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035 鴨がネギ背負ってきました

 ブラウニー達が作った朝食を食べた。

 今は、まったりお茶を嗜んでいる。

 魔法適性の話をしたら、ナイルさんが固まったが気にしないでおく。

 少し考えたら分かるのだけどなぁ。

 ナイルさんの母親が守護者持ちだったのだから、魔法適性遺伝されてるのだし。

 年代を鑑みて、ナイルさんが魔法適性がないと思い込まされていたのは、強欲シスターは関わっていないはず。

 そうすると、従騎士の修行時代か、ナイルさんが魔法適性持ちなのを知らせたくない事情があったからか。

 どちらだろう。


「父ちゃん、大丈夫か?」

「お父ちゃん。まほーてきせいって、なに?」

「あ、ああ。魔法適性は、魔法を使うのに必要な能力のことだよ。魔法適性がないと、魔法は使えないんだ」

「でも、姉ちゃんは、俺やエメリーや父ちゃんに有るって言ってるけど」

「うん。父さんは従騎士の修行をする時に、魔法適性がないと宣告されたし。ロイドやエメリーが五歳で聖母教会の祝福を受けに行った折りに、魔法適性を調べて貰ったんだけどね」


 ほうほう。

 聖母教会の祝福とやらは、庶民でも無償で受けに行けるそうな。

 女王国は国教はなく、大精霊が集う国でもあるから、精霊信仰が盛んである。

 女児なら精霊との相性によって、高位な精霊と契約して守護者が得られるかもしれない。

 庶民でも守護者が得られたら、よりよい縁談に恵まれるか、貴族の後見を受けて錬金術師を目指してもいい。

 男児なら官吏か、魔法騎士となれる。

 魔法騎士は、一般の騎士よりも位は上。

 立身出世を夢見る庶民は、挙って子供に受けさせる。

 初代錬金女王が、広めた制度らしい。


『ぶちまけると。国を興した当時は人材不足で、庶民でも守護者を得られたら貴族位を叙爵して、国の体面を取り繕ったのです』


 フィディルによると、基本となる案をユーリ先輩が出して、優秀な補佐役が寝る間を惜しんで肉付けした制度である。

 それで、称賛されるのは女王様である、と。

 補佐役さん、できた人柄だね。

 一度拗れると粘着して他者を貶め、自分本意なことしかしない面倒臭い人を女王に据えたのだから。

 それも、寿命で退位するまでもたせたのだから。

 煽て上手なのか、腹黒い性格していたのだろうか。

 フィディルも内面に触れるほど、親しくはなかった。


「でもにゃ。ミーアさんが言うと、納得できるにゃ」

「ケイティも、ベイルートも魔法適性持ちにゃ。ナイルが受け継いでいないの、おかしいにゃ」

「しかし、五歳の祝福も従騎士時代の調べでも、適性無しだった」


 ナイルさんの言葉に、ララとリリは顔を見合わせた。

 思い当たる節があるのだろう。

 すぐに、頷いて息を吐いた。


「五歳の祝福は、邪魔されたにゃ」

「ケイティが嘆いていたにゃ」

「ナイルが祝福受けれていにゃいって」

「ベイルートが抗議したけど、受けさせるにゃって指示が出ていたにゃ」


 あれか。

 兄妹がいるから詳しくは言えないけど。

 呪詛されている家系だから、精霊と関わらせたくはないとでも判断されたのだろう。

 益々聖母教会が腐敗している証拠だ。

 従騎士時代の調べは、確たる証拠がないから何とも言えないな。

 まあ、悪意があったとしか思えない。


「聖母教会に行ったことは覚えている。その帰りに、珍しいお菓子を食べた記憶もある。なのに、聖母教会で何かをした記憶がないな」

「きっと、ベイルート辺りが他の楽しい記憶にすり替えるほど、嫌なことがあったにゃ」

「ロイドとエメリーの時は、調べの魔法石に触らせたが反応してはなかった」

「うん。シスターが適性無しって言った」

「エメもー」


 その魔法石に細工されていたんじゃないかな。

 無償で使用するのに只のそれらしい石で試して反応しなかったら、有償で精度の高い魔法石を使用してみないか持ちかけていたりして。

 兄妹はどっからみても、お金を持っていなさそうな農民の子供。

 適当な対応してたんだろう。

 阿呆らしい。

 精霊視の熟練度が高ければ、兄妹が精霊に好かれているのが視えていたのに。

 好かれる=魔法適性がある。

 そうした図式を知らない。

 有り得そうで、頭が痛くなる。

 ユーリ先輩の怠慢で教授しなかったか、長年の腐敗で忘れさられたか。

 ひきつった笑いしかない。


「魔法石に関しては、私の知人に聞いてみます。祝福は五歳でしか、受けてはいけない縛りはありますか?」

「いえ。何らかの言動で、精霊と邂逅して友誼を結ぶ可能性があります。ですから、自分も従騎士修行にて、調べてもらいました。しかし、自分は最低の魔力ですら起動する魔法具や魔法剣を、起動することが叶いませんでした。そんな自分に魔法適性があるとは、俄に信じがたいのが現状です」

「成程。恐らく、ナイルさんは魔法適性にあった魔法具や魔法剣に、触れてはいないのでしょう。生憎と、手持ちに適性にあった魔法具を所持していないので、実践していただくことができません。そちらも、知人に聞いてみます」


 知人って言っても、限られてくるけどね。

 こちとら、新人生数日だ。

 大した人数と交流はしてない。

 なので、シェライラに丸投げしてみよう。

 彼女の身辺警護の騎士に、ナイルさんと同様の魔法適性持ちがいた。

 所持していた魔法剣も、適していたし。

 騎士が命を預ける武器を、簡単に貸してくれるかは分からないけど。

 まあ、駄目元で聞いてみよう。


「お父ちゃん。エメ、まほー使えないの?」


 魔法に興味を持ったエメリーちゃんが、がっかりしている。

 いやいや。

 魔法使えるから。

 魔法適性、ばっちりあるから。

 悔しそうに、眉を顰めないでくれるかな。


「ミーアさんが言うと、エメリーは魔法使えるようになるそうだよ」

「やったぁ」

「でもな、エメリー。魔法を使えるようになるには、沢山の事柄を学ばないとならないんだ。それに、お金も随分とかかる。お父さん、費用を用意できるか、分からないな」


 あら。

 明け透けに打ち明けるんだ。

 私が基礎を教えたとしても我流になる。

 エメリーちゃんが正式に学んだ魔法師から、批難されて迫害されたらいけないよね。

 数の暴力でこられたりしたら、高位の精霊と契約しても対処が出来ない恐れがある。

 私がでばって力業で対処したら、エメリーちゃんの成長を阻害する。

 難しいところだ。

 費用を支援するのは簡単。

 ナイルさんは熟考して受けとるだろう。

 エメリーちゃんの為にね。

 でもさ、結局は借金になるわけだ。

 一人前の魔法師になるには、どれ位の費用が必要か知れないけども。

 かなり、高額になると予想する。

 ナイルさんの人生を、我が農園で潰していいのか。

 下手したら、ロイド君の人生もかかるかもだ。

 おいそれと、言えんわ。

 なまじか、親子の能力があるのが問題となった。

 年齢的にナイルさんはきつそうだが、ロイド君は上級魔法を駆使する魔法騎士になれる。

 エメリーちゃんは未知数で、精霊魔法師にも錬金術師にもなれる素地がある。

 伸ばしてあげたいんだよ。

 何だか、むずむずしてきた。


「マスター。外にお客さん」

「ん? 新規のお客さんかな」

「んー。鴨がネギしょってきた? てきな、お客さんかな」


 言外に、ランカの土地でのさばっていた元住民達が、また大挙してやってきたかと聞いた。

 レオンはたまに、直感で答える癖がある。

 大地の大精霊だからか、おおらかで大雑把。

 その割りに、拘りがあるのを見せる時もあった。


「いつものあれは、客じゃない。ただの、騒音。だけど、お客さんはマスターの悩みを解消してくれる」

「レオ兄の言う通り。お客さん、バチバチ持ってるよ」

「ユリス、バチバチ嫌い」

「……セレナも、嫌い」


 ふむ。

 となれば、鴨ネギさんだね。

 如何にして、バチバチを利用させてくれるか。

 考えねば、ならぬ。


「今、着いた。門前で、騒音と接触した」

「はいな。ならば、出迎えましょう。あっ、ナイルさん達は出なくていいですよ」

「分かりました。待機しています」

「一階の設備は自由に使用して構いません。ただし、ブラウニーの注意はよく聞いてください」

「なんでー?」

「こら、エメリー。静かにしなさい」

「構わないですよ。エメリーちゃんは、お家が汚されたり壊されたりしたら、どう思うかな」

「うーんと、悲しい。あっ、わかった。お家がなくなるの、いやだもんね」


 にこにこ笑顔で、回答を導き出す。

 うん。

 年の割りには、聡明だ。

 学ぶ意欲があれば、エメリーちゃんは真っ直ぐに育っていく。

 純真無垢な好奇心を、上手く昇華させてあげたくなった。

 その為には、ナイルさんを騎士に抜擢させてみよう。

 やること、増えた。

 機嫌が良くなってきたぞ。

 よし。

 今日は騒がしい外野に対して、鉄槌は勘弁してみるかな。

 玄関に向かって歩きながら、鼻歌歌ってみたり。


「マスター、ご機嫌だね」

「マスター、お歌だね」

「……調子外れた」


 げふん。

 お子様ズ。

 どうせ、音痴ですよ。

 いいじゃないか。

 気心しれた君達しか、聞いてない。

 目を瞑ってくれまいか。


「エララに、歌うな言われてた覚えが」

「あの方は、音楽を嗜まれていましたからね」

「音楽のこととなると、含蓄が喧しい人でもあったね」


 監督役プラス大人組。

 追撃は許してください。

 リアルで音大生だとばらしたクランメンバーを、担ぎたさなくたってもいいじゃないか。

 たまには、羽目を外しても悪くはないと思います。

 皆さん、どうでしょうか。

 なんて、コントやっている間に外に出た。

 玄関を出た右手方向に、黒鋼製の鉄柵が途切れた門がある。

 大体、バス一台分が通れる幅の門が閉じられたままなのは、招かざる客を入れない為だ。

 鉄柵を乗り越えようとした強者がいたらしいが、侵入禁止の結界が敷かれているから、成功者はなし。

 魔力供給を怠らない限り、ほぼメンテナンスフリーで稼働するようだ。

 けれども、誓約魔法を込めたのがユーリ先輩だから、どんな裏があるか検証されてない。

 まあ、誓約魔法に細工するのは、細工師の私しか利用方法しらないから、ユーリ先輩には出来ない芸当だけどさ。

 あの人が関係する事柄は、物であれ者であれ何事も疑いを持つのが、身の安全を計る経験談。

 とりあえず、二年間は平穏そうなので、誓約魔法の分解、再構築は止めておく。

 想定外の案件がおきたら、その限りではないけども。

 真っ昼間や夜間の押込み強盗は、農園予定地には侵入できたとして、ブラウニーや我が守護者達にかかれば、怖い敵ではなし。

 むしろ、相手に同情するわ。

 マイハウスを狙うプレイヤーを、数々の悪戯や半分本気なお仕置で撃退してきた我が守護者達。

 安眠妨害しない範囲で、撃退してくださいな。

 寝不足は美容の敵。

 あっ。

 やること、もう一個増えた。

 お肌にあう、化粧水と乳液に日焼け止め造らねば。

 これを自作する為だけに、錬金術かじったんだよね。

 ゲームで、何故化粧水が必要になるのか。

 開発した運営に、問い合わせ殺到した案件があったから。

 魔法薬で体力回復したりするのに、強酸浴びたら痕が残るだなんて、運営は鬼畜だ。

 傷痕は残らない癖して、強酸浴びたら案件が大炎上。

 運営スタッフに、現実で浴びたりした猛者がいるのか、少し疑問が湧いた。

 回答は、統轄AIのみが知るとの噂が蔓延していた。

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