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199 騎士の押し売りはいりませんでした

 アーガストさんに執着するフレリア=ナイアス子爵令嬢対策にと、我がランカ領地に送り込まれてきた騎士さん達だが。

 表向きは、下僕化した某騎士団一団と同じ討伐隊に従軍している事になっていた。

 アーガストさんが突然騎士団総長を辞任し、左遷されたと部下の騎士さん達に通達された以降、彼等は国防大臣である父親のユークレス卿に真偽を問い、簡潔に肯定されたせいもあってか、何ら瑕疵のないアーガストさんが更迭されたと曲解しちゃったそうで。

 新総長のフレッドさんや、新体制になった騎士団の上役達に反発をやらかして、一時謹慎を言い渡されていたそうだ。

 で、謹慎状態を隠れ蓑にして、王城や王都から姿を消したアーガストさんを独自で捜索していた。

 まあ、ユークレス卿やフレッドさんも、アーガストさんを慕う騎士さん達を監視していたのだろうね。

 謹慎という規則を破っていた騎士さん達を集め、アーガスト捜索を止めるように通告した。


「……父上。……フレッド。それは、間違いが起きるだろうに」


 騎士さん達の説明に、アーガストさんが頭を押さえるのも、理解できちゃうわ。

 ていうか、アーガストさんを慕う騎士さんには、事情説明を事細かく話すべきだったんじゃないか?

 ああ、でもさ。

 アーガストさんにも、問題があったな。

 自分も部下さん達が暴走すると認識していたなら、アーガストさんもランカ領地に左遷される前に報告しないとならなかったんだよ。

 何か、言えない事情があったかもだけどさ。

 上役に反発しちゃうほど慕う騎士さん達が身近にいたのだから、相捏造された英雄役をどうにか返上できないかとか相談できたんじゃないか?

 根本的に、ユークレス家の男性は説明不足な性格なのかと思われても仕方がないよ。

 それで、更に反発しちゃった騎士さん達が、騎士辞職をかけて仕事をボイコットするまでに発展し、女王陛下と守護者のエルシフォーネが極秘任務を宰相閣下経由で申し渡し、漸くアーガストさんの居場所と、フレリア=ナイアス問題を騎士さん達は知った。

 女王陛下とエルシフォーネ、グッジョブ!

 ナイスな判断だ。

 そもそも、騎士ってそう簡単にはなれない職業だしね。

 ただ、剣術の腕前が良ければ、なれる訳では決してない。

 柔軟な思考力やら、的確な判断力やら、性格面でも適性検査されるからね。

 現役騎士より剣術が巧みでも、英雄願望があり、功績をあげる機会に恵まれ、上司の指示に従わないで、一人突出して集団行動から逸脱して、多数の犠牲者を出す行動とかやらかす馬鹿を騎士にだなんて叙勲したら駄目だろう。

 また、一見人当たりが良さそうな言動の裏で、選民意識があり下位の身分の出身騎士や平民騎士を見下し、言葉巧みに先導して最悪殉職させては、手柄は自分がと考える人物がいたら悲惨な結果しか生まないだろう。

 よって、女王国の騎士叙勲には、姿なき賢者の意見を反映していたりする。

 アーガストさんやフレッド氏みたいな上位貴族出身の騎士の中には、まあまあ親のコネであったり金銭的な裏口的騎士叙勲があるのも事実。

 大抵、そうした箔付け的な騎士は実践に向かない騎士なので、王城勤務の近衛騎士団=見映えする顔を役立てる=他国のおもてなし要員だとか。

 中には、顔だけ騎士が嫌で、鍛練に勤しみ、実力で配置替えできた強者もいるにはいる。

 が、そんな貴族出身騎士はかなり珍しい部類。

 顔だけ騎士の任務を全うする騎士が大半だってなのだが、そんな騎士さんの実情は爵位を継げない三男四男で、跡継ぎや他家との繋がり要員としての婚姻の駒の役も振られない、半ば放任教育された見捨てられた扱いされている息子だったりする。

 親の見栄で強制的に近衛騎士団に入団させられ、あわよくば他国の貴族令嬢や自国の上位貴族令嬢に気に入られたら御の字的な。

 放任教育しといて、親の役に立てなエゴを押し付けられた哀れなバックグラウンドを有していたりする。

 だからか、あまり上昇気質がなく、さりとて仕事は真面目にこなすけど、親の良いなりになってたまるかをモットーに、上級騎士を目指したりしないで平の騎士で出世しないで退職するのが近衛騎士団所属の常だそうな。

 騎士の世界も世知辛いわ。

 そんな騎士事情もあってか、近衛騎士団所属の騎士もフレリア=ナイアスからみたら、貴族階級だが利用するには覇気もなく、活用法も見出だせないから接触してない。

 顔だけ騎士なので容姿は恵まれてそうだが、性格があわないから下僕化する可能性も低いとは、アーガストさんの弁である。


「で、アース先輩は、ナイアス子爵令嬢問題が片付いたら、どうするっすか?」

「王城に帰還する気は無くなったな。この地で有望な人材を育てるか、バーシー伯の私設騎士団にでも雇って貰えるか希望中だ」

「はいはい。自分も、バーシー伯に雇用希望するっす」

「なら、自分も」


 言うと思った。

 そりゃあ、本職の騎士が開拓中のランカ領地に常駐してくれるなら、治安維持の観点からは安全面が保証されるだろうが。

 あんたら、騎士の剣は女王陛下や国に捧げて叙勲されたんでしょうが。

 もしもだよ?

 アーガストさんがランカ領地から離れたら、あんたらも一緒にいなくなるのは確定だよね。

 そんな騎士、いらんわ。

 ころころ、剣を捧げる主人を変える騎士なんて信用できるかいな。


「却下。アーガストさんは信頼できるかもですが、他の騎士さんは必要性感じないです。確かに、開拓中のランカ領地に人材は不足してますけどね。そんな簡単に、主人を変える騎士信用できないです」

「バーシー伯の言われる通りですね。貴方がた、騎士の品位を貶める発言は慎まれた方がよいのでは? とりあえず、王城の騎士団総長殿とユークレス卿に抗議文は送らせていただきます」

「お前達、わたしを慕うのは嬉しく思うが。騎士の本分を忘れさるとはな。わたしも、バーシー伯に推薦はしないぞ。例え、騎士を辞任し、一冒険者になろうと、ランカ領地での活動の禁止措置を、わたしのあらんかぎりな手段を駆使してでも取らせて貰う」


 私、代官のフォードさん、アーガスさんの冷たい眼差しと拒否に、名乗り出ていた騎士さんの顔色が悪くなる。

 騎士道精神何処ぞへ放り投げた騎士なぞ、実力があろうが、職務放棄した騎士としか見えんぞ。

 家庭の事情や障害を得て騎士を辞めざるを得なくなったのなら、考慮するけども。

 単に慕う上司がいなくなったから、いるからという理由で騎士を辞めたり、雇えとか言ってくんな。

 正直、フレリア=ナイアス問題が片付いたら、彼等は王城に帰って欲しいわ。


「悪いけど、今後の対策はアーガストさんに任せていいかな? はっきり言って、この人達信用できないし。関わりたくなくなってきた」

「ですね。バーシー伯には、騎士の助力は必要性ないですから、こいつ等の活用法は冒険者ギルドマスターとも相談して決めます。お手数おかけして申し訳ありません」

「では、文官として自分も、話を詰めようと致します。バーシー伯は、別な強力なお味方と対策をお願いいたします」


 気分が冷めてきたので、騎士さん達に暴言吐かない為にも、私は話し合いから抜けるようにした。

 言っちゃ悪いけどさぁ。

 さすが、アーガストさん捜索を盾に騎士の仕事をボイコットした騎士さん達だけあって、自覚ないけど自分勝手だよね。

 まだ、自分達が密かに応援要員で派遣されて、何一つ仕事してないにも関わらず、雇えだなんてよく言えたもんだ。

 アーガストさんといたいから雇用を願ってきただけで、実際に雇用をしたとしてもアーガストさんの周囲から離れたりしなくて、おざなりな働きしかしないとかやられたら困る。

 人柄は良さそうな感じだけど、アーガストさんが関与したらぽんこつ臭がしてならないのがなぁ。

 さっきは、女王陛下とエルシフォーネグッジョブと言ったが。

 体よく、問題児を更正させるか、騎士の身分を剥奪するか見極めに遣わされたかもしれないな。

 それか、アーガストさんが見てれば、まともな騎士職務を遂行すると思われたかかだな。

 どちらにせよ。

 彼等の今後は、アーガストさんに任せよう。

 私は私にできる方法で、対処させて貰おう。

 場所を借りたエバンス司祭に一礼し、教会を出る。

 背後で、騎士さん達の不満な声があがったぽいが、アーガストさんが叱責した怒声が聞こえた。


「どうやら、あの騎士達はマスターの性格を見誤った様子ですね」

「如何に、エルネスト枢機卿の秘蔵っ子だと言われても、外見は成人したばかりの新米貴族」

「どうせ、その爵位叙爵も枢機卿を慮ったか、願われたかで叙爵したのではと疑いがあるんだろうな」

「マスターが優秀な精霊魔法師だってのも、信じてないんだよ」

「結局、この領地の実質的な領主は、自分達の慕うあの人が代行して、いずれかは本当に領主になるんだって思ってるんだよ」

「……マスターに雇えと言ったのも、武力で領主を代えさせるのも有り、だと思ってる証拠」


 うちの子達、フィディル、ファティマ、レオン、エスカ、ユリス、セレナは辛辣に騎士さん達を批判している。

 最初から、うちの子達は騎士さん達をあてにしてない。

 盾にはなるのでは、としか認識してなかったりする。

 フレリア=ナイアスが信望者の下僕化した輩達を、ランカ領地に差し向けてきたら私も騎士さん達を全面に盾にするだろう。

 それか、彼等騎士の役目だしな。

 私にも反発して協力しないのだったら、その時は彼等もまとめて、何とかしちゃえばいい。

 私が一番信頼できるのが精霊なのは、代わらないしねぇ。


「それでは、マスター。何から始めましょうか」

「んー。まず、レオンとエスカにお願いしようかな」


 私の行動をよく知るフィディルが、笑いながら聞いてくる。

 だてに、似非細工師と言われてないよ。

 領地周囲に、罠細工仕掛けるかな。

 領地の住人には無害で、怪しい素行の他領地の冒険者辺りを引っかけても良さげな罠にしとこう。

 ああ、領民と冒険者ギルドには通達はしといた方がよいか。

 あくまでも、怪しい人物対策としてね。

 後は、ライザスの領主のシェライラとあっちの冒険者ギルドもか。

 悪意があるかの判定はフィディルとファティマの眷属か、グレイスの眷属にお願いしよう。

 さて、グレイス達への対価は何にするかは、グレイスに聞いとくか。

 また、スペシャルスイーツ辺りだろうが。

 新鮮な牛乳や乳製品が手に入るから、チーズケーキやスフレなんかもいいかも。

 俄然、忙しくなってきたも、やりがいがあって楽しくなってきたぞ。


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