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197 騎士が土下座でした

「「「「大変、申し訳、ありませんでしたぁ」」」」


 教会内で叫び、暴れていた冒険者に扮した騎士さん&原因のアーガストさん達が、床に正座して謝罪する。

 勿論、相手は表情はにっこりだが、目元は笑ってないエバンス司祭にである。

 教会内部は空間拡張がなされているらしく、外観から想定する以上に広いと思った。

 まあ、これは他国や他領地と等しく、教会が災害時やら紛争時において避難場所となるべく、担当教区の枢機卿猊下が取り決めたそうで、教会は守護と空間拡張の類いの神聖魔法付与されている。

 で、私的に教会と言えば、長椅子が通路を挟んで、横と縦にずらっと並んでいる感じを思い描くのだが。

 何て説明したらいいかな。

 こちらの世界では祭壇はあるが神像ではなく、三メートル以上ある六角柱の石柱(鑑定したら神聖石とある)の周囲を、太陽と月のモニュメントと十三個の宝玉が浮いてくるくる回っているシンボルが、神聖国の教会に奉られている。

 キリスト教における十字架みたいな象徴なのだろう。

 エバンス司祭達神聖国の聖職者が所持する聖印も、六角柱に太陽と月のモニュメントが填まったリングと、十三個の宝玉が填まったリングを8の数字を横向きにした形でクロスさせてある。

 聖騎士さん達の服装や授与されている聖剣にも、このシンボルが刻まれている。

 で、何が言いたいかと言うと、長椅子とか全く存在しないだだっ広い殺風景な室内で、正座させられている方々がいるって事なんだなぁ。

 いや、暫く前に教会でヘンドリックス伯爵家の相談した時は、長椅子並んでいたよねぇ。

 あの日と同じ場所にいるはずなんだが。

 おかしな事に、長椅子ないのはなんでやねん。


「バーシー伯、どうされました?」


 怪訝に感じていたら顔に出ていたのか、冒険者ギルドのお姉様に尋ねられた。


「あの、前に教会に来た時に、長椅子とかあった気がしたのに。今、その長椅子ないので、何故だろうと」

「ああ、分かりました。おそらく、彼等が暴れたので破壊されないよう、収納されたのだと思われます」

「収納?」

「はい。神聖国由来の教会が、災害時等に避難場所となるのはご理解されてます?」

「それは、エルネスト枢機卿猊下から、教会を設置する際に説明されました」

「でしたら、猊下の説明不足ですわね。神聖国の教会は、各国において領地には必ず最低でも一つは建てられます。そして、その領民全員を収容可能である点も必須条件です。故に、その場から外せない長椅子は避難時に邪魔となり得ますから、床下に収納させる仕組みとなっているのです。そうして、空いた場所に別場所に収納されている寝具等を設置できるようにするのですわ」


 成る程。

 そう説明されたら、納得した。

 そうだよね。

 長椅子を寝台代わりにしても良いけど、マットレスなんかないから充分な休息取れないわな。

 長椅子邪魔じゃん。

 よく考えたら、分かりそうな話だった。

 教会=長椅子=外せない固定観念に、とらわれすぎた。

 そして、魔法がある世界だ。

 収納可能という仕組みがあっても、全然不思議でもないじゃんか。

 あー、恥ずかし。

 まだまだ、常識はずれ枠から抜け出てないや。

 ちょっと、エバンス司祭のお説教受ける側に交ざった方がよいのかも。

 ん?

 でも、長椅子が収納できたのなら、エバンス司祭がお叱りになった理由は損害が出たからではなく、単に教会内で暴れたからか?


「……いいですか? 皆様、血気盛んなご職業に就かれ、些か余りある熱意が発散不足なのでしょうが。ここは、教会です。皆様が武器やら拳やら、暴力行為を働いてよい場所ではありません。また、本日は冒険者ギルドより場所を借りたい旨の連絡がありましたから、領民の方の訪いをお断りする通告をし、診療行為も午後は休診と致しましたから、他の方がおられませんでした。よって、皆様方の暴力行為の犠牲者はでませんでしたが。もし、幼き子にかすり傷でも負わせたりなさった場合、皆様方どんな罰が下るか、体験なさいますか?」

「「「「たいっへん、申し訳ございませんでした!」」」」


 あら?

 エバンス司祭のお説教に、アーガストさんまで正座から土下座している。

 まあねぇ。

 教会に着任される聖職者は、神聖魔法を習得しているから、規定の寄付(少額、下手したら鉄貨一枚=100円)を支払えば治療して貰える。

 ただし、これは領地に治療師がいなかったり、治療師でも治療できない難病や大怪我認定された場合のみ、教会で治療される。

 だから、現在我がランカ領地に正式な治療師は不在なので、ただいま唯一の治療行為を正式に行えるのがエバンス司祭だけ。

 私が神聖魔法並みに治療魔法行使できる事実は、隠匿されているからなぁ。

 万が一、私が治療魔法行使する時があれば、エバンス司祭立ち会いの元で患者とその家族に口外禁止の誓約魔法が課せられるんだ、これが。

 人外さんからも、煩いぐらい念押しされた。

 エバンス司祭は治療魔法の熟練者で治療と結界魔法に関しては、人外さん達枢機卿猊下組を除けば、司祭より上位の司教クラスの聖職者レベルに達するエキスパート。

 その為、私の身代わりを演じても遜色ない人材で、私がやらかすのを見越して派遣されていたりする。

 エバンス司祭自身も、着任早々にランカ領地とライザスの町で、治療の神聖魔法大盤振る舞いで治療して、他領地の領主から何故こんな僻地な土地の教会に赴任してきたのか問い合わせがくるぐらい、注目集め過ぎてしまった程エルネスト枢機卿猊下の命に忠実に従っていた。

 実際、他の領主から引き抜きの話がきていたりもする。

 が、ご本人曰く、ランカ領地での奉仕こそ、全うするべく神からの使命であると、宣言している。

 うん。

 エルネスト枢機卿猊下が主神たる創世神の仮の姿なので、まさしく神の使命だけどさ。

 逆に、引き抜き話が自分の領地の教会を任されている司祭にバレて、力量不足と思われるなら別な司祭に引き継ぎしますよと、本当に司祭が代わってしまった領地があるんだなぁ。

 そうした司祭が交代した領地は、大抵が領主と司祭の仲が良好ではなく、少額の寄付で大怪我を治療させていたり、一回の寄付で何度も治療させていたり、と問題を抱えていた。

 で、交代した司祭は、枢機卿猊下より厳しいお達しがあり、治療行為の内容に応じた寄付価格が設定され、支払いがなかったり、苦情がきたりしたら、司教が出向いて問題点を突き付け、教会での治療行為休止となれば、困るのは領民である一般庶民。

 何しろ、治療師の治療行為も内容に応じた価格設定しているのは神聖国であり、治療師の育成と保護をしているのも神聖国だ。

 説明を忘れていたが、治療師も神聖国が管理する職であり、適切な場に治療師を派遣又は診療所を開かせる資金を出すのは神聖国で、治療行為に似合った価格を支払うのが国か領主かという関係である。

 例外が、治療の修練目的で冒険者ギルドに加入して、パーティーの治療役となる治療師。

 ギルドに加入している間は、上記の枠外となり、神聖国と冒険者ギルドから支払われる対価は、設定されている価格の二割が毎月渡され、残りの額は貯蓄されていて、ギルドを退会した後に支払われる流れだそうな。

 治療行為は神聖国謹製の身分証に内容やら回数やら記録されているので、間違っても金額が少ないとか訴えるお馬鹿な治療師は滅多にいないらしい。

 そういや、治療師で思い出したが、レードさんのパーティーにいた治療師さんのその後はどうなったのやら。

 治療魔法行使できなくなり、精霊からも嫌われたとはお子様ズが言っていたけど。

 もしかして、治療師の認定取り消されたのか?

 まあ、いいや。

 後にでも、確認しておくか。

 今は、それどころじゃなかった。

 話が逸れたぞ。

 つまり、ランカ領地の教会が今の所、唯一の診療所も兼ねているので、お姉様とエバンス司祭との間で場所の貸し借りの話ができてなかったら、病人や怪我人がいた場で騒いでしまっていたって事になる。

 特に、幼い子供がいたら、泣くどころの騒ぎで落ち着いていたかも危ういしね。

 エバンス司祭が怒る訳だ。

 しかし、騎士さん達が体験したくない罰とはなんだろうか。

 破門は、無い気がするが。


「いやいや、あれは絶対にご勘弁を願います。もう二度と体験したくありません」

「コーダ。お前、あれを体験したことあるのか」

「うっ、あれは黒歴史っす。ちょっとだけ、はっちゃけてしまっただけっす。決して、悪気はなかったっす」

「あー、アース先輩も大変な時期の時だったかな。こいつ、騎士叙勲された翌日にやらかして、王都の教会の司教直々にお説教コースからの、罰クジ当たり引き当てたんです」

「ぎゃー、何で言うっすか。忘れさりたい黒歴史なのに~」

「罰クジの当たりか。それは、きついな」

「「うん。あれはない」」


 えーと。

 話の内容から推測すると、体験させられる罰はクジ引きで内容が違うのかな?

 そして、罰の内容に当たり外れとかあり、口外するには恥ずかし罰があるって事?

 罰をクジで決める仕組みを、教会がしているのに驚きだ。

 破門以外の罰だと、肉体労働とか無料奉仕とかが妥当だとばかり思うけどなぁ。

 少し視線をそらせば、お姉様もレードさんも遠い目していた。

 ここで、当たりの罰クジ内容はと聞いたら、空気読めないお馬鹿扱いされそうなんで止めておこう。

 農園に帰って、常識人なナイルさんかロイド君辺りにでも聞いてみようっと。


「確か、当たり罰クジは……」

「ぎゃー、言うなっす。言うなっす。お願いですから、アース先輩言わないでくださいっす」

「アース、止めてやれ。コーダに止めは差してやるな」

「では、皆様。体験されたくないのでしたら、二度と、教会内で、騒ぐ、暴れるは、止めましょうね」

「「「「はいっ、ごめんなさい。もうしません」」」」


 アーガストさんは、アースさんが仲間内での愛称なのか。

 私が読んだ空気を無視しての発言は、天然なボケだろうか。

 気心知れたお仲間がいると、途端に天然な性質が発露する新しい一面発見である。

 エバンス司祭に再確認されて、また土下座する皆さん。

 何だかんだで、話が逸れまくっていき、全く先へ進まないや。

 こんな時に、お花畑女に先導された輩達に襲撃されりしたら、どうなることやら。

 まあ、本職が騎士さんなので、きっとアーガストさん指揮の元、あっさり撃退されるんだろうとは思うけど。

 第一印象がこれなんで、騎士に憧れる子供には見せれないし、夢壊させられぬ。

 ましてや、土下座姿なんてもっての他。

 仮役場ではなく、人払いした教会で良かったと心の底から思い、隔離したお姉様に感謝したいわ。


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