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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第一章 新しい未来へ

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038 腐の気配がしました

 ただいま、聖剣が自己主張中である。

 早く手に取れと言わんばかりに、光り輝いていた。

 捧げ持つ赤毛の騎士さんが、地味に目を痛めている。

 バチバチとは相性が悪いユリスとセレナが、威嚇しかけている。

 時間が開くごとに、危険が増していく。

 しょうがない、手助けするかな。


「ナイルさん。それ、受け取らないとエメリーちゃんに害が及ぶよ」

「はい? エメリーにですか?」

「そう。ナイルさんの次に、適性が高いのはエメリーちゃん。ロイド君はエメリーちゃんほどに適性が高くないから、業を煮やした聖剣がエメリーちゃんに突撃しないとは限らない」


 いっこうに受け取らないナイルさんを見限り、無垢なエメリーちゃんに狙いを定めない保証がないからさ。

 女王国であるので、女性差別は表だってないと思うから、女性騎士がいなくはないでしょ。

 現に、女王ちゃんの傍らに武装した女性がいた。

 守護者のエルシフォーネがいるとはいえ、護衛の騎士がいないのは体面が悪すぎる。

 国の防衛を守護者が担うには、負担があるからね。

 精霊だって休息は必要。

 四六時中、監視なんてやってられない。


「しかし、子爵位は理解できます。母の生家が子爵でしたから。ですが、自分が侯爵家の継嗣になど、問題があると思います」

「それなのだが、ナイル殿はアルバレア侯爵家の相続権を有している。何故ならば、父君は前アルバレア侯爵の異母兄であるからな。庶子であるが認知はされており、王国法に基づき相続権が発生している。父君が亡くなられたので、その相続権はナイル殿に移行した。ご子息、ご令嬢共に侯爵家の系譜に載せられた」

「そしてだな、アルバレア侯爵家を継承するに相応しい魔法適性を有しているのはナイルだけだと判明している。代行領主のオレニア様は適性が無く、お子様方は嫁がれた家の継承者。また、アルバレア侯爵家の適性が無い。ナイルが継承しなければ、ナイルの子供はいや応なしに継承しないとならなくなる」


 ある意味、自由な未来を望めない。

 継承者を求められる婚姻を強要されて、なりたくもない爵位を継ぐ羽目になる。

 親兄妹と引き離されて適切な教育を施され、中継ぎの役割を押し付けられる。

 継承者が成長すると、何らかの事情で病死と発表されかねない。

 ここでも、阿呆な先輩の置き土産が残されていた。

 ナイルさんが継承すると、ロイド君とエメリーちゃんは継承者候補筆頭になるが、法により人権は守られる。

 意思確認がない強要は、逆に非難されるそうな。

 私は知らなかったが、貴族には身分無き才を持つ者の庇護と教育を施す義務がある。

 ばか高いお金を消費して平民の子供に、学園に通わせてあげるんだとか。

 青田買いか。

 それとも、ノブレスオブリージュだっけ。

 確か、そんなのが地球でもあったな。


「父が、侯爵家の人間とは知らなかった。だから、オーギュスト様は目をかけてくださったのか」

「それもあったのだろうが。一番の問題は、アルバレア侯爵家が固有する魔法適性は一代に一人か二人が継承される。ナイルの代には、ナイルしかいない。だから、済まない。おれは、何としてもナイルかお子さんを、連れて帰らないとならない」

「宰相閣下も、アルバレア侯爵家が絶えるのは危惧しておられた。理由は、察せられるだろう」

「はい、英雄の家系ですね」

「そうだ。アルバレア侯爵家の魔法適性は、雷。希少な魔法適性故に、強大な能力が秘められている。アルバレア侯爵家の威光により、南方の諸国とは戦知らずでいられる。女王国が要らぬ戦を仕掛けられないのは、アルバレア侯爵家のおかげでもある。だが、オーギュスト殿とオーガスタ殿の訃報に、焦臭い動きを見せる国がある」

「南、ロンバルディア王国」

「そう。我が国とは国交がない獣王が治める実力主義の王国。精霊信仰が厚い女王国を軟弱と断ずる国だ」


 うわぁ。

 厨二臭い設定が出てきた。

 赤毛の騎士さんが輝く聖剣に耐えきれず、聖剣を箱に納めて魔法鞄(マジックバッグ)に仕舞う。

 漸く、バチバチが無くなり、ユリスとセレナの緊張感が霧散した。

 魔法鞄をナイルさんに手渡す。

 ナイルさんは子供達に害が及ぶと聞いたからか、素直に受け取った。

 魔法鞄に仕舞われてなお、自己主張していた聖剣がおとなしくなった。

 あれ、聖剣の体をなしているけど。

 しっかり、精霊が宿っているんだな。

 エメリーちゃんに引き継がれたりしたら、聖剣の殻を破り守護者に転化するとみた。

 そうしたら、エメリーちゃんが戦に駆り出されるのだろうな。

 いや、ロイド君が引き継いでも、争いの場に出ないとならないけど。

 今現在は、エメリーちゃんが適性が高いが、成長して腕を磨けばロイド君に軍配が上がるかな。


「バーシー嬢。そうした事情になるので、マーベル一家を農場に雇用するのは諦めて貰いたい」


 だよねぇ。

 侯爵家を継ぐ一家を、農民に留めておく訳にはいかない。

 然るべく場所に修まらないと、国も安心できないよね。

 南方防衛を任される適任者が現れたのだから、大々的に聖剣を披露して睨みを効かせないとならないだろうし。


「それは、待っていただけますか」

「ナイル?」

「王国法により、自分が侯爵家を継承したら、再婚しなくてはならなくなります。再婚相手は、貴族の家系になります。それでは、ロイドとエメリーはどうなります? 農民の子として産まれ育ち、常識が通じない相手と馴染めますか? 自分が再婚相手に求めるのは、ロイドとエメリーの養母として通じ会える方です。歩み寄りくださる方です。そんな奇特な方がいるでしょうか」


 ナイルさんの不安は分かる。

 農民がいきなり上流の階級に放り込まれたら、右往左往どころではない。

 揚げ足をとり貶める、複雑怪奇な思考の輩と張り合わなくてはならなくなる。

 体調を崩すだけでは、済まなくなるよね。

 清濁併せ呑む腹黒い柔軟な対応を求めるには、ロイド君は真っ直ぐすぎるし、エメリーちゃんは無垢すぎる。

 多分、貴族の教育をそれとなく施されている様に感じるも、太刀打ちできる場面に遭遇してはない。

 庇い、間違いを正す養母が必要な訳だ。

 ナイルさんが指摘するのは、侯爵家の妻である部分ではなく、次代を継承するかもしれない子供達と向き合ってくれる養母となれる女性。

 平民育ち、ましてや農民として生きてきた兄妹をさげすまない女性。

 貴族の思考も大事だけど、環境の変化を受入れ易い状況を造ってくれる女性。

 かなり、要求は難しいのではないかな。


「ナイルの心配は尤もだ。だがな、オレニア様が万事解決してくださった。というかだな、オレニア様のご息女がだな。大変、貴族らしからぬ思考の持ち主で、結婚を忌避しておられてだな。何でも、びーえる? ではないから、男性と同衾するのが無理だと仰っていてだな。ナイルに子供がいるなら、お飾りの妻でいられる。侯爵家の跡取りとして遇するから、是非にお子様方をむかえたいと言われている」


 思わず、お茶を噴きそうになった。

 びーえるとは、この世界に相応しい単語じゃないでしょ。

 立派な腐女子の専門用語だよ。

 あれ?

 私以外にも、転生者がいたりする?

 まさか、あれな神と魔導師の犠牲になったプレイヤーが、生まれ変わってたりする?

 人外さん。

 相談案件が出てきたのだけど。

 ヘルプ、ミー。


「あまりにも、自分に有利な条件ですが……」

「ウィンチェスト令嬢、アンナマリーナ嬢なら言いそうなことである。彼女の男性嫌いは社交界でも有名な話だ。彼女は治療師として独り立ちしておられるから、ウィンチェスト卿は婚姻を諦めておられる。ナイル殿の境遇に、率先して名乗りをあげられ、驚いておられた」

「なら、実際に会ってみてもいいんじゃない? アンジー、兄妹を呼んできてちょうだい」

「畏まりました」


 気になるなら、会ってみてよし。

 幸い、移動には困らない。

 私はフォレスタ領を把握してないが、フィディルと赤毛の騎士さんがいる。

 おまけに、我が家にはブラウニーがいて、裏技を使用出来る。

 乗り込んでやれ。


「バーシー嬢。今から出発しても、フォレスタ領には何日もかかる。準備不足で、移動には向かない」

「騎士ワイズ。バーシー嬢に、距離は問題がない。機密事項になるが、転移魔法を使用される」

「王城で披露された魔法だな」


 シェライラの護衛騎士さんには、披露してあったな。

 転移魔法は、個人では使用されない遺失魔法だっけ。

 過去の時代の大掛かりな設備を起動して、国家間の要人しか移動許可が出ないと聞いた。

 それも、戦略に使用されない為に、王城がある都市にはなくて、管理が厳しい砦に配置してあるそうな。

 密かに転移してこようモノなら、砦ごと廃棄してしまう仕掛けがある。

 それだけ、他国を警戒してやまない事情がある。

 周辺諸国にとれば、精霊信仰が厚く、仲も良好な女王国。

 ひと度、戦渦に落とそうとすれば、手酷い反撃を噛ましてくる。

 属性精霊の長たる大精霊が守護する女王国に、敵対者の精霊は支援が出来ない。

 出来ても、威力は激減する。

 対して、女王国の大精霊は後追いはしないまでも、容赦なく力を奮う。

 二度と敵対しない様に、心を折ってくる。

 こうして、女王国は守られてきた。

 また、騎士も安穏と精霊に守られているばかりではいられない。

 害獣の魔物を狩り、民人の安全に考慮している。

 まあ、強者の国と比べたら、軟弱と言われているのだろうが。

 それでも、鍛練は怠りはしてない。

 屋内で気配を察知しづらいブラウニーの挙動に、敏感に身体が動いていた。

 背後に佇む騎士さんなんか、剣を抜きかけていたしね。

 彼等の誇りに誓って、軟弱とは言われないだろう。

 精霊ありきの女王国だけど、守護するのは精霊だけではない。

 騎士や兵士の皆さんは、立派な国の防衛の担い手である。

 守護者が六柱もいる小娘が、宣うのは変であるが。


「転移魔法ですか。ライザスの領主館では、見事な治療の魔法を行使なされたと聞いています。驚きの連続です」

「それも、機密事項です。他言は禁止です」

「承知しています。ナイルの恩人は、アルバレア侯爵家の恩人でもあります。秘密は守ります」


 騎士さん達のやり取りに、私の偶像がとんでもなく高い位置に置かれている気がしないかな。

 実際は、単なる小娘なんだけど。

 少しばかり、特殊な生い立ちと言い換える環境で育っただけである。

 自衛隊の父親にサバイバル技術と、両親の実家の農場と牧場で知識を得た小娘ですわ。

 加えてゲームで培った能力を手に入れた、オタク気質な巻き込まれ召喚者です。

 何て、声高に言えんがな。

 取り敢えず、膝の上のエスカと両脇のユリスとセレナを愛でていよう。

 私を賛美する騎士さんを放置して思った。

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