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190 説明回でした

 永世中立国家にして、宗教国家でもある神聖国。

 長たる教皇は各国のパワーバランスを調停する役を担い、枢機卿が手足となり教区の国々が他国へ侵略したり、属国から搾取するのを宗教的概念ではなく、物理的に潰して選民意識高めな思想を再教育したり。

 弱小国を庇護して、大国と渡り合える人材教育や人材派遣したり。

 世界に安寧をもたらす事を生き甲斐とする枢機卿猊下達は大国には恐れられる立場だけど、庇護してくれる弱小国には強い味方でもある。

 まあ、稀に話し合いで解決できない問題を、圧倒的な神聖力と武力介入によって、数少ない国が滅亡した事もあったりした。

 で、その物騒極まりない一番敵に回してはならない枢機卿猊下が、私には過保護な人外さんの仮の姿なエルネスト枢機卿猊下なんだなぁ。

 まあ、世界の主神だけあり、筆頭枢機卿猊下には、他の枢機卿猊下には物申せなく、進言を聞いてくれるかは人外さん次第だったりするそうで。

 私がこの世界に転生を果たしてからは、他の枢機卿猊下からそれとなく手綱を握ってくれとか、やりすぎを叱ってくれとか、密かに依頼されていたりするんだなぁ。

 以前、海洋諸国がやらかした、私の資産狙いの輩が押し掛けてきた事件では、裏でアルマニア枢機卿猊下が叱責されて、法外な迷惑料を支払えと罰則が課せれたそうだが。

 あれは迷惑被ったのは、女王国に来るまで滞在していた被害国であり、そちらを救済しないとならないのではと、進言しておいた。

 代わりに、私は海洋諸国にしかない素材や海産物支給の方がありがたいとアルマニア枢機卿猊下には連絡したので、ランカ支部の商業ギルド経由で新鮮な海産物いただいている。

 稀に、新しい海洋諸国同盟国からは、新名産品となる黒真珠と黄金真珠が上納されて、困っているけどね。

 何故か、迷宮都市からも希少な素材もしれっと交ざっているのは、インパネラ枢機卿猊下も仲間入りしたとしか思えない。

 あっ、話が逸れた。

 で、その枢機卿猊下達の筆頭なエルネスト枢機卿猊下は、かつての護衛であった元聖騎士だった先代ヘンドリックス伯爵さん一家を餌に、先々代女王からの不始末対策として利用し、犯罪の片棒を担がされかけた事態に、宰相閣下とユークレス卿にお怒りになってるのが、ただいまの現状。

 酷く重く責める言葉は、宰相閣下とユークレス卿を非難している。

 冷徹無慈悲な一面を覗かせるエルネスト枢機卿猊下に対して、非難されたお二方は返答の説明を思案しているのか、暫し沈痛な面持ちで黙ってしまっていた。

 先代ヘンドリックス伯爵さんも、誤魔化しは許さない構えで冷ややかな視線を向けたまま沈黙をしている。

 あっ、置物扱いされた自称組が何かしようとあがいて、ティレルさんに意識を刈り取られた。


「アメリア=ラムレス。ラナート=ユークレス。沈黙は自身に非難があると認めると、わたしは受け止めるが?」

「……エルネスト枢機卿猊下。女王国宰相として、弁解はできないと理解しております」

「大叔母上、もう話してしまいましょう」

「分かっているさ、ラナート。枢機卿猊下には、私が宰相に就任する相談にのっていただいた折には、説明したよ」

「ああ、先々代女王との確執と守護者の契約事項に関する問題は聞いたな」

「はい。そもそも、先々代女王候補からの女王就任に関する不手際が発端な事態が、ヘンドリックス伯爵家を巻き込んだ理由でもある」


 落ちつきを取り戻した宰相閣下の長い話が始まった。

 元々、女王即位の条件が、風と火の大精霊が守護者であるのというのが、厄介な騒動の種だった。

 前にも述べたけど、風の大精霊ジルコニア=ジルシニアの名が紛らわしく伝わり、先々代女王の守護者がジルシニアであった。

 時を同じくして、火の大精霊と守護者契約したのが先代ヘンドリックス伯爵夫人で宰相閣下の従姉妹という関係、また女王候補筆頭として有望視されていた。

 しかし、唯一気掛かりなのが伯爵夫人が身体の弱い方で、夫人は女王即位を辞退していたにも関わらず、寄り親のラムレス家とユークレス家が頑として女王即位を強要していた。

 当時の両家の当主は、宰相閣下とユークレス卿の祖父で貴族院でも発言権が上位にあり、虎視眈々と根回しされていた。

 そんな事態に伯爵夫人は、庇護してくださるエルネスト枢機卿猊下と縁ある当時はヘンドリックス伯爵を継承したばかりの現在の先代ヘンドリックス伯爵さんに頼み、エルネスト枢機卿猊下から無理強い厳禁の忠告をしていただいた(これを先代ヘンドリックス伯爵さんは、聖騎士退職の恩酬だと思ってました)。

 エルネスト枢機卿猊下から忠告という名の、別名お叱りを受けた両家の老害は、なら役立たずの夫人に女王即位の条件である守護者は不要と宣い、夫人も従姉妹なら女王に相応しいと考え、アリスを説得して宰相閣下と契約変更を両家の権力でもって聖母教会にごり押しして成立させた。

 が、時遅し。

 風の大精霊と守護者契約した女性が現れ、女王に即位してしまった。

 後見人には両家と敵対していた名家が付いた為、貴族院も初代女王の守護者が女王と契約しているのを考慮して承認していた。

 ただし、アリスはジルシニアが大精霊ではないとは、宰相閣下には報告しているも、宰相閣下は身内には話しはしなかった。

 というのも、女王即位パーティーでの邂逅で、先々代女王の性格を見抜き、いずれ自爆して女王位を剥奪されるだろうと予測できた。

 ならば、自分はアリスを託された従姉妹の願いで、宰相として次代の女王を育成しつつ、後見人の言うがまま傀儡の女王を追い落とそうと計画を立てた。

 そうして、念願叶い宰相に就任したら、従姉妹が難病を患い、先々代女王に秘薬の錬金調薬依頼がきた。

 宰相閣下も希少素材確保に働き、先々代女王に調薬させていたら、まあ驚きの連続。

 先々代女王は全く錬金調薬してなかったのが判明し、宰相閣下経由でヘンドリックス伯爵家に下賜していた秘薬は単なる初級ポーション。

 ヘンドリックス伯爵家からの苦情に、先々代女王にまともな錬金調薬をと説教したら、反発されて一切調薬をやらなくなった。

 挙げ句、先代ヘンドリックス伯爵夫人は逝去。

 先々代女王は王配のエンブリオ公爵とも揉め、醜聞だらけになり果てた。

 民衆の評価も駄々下がり、堪忍袋の緒が切れ、女王退位を強制施行した。

 が、教育半ばの先代女王も先々代女王と性格が似たり寄ったりで、更に民衆の評価が下がる一方。

 聖母教会が押す候補者はアリスが拒否した。

 ああ、あのシスターか。

 アリス、グッジョブだ。

 あれが女王なんかなっていたらと思うと、今女王国が存続していたか怪しいわ。

 で、次の女王には誰を、と貴族院と女王認定評議会が荒れていた頃に、シェライラが真の風の大精霊と守護者契約していたのが明るみになり。

 平民出身の学院奨学生の当代女王が契約した守護者に、風の大精霊が敬意を表し、アリスも自身より上の地位にあると公言した結果。

 宰相閣下が女王に即位するより、彼女が女王に即位するに相応しいと姿なき賢者も推薦する。

 よって、宰相閣下と養子縁組して、当代女王が即位した。


「ここからは、自分がお話致します」


 長話になるとの事で、宰相閣下とユークレス卿は、エルネスト枢機卿猊下の対面のソファに座らされている。

 成る程。

 宰相閣下の話だと、先々代女王がヘンドリックス伯爵夫人に秘薬を渡さなかったのも、伯爵夫人が女王に認められていたからか。

 要するに、完治されたら、女王位を退位させられると浅はかにも幼稚な思考で、敵愾心があったから邪魔してたのか。

 ほんでもって、宰相閣下は先々代女王がまともな政治できないわ、代理で奔走していたのもあり、多忙も合わさり、野放し状態で放置気味が悪い方向になっていった、と。

 アリスもアリスで、先々伯爵夫人に懇願されて契約を解除してしまったら、加護が失われ儚くなられた負い目もあり、意気消沈していたのかもなぁ。

 でも、ヘンドリックス伯爵家にある加護はアリスが、継続して残していった加護だろうね。

 当代ヘンドリックス伯爵夫人とシルビアちゃんにある加護が、どこかで感じたヤツだと思ったらアリスだったか。

 それに、僅かだけど聖属性も含まれているのは、ファティマにお願いしたからかな?

 結果的に、その加護がシルビアちゃんの命を繋ぎとめていたから、良かったけどさ。


「大叔母上と今は引退された複数名の大臣を、先々代女王だった方が酷く怨んでおられるという情報を我々が入手したのは、先代女王を退位させた後でした」


 ユークレス卿の話は、今回の争点の核心に触れる。

 先々代女王はエンブリオ公爵と不仲になり、事実上離縁状態。

 現在は幼馴染みで不倫関係にあった子爵家で、退位理由である病気療養をしている。

 まあ、エンブリオ公爵が退位させられた先々代女王を引き取らなかったのも、先々代女王が不倫相手の子を身籠っていたからで、自業自得なのだが。

 先々代女王は、自分の守護者が初代女王の守護者と未だに信じて疑わず、不倫相手との娘に契約変更を聖母教会に認めさせ、娘を女王に即位させる野望を抱いていた。

 その娘も、母親から歪んだ教育と怨み事を学び聞かされて育ち、選民意識が増長した自分本位で承認欲求高めなお馬鹿さんな脳内お花畑というか、自分の我が儘は全部叶えられると勘違いしている模様。

 さらに、平民出身の女王をよく思わない派閥貴族に持ち上げられて、策士気取りで宰相閣下達への復讐を企てているのも把握されている始末。

 なら、それを逆手に取り、先々代女王から続く不始末やら、当代女王を引きずり降ろそうと企む派閥も一網打尽にして膿を取り除こうとしたのが、今に繋がる訳。

 ああ、もう。

 聞いていて、苛つくわ。

 だからさぁ。

 そうして、裏で暗躍して、最終的には宰相閣下とユークレス卿が混乱させた責任を取り、辞任か自死を選択する気だろう。

 あのね。

 それやると、迷惑被ったヘンドリックス伯爵家の評価も下がるって理解してないだろ。

 あと、相談なく餌役されて、犯罪者ギルドに利用されて、禁忌の薬物中毒にされた落とし前の付け所を失って、怒りの昇華させる相手が別な第三者になる可能性高いんだよ?

 高い確率で、矛先はうちの農園に左遷されたアーガストさんか、騎士団総長のフレッド氏に向かうよね?

 もうちょい、後に残された立場の人物を思いやれと、声に出して言いたくなった。

 その前に、先代ヘンドリックス伯爵さんに怒られろや。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょいと今回は長文です 先々代と後ろ盾である貴族家の老害達が其々余計な事を仕出かし、先代ヘンドリックス伯爵夫妻が迷惑を被ったのは前回までの流れで把握してましたけど、改めて考えると更に今…
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