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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第二章 貴族の在り方

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047 正座していました

 念願の畑仕事に精を出す日々が続く中、専念させてくれない事案がやって来た。

 ジルコニアからフィディル経由で、ライザスの領主館に呼び出された。

 私がいかないと、招かざる客人が大挙してランカに押し掛けてきそうだ。

 それくらい、客人が息巻いているらしい。

 どうせ、我が農園には無断で侵入はできないのだ。

 放置して構わないと返事をするも、シェライラが困るから迎えに行くとジルコニアに言われた。

 流石に、ジルコニアの風魔法による移動は勘弁して貰いたい。

 空を翔ぶ機会は滅多になく楽しそうだが、フィディルの何処でも扉に比べたら、時間の消費は雲泥の差。

 慣れた移動手段の方がいい。

 王城にて、暴れた客人がこちらに来たかなぁ。

 フィディルとファティマが見学してきた際には、私の情報は入手出来ないでいたけども、守護者を連れた冒険者がいるとの情報が過剰に盛られて出回っていた。

 何か、やらかしたっけ。

 疑問が顔に出ていたら、フィディルから絡まれた事を指摘された。

 ああ、虎の獣人さんに介入された出来事か。

 たいして、記憶に残っていないから忘れてた。

 領主館でやり込めた方が、記憶に残っているよ。

 まあ、何にせよ。

 ジルコニアに強襲されない為にも、出掛けますか。

 農園は、レオンとお子様ズを守護に留守番してもらう。

 私がいない隙に乗り込もうと手を打ってこないとも限りないが、今の農園には武芸に長けたアンナマリーナさんと騎士ワイズさんがいる。

 無断侵入者には、容赦なく武力行使して貰って構わない。

 聖剣を所有するナイルさんは、ロイド君とエメリーちゃんを第一に守ってくださいな。

 うちの子達がやる気に満ちているから、心配は無用だと判断して、いざ出陣。

 勢い込んで、領主館に繋いだら。


「やほー。シェライラ、呼ばれたから来たよ」

「! ミーア様。大変、申し訳ありません」


 会うなり、頭を下げられた。

 なんでやねん。

 つい、大阪弁が出た。

 いや、私の出身は東京ですが。

 自衛隊の父親の転勤に伴い、駐屯地がある各地を転々としたけどさ。

 生まれ故郷は、東京ですわ。

 話がずれた。

 執務をこなしていた机に両手をついて頭を下げるシェライラに、隣で正座をしているジルコニア。

 ほんとに、何があったのだろう。


「ミーア様は、マーベル氏を救出した後に治療を施した時に、邪魔をしていた治療師と医師を覚えていますか?」

「ああ、いたね。グレイスに制約魔法を行使して貰った二人だね」

「はい。そのうちの一人が、聖母教会に呪いを解きに行きました。そして、不完全な解呪をされながらもミーア様の情報を売り、変死致しました」


 グレイスの魔法は、死に至る魔法ではなかった。

 あの子は悪戯好きなだけで、死に至らしめる行動は嫌う。

 これは、グレイスに教えたら駄目な情報だ。

 主人のダレンがいない今は、グレイスの精神を正常に保つ手段が思い付かない。

 知られたら、確実にへたる処か気に病む案件だ。


「ジルコニアに調査を頼みました。風の精霊が言うには、ミーア様の情報を話す度に笑い出す治療師を不審に思い、酷い尋問が行われたそうです。拷問に近く、自白剤も使用された様です。それを行ったのは、冒険者ギルドの本部の人間です。また、加担したのは聖母教会になります。両者は手を組んで、ミーア様を取り込む弱みを握ろうとしています」

「……。それは、さても恐れ知らずな事をやらかしたね」

「はい。女王国の冒険者ギルドは本部とは犬猿の仲になりますが、ライザスの冒険者ギルドは不正が蔓延しておりました。前領主の息がかかった愚者が、ミーア様の情報を本部のギルド職員に漏洩したと報告がありました。本来なら、ライザスのギルド長が自ら贖罪に来たいとの申しででしたが、わたくしの一存でお断り致しました。ミーア様が冒険者ギルドに登録したのは、最近の事です。新人冒険者に、ギルド長との目立つ行為は控えたいと判断致しました」


 ランカの自称代官と冒険者ギルドの一部職員が結託して、人身売買していた事実がある。

 私のギルド登録に関与した受付嬢も、気を付ける様にメモをくれたっけ。

 あれは、ギルド職員にも疑いの目を向けるように示唆していたのかも。


「病を押して、ギルド長が復帰しました現状。不正を行っていた職員と冒険者が、解雇や登録抹消等を経て然るべく裁きに掛けられました。呆れた事に、そうした愚者が発端になったと誤解して、わたくしやミーア様に対して報復を計画しているそうですわ」


 苦虫を噛みしめた渋面になるシェライラに、正座を崩さないまま頷くジルコニア主従コンビ。

 大精霊と契約した契約者に、害を為そうとするお馬鹿さんがいたとは笑えてくる。

 姿なき賢者と称される精霊が、女王国には名を馳せているんだよ。

 配下の眷族たる下位の精霊が、挙って報告するのを知らないのかなぁ。

 でも、シェライラも、宰相閣下も契約した守護者が大精霊だとは知らなかったか。

 女王ちゃんのエルシフォーネも中位だと思われていた素振りだったし。

 案外、契約者が気付くまで、黙っていたりするのかも。

 んで、知らされたから、ここぞとばかりに大精霊の特権を披露しているのかな。

 うちの子達が私に報告しないのは、脅威だと感じていないからだな。

 計画が実行される以前に、何らかの妨害手段に出ていそうだ。

 フィディルとファティマを見やると、いつものスマイルで交わしている。

 こりゃあ、二人が主となって、レオンやお子様ズに言い含めてるな。

 私の預かり知らない場所で、計画が頓挫しているかもだね。


「うちは被害は出なさそうで、逆に相手側が危ないと思う」

「ジルコニアが語るミーア様の武勇伝を聞きましたから、わたくしも大丈夫だとは思っています。ただ、本部職員に随行してきたミスリル級の冒険者を、精霊が危険視しております。何でも、精霊を排除する薬品の匂いがするとの事で、近付けないと申しております」

「錬金術にもある精霊忌避剤かな。女王国が精霊信仰の厚い国だと分かって纏っているなら、敵対行為に等しいね」

「その事は、宰相閣下が指摘なさいました。けれども、相手側も精霊による監視や盗聴を警戒していると、説明がありました。迷宮都市では精霊は狩りの対象ですから。精霊からの報復を畏れていると宣いました」

「精霊結晶が目的の狩り」

「はい。遺憾な事に、迷宮都市では良いお金になります。精霊石とは比較しようのない動力源になり、魔法具で溢れた迷宮都市にはなくてはならない素材です。また、高級な魔法薬の素材にもなります。女王国での精霊を狩る行いは許可しておりませんし、我が国では精霊を害するのは禁忌な行いです。もし見掛けましたら、有無を言わさず捕縛して構いません。また、殺傷されても仕方がない行為だと国民には知らしめております」

「禁を破るのは、国民ではない。だからと言って、見過ごしはしない。諸外国にも、通告してあるんだね」

「はい。その通りですわ」


 精霊石は精霊の持つ魔素が込められた石。

 精霊結晶は、精霊の力が凝縮した純粋な魔素の塊。

 内包する魔素が桁違いに差がある為、精霊結晶は長期間稼動させる魔法具に適した動力源になる。

 いわば、電池のような扱いだよね。

 ラノベでも、大概が電気の変わりは精霊石とかである。

 ただし、精霊結晶は精霊本人の力の塊=内包する存在力でもあるから魂と言って差し支えがない。

 精霊結晶を得る為に精霊を狩るのは、精霊を殺していると同義だ。

 腹立つなぁ。

 精霊は無限にある資材ではない。

 存在を抹消されると理解して、迷宮都市に居着く精霊はいないのではないか。

 それに、冒険者ギルドの運営には精霊の協力無くして成り立たないのに、同朋を狩るのを見せつけている。

 私が介入する以前に、破綻してなかったのだろうか。

 不思議だ。

 なので、聞いてみた。


「ミーア様が疑問に思われた指摘は、肯定です」


 ジルコニアが詳しく答えてくれた。


「冒険者ギルドの施設運営は、奉納されないと停止します。ですが、ギルド本部に蔓延る暗部が、精霊使役に特化した種族を抱き込んで、嫌がる精霊を働かせていました。大精霊とは言え、ユーリ様が考案した冒険者ギルドを私一柱では瓦解させるには及ばず、ミーア様の来訪を待つしか手段がありませんでした」


 成程ね。

 フィディルとレオンが待機状態では、風の精霊をギルドから解放させても残る時空と大地の精霊の負担が増えるだけ。

 逆に、風の精霊だけ解放して、私の機嫌を損ねたくはなかった、非難されたくはなかったと。

 これには、フィディルも眉を顰めた。

 安穏と待機状態でいたから、十五代縛りで活動していたジルコニアを責めは出来ない。

 何時の日か解放される時は来ると、励ますしか出来なかったジルコニアを怒れはしないや。

 ジルコニアによれば、現在の迷宮都市は精霊の存在は皆無であり、緩やかに衰退していくしかなくなった。

 冒険者ギルドの在り方を見直さない限りは、精霊が戻ることはなさそうである。

 まあ、女王国に賠償やら責任転嫁してきているから、やり直しは出来なさそうだけど。

 それにしても、精霊を消費する冒険者ギルドと守護者を確保したい聖母教会が、手を組むメリットがない気がする。

 お互いの主義が相反していているのは把握してるでしょ。

 絶対に、関係が破綻するに決まっている。

 目先の利に目が眩んでいるのだろうか。

 またもや、不思議である。

 それと、ジルコニアの正座もね。


「冒険者ギルド本部と聖母教会の関係者にはお気をつけてください。ですが、そう生半可な手段でミーア様が害されるとは思いませんけど。念の為にお伝え致しました」


 私の視線に気付いたシェライラが、一拍置いて溜め息を吐き出す。

 ジルコニアの肩が跳ねる。


「では、本題に入らせていただきますわ。ミーア様には、ご迷惑をおかけする事態が生じてしまいましたことを、切に謝罪致します。ジルコニアの主として、至らぬわたくしをお許しくださいませ」


 再び、下げられる頭。

 てか、本題は私を探すギルドや聖母教会ではなかったんかいな。


「昨日、判明したのですが。わたくしが師と仰ぐ錬金術師の先達が引退する運びになりまして、同門の弟子達が集まりました。その折りに、ミーア様が女王陛下の相談役に就かれた故の引退だと思われて、ジルコニアが反発致しました。その場で、ミーア様の尊さを高らかに語りました」


 は?

 何をしやがりましたか、ジルコニア。

 身内の集まりに、部外者を出すなっての。

 私は細工師だぞ。

 錬金術師じゃないからね。

 初歩の初歩しかかじってないからね。

 稀少な薬品やら、賢者の石なんてシロモノは作れないから。


「そこで、わたくしを慕う妹弟子と喧嘩に発展してしまいました。普段の妹弟子は、やや高圧的な言動を致しますが、見知らぬ相手を批判することはしません。身内にさえ誤解されているのですが、根は皆を気遣う優しい子なのです。ですが、何かが琴線に触れてしまったのか、ミーア様に関してはやや強気に批判してしまって、ジルコニアと舌戦を交わしておりました。何分にも、頑固な気質もあり、ミーア様の居場所を自身の守護者に命じて、突貫しないとも限りがないと案じていましたら、すでにライザスに来ておりました。今は、領主館の一室にて軟禁しておりますが、妹弟子の守護者はジルコニアに継ぐ位階の精霊です。いつ抜け出すか分かりません」


 うわお。

 貴族の御令嬢らしからぬ行動力に、脱帽するしかないシェライラだった。

 招かざる客人とは彼女のことでしたか。

 それで、反省の意味もあってのジルコニアの正座か。

 ユーリ先輩がいなくなり、私に崇拝の念を向けてきたのか。

 あらら、困ったな。

 どうしたら、いいものかね。


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