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195 反撃の始まりでした

 とりあえず、当初の目標であったヘンドリックス伯爵家への謝罪は、宰相閣下とユークレス卿の土下座謝罪で水に流す方に落ち着いた。

 ただし、先代ヘンドリックス伯爵さんは、仲介したエルネスト枢機卿猊下を慮り、渋々受け入れた感が否めない。

 それから、再度宰相閣下のシルビアちゃんの治療薬である禁止薬品調薬の許可を願いでる。


「エルネスト枢機卿猊下。対価を幾ら提示されても構いません。どうか、シルビア嬢への恩情を賜りたく願います」

「対価は、先程述べた。 老化による思考が正常に働くまで、 → 老化による思考の低下がなく正常に働く間、 女王を支え、国に奉仕せよ」

「では、希少素材を賜りたく……」

「案ずるな。既に、ミシェル君の願いと助力に応じて、女王筆頭候補者が錬金調薬を始めている。また、シルビア嬢に最速で治療薬が投与される邪魔をあれ等が関与させない為に、シルビア嬢と母親達は安全な場に避難させてある」


 治療薬の素材の一つは、枢機卿猊下が厳密に管理されているので、引き渡した時点で調薬師には配下の監視が付けられるんだって。

 希少素材だもんね。

 悪質な調薬師が、金で買収されたりして、別人に横流しした事例があったとかで、エルネスト枢機卿猊下も例外なく監視人をシェライラの元につけている。

 まあ、うちのフィディルとファティマがシェライラに協力しているので、シェライラが別な薬品を治療薬と偽れるとは思わないし、偽るとは思ってない。

 現に、逐一フィディルから報告が来ているしね。

 逆に、シェライラが頑張り過ぎて、ろくに休息取ってないっぽい。

 調薬工房の時間経過に干渉して、工房内は時間を倍速状態にしてあるが、シェライラ曰くジルコニア経由でフィディルに交渉して、更に時間経過を五割増しで進めるよう進言してきたそうだ。

 ファティマも、シルビアちゃんの状態に想定していた以上に負担がかかっていて、時間が長引くのは危険と判断した。

 よって、始めに設定した時間経過干渉を、精霊王の認可も得て、シェライラに負担が重くのし掛かるが、許可した。

 錬金調薬が終了したら、確実にシェライラは寝込み、代償を支払う事になり得るとか聞いたら、私も黙ってないよ。

 私の死蔵アイテムには、劣化版なエリクサーがある。

 これは、前述したユーリ先輩ではない調薬において優秀なプレイヤー作品なので、安心して提供できる。

 ジルコニアにでも、丸め込んで服用させようと決めた。

 でも、シェライラが無茶してくれているおかげで、シルビアちゃんの治療薬は順調に出来上がり間近。

 あと、心残りな案件は、当代ヘンドリックス伯爵家に蔓延した禁忌薬物の中毒症の治療かな。

 いつまでも、犯罪ギルドの隠れ家がある屋敷に置いておけない。

 と、指摘したら、エルネスト枢機卿猊下さっさと手筈を整えてしまいやがりました。

 表向きは、紫薔薇の虜という禁忌薬物が使われた事態を看過できぬ、事情聴取する名目でエルネスト枢機卿猊下の活動拠点である、女王国内に建立されたご立派過ぎる教会に移送され、事情聴取どころか手厚い看護と外部者から危害を加えさせない警護が敷かれてますわ。

 で、フレリア=ナイアスに踊らされ、利用された特務騎士団第三隊の面々は、精神汚染を治療され別命あるまで寮にて謹慎中。

 フレリア=ナイアスの盲目的な信望者は、枢機卿猊下配下の異端審問官と貴族院&騎士団監査隊による尋問の結果、ある事実が判明した。


「まさか、先々代女王が初代錬金女王の遺産を隠し所持していたとはね」

「大半ががらくたな遺産だったからねぇ。管理人のエンブリオ公爵も、あまり重要視してなかったのが、今回の反省点だよ」

「魅了魔法が付与されていた魔法具ですか。それは、何としても回収し、破壊しないといけませんね」


 ヘンドリックス伯爵家の皆さんが、エルネスト枢機卿猊下に保護されたので、私はお役御免となり、領地に帰還したら、またもや王城にお呼びだしされた。

 女王陛下直々な招待状が届いたので、無視しないで登城したよ。

 まあ、招待状見せて登城目的述べたら、宰相補佐官さんに有無言わさず、女王陛下の執務室に案内されたけどね。

 宰相閣下とユークレス卿は、ヘンドリックス伯爵家からフレリア=ナイアスの悪行に加担した馬鹿二人の証人を、尋問した結果を教えてくれた。

 一応、私は女王相談役だからね。

 ついでに、姿なき賢者様も助言したので、尋問結果は虚偽がない事実である。

 で、くだんの内容の発言に至るに繋がる。

 先々代女王と王配のエンブリオ公爵さんとは不仲説が、国民の知るところなんだが。

 女王位にある時、初代女王の遺産に関して遺管理場所に出入り自由なのと、後学の育成とか理由あげられたり、持ち出し制限ない権利を行使されたら遺産管理人のエンブリオ公爵も駄目だとは言えない。

 まあでも持ち出した場合は、明確に持ち出した遺産をエンブリオ公爵に申告する義務はある。

 だがしかし、先々代女王はそれを怠った。

 エンブリオ公爵さんは、先代女王が未婚のまま退位したせいで、現役公爵を余儀なくされていたのだけど。

 高齢を理由に、公爵位の返還を貴族院に提出している。

 当代女王陛下も未婚なので、貴族院は渋って先延ばししているのが現在の状態。

 水面下では、孫娘婿のナイルさんに中継ぎの管理人を兼任させるか、話題にあがっているとか。

 それは、アルバレア侯爵家から抗議されて成立しないとの有力情報が、フォードさんから報告されている。

 となると、次点で有力なのが、六柱の大精霊と契約していて、他の大精霊も様呼びする人材が相応しいのではないか、と調整中だとか。

 おい、それはもしかしなくても、私のことじゃないか。

 ああ、でもグレイスに頼まれたら、拒否できない気がしてならないんですけど?

 そうなったら、がらくた遺産は安易に女王でも手が出せない時空魔法に分類される無限大収納(ストレージ)行きかな。

 一度興味本位でエンブリオ公爵さんに遺産目録を覗かせて貰ったら、がらくたが大半を占めていたものの、中には世に出したら危険判断扱いなアイテムもあったからなぁ。

 その一つが、フレリア=ナイアスが所持しているであろう魅了魔法付与されたアイテムだよ。

 故に、錬金術師として能力不足なフレリア=ナイアスが暗躍できていたんだろう。

 フレリア=ナイアスの出自は、エンブリオ公爵さんと先々代女王が事実上の離縁状態は貴族院も把握しているから、戸籍は不倫相手の子爵家庶子。

 本人は、かたくなにエンブリオ公爵家の娘と名乗っているので、再三貴族院から身分詐称で警告食らっている。

 身分剥奪にいたっていないのは、その魅了魔法付与アイテムの成果で、後ろ楯があるから。

 どうも、後ろ楯にいたのがアーゲード侯爵だけではなく、ある意味厄介な後ろ楯が背後についてフレリア=ナイアスを利用している問題も発覚した。

 これ等は、枢機卿猊下の異端審問官による尋問のおかげ。

 貴族院や女王国の尋問官ではできない精神を丸裸にする、異端審問官固有の精神魔法があったからである。

 彼等からの報告書によると、ある騎士団組織全員がフレリア=ナイアスの信望者で、反乱を計画していると警告された。

 すぐさま、宰相閣下と国防大臣のユークレス卿が動き、その騎士団に辺境地での魔物討伐命を授け、王都から出し、待ち構えていた枢機卿猊下の配下である司祭達に魅了魔法解除を実行させ、無力化させた。

 魅了魔法から解放された騎士団は一時拘束されたも、正常な思考が戻ると反省する者とそれでも信望を止めない者と別たれ、反省した騎士は名目上の討伐任務を全うするべく辺境地で名誉挽回している。

 対して信望を止めない危険人物は、未だに異端審問官監視下におかれ、どこぞかの矯正施設に隔離されている。

 こうして、少しずつフレリア=ナイアスの手駒を失わせていっているのだが。

 脳内お花畑さんは、懲りる、諦めるを知らないらしい。

 厄介な後ろ楯の支援もあってか、まだ何やら画策しているんだ、これが。

 その一。

 執着しているアーガストさんの左遷先がばれた。

 毎日の如く、読むに耐えない手紙がうちの領地に届いている。

 内容を要点だけ述べると、自分と婚姻するなら左遷は撤回でき、騎士団総長の座にも戻れる。

 また、血統も優れた自分が女王となり、王配にもなれる。

 そのニ。

 左遷先の領主は、いわば成り上がりで身元も怪しい人物。

 しかも、その所持している私財は他者から盗んだ物。

 隙をついて取り返し、自分に献上して欲しい。

 半分は貴方にもあげてもいい。

 その三。

 ある方の協力を取り付けている。

 あのケダモノ達の国も、我が国の領土とするべく貴方も参戦し、再び英雄としと名を、功をあげ、貴方を貶めた輩を見返してはどうか。

 等々。

 阿保くさ。

 届いた手紙をアーガストさんは、無表情で宰相閣下達に転送した。

 自身の言葉も添えて。

 自分はバーシー伯の領地にて、左遷されたことを喜ばしいと思っている。

 将来的に有望な騎士や剣士として育ててみたい子供達がいる。

 中には、愚かな女がケダモノと蔑称する国の子供もいる。

 しかし、身近に対話し、付き合う隣国の獣人種族は、決してケダモノ等と蔑称する種族ではない。

 以前の愚かな自分も、そう蔑称していたのを後悔している。

 故に、自分は英雄と呼ばれたくも、認められたくもない。

 我が剣は、身内と思う者達を害する輩に対してのみ奮う。

 できれば、主としてバーシー伯に捧げても構わない。

 今の自分は、バーシー伯の領地と領民を守護する騎士であることを誉れとする。

 うん、アーガストさん。

 うちの領地で生き生きと、種族を問わない子供達に、簡単な護身術やら武器を扱う心構えやら教える教師役はまってるしね。

 冒険者ギルドランカ支部のギルドマスターのお姉さまも、ベルゼの森を活動拠点とする冒険者達にも、講習をと依頼されるほど面倒見が良いからね。

 アーガストさんは騎士団総長として采配をふるより、教師役があっているんだろう。

 実際、ベルゼの森を活動拠点する冒険者の生存率もあがり、負傷者も減ってきている。

 ただまあ、ランク無視した無謀な冒険者がベルゼの森に淘汰されてもいるけどさ。

 フレリア=ナイアス。

 アーガストさんは、あんたに一欠片も注視してないぞ。

 さて、一切手紙の返事がないことでフレリア=ナイアスが、うちの領地に突撃か攻撃してくる可能性大だから、反撃の準備しておきますかね。

 宰相閣下とユークレス卿に事前報告したら、やりすぎ注意を指摘された。

 あはは。

 そんなの、相手に言ってやって。

 攻撃は最大の防御なり。

 偉大なる先人を見習う私ですよ?

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