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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第一章 新しい未来へ

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045 帰宅しました

「「ただいま」」

「ただいま、戻りました」

「お子様ズ。騒動起こしてないか?」


 陽も暮れて宿泊を求められたが、帰宅した。

 玄関からではなく、リビングの扉から帰宅したのは大目に見てくださいな。


「「マスター、お帰りなさい」」

「……お帰りなさい」


 お子様ズとロイド君とエメリーちゃんは、ケットシーのララとリリも含めてボードゲームに夢中になっていた。

 退屈しのぎに渡していたボードゲームは、私が暇を持て余して作製した品物である。

 リアルの人生ゲームを真似したゲーム内容にしてあるので、ロイド君とエメリーちゃんでも理解して遊べるようになっている。

 熱中したやり取りが、扉を開けたら聞こえてきたけど、お子様ズはゲームを放り出して私に飛び付いてきた。

 ジャンプして胸元に抱きつくエスカ。

 両脇に抱きつくユリスとセレナ。

 短い時間だったにも関わらず、甘える素振りを見せるのは寂しかったからかな。

 お子様ズの熱烈な甘えを見て、ロイド君とエメリーちゃんもお父さんのナイルさんの側によっていく。


「おかえり、お父ちゃん」

「父ちゃん、お帰りなさい」

「ただいま。途中で帰らせて悪かったね。だけど、お留守番してくれてありがとうな。ララもリリも、ロイドとエメリーがいなくて、寂しかっただろう」

「大丈夫にゃ。アンジーさんに、お裁縫を習ったにゃ」

「うちは、クリスさんに美味しいお茶の淹れ方習ったにゃ。淹れてあげるにゃ」

「なら、ミーアさんの分も頼めるかな」

「任せてにゃ」


 お茶を淹れるワゴンは高さがあるから、リリには背が届かないのではないかなと思っていたら

 疑問はすぐに、解消された。

 ワゴンの横に、ケットシー用の高さのテーブルが備え付けてあった。

 茶器も扱い易い小型のポットと湯沸し器の魔法具。

 控えていたクリスに見守られて、リリは難なくお茶を淹れてくれた。


「えっと。そちらの、お姉さんはお砂糖幾つにゃ?」

「あ、あのひとつでお願いします」

「分かったにゃ。騎士のお兄さんは、幾つにゃ?」

「自分は、ストレートでお願いいたします」

「はい、にゃ」


 ああ。

 領主代行さんに押し切られて、アンナマリーナさんと護衛の騎士のワイズさんがついてきていた。

 関係を絶たれるのを心配されたのだろう。

 ナイルさんと代行さんの話し合いも拗れた様子らしかった。

 聖剣の所有はナイルさんが了承したものの、領地運営と子供達の教育について噛み合わなかったそうだ。

 そりゃあ、そうだ。

 明日から、貴族の仕来たりを学びましょう。

 家庭教師をつけます。

 騎士の訓練と平行して学んでください。

 まず、こちらの書類にサインをしてください。

 代行さんの補佐から示された書類には、到底納得できない項目がありナイルさんは激怒した。

 無言で代行さんに突き返して、黙読した代行さんも怒り心頭になった。

 内容までは詳しく聴かないでいたけど、どうも補佐さんの勇み足でロイド君とエメリーちゃんを他家に養子に出して、アンナマリーナさんとの子供をアルバレア家の後継者に据える。

 怒るわけだ。

 代行さんは、アンナマリーナさんの内面が男性であるのを、知っている。

 外見は女性であるも、異性を同性と認識しているアンナマリーナさんに、同衾したり子供を宿すのは著しい精神の負担がかかるだけとなる。

 下手したら、精神の病になってもおかしくはない。

 無言で書類を破り捨てた代行さんにより、話し合いは物別れに終わる羽目に。

 元々、代行さんと二人だけの話し合いの筈だったし、第三者の介入はナイルさんや代行さんを侮るやり方だと分からなかったのだろうか。

 ナイルさんが益々不信感を抱くのは仕方がなし。

 名目だけの領主に発展していきそうな流れに、アンナマリーナさんの長兄さんがにこやかな笑顔で掃除を完遂するまで、アンナマリーナさんとアルバレア家の後継者を預かってくれと言い出した。

 こうして、アンナマリーナさんとナイルさんの顔馴染みの騎士さんが、やって来た訳である。


「どうぞにゃ」

「ありがとうございます」

「では、いただきます」


 それぞれ、ソファセットに座り、リリが淹れてくれたお茶で喉を潤す。

 うん。

 及第点だね。

 クリスが、お客様に提供してもよいと判断しただけあるわ。

 アンジーにより、お茶請けの焼き菓子が供される。

 甘いお菓子に、兄妹の表情が綻ぶ。


「兄ちゃん。美味しいね」

「うん。甘いお菓子が食べれるだなんて、ミーア姉ちゃんに感謝だな」

「ミーアお姉ちゃん、ありがとう」

「どう致しまして。これから、毎日美味しい食事とお菓子は出すからね。沢山食べて、遊んで頂戴な」

「姉ちゃん。仕事は? 畑仕事に雇われたんじゃなかったか?」

「あー。現状、まだ手付かずなんだよね。それまでは、遊びながら、ぼちぼちやろうか」

「……細工師の摩訶不思議農園が、ここでも出来上がる」


 子供むけの農具が発注し損ねているし。

 苗や種も仕入れてないし。

 仕事に張り切るロイド君には悪いけど、準備不足で始めれないんだよね。

 後、アンナマリーナさん。

 眉をしかめて言うなっての。

 皆が不思議がっているではないか。


「まかふしぎ農園?」

「おかしな農園ってことかな」


 エメリーちゃんの疑問にお兄ちゃんらしく、ロイド君が教えてあげている。

 でも、視線は発言したアンナマリーナさんに向けられている。

 きっと、上等な服を着たお姉さんがいるのも、疑問に感じているのだろう。

 さりげなく、お父さんにすり寄っているのは、離されると予感めいた察知をしているからかな。


「ごめんなさい。摩訶不思議農園と言ったのは、細工師じゃなかった、ミーアさんの農園が季節感を無視した作物を実らせるからなの。真冬に春夏の作物が実ったり、かと思えば常春の気候のなかで、寒冷地にしか咲かない稀少な薬の素材になる薬草花を実らせたりしてね、驚かせるばかりだったの」


 季節感無しで作物を育てていたのは、大精霊がいたから出来た手段である。

 まあ、一種の聖域になってしまっていたのだ。

 六柱も大精霊がいたら、農園が常春の聖域になっていた。

 当時は、私も驚いたさ。

 ゲーム内の畑仕事は、大地を耕して種を蒔いたら作物が収穫できる簡単仕様ではなく、ちゃんと肥料を蒔き、適量の水をあげないとすぐに枯れる。

 リアル農家でないと、収穫できない鬼仕様だった。

 だからか、随分と運営にクレームがあげられていたもんだ。

 オブジェクトも鬼畜仕様だったなぁ。

 森の木々を伐採したら、復活はしない。

 薬草も根刮ぎ採取したら、復活はしない。

 住人(NPC)が管理する野山をプレイヤーが荒らしまくり、プレイヤーが出入り禁止になった村や町が増えていった。

 その代わり、魔物は過剰にポップアッブするので、退治依頼は常時発生していて、挽回するプレイヤーのおかげもあり、住人の好感度は最低値を下回ることはなかった。

 私も好感度上げにと、収穫した作物を露店販売したよ。

 稀少な薬草を薬師ギルドにも卸した。

 本業は細工師だったから、住人側にも驚かれていたのはご愛敬。

 何でか、真冬に春夏の作物を納品しようとの指名依頼が発注されたのには、クエスチョンマークを出したくなった。

 大地の大精霊のレオンに地熱を上げて貰い、樹木の大精霊のエスカに寒さに強い作物の種を交配させていた実験中だったのだけど。

 統括AIにはお見通しだったようで、私の農園が聖域になっていたのも教えてくれた。

 まさか、取上げられるかと思ったら、農園頑張ってくださいねと応援されたのは吃驚した。

 統括AIは、何かしらの頑張りを見せているプレイヤーを快く思っていたらしい。

 贔屓ではなく、ただ見守るだけで、偶に無茶な依頼を発生してくれたけどね。


「それは、無理でしょ。遊技場の支援がない現在では、季節感無しでの作物は作れないって。地道に周辺の農家と合わせた作物を作るよ」

「えー。エスカ、沢山種を交配させたのに。残念」

「ユリスも、美味しいお水を出せるようになったのにぃ」

「……セレナは、冷やすしか出来ない」


 若干、セレナが肩を落とす。

 いやいや、作物を成長させる手段で冷たい水をあげたりするんだよ。

 セレナは協力できるんだよ。

 宥めていたら、次にアンナマリーナさんが溜め息をはきだした。


「大精霊クラスの守護者を、農園で活用するとか。有り得ないのだけど。普通は、国の防衛とか、魔物の討伐とかで活躍させるのだけど」

「適材適所?」

「何処が。逆に宝の持ち腐れでしょうが」

「うちの子達に、やりたくない仕事はさせないよ。興味を持ってやりたい事をさせるのが、うちの信条だし」

「うわぁ。勿体無い、凄く勿体無いのだけど。下手したら、一国を攻め落とせる戦力を保有しているだけに、のんびりされている方が国の為なのだろうか?」


 アンナマリーナさん的には、農園で燻らせる人材(守護者)ではないとは理解しているも、主が主だけに一国を征服する気すらない昼行灯具合いに葛藤している模様。

 統治とか面倒臭いだけじゃん。

 他人をかしずかせて善きに計らえとか、無理無理。

 魑魅魍魎跋扈する政治の世界には入りません。

 他人の腹の探り合いするよか、鍬持って畑を耕している方がまし。


「ミーアお姉ちゃんは魔法を使えるから、冬でもお芋とか育てられるの?」


 ん?

 エメリーちゃんは、まだ疑問に感じているようである。

 お芋限定なのは、お芋ばかり作ってきているからかな。


「以前に農園をしていた場所なら、冬でもお芋はできたかな。でも、私の魔法だけでなく、この子達守護者も力を貸してくれた成果なんだよ」

「そうなんだ。エスカちゃんも、ユリス君も、セレナちゃんも凄いんだねぇ」

「「えへん」」

「……えへん」


 お留守番していた間に、仲良しになったのか。

 エメリーちゃんに誉められて、得意気なお子様ズ。


「エメもがんばって、お仕事手伝うね」

「兄ちゃんも、畑仕事は頑張るな。そうして、ミーア姉ちゃんに恩返ししような」

「うん。父ちゃんを助けてくれた、おんがえし。エメ、がんばる」


 兄妹の心意気は受け取った。

 うんうん。

 子供は元気なのが、よいよい。

 ただし、張り切りすぎて、倒れるのは厳禁だからね。

 早いとこ、農具を発注せねばなるまい。


「あのぅ。ロイド君とエメリーちゃんは、アルバレア家に迎えられるのですが。畑仕事はさせてもいいのでしょうか」


 騎士ワイズさんがぽつりと発言した。

 あっ。

 そういや、そうじゃんか。

 ナイルさんはアルバレア家を他事にしても、母親の実家の爵位も受け継いだんだっけ。

 どちらにせよ、ロイド君とエメリーちゃんは貴族になる訳だ。

 一介の農民ではなくなる子達に、畑仕事は駄目かな。

 如何に常識外れな私にでも、悩ましい案件だと思うな。

 注目を浴びて、首を傾げる兄妹は可愛らしかった。


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