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171 減らない資産でした

 ははは。

 新興貴族が新たに領地開拓するには、莫大な資金が必要不可欠。

 なので、女王国には領地開拓資金援助する組織があり、開拓段階に応じて無利子で資金を貸し付けていたりする。

 それから、組織が設定した返済額を返していく訳であるが。

 領地開拓から数年は、国に納める税金も免除されるし、寄り親となる大貴族の援助もあわさり、大抵は四·五年もしたら最初に貸し付けてくれた資金は返済できるらしい。

 まあ、中には開拓失敗した領地もあり、せっかく叙爵された爵位も返上した案件もあったそうだ。

 というか、私が拝領される前のランカ領地が、まさにそれ。

 貴重な素材の宝庫であるベルゼの森に隣接する土地という事で、恵まれた領地として注目され、親の領地運営にめざましい貢献をした大貴族の三男が、当時の女王陛下と宰相閣下に、彼ならば開拓は容易いと思われて指名されて、ランカ領主となった。

 しかし、恵み豊かなベルゼの森に反して、ランカ領地は開拓していくにつれて土地が荒れていき、井戸からも水が失われていった。

 三男の親も、名誉ある指名され、期待された領地開拓を支援したが、どういう訳か資金や人材を多大に支援しても荒れていく一方。

 最終的に、親の資金援助も回収不可となり、親子して没落してしまった。

 その後も、領地運営に有力な才を持つ人材を派遣したも、皆さん開拓失敗に終わった。

 で、その理由に思い至ったのが、初代錬金女王が遺した遺言めいた誰かに宛てた、ランカ領地の権利書。

 この時には、権利書の名前が記載されてあるも、文字として認識されてなかったからか、誰かにしかランカ領地開拓させない初代錬金女王

 の意向が、開拓失敗に繋がっていると貴族院は断定した。

 そうして、ランカ領地は王領としてベルゼの森の恵みは冒険者達に委ねられた。

 で、ベルゼの森周辺は肥沃な土地であるが、開拓していた土地は荒れ地となったという矛盾した変な土地になってしまっていたという事。

 なのだが、まあね。

 そりゃそうだ。

 だって、権利書の名前日本語のカタカナ表記だったからね。

 ユーリ先輩は、私の本名を漢字で記載したかったぽいが、何故か本名でなく、ミーア=バーシーとあった。

 これは、人外さんが関与していると推測した。

 どういった経緯で権利書に関与したかは、人外さんにしか分からないだろうけども。

 まあ、約二年後の勇者召喚に私を巻き込ませない配慮なのだろう。

 何故か知らないけど、勇者召喚に関わらせたくない思いがあっての事とみた。

 その割に、過保護な加護やら祝福やら、対抗策だろう魔法までくれたけどね。

 私的には、ユーリ先輩やらあれな神と対峙するだろうとは践んでいるが。

 話を戻す。

 で、過去の開拓失敗続きをみかねて、開拓資金援助してくれる組織からは、一度目の資金援助の手続き書類が届いた。

 ははは。

 問題ナッシング。

 移住者さん達の住居や商業&冒険者ギルドの支部と倉庫の建築素材に、領地開拓資金は自前の資金で賄いました。

 ついでに、冒険者さん達が寝泊まりする宿泊施設と、移住者さん達に必要な生活必需品や、一番必要な飲食店関連の店舗まで、大人数の大工さん達を雇い一月弱で建築しまくっていただきました。

 勿論、大工さん達に支払う賃金も私持ち。

 余りある資金で、村? 町の間違いじゃね? という、開拓になりましたとさ。

 うむ。

 代官のフォードさんには呆れた視線を貰ったが、悔いは無し。

 大金庫のお金は減ったが、還元しただけ。

 領地が豊かになれば、私は満足である。


「そうして、更にバーシー伯の資産は倍になって増えていくのですね」

「何故に増えていく? 商業&冒険者ギルドから上納された資金は放出したはず。何故に、減ったはしから増えていきますか」


 そうフォードさんに突っ込まれた。

 おかしい。

 何故か、還元したはずの資金が増えていく一方なんですが。

 かなり、大金貨やら使いまくった気がしたのだが。

 領地開拓も村レベルから町レベルにアップした過程で、ライザスの町一択だと贔屓過ぎるから他の領地の領主さんの許可をいただき、宿泊施設や飲食店の経営者を斡旋して貰ったお礼の金銭もだしたりしたのに。

 何故か、増えていく資金。

 解せない。


「それはですね。ベルゼの森産貴重素材含め、バーシー伯の農園の農作物やら、居候夫妻の乳製品やらが、女王国の始まり以来の大それた付加価値がついた名産品となったからです」

「付加価値? 精霊の祝福付き農作物は、輸出に不向きだと聞いたけど?」

「ええ。大商会が所有する希少な時間停止付与付きの魔法鞄(マジックバッグ)や袋等、更に希少なアイテムボックススキル持ちに頼ると、祝福は消え失せるのは話しました。ですが、枢機卿猊下が祝福したマジックバッグや人物のアイテムボックスなら、精霊の祝福が消え失せない事態が判明しました。よって、枢機卿猊下お墨付きの商会や、商業自治区周辺では、ランカ領地の農作物やらは女王国の名産品と名高くなりました」


 うん。

 精霊の祝福は、他者の魔力に触れたら消え失せるのは前にも説明した覚えがある。

 だから、輸出品には向かないと思っていたら、もしや人外さん同胞の枢機卿猊下さん達に自慢しやがりましたか?

 宣伝とかしちゃいやがりましたか?

 いらないお世話は、止めてくれだ。

 そういや、商業自治区で炊き出しとかやって、病気の人に配ったとかも聞いたっけ。

 どうりで、農作物の輸出計画書とか、販路拡大の要望書とか領主のお仕事に交ざっていたのか。

 いかんせん、農園の農作物にも数に限りがある。

 優先したいのは、領地の住人向けの販売なのだけど。

 ただいまの季節は夏真っ盛り。

 農園には夏野菜がたわわに実ってますわ。

 移住してくれた飲食店の経営者さん曰く、住人のお客より冒険者や精霊の祝福食材目当てのお客が多いらしく、住人の皆さんが食事に来てくれる数は少ないのだとか。

 他の領地でパン屋修行した若夫婦も、パンを買い占めるのは他の領地からのお客ばかりで、住人分に分けてあるパンまで買い占めたがる分別つかないお客がいると相談された。

 ので、領主権限で買い占め厳禁、住人優先の商売路線をお願いした。

 前回、商業&冒険者ギルドにベルゼの森産貴重素材を安く買い叩こうとした悪徳貴族と商会みたいに、反発する苦情も出たが、今回は治安維持の自警団の人材も増員されたので、騒動を起こした方々はライザスの町に引き渡し、宰相閣下の補佐官が直々に警告と処罰を言い渡し、買い占め騒動は鳴りを潜めた。


「バーシー伯の領主権限で、農園の農作物は領主の商店にも格安で卸してますが。経営者側もできる方々で、住人には適切な価格で販売し、物見遊山で訪れ無理難題ふっかけ、金で解決しようとなさる方々には、適当に煽て特別メニューと銘打って、割高な食事を提供して、差額の売上金を税金として納めてくださるんです」

「商売なんだから、割高な金額分を儲けにあげないのは、どうなんだろうか」

「宿泊施設の経営者も飲食店経営者も、こちらの領地に移住するまでは並々ならぬ苦労がおありだとか。食材にかかる税金に、売上金に比例して増額される税金で、領主に納めなくてはならない税金で儲けの大半が無くなるそうでした。ですので、宿泊施設や飲食店の建物の賃貸契約にかかる税金や、ランカ領主に納める税金が他の領地から見てかなり低いのに驚かれてましたよ」


 基本的にあまり視察とかしない、農園に引きこもりがちな領主の人柄は良く知らないが、こんなに安い税金で領主の資産は大丈夫なのか心配されていたんだって。

 代官のフォードさんに、ランカ領主は人が善すぎて騙されたりして、資産を搾取されたりしないか、没落したりしないか案じられてたよ。

 ただまあ、フォードさんからバーシー伯の総資産を(ゲーム内の死蔵アイテムは把握されてない)、新興貴族なのに大貴族並みに資産を保有している開示を提案されて了承した。

 おまけに、商業&冒険者ギルドからも月に納める上納金や税金を開示して、バーシー伯の資産は全てではないがランカ領地では知られる事になった。

 死蔵しているアイテムを世に出したら、いったい幾らの総資産になるか調べてみたくなったが、フィディルに止められた。


「止めてください。ただでさえ、虹色真珠で騒動が起きました。その虹色真珠の在庫が三桁に近い数があるのを知られたら、大挙して強欲な人間がやって来ますよ。ファティマの結界があるとはいえ、毎日の如く侵入者がいたりしたら、農園の子供達が怯えますから」


 至極もっともな指摘に、そうだった。

 農園には私一人じゃなかったと反省したよ。

 子供達がいたんだよ。

 侵入者避けの罠細工も却下されてたし、安全にはかえられぬ。

 まあ、灰色君が排除してくれるだろとは思うけどね。

 農園内の警備には、ナイルさんと騎士ワイズさんに、監視役のアーガストさんに、武技に長けたアンナマリーナさん以外の人材いなかった。

 うちの子達もいるけど、次期アルバレア侯爵家の継承者もいるしね。

 危ない橋は渡らない方針でいこう。


「ただ、最近厄介な案件もあります」

「というと?」

「バーシー伯が、元養護院の子供達を雇用した話が、庇護した話に刷り代わり、低所得の家庭の子供をランカ領地に置き去りにする事件が増えつつあります」


 なんだと。

 聞き捨てならない発言に眉間にシワが。

 領地開拓が成功すると、こんな事態が発生するのか。


「で、その子供は保護されている?」

「はい。教会のエバンス司祭が率先して保護されております。ですが、中には両親もおり置き去りにするまで家庭環境が悪くない事案もあります」

「口減らしは容認したくないけど、仕方なくって場合もあることも認めるけど。後者は、他の要因があるって事か」

「はい。二件は、親が再婚した際に前妻や前夫の子を相手が疎んででしたから、その子供は司祭が身元引き受け人になりました。後の五件は、あわよくばバーシー伯に引き取られ、養子縁組みされてバーシー伯の財産狙いであると判断されております」


 前者の子供は虐待を疑われ保護が妥当、後者の子供はうちの農園従事者の子供の仲間入りするには問題有り。

 シェライラ預かりになり、宰相閣下の判断待ち。

 悪質な行為と認められたら、親は何らかの罰則が与えられ、子供は私に関係ない養護院預かりになるらしい。

 まあでも、農園従事者となった子供達の養母のチェルシーさんなら更正させちゃう気もするが。

 何にせよ、子供を置き去りにする行為は取り締まらないとね。

 でないと、姥捨山よろしくな領地になりかねないからなぁ。

 エバンス司祭にも、子供の保護はほどほどにして貰うかな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 欲に駆られた者の浅知恵とはいえ、それが続けば脅威となり他領や、無いかもだけど他国から謂れ無き糾弾を受ける嵌めになんて可能性も無きにしてあらずですし、即解決は無理でも確実な解決方法を見付けませ…
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