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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第一章 新しい未来へ

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028 追及しました

 お喋りに花を咲かしていたら、人払いしていた執務室に騎士のおじ様が入室してきた。

 ジルコニアに耳打ちして、シェライラに。

 内容を聞かされたシェライラが、途端に表情を歪めた。


「お客様なら、席を外すよ」

「いえ。ミーア様も関係者ですから、同席してくださいませ」


 買い物の用事を思い出したので、お暇しようかとしたら、止められた。

 人見知りなグレイスには、精神に負担がかかる。

 ちょうどよく戻ってきたフィディルと、護衛を替わったファティマが家に連れ帰る。

 ロイド兄妹はまだ眠っていて、父親の世話はブラウニー達に任せてきたそうな。

 心配していた森からのお客様は、レオンが話を付けてご帰還をしてもらい、引っ越し挨拶に後程行くとした。

 いや、四つ足の動物とは意思疎通が出来るのは知っていたが、魔物とも出来たのは驚いた。

 私がいない間に身につけたスキルだろうか。

 ただ、相変わらず人の招かざる客は、騒いでいるらしい。

 土地を巡る黒鋼の鉄柵には結界陣が刻まれているので、招待されない人物は一歩も入れなくしてある。

 そちらは、放置しておく。

 こちとら、正規の手段で手に入れた土地だ。

 非難される謂れはなし。

 そして、客間に移動する。

 シェライラは、護衛の騎士を増やした。

 ジルコニアが警戒を顕に、シェライラの全身に風を纏わせる。

 ふむ。

 厄介な身の程知らずな輩かな。

 不測な事態に対応する様にしておくか。

 行使できる保護魔法をかけてみる。


時空(とき)の、なるべく穏便に願います」

「マスターが不快に思わなければ、動きません」


 さらりと、言質をとりたいジルコニアをかわすフィディル。

 大精霊にも上下関係はある。

 中でも、大精霊を纏める役割にあるのがフィディルだ。

 魔法関連は邪のグレイスに負けるも、武術関連は敵なし。

 暴れられたら、ジルコニアに打つ手がない。


「んー。命に関わることがなければ、牽制だけにしておいて」

「了承しました」


 ジルコニアが可哀相なので、口を挟んだ。

 領主館が無くなったら、悪いからね。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 少し、楽しみだ。

 客間の扉が開かれる。

 先導の騎士に続いてジルコニア、シェライラの順に、私がその後である。

 んん。

 これだと、私が重要な位置にいないかな。

 部外者の存在に、訝しげな視線が集まる。

 けどさあ、領主が入室したんだよ。

 普通、目上の人物が入室したら、席を立って迎えるのが礼儀じゃね?

 上座を挟み、右手側の肥え太る人物等は座ったまま。

 左手側の、それも荒事専門だと分かる出立ちの人物は立って頭を下げている。

 どこかで、見た顔があるし。

 対比に、歪を感じた。

 シェライラの足が止まる。


「ヨハン。わたくしは、西区における警備責任者とランカの代官に関わりがある者を呼び出しました。ここにいる、戸籍係りの役人が何故に居ますの?」

「小娘。儂は、前領主の甥であるぞ。戸籍係りなぞの下っ端役人に押し込めおって、然るべく地位に戻せ。さすれば、小娘も可愛がってやらんこともない」

「ああ、お前がそう。ならば、叔父と共に捕縛して王都に送りなさい。不正、横領、人身売買の証拠があがっています」

「なっ! 儂は、男爵であるぞ。不敬罪であるぞ」

「爵位を持ち出して圧力を掛けるなら、相手を選びなさい。わたくしは、バウルハウト侯爵家の娘にして、子爵位を個人的に拝命しております。不敬は、そちらですわ」


 井の中の蛙、大海を知らず。

 身分をひけらかして脅すも、シェライラには通じない。

 爵位が上の人間に喧嘩を売った男爵は、呆気なく捕縛された。

 余罪が増えたねぇ。

 前領主のことは知らないけど、腐敗堕落していたんだろうな。

 街に入る時の門番の態度が悪かったし、不正の温床だらけだったとしてもおかしくはない。


「領主様、あの者が警備責任者です」


 毅然とした眼差しで客間から出される男爵を見送り、上座に着くシェライラにおじ様が差し示す。

 男爵の隣に座っていた優男は、僅かに顔色が青ざめていた。

 シェライラの斜め後ろに椅子が用意されて、私も座る。

 ジルコニアとフィディルは、マスターの背後に佇む。

 立っていた荒事専門職の人達も座り直した。


「そう。で、何故に西区の警備詰め所に、ランカの住人が過剰なる拷問を受けていたのか、説明なさい。後に、関わった冒険者ギルドにも聞きます」

「あの者は、犯罪者です。ランカの代官に剣を抜きました。護衛をしていた冒険者ギルドの者を殺害したのです。冒険者ギルドは西区にありますので、我が詰め所が訊問をしたのです」

「愚かのひと言ですわ。代官が襲撃を受けたのなら、領主に調査権が発生します。警備を担う者が法を知らない筈がありませんわ。知らないと言い訳をするのならば、お前に警備責任者を名乗る資格はありません。罷免致します」

「お言葉を返しますが、前領主様からは……」

「お黙りなさい。前領主が女王陛下より断罪され、鉱山送りに処されたのは布告しました。わたくしが後任に着いて、綱紀粛正を行っているのは理解しているでしょう」


 優男を追及するシェライラの姿は、まさに為政者のそれ。

 女王筆頭候補は、政にも実力を示していかないとならない。

 貴族のお嬢様と舐めてかかるから、反撃された。

 いつまでも、前領主の威光が輝いているとは思うな。

 優男は甘い汁を吸いすぎて、引き際を誤った。

 どうしようもない。

 そして、身の破滅を自分だけで甘受する気はなかった。


「ぼ、冒険者ギルドにも責任はあります。ギルド長とランカの代官が癒着して、人身売買をおこなっていたのです」


 目の前に座る虎さんを指差して、喚いた。

 そう、冒険者ギルド側には因縁がついた虎の獣人さんが真ん中に座っていた。

 でも、レードさんはサブマスター(代理)なんだけどね。

 指された当人は、感情が籠らない瞳を向けている。

 視線がシェライラに移動して、発言を乞うた。


「冒険者ギルドの発言を許します」

「では、まずランカの代官を護衛していた人物が、冒険者ギルドに登録していた記録はありませんでした。そして、ランカの住人が殺害したとされる人物が、存在していた事実もありません」

「う、嘘だ」

「警備責任者にお聞きしますが、嘘だと断言する理由を教えてください。こちらは、ギルドの登録者名簿から記録媒体を精査した結果、嘘偽りなく述べています。それに、ギルド長は数年に及ぶ療養中で、後任者が派遣されていない状態。副ギルド長三人でギルドを運営しています。実働は自分が、事務と鑑査部門に分かれています。本日は、ギルドに残留している副ギルド長には、誓約の魔法を受けてでも、潔白を証明する意思があります」


 あらら。

 面白いことになってきた。

 冒険者ギルドが、牙を剥いた。

 登録者を切り捨てて、ギルドを守ろうとしているのか、真実ギルドの名を騙られたのか。

 探ろうと思えば、出来る手段があるのだけど。

 今は、黙っておくかな。


「な、な。私に、責任を押し付ける気か。確かに、代官とギルド長の会談はあったんだぞ。証拠だってある」

「貴殿がギルド長だと信じている人物は、一介のギルド職員だ。既に、捕縛して領主館に引き渡した」

「えっ?」

「ギルドも不正な行いをした職員を見逃してきた。その責は負う。遅すぎた責だがな」


 一度、拳を強く握り締めたレードさんが、分厚い書類の束をテーブルに置いた。

 ああ。

 冒険者ギルドも、雌伏の時を選らばざるを得ないでいたのか。

 ギルド長の長い闘病は、前領主からの無茶ぶりを躱す手段かな。

 不在の期間が長すぎるのが、おかしすぎるでしょ。

 けどさあ、それは悪手だから。

 聖母教会が迷える女性を救う目的なら、冒険者ギルドは正規兵が手の届かない人を救う目的で、ユーリ先輩は設立したはず。

 二つ共に、設立理念から外れている。

 ほんとに、人の欲は果てしなく業が深い。


「見事なまでの、不正の証ですわね。冒険者ギルド本部が我が国から移転して、迷宮都市に居を構えたとは言え、こうまで侮られるとは思いもしませんでしたわ」

「申し訳ない。意味が分からないのだが」


 シェライラの嫌味に、レードさんが反応した。

 ああ。

 シェライラは気が付いたのか。

 冒険者ギルドが日和見して、今頃不正の証を提出してきた意味を。

 シェライラがライザス領主に着任して三ヶ月。

 その間、告発することなく、静観した冒険者ギルド。

 政治を知らない小娘が、どれだけの成果をなすのか見ていたのだろう。

 今回、ロイド兄妹の父親を救出する様を見て、好機が来たと踏んだとみる。

 馬鹿め。

 遅すぎだ。


「貴方がた、冒険者ギルドは民営組織。証拠を集めることは出来ても、捕縛権も裁定権もない。ですが、十代の小娘たるわたくしには、ある。頭を下げにくるのは、業腹かしら?」

「……」

「お分かりになってはいない、みたいですが。提出された不正の内容は、既に把握しておりましてよ。冒険者ギルド本部には、二月以前に抗議致しております。ライザス支部にて、前領主の威光を笠に不正や横領の兆しあり。直ちに、治めたし。返事はありませんでしたけど」


 おや。

 レードさん達に動揺が走る。

 まあ、風の大精霊ジルコニアが側にいるのだ。

 風の精霊から情報を得放題なのを、知らないな。

 密閉された空間に風の精霊が入り込まなくても、他の属する精霊に聞き込めば仲違いしている間柄でなければ、世間話はしてくれる。

 そうした、些細な情報を精査して、有益な情報に統合するのがマスターの務めでもある。

 恐らく、本部に強襲したのはジルコニアだろう。

 迷宮都市がどの位置にあるかは知らないけど、移転した本部に楽に移動出来るのは限られている。


「勿論、抗議は女王陛下の名で致しました。グランドマスターは無視された様ですから、こちらも今後は冒険者ギルドの要請を受けぬことになりましたの。ですから、生憎と冒険者ギルドと馴れ合うことはできなくなりました。わたくしに恩を売り、困り事を解消しようとする案は使えませんわよ」

「そ、れは、冒険者ギルドが機能しないのは、民人が苦しむ結果になる」

「元を正せば、前領主が遺した負の遺産だろうが。お前達貴族階級の人間にしたら、民人は道端の草にしか思えんだろうがな」

「よせ。黙れ」


 レードさんが制するも、冒険者ギルドの人員は頭に血を上らせる。

 ふむ。

 何やら、冒険者ギルドにて困り事が発生中。

 単純に、思い付くけどね。

 そして、ギルド員も気付け。

 貴族が見下していると言いたいのだが、あんた等も見下しているんだってな。

 民人を盾に、脅しているのが分からない阿呆振りに笑えてきた。

 ああ、可笑しい。

 なら、少し遊んでみようか。

 相手になってあげよう。


ブックマークありがとうございます。


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