守護者は動かなかった。

 小気味好(こきみよ)い音がした。


「なっ⁉」

「ミーア様にお任せしましょう」


 驚くシェライラにジルコニアは、呑気な言葉をかける。

 憤りを見せていた騎士さんも、私の貴族令嬢にかました無礼な行いに、間の抜けた表情になった。

 執務室を襲撃した人物を取り押さえようとしたら、相手は守護者持ちの貴族令嬢。

 職務に忠実な騎士であるも、よく観察すれば主人の知人と判明して躊躇いがある。

 しかし、少女側は躊躇いなく魔法を使用した危険をモノともせず我が物顔をして、領主の客人に我が儘な発言を繰り返す。

 引き離すべきと判断して、少女を取り囲み始めた矢先に、客人が行動した。

 どうすべきか、シェライラの指示を待たなくてはならなくなった。

 と、こんなカオスな状態に、いまいる。


「ひゃん」

「はい。ごめんなさい、は?」

「ご、ごめんなさい」

「よし。守護者の力は借りなくても、室内で危機的状況になっている以外は攻撃魔法は使用禁止でしょ。万一、一生魔力封じされて、守護者も取り上げられたりしたら、どうするの。それに、初対面の相手に、紹介もなく突撃して不愉快な思いをさせるのは、貴族社会のマナーにも違反するよね。家の名に、泥を塗るのは止めなさい」

「……はい。申し訳ありません」


 再びチョップしてからお小言をしたら、素直に非を認めてくれた。

 この子、やっぱり根は素直な子だよ。

 しゅんと眉根が下がり、頭を垂れる。

 少女の守護者も能面ながら、寄り添って宥めていた。

 なんて、絵になる光景だろ。

 普段気の強い少女が、庇護したくなる弱さを見せるギャップの違いに、益々実妹を思い出させてくれる。

 都、お姉ちゃんは異界で頑張っているぞ。

 概ね、元気にスローライフを目指して、邁進しておるぞ。

 強面な面をして中身は涙脆い父と、マイペースに唯我独尊で突き進む母のフォローで大変だろうが、そちらも頑張れ。

 久しぶり、日本の家族が脳裏に浮かんだ。

 まあ、家族を忘れてはない礼に、吹き飛ばされた扉は修復してあげよう。

 時空魔法で、扉周辺の時戻しを発動。

 見るまに扉の破片が集り、あるべき姿に戻っていく。

 数秒後には、吹き飛ばされたとは思えない扉が、そこにあった。


「時空魔法‼ 凄いです」

「お褒めいただき、ありがとう」


 修復された扉を見やり、目を丸くした少女は、次に両手を組んで頬を紅潮させる。

 アンナマリーナさんの常識授業には、時空魔法の担い手はあまり表には出てこないとあった。

 それは、遺失魔法の転移魔法に関わってくる。

 錬金術にもアイテムボックス関連の魔法があるが、時空魔法の適性がある魔法師は国に管理される立場になるそうだ。

 前文明の遺された遺産たる転移陣が刻まれた転移施設を、維持する為だけに費やされる日々が待っている。

 阿呆らしい。

 幸いにも、女王国はそんな体制はない。

 精霊が協力的な為、他国と比較しても強制的な徴兵は行われてはいない。

 専守防衛が主の騎士団は、練度が低そうに思われているも、いざ有事になると獅子奮迅の強さを誇る。

 その総長はフィディルに一発で伸されたがな。

 あんなのでも、実力は高かったらしい。

 今は、選民思想が甚だしいと隔離されて、再教育が為されているそうである。

 女王国において、女性蔑視な発言していたしね。

 精霊も敬う素振りもなかったしで、最低男だったからね。

 一兵卒からのやり直しをするか、家名剥奪の上に一般庶民に落とされるか選択を迫られ、苦渋の決断で一兵卒からとなった。

 この苦渋といったところに、甘えが見られて仕方がないんですけど。

 まあ、父親も指摘して、甘えが許されない厳しい事で知られる教官の元に配属させたと聞いた。

 何度も鼻っ柱を折られているらしい。

 私を逆恨みしていないかレオンが気にして、眷属の精霊に見張らせていた。

 今のところは、厳しい鍛練に寝て起きてを繰り返す毎日で、他事を思案する余裕は見られない。

 閑話休題。


「あ、あの」

「ん? 何かな」

「本当にお気をつけてください。貴女の噂が、貴族社会では持ち切りです。シェライラお姉様やアンナマリーナお姉様に取り入った破落戸者(ならずもの)であるとか、複数の守護者を得てやりたい放題しているとか、お金で貴族位も手にいれたとか、あまり良い噂がありません」


 羨望の眼差しを向けてきたと思ったら、一気に捲し立てて噂を教えてくれた。

 なんだ。

 訳に頼らなくても、お話しできるじゃん。

 あれは、人見知りが発揮されていたからかな。

 アナスタシアちゃんだっけ。

 シアちゃんでいいや。

 シアちゃんの守護者も、背後で頷いている。

 あー。

 そうした噂が独り歩きしているのは、うちの子達が拾ってきたよ。

 六柱も守護者がいるのは、金に飽かせて手に入れたんだろう。

 上位貴族に取り入るのが上手い騙りだとかね。

 お子様ズが、激おこしていた。

 大精霊の怒りを買ってしまい、領地が大変な災害に見舞われるのは阻止してあげた。

 巻き込まれるであろう庶民を慮り、ヤるなら陰口叩く本人だけにしなさいと取り成した。

 こちとら聖人君子ではないので、陰口叩く人間には容赦はせんぞ。

 そこそこ不幸な目にあえば、お子様ズの溜飲も下がるだろう。

 何気に、大人組も加担しそうであるのは、気付かないでおこう。


「忠告、ありがとね。でも、陰口叩くだけなら、実害はなさそうだしね。実力行使できたら、相応の対処はするよ」

「お屋敷には、アルバレア家の後継者様とお子様がおられます。あの方々にも、疑惑の目が向いております」

「そのお話は、父、バウルハウト侯爵からも聞いております。近いうちに、我が家から護衛も兼ねた家令やメイドか農園従事者を推薦する手筈になっております」

「あー。家内については、うちには家妖精のブラウニー達がいるから必要ないよ。農園については、追々人手は増やす予定でいたけどね」


 余りある土地が広すぎて、管理出来なくなるのは分かっていた。

 いずれは、家畜も飼う予定だから、そちら方面に明るい人を雇用するか悩んでいた。

 うちが特殊過ぎて、生半可な人手は雇えないと思っているがね。

 うちの子達がその力を遺憾なく発揮すれば、人手は不要になるとは思う。

 しかし、それだとつまらないの一択でしかない。

 汗水垂らして働くから、農作物を収穫した感慨は深いし、美味しいくいただける。

 働かざる者、食うべからず。

 それに、収穫した農作物を卸す先がないから、無計画に農地を広げたりはしていない。


「ブラウニーが守護するお屋敷でしたか。それならば、家令やメイドは不要ですわね。その旨は、伝えておきますわ。けれども、小作人に関しては譲れませんわ」

「あのね。権力を行使して、誓約魔法を刻まれた人が来たりしたら、うちの子達暴れさすよ。勿論、私もやる気充分で断罪するからね」


 念押しして釘は指しておく。

 でないと、領地から有能な人材を派遣しようとしかねない。

 それを受け入れたら、宰相閣下なり、他の貴族からも押し付けてきたりするでしょうが。

 善意の好意なら受け入れてもよいかもだけど、悪意満載で下心ある派閥から受け入れなかったら、選ばれなかった不満をぶつけられるだけ。

 それこそ、対抗手段のないロイド君とエメリーちゃんに、危害を加えられたりするでしょ。

 兄妹は、未だ農民の身分だ。

 いきなり、大貴族の戸籍を与えられても、教育が間に合っていない兄妹を貴族社会に放り込めない。

 だから、お祖母さんの実家の子爵位を復帰させて、叙爵する手順になっている。

 子爵位といっても、領地がない法衣貴族だったらしく、ナイルさん的には受け入れ易い状況になった。

 けれども、貴族の教育は必要不可欠だから、アンナマリーナさんが学びやすい授業を一日二時間と短い時間で行っている。

 まあ、兄妹はお祖母さんに基礎は教え込まれていたらしく、それほど難題ではなかった。

 テーブルマナーも、何故か身に付いていた。

 ロイド君によれば、遊びながら覚えたとの事。

 エメリーちゃんも淑女の歩き方やカーテシーを、拙いが出来ていた。

 まずい。

 私よりも、出来が良い。

 頑張らねば、ならぬ。

 実は、アルバレア家と言うか、ウインチェスタ家からも、誠意という名の押し付けがあったりする。

 こちらは、事前にアンナマリーナさんが拒絶してくれた。

 何でも、やはり護衛が主の方々が紛れていて、農作業に従事できない人材が来ても、うちの子達から嫌われるだけだと諭してくれた。

 雇用主がそちらになるなら、報告義務があるだろう。

 逐一、事細かく報告されたりしたら、そりゃあうちの子達がお怒りになるわ。

 痛くない腹を探られてると、勘違いされても文句は言えまい。

 私のやらかしを熟知しているアンナマリーナさんだけに、うちの子達の報復を忌避したいのがありありと分かる。

 ミスリル鉱山から、ミスリルが消失しても知らんぞ。

 河川が干上がっても知らんぞ。

 植物が枯れても知らんぞ。

 我関せずを貫いてやるぞ。

 愚痴ると、アンナマリーナさんは鬼気迫る面持ちで帰宅していった。

 説得が功を奏して、人材は派遣されなくなった。

 さて、バウルハウト家はどうするかね。


「シェライラに提案です。ミーア様の農園には、家畜がいません。そちらの人材を斡旋してはどうでしょう」

「ジルコニア?」

「うってつけの人材がいますよね。精霊への信仰も厚く、動物学の先駆者であり、希な職業を保持したご主人を持ち、ご実家のゴタゴタに巻き込まれて、希少な家畜を飼育しているが為に、貴族からも狙われているあの女傑なら、万が一にもミーア様の農園に押込み強盗が入っても、難なく対処ができます。また、夫君も子供好きな面倒見が良い方です。まあ、面倒見が良すぎて、騙されてしまいましたが」

「ええと、あの夫妻ですか。ふむ、一考の余地ありですわね。お父様に進言してみましょう」


 こらこら、そこの主従。

 私を無視して決めるでない。

 ジルコニアの説明だと、家畜ごと夫妻がやって来そうな気配がしてならない。

 対応できる小屋とか、放牧地が準備できてないから。

 いきなり来ても、困るだけだ。


「安心してください、ミーア様。夫妻が飼育している家畜は、夫妻にしか飼育できない特種な家畜です。舌の肥えた上位貴族に、売りに出せば完売間違いなしです」


 ジルコニア。

 販売手段に困ってるではなく、事前準備に困っているんだけど。

 得意気に語るなっつうの。

 どうしたら、伝わるかな。

 頭が痛くなってきた。


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