女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。

第五章 女王国内の異変

１７５ ガラじゃない気分でした

　カイゼルの新領主ヘンドリックス伯爵の案件について、シェライラにはジルコニアを経由してファティマが連絡した。

　過保護な某枢機卿猊下には、エバンス司祭を経由して話を持っていった。

　ライザス領地を改革途中で忙しいかと思いきや、シェライラはすぐにランカ領地にやって来た。

　それから、某枢機卿猊下もサーナリア国の後始末で忙しいはずだが来訪すると連絡が来た。

　で、代官のフォードさんも交えて、開拓中のランカ領地に真新しい教会にて話し合う事になった。

　仮役場？

　フォードさんが、枢機卿猊下を迎えるには相応しくないと訴えた為に、教会でとなった。

　王城？

　何か、枢機卿猊下云々な話になり、女王陛下や宰相閣下やユークレス卿が真っ青になったので、怖がられてるなぁと思いやめた。

「まあ、そんな事になっておりましたのね。わたくしの不手際と認識致しました。ミーア様、大変申し訳ございません。問題となった治療現場に立ち会わせた医師と治療師を解雇した後の、監視を怠る失態を犯してしまいましたわ」

「一応、謝罪は受け取るけどね。あの二人には私がグレイスにお願いして、あの場で見聞きした件を他者に話さない、伝えない制約魔法をかけて貰ったし。私も、拷問の末に聞き出した輩がいると警戒しなかったミスでもあるから、お互い様という事にしよう」

「はい。ですが、あの時点においてミーア様は爵位持ちではない一般人であります。わたくしが、率先して内密にでも監視して注意しなくてはならなかったのです。それを、解雇後の行き先だけ監視を敷いただけに終わらせてしまいました」

「ミーア様、シェライラから監視を願われたのは、わたしにも責任があります。時空(とき)の、わたしに何かしらの罰をくださいませ」

　私がお互い様でミスしたんだからと、水に流そうとするのに。

　この主従は、思い詰めた面持ちで、自ら罰を受けようとすんなっての。

　あの時、グレイス任せにしたのは私だぞ。

　それから、フィディル辺りに注意するよう指示出さなかったのも、私だ。

　まさか、死に際の状態になったら、魔法が無効になっていたとは、グレイスも認識してなかった。

　ジルコニアは、あの医師と治療師が聖母教会を頼ったまでは監視と追跡はしていた。

　が、グレイスの魔法がかかっている状態の二人の魔法解除には、聖母教会の誰もできないだろうと判断した結果、監視を止めた。

　が、何らかの事態に備えて、眷属の精霊に要注意人物であるとは通達していた。

　だから、あの二人が無惨な姿で亡くなったと連絡されて確認したら、ライザスの冒険者ギルドと聖母教会が手を組み、死に至る間際の制約魔法が無効になった隙をついて、高度な治療魔法を行使する治療師がいると知られていた。

　いや、その話は前にも正座されて聞いたよねぇ。

　フィディルの時空魔法で調査して貰い、私の人相や名前までは公にはなっていなくて、私が治療師だと冒険者ギルドにも治療ギルドにも登録してないから、身バレには至らないだろうと結論つけたはず。

　あれ？

　してなかったか？

　ああ、ツンデレアナスタシアちゃん登場とロンバルディア騒動が起きて、その辺りシェライラに話してないや。

　ごめん。

　これも、私のミスだ。

　私が放置してんだよ。

　シェライラもジルコニアも、悪くないじゃんか。

「フィディル」

「はい、マスター」

「その一件、後日フィディルに調査頼んで、私にまで行き着かないと結論できて、放置したの私だよね」

「まあ、そうなりますね。ですが、風には報告しました」

「あ、ああ。そうですね。時空(とき)から、放置で構わないと報告されました……。もしや、わたしはシェライラに伝えてませんでしたか？」

「……ええ。わたくしは聞いておりませんけど？」

　ジルコニアの言葉に、シェライラが恨めしい眼差しと、重たい念を込めて発言する。

　フィディルとファティマは、大精霊にあるまじき失態だと念話のやり取りしている。

　こら、うちの大人組。

　私にわざと聞かせてるでしょう。

　フィディルとファティマがジルコニアにお説教し、私に庇わせる気でいるな。

　というか、ジルコニアの主人のシェライラの叱責より、自分達の叱責が上位であり、私が更に上位に位置すると念押ししたいだけだろうに。

　その手には乗らないからね。

「大変、申し訳、ございません！」

　あの日再び。

　ジルコニアは周囲の不穏な空気に耐えきれず、正座し頭を下げる。

　大精霊の威厳は、何処いったさ。

　まだ、シェライラや私だけがこの場にいるなら、なあなあにできたのに。

　エバンス司祭とフォードさんの存在忘れさらしてんじゃないか。

　エバンス司祭は、ジルコニアが風の大精霊だと把握されている。

　フォードさんは、大精霊ではなく上位精霊だと認識していたのを、訂正したのはそんなに前じゃない。

　各属性の大精霊が女王国にて、守護者を務め、活動中だと教えたら酷く驚かれたもんだ。

　フォードさん曰く、大精霊は精霊聖域にて世界を見守っているというのが、世に流通している神話であるそうな。

　また、神々の次の座に精霊王がいて、大精霊も神話の中でしかお目にかけれない尊い存在である、と。

　うん。

　それを聞いた私が逆に驚いたもんだ。

　何しろ、うちの子達皆大精霊で、農園の子供達に交じり、農作業も嬉々としてお手伝いしてるからね。

　神話の中の存在の威厳は、ジルコニアではないけど、ありもしやしない。

　まあ、でも。

　フォードさんは畏れ敬う大精霊を間近に感じて、農園の子供達同様にレオンにお使い頼めれるまで、馴染んだけれども。

　ついでに、風や火や嵐の大精霊が女王国の頂点に座する女王陛下や宰相閣下や筆頭女王候補の守護者しているとも教えたさ。

　うちに居着いた居候グレイスもね。

　じゃあ、残りの三柱は精霊聖域にと尋ねられたので、休眠状態の三柱が眠る精霊石出しかけ、ファティマに制止されて、全十三柱の大精霊が女王国に存在していると悟って貰えた。

　済みませんなぁ。

　神話の内容を覆してしまってと溢したら、

「だから、我が国の庇護枢機卿猊下はあの方なのですね」

　だって。

　詳細は語ってくれなかったけど。

　どうやら、エルネスト枢機卿猊下は次期教皇であり、教区をもたない枢機卿猊下だったらしい。

　それが、次期教皇の座を蹴って、教区持ち枢機卿猊下となるも、筆頭枢機卿猊下であるのには代わりがなく、何故新興国を庇護してくださるか謎があったんだって。

　私的には、私が転生する場所をあらかじめ作り待たれていた気がしてならないが。

　うーん。

　この話題になるとはぐらかされた返信しかないから、触れられたくない話題なのだとは思った。

　いかん、話が逸れた。

　ジルコニアの正座謝罪に、気が削がれた。

「ジルコニア」

「はいっ、ミーア様」

「ジルコニアのマスターは、シェライラなのを改めて認識しなさい。本当は、様呼びされたくないんだよ」

「……はい、理解しております」

「エルシフォーネもアリスもジルコニアも、私以外のマスターいるんだよ？ 幾ら、過去に友誼を結んでいても、私はジルコニア達のマスターではない。また、ジルコニア達の始まりのマスターとも知り合いだし、仲間だったけれども、様呼びされるの自分のマスター以外に私だけだったよね？ あれ、誰かさんから妬まれてたのを、分かっていたよね？」

「……はい」

　シェライラ達の前なので、誰とは言わないけど。

　うちの子達は、滅多に私を様呼びしない。

　常に、マスター呼び。

　であるのに、いつからだろうか。

　気が付いたら、他の大精霊の守護者達から様呼びされて慕われていた。

　ゲーム内の私の拠点にも、出入りしていたりする。

　そっちは、うちの子達が承認したから出入りしていたのだろうが。

　クランが崩壊し、ユーリ先輩以外を大精霊守護者仲間全員が、各自の拠点を出禁設定した後も、ジルコニアだけは皆は受け入れていた。

　結果、ユーリ先輩から盛大に妬まれたけどさ。

　ユーリ先輩は、孤高の錬金術師兼魔女プレイしていた。

　だからといって、ユーリ先輩が一人でクエストを攻略したり、貴重な錬金術アイテムを作成してた訳ではない。

　錬金術のアイテムも上級者になると、錬金術以外のスキルも必要となってくる。

　例に出すと、あるアミュレットの核となる素材は錬金術で、アミュレットの本体は細工のスキルでしか作成できないとする。

　そうなると、錬金術と魔女プレイのユーリ先輩のスキル構成では、細工スキルを上級にするにはスキルポイントとかかる時間が、細工師を生産ジョブにしている私の何倍も負担しないとならなくなる。

　メインジョブが魔女で生産ジョブが錬金術師のユーリ先輩に対して、私はメインジョブが精霊魔法師で生産ジョブが細工師。

　更に、生産ジョブをステータスに反映するには課金するしかなく、大抵のプレイヤーのジョブは二種だけ。

　ユーリ先輩は、私に対抗して課金し生産ジョブを増やしたも、三種目のジョブスキル熟練度は、二種の何倍もかかる壁にぶち当たり、匿名か偽名か捨てアカを使い、運営にクレーム連発するわ、ユーリ先輩を拒絶して離反したクランメンバーの悪評を流したようだった。

　当然、運営も冷静な対応判断して、積もり積もったユーリ先輩の悪質行為にアカウント停止処分が下されていた。

　ただし、本人はリアル都合でとか、学生の身であるから勉強がとか、言い訳してたのも私達は知っている。

　挙げ句の果てに、あの依頼の後任に私達が対応すると嘘までついていた。

　ユーリ先輩は知らないだろうが。

　アカウント停止中の時間、ジルコニアがどれだけ依頼人に謝罪したり、私達に迷惑だとして最後まで頼ってくれなかったのを、知らないままでいたかもしれない。

　だから、私達はジルコニアには手を貸した。

　大精霊の筆頭である三柱のフィディルとファティマとグレイスの権限を行使させて、ジルコニアとヴァイオレットとヴィオレッタを解放させるべきか悩んだりした。

　最終的に、ジルコニアは拒み、レットとレッタは沈黙した。

　そうこうしている間に、私が巻き込まれ召喚で転生する羽目になり、今に至るけど。

　ジルコニアの盲目なユーリ先輩至上主義が、現在のマスターのシェライラをおざなりにしてしまうのを、私は危惧している。

　よって、少し重めに話し合おうか。

　私がお説教だなんて、ガラじゃないけれども。

　ユーリ先輩復活があるかもしれない未来、ジルコニアかシェライラが傷付くのを防ぎたいと思った。