200 騎士は回収になりました
フレリア=ナイアス対策に忙しくなってきたこの頃。
アーガストさんを慕う騎士さん達が続々と、冒険者になりすましてランカ領地にやって来ているが。
騎士さん達への対処は、アーガストさんと代官のフォードさんの二人にお任せすると宣言した通り、私は以後干渉してない。
ただ、教会で会った騎士さん数名が、アーガストさん経由で話がしたいとか、謝罪がどうのとか宣っているが、どうしますかとだけ一回聞かれた。
結論、無視一択である。
アーガストさんも特に弁明したり擁護したりしなかったしね。
冒険者ギルドからも、彼等についてはランカ領地に冒険者として訪れている以上、管理は冒険者ギルドでするとの報告がきている。
逆に、騎士の身分を明かして、ランカ領地や領主の私に不利益講じる事態が起きた場合は、王都冒険者ギルド本部と王城の騎士団総長宛に抗議文を送りつけるとお姉様からお手紙が届いた。
て言うか、既に本部の統括ギルドマスターへは盛大な苦情と抗議は伝達済みらしい。
お姉様曰く、面倒臭がって宰相閣下と国防大臣のユークレス卿から依頼された説明をしないで、問題児騎士連中を冒険者と偽らせて送りつけるなと、ギルドマスターだけ使用できる権利を行使して、伝達魔道具で本人にどやしつけてきたそうである。
どうも、統括ギルドマスター当人もやらかした感は認識していたらしく、お姉様の抗議には素直に謝罪はした。
が、統括ギルドマスターも、まさか受け入れた騎士が問題児だとは思いもよらず。
詳細な依頼内容を説明する場で、会話が成立しない騎士を新興のランカ領地へ偽りの身分で送りつけるのを躊躇いはしたから、今一度ユークレス卿へ再確認する間待機をお願いしていたら、知らない間に勝手に行かれていたのが判明した。
で、すぐにランカ領地の冒険者ギルドに連絡をしたものの、何故か伝達魔道具が機能しないでいた。
フィディルが冒険者ギルドで問題が起きていると報告した内容が、これだった訳である。
伝達魔道具は、その名の通り、双方間で顔を見ながら会話ができる魔道具。
日本で言うならスマホみたいな機能がある魔道具で、かなり高価で複雑な術式が施されている。
私と代官のフォードさんが連絡を取り合える魔道具と似ているが、こちらは会話のみで顔を見ながらはできないし、やり取りできるのも私とフォードさんとに限定される。
対して、冒険者ギルドに設置されている伝達魔道具は、王都冒険者ギルドだけでなく女王国内のどの冒険者ギルドとも会話ができる仕組みになっている。
又、使用できる権利がギルドマスターとサブギルドマスターだけでなく、何らかの問題が起きて二人が応じられない際に関してのみ使用権利がある人物がいるんだ。
その人物が、業務と関係ない私用で伝達魔道具をこっそり使用していたせいで、統括ギルドマスターの連絡が阻害されていたんだよ。
まして、その私用で使われていた内容がねぇ。
お姉様が激怒した内容で、不正に私用で使っていた魔道具の使用料を支払えば単なる解雇で済んだのだけど。
お姉様、不正が大の大嫌いな性格。
もしかして、違う不正があるのではと捜査したら、出てくるわ出てくるわで、一時冒険者ギルドが業務停止状態になってしまいましたとさ。
ああ、はい。
もう理解できると思うけど。
最初は、ランカ領地が新興貴族の開拓中とは思えない発展と、ベルゼの森由来の稀少価値高い素材の数々に伴う、商業都市自治区のガストーネとの販路による桁外れな資産増大自慢を他の領地の冒険者ギルドへした事だった。
それが、他の冒険者ギルドは自冒険者ギルドもおこぼれに乗らないかとのお誘いだと思い、連絡してきた職員に賄賂を贈り優遇して貰おうと参入した訳だ。
無論、ランカ冒険者ギルドの膨れ上がる素材販売の上納金は、ランカ領主へ還元され、ランカ冒険者ギルド自体は規定の売り上げ金しか利益を出していない。
その利益も、未来へ向けての新米冒険者育成やら、冒険者ギルドが運営する格安宿屋や、怪我で引退された冒険者ギルドへのお見舞い金に大半が費やされる。
まさか、自慢話から賄賂が贈られてきては、ランカ領地が得る収入の横流しを願われ、事態が明後日の方角へ邁進してしまった責任を感じて、その職員が自害未遂をしてしまったのが真相だった。
自害未遂はフィディルの進言で事なきを得たも、お姉様が引き抜いてきた職員が不正に伝達魔道具を使用していた真相も、本家筋の貴族から強制されていた事情もあって、他領地の冒険者ギルドの内情や領地の情報を漏らす代わりに自慢話で話のすり替えをしていたのであった。
贈られてきていた賄賂には一切手を付けてなかった事情も考慮して賠償金無しの解雇通知。
先にも述べたが、お姉様が引き抜いてきた事務方では優秀な人材。
無為に遊ばせるのは良くない。
よって、代官のフォードさんの秘書に抜擢しました。
まあ、解雇された罰も課さないとならないので、給金は半額カット。
しかし、カットされた給金は貯蓄していて、罪の償いが終了したら一括払いする手筈にはした。
で、その間私はレオンとエスカ共同で、ランカ領地周囲に罠を仕掛けていたりする。
どんな罠かは、作動したらわかるからね。
「バーシー伯、少しだけお時間いただけないだろうか」
最近、ヘンドリックス伯爵家やら、フレリア=ナイアス問題やらで農園の仕事をロイド君やマイク君達に任せてばかりいたので、暫くぶりに農作業に没頭できた。
時期的に夏野菜の収穫も終わりに近く、秋野菜に植え替えしたり、エスカ配合の小麦とこちらの世界で販売されていた小麦の比較栽培をしていたりと、農作業を楽しく勤しんでいたら、アーガストさんから歯切れ悪く面会して欲しい相手がいると言われた。
放置した騎士関連があるなら、拒否しようかとおもったが。
フィディルにも応じた方がと言われたので、我が家に招き入れた。
仮役場でもなく、教会でもないのは、他の騎士に乱入されない予防策なんだって。
アーガストさんも、信頼できるお人だと目上の方ぽい模様。
果たして、我が家に招いた人物は、五十代ぐらいの隻眼の騎士さんだった。
「バーシー伯には、初めてお目にかかる。自分は、このアーガストの前任の騎士団総長を勤めさせていただいた、シンクレア=ロビンスと申す。この度は、阿保で馬鹿で未熟な騎士の本分を理解してないにも関わらず、騎士を名乗るケツの青い若造共がご迷惑おかけした件、教育に携わった者として誠に申し訳ありませんでした」
リビングで私を待っていたロビンス氏は、私が入室するなり立ち上がり、頭を下げる。
はい?
いきなりな行動で、まったくついていけなく面食らった。
「アーガストからも相談は受けました。あの阿保共は、下手したらバーシー伯よりこちらの領地を簒奪しようとしたと、指摘されてもおかしくない馬鹿な考えをしておりました。よって、自分が責任を以て王城へ連行し、再教育を課す事を全騎士団団長及び総長の認可が下りました。これにより、王城より支援の騎士が不在になりますが、バーシー伯と縁あるアルバレア家、ロズレーヌ家、バウルハウト家が信頼する私設騎士団の騎士を派遣する代替え案が決まりかけております」
ああ、はい。
お姉様の抗議が王城に伝達されたんですね。
そして、問題児騎士回収が決定したと。
回収させる騎士の代わりに、王城勤務の騎士が派遣されないのは、如何に代わりの騎士が真っ当な騎士でも、初めの騎士があれだったから、信頼されないとふんだからかな?
「それも理由の一つですが。王城の騎士団丸々一つが、フレリア=ナイアスの手駒と成り下がった訳です。自分もバーシー伯の敵にならないとは言いきれません。ですから、王城の騎士派遣は白紙に戻すのが最上の判断かと、貴族院から忠告されました」
疑問が口に出していたようで、ロビンス氏が補足説明してくた。
話題にあがったロズレーヌ家。
無事にレミーアさんが侯爵を継承でき、女侯爵となれた。
王都のタウンハウスでお披露目パーティーは開催された日は、生憎と私はサーナリア国に招聘された時期と重なり、出席できなかった。
代官のフォードさんに託した、お祝品の真珠を連ねたネックレスとイヤリング、やや大粒の黒真珠を中心にプラチナで装飾したブローチは悪目立ちするからと目録を読み上げる中に入れられないでしょうと、苦言混じりのお礼状が来ました。
けれども、自領で行うお披露目パーティーでは、使わせて貰うとも書かれてあった。
その自領でのお披露目パーティーもヘンドリックス伯爵家絡みがあり、出席できない不義理をお詫びるするお手紙と品を届けようとしたら、フォードさんとアンナマリーナさんに手紙だけにしろと怒られた。
アンナマリーナさんからは、私の叙爵お披露目パーティーしてないので、ある程度ランカ領地が開拓したら開かないとならない。
その時に、入手し難い真珠のお祝品以上のお祝品をロズレーヌ家は贈るのが礼儀。
真珠の対価のお祝品がかなりな高額になるだけに、更にお詫び代わりのお祝品贈ると、更に更に高額なお祝品贈らなければならなくなるからやめなさいと諭された。
あんた、装飾品とか調度品とか、贈られなくても自前の高級品が眠っているでしょうが。
暗に、ゲーム内アイテムが、倉庫品のを含めて人外さんから貰えているのを皮肉言われてしまった。
アンナマリーナさんと私が、こちらの世界に転生した理由違うせいで、アンナマリーナさんは恩恵受けられなかったからね。
ゲーム内で苦労して入手した愛用の武具が手元にないのが、凄く残念がってたしね。
話が逸れた。
んで、お祝の礼状だけ贈ったのだが。
後日、レミーアさんの友人から、自領のお披露目パーティーは延期になったと教えていただいた。
どうやら、代理当主していた婿入りしていた父親と義母が、お披露目パーティー妨害して事件を引き起こしたそうで、調査の為お披露目パーティー開催するどころではなくなった。
レミーアさんからも、経緯を示したお手紙が届いている。
また、その内容の締めくくりで、フレリア=ナイアスの一件を知った様で、伯爵だが新興貴族の私よりも建国から続く子爵家の発言力は上にあがるし、人脈もあり、ある騎士団も動かせる厄介なのに目を付けられた心配ゆえに、武家名家家門のロズレーヌ侯爵家の後ろ楯として、荒事に対応できる人材を派遣してくれるとあった。
無下にもできない有難い助力に、正直押し掛け騎士より頼りになる。
アルバレア家はナイルさんが、バウルハウト家はシェライラが主導で私設の騎士を派遣してくれることになっていた。
なので、押し掛け騎士は本当に何しに来た感が半端なく、いらない応援者になっちゃったんだよねぇ。
引き取ってくれるなら、さっさと回収お願いします。




