表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/327

143 悪巧みは一蓮托生でした

 うーむ。

 サーナリア国に着いた当日、やはりセヴラン王子が私が滞在するベルジニア妃が管理する離宮に、深夜夜這いをかけてきた。

 生憎と、対策は練っていたので、被害は全くない。

 と言うか、セヴラン王子は、うちの子達プラス人外さんの嫌がらせ対策の過保護な鉄壁な対抗により、厩舎で一晩眠りこけていたのが発見された。

 私はレオンに依頼された精霊姫ちゃん用の呪詛耐性極大の付与をつけた腕輪を明け方まで製作し、出来上がりの腕輪をレオン経由で精霊姫ちゃんを守護する精霊に託した後、睡眠不足をファティマからお小言をくらったので、長期移動の疲労が見られた為と称して、翌日は昼過ぎまで睡眠をむさぼった。

 まあ、私に狙いをつけたセヴラン王子側は見舞いや何かと理由を付けて、滞在する離宮に押し掛けてきたそうだが。

 最終的に、ベルジニア妃から正妃様に報告がいき、外交問題を起こす可能性があるとみなされ、謹慎処分が出されたそうだ。

 そういや、来賓として招いたわりに、サーナリア国王に謁見してないが、体調不良と私側が面談をお断りしたからかな。

 と思っていたのだが、アーガストさんとアレクシスさんが情報を拾ってきてくれた。


「バーシー伯。どうやら、サーナリア国王は精神的な病により、正常な政務できない状態らしい」

「現在、執務を代行なされているのが、正妃殿と宰相閣下と数名の大臣のみだそうだ」

「サーナリア国王は酒の飲酒過多による酒毒であると、暗黙の秘密であり、正妃殿達も否定はしないでいるとか」

「恐らくは、それは虚偽の情報だと思われる」


 二人共に他国の上級貴族の嫡男と英雄の家系の、顔よし、身分よし、性格的に浮気しなさそうと、王城に出仕する身分ある女官見習いの令嬢から玉の輿狙いを逆手に取り、情報収集をしてくれていた。

 視線でフィディルに目配せすれば、幽かに頷き信頼できる情報と理解した。

 で、懲りないセヴラン王子の晩餐の招待だとか、個人的なお茶会の招待だとかを片端から断りつつ、悪いとは思うがちょっと搦め手の手段を取った。

 ベルジニア妃とマーガレット妃の境遇を、探らせてもらった。

 で、分かった事は、セヴラン王子が正妃様の子ではなく先代の国王の子であったり。

 ベルジニア妃が騙され、私にされた様に薬を盛られて自由を奪われ、女児を産まされ。

 マーガレット妃は、現サーナリア国王に事態を打開されるのを期待されていたり。

 あらがい続けていた現サーナリア国王子が、良心の呵責に堪えかねて、精神的不良な状態に陥っていたり。

 おい、これ。

 全ての元凶は、サーナリア国のエプスタイン王室に呪詛を教授し、実行させた呪術師なのだと判明した。

 その呪術師は、やはりダレンなんだろうな。

 あいつ、ぜっったいに、殴るだけでは済ませてやらん。

 セヴラン王子に付いていた侍従は、フィディルとファティマによる強制的な精霊との契約破棄によって、精霊魔法及び精神干渉魔法を行使できない反動で、一部の記憶欠損が見受けられた。

 これは、ダレンが自分が干渉した経緯を残して、追跡や処分を連座で受けない為の保険で、脳内に危険な魔法を仕込んでいたんだろう。

 ヤツめ。

 サーナリア国を破滅させたい理由は何か推測できはしないが、どうせ碌でもない策だったんだろうな。

 あまり、擁護はしたくないけど、現サーナリア国王もある意味では被害者だわ。


「了承した。サーナリア国王については、私が対処しよう。ミーア君は、当初の予定通り精霊姫に関する問題に専念してくれないか」

「了解です。では、マーガレット妃に面会してきます」


 アーガストさんとアレクシスさんがいるので、人外さんはエルネスト枢機卿の立場でわたしに接する。

 で、私の発言が気に入らないのか、盛大に眉をしかめた。


「まず第一、精霊姫ちゃんの呪詛を還すのは簡単ですが。それをすると、高確率でサーナリア国王の命が危ないです。第二、マーガレット妃とジャスミン王女も限界を越えた無茶な花を咲かせてます。しかも、蓄積型の毒を接種されてます。治療したいです。第三、養子なのに、正妃の息子と偽り、権力を嵩にやりたい放題している馬鹿に嫌がらせ開始したいです」

「……第三以外は承認できるが、ミーア君の行動を抑制する権利は私にはない。法に反しない嫌がらせなら黙認しよう」


 よし、人外さんの言質は取った。

 ならば、さっさと突撃あるのみ。

 人外さんがサーナリア国に潜ませている配下の協力の元、マーガレット妃に与えられた離宮にやって来た。


「……どうみても、国王の妃が暮らす離宮ではないですよね?」

「はい、外見は冷遇されている妃の住まいでございますが、中はきちんと改修されております。配属されております女官に侍女もまた、国王陛下が王太子時代に厳選した忠義に厚い者達ばかりであります」


 いやぁ、離宮とは名ばかりな建物は、いいとこ裕福な大商会の住居と言っても過言ではない、二階建ての屋敷だよ。

 しかも、築数十年は過ぎ、外壁はひび割れが目立ち、隠す為か蔓植物が建物を覆いつくしていた。

 とても、国王の妃が住まう建物ではない。

 下手したら、下働きの下級職が住み込む寮でも通じるよ。

 案内してくれた侍従長さんの説明だと、精神が安定していたサーナリア国王が、まだ存命であった先代の国王の命令でマーガレット妃を隔離するのを止めれず、その命令に反抗できたのが唯一内側の改修であったと。

 それから、冷遇されるマーガレット妃とジャスミン王女が、少しでも安らかに日々を送れるように、決して二人を裏切らない人材を派遣し、二人にあてがわれる予算が減額されるのも危惧して、私財を換金して多額の金銭も残してある。

 うん。

 サーナリア国王の評価が、変わってきたわ。

 屑国王と思い、反省する。

 恨むべきは、呪詛本体か。

 まあ、そちらは人外さんに任せよう。


「こんにちは。招かれてないのに、訪問した無礼は先に謝ります。ですが、先に治療させてくださいね」


 忠義に厚い女官さん達は、突然訪れた私を追い返したりはしなかった。

 何故か。

 それは、案内してくれた侍従さんの地位が高いのと、前以て訪問内容をマーガレット妃とジャスミン王女に告げないでと説明して、納得してくれたからだ。

 日当たりの良くない暗めな部屋にて、気だるげにソファで休息していたマーガレット妃とジャスミン王女の反応は鈍かった。

 茶器を持つ指が小さく震えているのを、見過ごしはしない。


「抵抗しないでくださいね。【毒よ、消えよ。アンチポイズン】【不調を正せ。リフレッシュ】【癒せ。オールキュア】」

「えっ?」

「はい。ジャスミン王女も、同じくです」


 毒消しと、毒による内臓機能低下の不調を整え、体力低下の免疫力アップ効果がある治療魔法をマーガレット妃に施し、続けてジャスミン王女にも同じ魔法を施す。

 うむうむ。

 我ながら、良い仕事をした。

 体調不良の最中、精霊姫ちゃん癒しの花を送り続けてきたのもあり、魔力欠乏症にも罹患している。

 こちらは、魔力譲渡するほどの良好の仲ではないので、出来ないのが悔やまれる。

 が、私の手持ちのアイテムボックスには、魔力回復薬がたんまりとストックされている。

 テーブルに百本近く並べてみた。


「これは、魔力回復薬です。今日から一日一本は飲んでくださいね。ああ、瓶には長期保存の付与がされているので、半年は効能は保ちますが。できるなら、魔石を一緒にいれた魔法袋(マジックポーチ)魔法鞄(マジックバッグ)で保管するのが一番よいです」

「申し訳ございません。こちらには、そのような魔法に関するアイテムは……」

「分かりました。では、この魔法袋を貸し出します。ああ、でも気付かれたら没収とかあり得そうですね。確か、マシューさんでしたね。マシューさんに預けておきますね」

「畏まりました。それでは、昼食後にお持ち致します」

「はい、それがよろしいかと」

「あ、あの? ちょっと、待って? 何が、起きてますの?」


 マーガレット妃が、私達、筆頭女官さんと案内してくれた侍従さんとやり取りしているのを、きょとんとした眼差しをして口を挟んできた。

 勿論、私達の会話はすでに打ち合わせ済みな内容ですわ。

 でないと、他国の貴族に治療なんかさせないし、持ち込まれた薬品なんか受け入れられないしね。

 事前に、筆頭女官さんと侍従さんに、信頼できる王城勤務の鑑定持ちの薬師さんに回復薬の安全を確認して貰っている。

 また、この魔力回復薬の作製者はユーリ先輩ではないので、私も安心して提供できた。

 まあ、薬師さんには素材の薬草と魔力回復薬の要の月光花の朝露の出所を、しつこく問い質されたけど。

 どちらも、いつの間にかうちの農園にて栽培されていたのだとは、教えられない。

 でないと、根こそぎ奪いにきそうな勢いだったので、女王国の宰相閣下に問い合わせるよう伝えたら、意気消沈された。

 侍従さんから耳打ちされた内容によれば、ある国の薬師さんが商業ギルド経由で手に入れた女王国の薬草が、自国の薬草より効能が高い薬となり、自国を巻き込んで薬草を根こそぎ独占しようと画策して、外交問題を起こしたんだって。

 で、宰相閣下が薬草の保全と、転売目的の商会を排除する為に、商業ギルドの推薦状を所持している商会しか取り引きを厳禁にし、転売が判明したらその商会だけではなく、その国全体との取り引きは厳禁とすると各国に通達した。

 まあ、それでも女王国は新興国として侮られたせいで、大国は無視して小国から半ばぶんどる形で取り上げて、他国に高値で売りさばいた結果。

 買った側の他国が自国に持ち帰ったら、薬草は枯れた状態で使い物にならない塵とかした。

 これには、大国に高値で買わされた他国も、大国に苦情を呈し賠償を求めた。

 対して、大国側も輸送に問題があったか、販売元が紛い物を販売したので、大国も被害者だと反論した。

 ついでに、女王国にも責任があると訴えてきたから、宰相閣下もお冠と相成り、取り引きの書類を各国に送付し、大国とは一切取り引きがなかった証拠を中立国の神聖国に報告した。

 エルネスト枢機卿以下、複数の枢機卿も女王国側の主張が正しいと味方し、大国の不正が暴かれる羽目になった。

 といった過去の騒動があり、女王国からの薬草関連の輸入は申請してもなかなか承諾が得られるまで時間がかかるらしく、薬師さんも女王国産の薬草素材入手は断念せざるをえないのが実情であった。

 なので、私がマーガレット妃とジャスミン王女に魔力回復薬を提供したら、あの薬師さんは何としても手に入れそうな手段に出てきそうなのが目に浮かぶから、警護の薄いマーガレット妃達の離宮には置いてはおけない。

 そこで、侍従さんの出番である。

 マシューさんは人外さんの配下の人なんで、ねこばばするような悪意は持たないし、自衛が出来るし、希少な時空魔法属性持ちでアイテムボックスのスキル持ち。

 渡りに船な人材だ。

 故に、魔力回復薬はマシューさんに託すのがベスト。

 今一、事態に付いていけてないマーガレット妃をよそに、悪巧みを働いた私達であったとさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >断念せざるおえないの なんか必ず「おえない」で書かれていますね。 「"を"えない(得ない)」です。
[一言] コレでマーガレット妃母子は助かりましたし、精霊姫や他の不穏な部分を除去出来れば取り敢えずって感じではありますが、この事件は終わりと言えるでしょう。 けど、何処まで奴の毒が蔓延してたかに拠るか…
[一言] 【妄想劇場】 【そのいち】 >と言うか、セヴラン王子は、(略)厩舎で一晩眠りこけていたのが発見された。 「なぁあれ、殿下だよな?」 「確かにこの馬は牝だけど……」 セヴラン王子は牝馬の尻…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ