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003 街に着きました

 ライザスへの道すがら、旅人なら武器を持っていないと、と気がついた。

 容姿も変わっているのだよね。

 確認してみたいなぁ。

 旅行鞄に鏡があるのだけど、不用意に出して見咎められたくはない。

 安全地帯に入るまで我慢だ。

 服も制服ではなくて、長袖シャツにノースリーブの膝上丈ワンピース。

 七分丈のレギンスにショートブーツ。

 随所に装飾が施されたコート。

 動きやすく、肌触りも良い。

 鑑定してみると、耐寒・耐暑・耐水・耐火に優れた逸品だった。

 更に、コートには耐刃防御も付与されている。

 人外さんは、どれだけ私を厚待遇しているのだろう。

 ショルダーバッグを触ると、アイテム一覧がポップアップする。

 着替えが下着もあわせて数着、旅行鞄に入っているのもプラスしたら、七日分。

 タオル数枚。

 携帯食が二十日分。

 水筒が二つ。

 乾燥果物と、新鮮な果物。

 日本と変わらない野菜に穀物。

 携帯コンロにまな板と包丁、フライパンに鍋。

 ケトルもある。

 調味料と(おぼ)しき、砂糖に塩。

 残念ながら、醤油と味噌はなかった。

 本当に残念。

 日本人なら、この二つの調味料はなくてはならない。

 街で探そう。

 でも、何故かカレー粉は入っていた。

 解せない。

 後は、石鹸が二種類。

 ボディ用と洗髪用だ。

 髪の毛にあうのか、使ってみないと分からないけど、これは純粋に嬉しい。

 身の回りの雑貨はあれど、夜営用のテントが見当たらない。

 これは、街で買い物をしろとの仰せかな。

 どのみち、この世界の常識を学ばないといけない。

 実践あるのみだ。

 買い物が先か、聖母教会が先か。

 どちらかに、絞ろう。

 そうそう。

 お金も確認しないとね。

 一覧の最下部に、金額が記されていた。

 なになに。

 えっ?

 鉄 貨50枚

 銅 貨50枚

 銀 貨50枚

 金 貨20枚

 大金貨20枚

 白金貨10枚

 〆て、12、255、500セリン。

 日本円に換算すると、122,555,000円。

 一億二千二百五十五万五千円也。

 人外さあん。

 多すぎ、多すぎだから。

 こんな大金、持ち歩くの怖いです。

 物価指数がどれぐらいかしらないけど、絶対に未成年に渡していい金額じゃない。

 可愛らしい女の子向けの、花柄巾着に入っていた金額は、強盗に狙われる程に高額だと思う。

 あかんやろーう。

 冷めている私でも、震えがきた。

 街に着いたら、銀行を探そう。

 なかったら、ギルドで貯金だ。

 花柄巾着は、ショルダーバッグの奥底に隠した。

 ショルダーバッグは、謎空間でした。

 開けてみたら、旅行鞄から大きながま口財布を取り出して、中味を確認した。

 日本のお金が入っている筈なのに、勝手に換金されていた。

 銀貨3枚と銅貨5枚と鉄貨7枚。

 3570セリン。

 1円から10円は切り捨ててある。

 うん、早いとこ街に行こう。

 治安がどうなっているかも、知らない。

 女の子の独り旅は、厄介な相手に狙われるやすい。

 気を引き締めておかないと。

 そう、武器を具現化しておかないとね。

 日用雑貨に目が眩んでいた。

 アイテム一覧をスクロールしていくと、武器の項目にいきあたった。

 私がゲームで専ら使用していたのは、薙刀である。

 次いで、小太刀。

 人外さんは、ゲームを参考にしたと言っていた。

 案の定、2種類の武器を見つけた。

 薙刀は目立つから、小太刀を具現化する。

 鑑定すると、銘は白雪。

 等級は伝説級(レジェンダリ)とある。

 等級とは品質のことであり、性能は等級が上がる毎に壊れにくく、付加価値がつく。

 一般級がコモン。

 稀少級がレア。

 秘宝級がアーティファクト。

 伝説級がレジェンダリ。

 幻想級がファンタズマ。

 神話級がミソロジー。

 創世級がジェネシス。

 と、分けられる。

 私の白雪は、伝説級。

 敏捷アップと、筋力アップが付与されている。


「白雪。これから、長い付き合いになるけど、宜しくね」


 鞘に収まったままの白雪を撫でる。


 リィン。


 鈴がなる音がした。

 返事をしてくれたのかな。

 少し、嬉しい。

 左脇のベルトに白雪を挟む。

 不格好にみえるが、気にしないでおく。

 さて、歩く速度を速めた。

 遠くに街の外壁が見えてきていた。

 人外さんが、私に合う国を選んで送り出してくれた街である。

 門を潜った先の街並みは、どんな塩梅かな。

 文明基準も現代に近いといい。

 家電製品がないかわりに、魔法が発達しているのだよね。

 少し、期待が持てそう。

 三十分ぐらい歩いたら、外壁の門前に辿り着いた。

 検問の列の最後尾に並ぶ。

 女の子の独り旅が珍しいのか注目を浴びた。

 兵士にも視線がむけられている。

 何だろう。

 嫌な視線だ。

 値踏みされる視線だ。

 それ以外には順調に検問が終わっていき、私の二つ前の馬車の検問が始まった。


「入場税はひとり銀貨1枚。馬車は一台銀貨5枚だ」

「そんな。一月前は、一台銀貨3枚でした」

「税の値上がりは、ご領主様のご指示だ。逆らうなら、牢屋行きだ」


 高圧的な上から目線。

 嫌いなタイプだ。

 だけど、大人しく我慢している。

 街に入るまでの辛抱だ。

 私には、誰彼構わず救う嗜癖はない。

 只でさえ、異世界に招待された稀なる旅人である。

 目をつけられて、騒動は起こしたくないのが本音。

 馬車の持ち主は、兵士が槍を地面に打ち付ける度に、顔を青褪めていく。

 渋々と、銀貨を出して、門を通って行った。

 次との合図で、前の男性が身分証のプレートを出して、税を払わずに通って行った。

 街の住人だったのかな。


「次は、お前だ。身分証を出せ」


 むかっ。

 いやいや、腹をたてるな。

 無難にやり過ごそう。

 準備していたプレートを兵士に見せた。


「ん? お前は他国の者か。何をしに、ライザスへ来た」

「聖母教会の試練を受ける為です」

「はあ? 試練? 自国の試練を受けれなくなって、錬金女王のお膝下にすがりに来たか。無駄無駄。とっとと、帰れ」


 人外さん。

 犬を追い払うように、手を振られたのだけど。

 罰が落ちるのは、この兵士だよね。

 何だか、無性に言い返してやりたい。


「おい、止めろ。聖母教会を目指す女性の歩む道を止めてはならないんだぞ」

「いいって。どうせ、自国にいられなくなった阿婆擦れだろ。試練を受けるのも箔をつけて、貴族相手の玉の輿狙いだ。どうせ、落ちるさ」


 聞いていて、不愉快なんですが。

 人外さん。

 どうしようか。

 ライザスの街に行けとの指示だったけど、破棄していいかな。

 腸が煮えくり返る寸前なんだわ。

 一発殴りたい心境。

 逮捕、上等。

 喧嘩を売ってきたのは、そちらだ。

 女だからと、甘く見るな。

 こちとら、合気道と空手の有段者だ。

 目にものをみせようではないか。


 スイ。


 猫足立て、不愉快な兵士に詰め寄る。

 まさか、攻撃的になるとは思っていない兵士は、無防備。

 腕を取り、ぶん投げようとして、異変に気付いた。

 一瞬にして、不愉快な兵士が石化した。

 私、まだ何もやっていないのだけど。


「あーあ。言わんこっちゃない。神罰が下った。嬢ちゃん。済まなかったな。腹立たしいのは、理解している。が、神罰が下ったので、こいつのことは、忘れろ」

「あの。石になってしまった兵士は、ずっとこのままですか?」

「うんにゃ。精神は神の前に引きずり出されて、お説教だ。神のお怒りが解けたら、元に戻るよ」

「はぁ、そうですか」

「また、こいつかよ」


 別の兵士が集まってきた。

 また、とは常習犯だったのだろうか。

 唖然とした私の前から、兵士に抱えられて門の脇に立たされる石像。

 扱いが雑で、微妙に向きが怪しい。

 そんな感じで、いいのかな。


「嬢ちゃん。ちょっと、ごめん」

「あっ、はい」

「取り敢えず、これに触って」


 差し出されたのは水晶玉で、何やら内側が何色かの色に変化していっている。

 鑑定すると、測定器と出た。


「聖母教会を訪ねる女性には、必ず魔力量を測定しないといけないからね」


 フレンドリーな兵士さんが説明してくれる。

 でも、魔力なら身分証のプレートに記載されている筈。

 おかしいな。

 プレートを見てみた。

 あれ?

 名前と種族と年齢と職種しかない。

 何でだろう。

 不思議に思いつつ、水晶玉に触る。


「ほう」


 感嘆の声があがった。

 私が触れた水晶玉は、黄色と橙色と水色が混ざりあった光の波が内部で踊る。

 魔力量を量るついでに、属性も調べられている。

 おい。

 説明して貰おうか。

 剣呑な眼差しを向けてみた。

 フレンドリーな兵士さんは、頬をひきつらせてプレートと水晶玉を交互に見つめている。


「三属性か。魔力量の記載は無し。特に、危険はないな」

「何だ。ハズレかよ。これなら、試練を受けても弾かれるだけか」


 兵士さんの中では、ハズレ扱いされている私だ。

 だけど、本当は六属性なんだよ。

 残りの三属性がでなかったのは、揉め事回避できたから、良しとしよう。

 不特定多数の見知らぬ人に、手の内は晒したくない。

 プレートを返してもらう。

 魔力の項目は、表示不可となっていた。

 だから、魔力無しと判断されたのか。

 それにしても、試練を受けるのに、門番すらも警戒するのは何故だろう。

 人外さんの教えだけど、私の役に立つ情報をくれたのだと思っていた。

 行くの止めようか。

 でもなぁ、初めて会った人外さんには、苛つかされたけど、送られてきた手紙は好印象だったのだよね。

 なるだけ、希望には沿いたいと思っている。


「嬢ちゃん、行っていいぞ。聖母教会は、この道をまっすぐ歩いて、噴水広場にいきあたったら、真っ赤な旗を掲げる役所がある。左手に青い屋根の商店があるから、その前の道を歩いて行け」

「まぁ、誰にでも受ける資格がある試練だ。駄目元でも、お情けで応えてくれるかもな」


 ハナから試練に受かると思っていない、激励にカチンとくる。

 だが、抑え込もう。

 人外さんは、受かると思って教えてくれた。

 こいつらの、鼻を明かすよい機会を逃す私ではない。

 そこまで言われたら、私にも意地がある。

 やってやろうじゃないか。

 必ず、受かってみせよう。

 だから、待っていろ。

 絶対に、見返してみせるから。

 憤慨する気分を持て余し気味ながら、言われた道を歩いていく。


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[気になる点] >銀貨3枚と銅貨5枚と鉄貨7枚。 >357セリン。 この部分なのですが、正しくは3570セリンではないでしょうか? 122,555,000円=12、255、500セリンなので、鉄貨1…
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