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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第一章 新しい未来へ

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040 転生者に会いました

 フォレスト領から来た赤毛の騎士さんに部屋の扉の把手を握らせ、フォレスト領を脳裏に描かせる。

 時空属性の大精霊のフィディルと私の魔力を糧に、裏技を行使した。

 準備が整い、扉を開けさせる。

 そうしたら、扉の向こう側はフォレスト領になる。


「何用か。入室を許可した覚えはない」


 室内には重厚な執務机にて、書類仕事をしていた妙齢の婦人がいた。

 顔を上げずに、退室を促す婦人。

 傍らにいた補佐さんと護衛の騎士が、事態を把握した。

 赤毛の騎士さんに気付き目を丸くして、顔を知らない第三者の私に気付き剣を抜きかけた。

 だけど、ごめんなさいだ。

 話し合いに部外者はいらない。

 補佐さんと護衛の騎士を、時空魔法と聖魔法をダブルに行使して床に転がした。

 重力が倍になり、動きを阻害する拘束をしたのだ。

 慣れていない魔法に呆気なくかかる騎士を、部屋の外にフィディルとレオンが指示を待つことなく放り出す。

 序でに、赤毛の騎士さんも外に出す。

 補佐さんは残しておく。

 別に危害を加える気はないし、襲撃しに来た訳じゃないし。

 補佐がいれば、少しは話もしやすいと思った。


「お前は誰だ。何の用だ。私の首を取りに来た刺客にしては大人数だな」


 明るい金髪を結い上げた婦人が、男性口調で矢継早に質問する。

 取り合えず、敵意がないのを表す為に両手を上げた。

 丸腰を意味するのを汲み取った婦人が、肩の力を抜く。

 しかし、油断をすることなく、優雅な素振りで手首の腕輪に擬装した魔法具を展開した。

 簡易な結界が婦人を包む。

 まあ、此方が本気を出せば、容易く壊せる結界だけど。

 二度言うが、敵対する気はない。

 単に、ナイルさんと兄妹を送り届けただけである。


「刺客じゃないから、安心して。ただ、アルバレア家の後継者を案内しただけだしね」

「何だと?」

「この人が、お探しのマーベル一家。縁があって、保護した。補足すれば、うちの農園にスカウトした人材なんだけど。後から、貴族の後継者だからと、はいそうですかと、取られる訳にはいかないんだよね」


 ありゃ。

 のっけから、喧嘩腰になってしまったがな。

 事実なんだから、いいか。

 ナイルさんを治療した料金を払えとかではなく、純粋に兄妹の行く末が心配だからなんだけど。

 養母になる貴腐人を、品定めしたかったのもある。


「マーベル一家。ナイル=マーベルに、ロイドとエメリーか。ふむ、ご苦労。謝礼金を受け取り、消えろ」

「あは、冗談は止めて。たかが、一貴族が私に指図するな」


 婦人との舌戦が開始した。

 セレナ、冷気の演出をありがとう。

 程よい空気に、居心地が良くなった。


「たかが、貴族ではない小娘が反論するな。黙って従え」

「おあいにく様。貴族にはなるそうだ。まあ、子爵位だから下になるけどさ。あんたに従う気も、敬う気もないわ」

「子爵だとは、大層な作り話だな。小娘は一介の農園主だと、 賢者殿の話だ。誇大妄想も、大概にしておけ。今なら、金はやる。従わぬなら、領主代行の権限で処罰する」

「やれるなら、やってみれば。精霊魔法師の技を持ってして、抵抗してやる」

「……精霊魔法師。傍らの女性は守護者か」

「間違えるな。私の守護者は、六柱だ。女王ちゃんにも、負ける要因はない」


 守護者は、女性体だけではないのを知れ。

 うちの子達は、稀少な男性体もいるんだ。

 まあ、顕現している男性体の守護者は、うちの子達だけだ。

 目を疑うのは仕方がない。

 信じるかどうかは、相手次第だな。


「まさか、就任した相談役か」

「そっ。子爵位がついてきた、ね」


 どうやら、思い至った様子で、婦人が黙りこんだ。

 値踏みする視線を受け止める。

 マーベル一家を完全に視野の外に置いている。

 ナイルさんがハラハラしながら、間に入ろうか悩んでいるのが分かる。

 ロイド君とエメリーちゃんも、眉根を下げてお子様ズにおとなしく守られている。

 婦人が簡易な結界を展開した辺りで、ファティマがマーベル一家を結界で守護している。

 万が一、補佐さんが拘束魔法を振りほどいて、人質に取ろうとしても出来ない。

 安心して舌戦をやれる。


「抜かった。まさか、小娘が相談役とはな。私の言葉に抗う手段があるとは、厄介な小娘だ。マーベル一家を、譲り渡す気はないのだな」

「犬猫の愛玩動物じゃない。人格否定するなら、暴れるよ」

「そうか、口が滑った。済まない、マーベル一家」

「あっ。いえ、お気に為さらずに」


 素直に謝罪する意思は、好感が持てる。

 が、それはそれ。

 意図して、マーベル一家を舌戦に参加させようとするなら、対抗するよ。

 ナイルさんは、しどろもどろで答える。


「初めてお会い致します。ナイル=マーベル。オーギュスト様の代にて、従騎士見習いをしておりました」

「うむ。兄上の遺言状にて、知った。マーベル家は、我が生家アルバレア家の分家として貴族年鑑に登録してある。祖母君の生家も、再興してある。そなたは、紛れもなく二家の後継者。どちらも、名乗るがよい」

「お待ちください。祖父がアルバレア家の血筋であるのは真実なのでしょうか。そして、自分がアルバレア家の魔法適性を保有している。急なお話に、ついてはいけません」

「アルバレア家の家宝の剣は、受け取ったか? あれには、精霊が宿る。精霊との盟約により、代々後継者を選定していた。後継者以外が所持すると、たちまち命が喪われる。事実、兄の息子は命を落とした」

「オーガスタ様が亡くなられた。不正を行っていたと、聞きました」

「捏造された書類が発見されている。兄は馬鹿をやらかした息子を見限り、態と家宝の剣を盗ませた。ナイル殿が後継者となり、アルバレア家を継ぐ後顧の憂いを晴らした。その意を汲んではくれまいか」


 ナイルさんと婦人の会話には、口を挟まないですよ。

 ナイルさんが納得しないと、先には進まない。

 後継者になるも、ロイド君に先送りするも、ナイルさん次第になる。

 だけどさ、自己主張激しい聖剣は、ナイルさんが躊躇えば躊躇う程に、標的をエメリーちゃんに代えそうなんだよなぁ。

 先天的にエメリーちゃんの方が、現在はロイド君よりも高い適性がある。

 伸び代は、ロイド君に軍配があがるけど。

 だから、私としてはナイルさんが後継者にたち、ロイド君の成長を待つのがベストだと思う。

 悩ましいなぁ。


(マスター。部屋の外にて、婦人の身内と思わしき気配があります)

(あー。別に、入室禁止にしてないよね)

(はいであり、いいえです。人払いは展開しておりますが、鍵はかけておりません)


 フィディルからの念話で、邪魔が入らない訳を知った。

 追い出した護衛の騎士が、通りで騒がない訳だ。

 人払いの効果で、排除する意思を阻害していたんだ。

 で、身内なら入室出来るようにしていた、と。

 私が貴腐人に興味を持ったから、身内は阻害していない。

 思案していたら、部屋に若い男性と女性が入ってきた。

 男性の険を孕んだ気配に、フィディルが警戒した。

 威圧をして、男性を黙らせる。

 女性はと言うと、いきなり男性が喋る荒ぶった口調で責められた。


「てめえ、似非細工師。どっから、湧いてきやがった。まさか、フォレスト領をご自慢の細工罠の実験場にしやがるのか。させないからな。ぜってぇに、阻止してやる」


 は?

 私を知っているセリフに、鑑定が仕事をした。


【アンナマリーナ=ウィンチェスタ】

 ウィンチェスタ家長女。

 実態は、転生者。

 クラン〔仲良しこよし〕所属。

 名前、わらび餅。

 外道魔導師の被害者。


 あー。

 覚えがある名前が出てきた。

 オンラインゲームの、同盟クランの人だ。

 てか、外道魔導師とは、ダレンを巻き込んで被害者から加害者へと変貌させた原因の奴か。

 何か、勘違いしているが、悪い人ではなかったと記憶している。

 ここは、友好モードで対応しますか。


「ははは。ビーエルとか言うから、貴腐人かと思ったら。何と、クラン〔仲良しこよし〕のわらび餅さんか。奇遇だね」


 笑って見せたら、短剣抜かれた。

 解せぬ。

 一歩踏み出されて、近付いてきた。

 頭に血が昇っているが、母親に似て派手な容姿な美人さんだ。

 見たところ、武芸に邁進している足さばきで、短剣を繰り出してくる。


「うわっ」

「アンナマリーナ。妹に何をする」


 短剣が届く前に、フィディルが足払いして転がす。

 自損事故は見かねたのか、短剣は転がる寸前に回収していた。

 お兄さんが止めを刺されると思い、わらび餅さんを庇う。

 フィディルは後退する。

 肝心なわらび餅さんは、お兄さんが庇うのを理解したら、不思議そうにしていた。

 ん?

 兄が妹を庇うのは、当たり前ではないのか?

 動きを止めたわらび餅さんをお兄さんは私達から離し、立ち上がっていた婦人の元に運ぶ。

 んで、威嚇してきた。


「貴様が、女王陛下に取り入った相談役か。今度は母上に取り入り、妹が危惧した実験場にする気でいるのか」

「違います。ミーアさんは、自分をフォレスト領に導いてくださっただけです。実験場にするなら、ご自身の土地でなさるだけです」

「母上、此方の男性が。マーベル殿でしょうか」

「そうであるらしい。肖像画でしか知らぬが、父の正妻になる筈であった女性の色を纏う。面影も、兄に通じる。兄によれば、兄と異父兄は似通った容姿をしている。ただし、異父兄は認識阻害の魔法を常時発動して、そう思わせないようにしていたそうだがな」

「ならば、家宝の聖剣を示して見せろ。出来ないならば、騙りと判断する」

「構いません。恩あるアルバレア家を見放すのは気が引けますが。命の恩人を見捨ててまで、固執する気はありません。お返し致します」


 義理高い精神なナイルさんは魔法鞄(マジックバッグ)ごと、聖剣を手放した。

 あかん。

 悪手だ。

 お兄さんが確認の為に、魔法鞄から聖剣入りの箱を取り出して蓋を開けた。

 捨てられるのを嫌がる聖剣は、一直線にエメリーちゃんを狙った。


「なっ⁉ 子供?」

「エメリー‼」


 鞘付きであるから、エメリーちゃんが怪我をすることはない。

 しかし、速さが出ている聖剣が当たり、打撲しないとは限らない。

 ファティマの結界を感じられないロイド君が、咄嗟に両手を広げて受け止めた。


「ロイド! 怪我をしてないか?」

「うん、父ちゃん。大丈夫。触った瞬間に、勢いが無くなった」

「兄ちゃん。怖かった~。ありがとう」


 ナイルさんは、子供達の身に怪我がないのに安堵している。

 対して、アルバレア家側は、放心状態だ。

 ナイルさんが後継者とは分かっていても、ロイド君とエメリーちゃんの適性を疑っていたな。

 聖剣はロイド君の手の中で、ピカピカ光り自己主張中。

 雷が舞うも、兄妹に通じていない。

 それは、兄妹も主になれると、聖剣が主張しているからに他ならない。

 あちらは、ナイルさんが後継者を降りたら、後継者が不在になり、自分達が所有者になれる。

 もしくは、聖剣が自分達を選ばざるを得ないと踏んでいたのかも。

 ご愁傷様。




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