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134 問題を聞きました

 エバンスさんが合流したら、呆気なく足止めされていた国の国境を超えられました。

 その事情に、奮闘していたベネディクトさん達はかなり落ち込んでいたが、そこは冒険者ギルドを立て直したメンツである。

 翌日には、何事もない態度で護衛役してました。

 で、馬車に同乗する事になったエバンスさんは私の事情を把握していたので、


「どうぞ。一度農園にお戻りになったらよいかと。ミーア様の居留守には、これを使いますのでご安心くださいませ」


 にこやかに笑うエバンスさんは、自身のアイテムボックスからマネキン人形のような形態のヒト型のモノを取り出す。

 何でも、守護者の錬金人形を真似た魔法人形らしく、魔力を流した人物の姿に擬態し、簡単な受け答えできるよう改良されたすぐれたアイテムだった。

 まあ、エバンスさんの説明によると、もっぱら使用していたのは人外さんの仮の姿であるエルネスト枢機卿猊下らしいがな。

 エルネスト枢機卿猊下はフットワークが軽くて、ほいほいと教区を巡回しては書類を貯めてしまい、週に一度は執務室に強制軟禁されるのだけど。

 隙をみてはこの魔法人形を使っては逃げ出すをやらかす常習犯だったりする。

 お付きの司祭さん達は、その度に魔法人形を回収してはいるのだけども、所持している魔法人形は数知れず、回収しきれていないとか。

 まあ、人外さんは創造神様だしね。

 そりゃあ、無限に造りだせてしまえるわ。

 で、ちょっと農園が気になるのも本音なので、ありがたく使わせて貰い、馬車の扉を何処でもフィディルで農園の屋敷に繋いで帰宅してみた。


「フォードさん。何か問題が起きたと聞きました。何がありましたか、報告お願い……」

「バーシー伯。お願いいたしますが、他国へ移動しておられる身ですから、先ずは来客がいるか把握されてからお戻りください」


 早速、フォードさんの執務室に足を運んだら、お小言いただいてしまった。

 うん。

 確認を怠った私のミスである。

 フォードさんの執務室には、見慣れた客と見慣れない客がいたよ。

 前者は私が他国へ招かれたと知る人物で、後者は全く知らない人物だった。


「あー、私は何も見てはおりません。この部屋にいるのは、私とバーシー伯爵領の代官殿と、ガンダルだけですな」

「はあ……、あっ、いや、そうであります。この部屋にお若い女性はおりません」


 ライザス商業ギルド長のテオドールさんと、テオドールさんに睨まれ威圧されたガンダルという中年の男性。


「これは、独り言です。ガンダルは、ライザスの町にて中規模な商会を営むガンダル商会の次期会頭になります。そして、バーシー伯爵の遠縁であり農園の共同経営者と偽った女性と、商業ギルドを介さない契約を結んだお馬鹿な人物でもあります。我々商業ギルドは、バーシー伯爵の領地たるランカ唯一の農園との取り引きは、商業ギルドが仲介した契約以外の契約を認めず、又違反行為であると口煩く通達しておりましたが。このガンダルめは、それを遠縁の身内だから許可されたと信じ、危うく莫大な契約金を支払いかけるわ。商業ギルドの通達に違反した違反金も支払わなくてはならなくなるわで、今やガンダル商会の経営危機に陥っております」


 ああ、はいはい。

 テオドールさんは実名をあげなかったけど、レオンがマルローネさんを農園から追い出した理由が、これな訳ね。

 マルローネさんはライザスの町にて、詐欺を働いた。

 しかも、私の身内であるとの嘘をついてだ。

 そんなのは、調べたらすぐに他人と分かりそうなものだけども。

 マルローネさんとガンダル商会は知己があり、商会はマルローネさんの言葉を信用してしまったとも、テオドールさんは教えてくれた。

 元々ガンダル商会は、マルローネさんの祖父が興した商会を二代目が潰した際に、商業権利を買い取り塩や砂糖といった調理に欠かせない調味料を扱う商会として急成長した。

 それから、商業権利を買い取った際の条件として、ガンダル商会の次期会頭とマルローネさんは一時婚約をしていた。

 マルローネさんの両親は、一人娘が借金で苦労しないように取り計らったつもりだった様だが、肝心のマルローネさんは自分もガンダル商会に売られたと反発して拒否し、祖母が残した屋敷と僅かな財産を元手に養護院を設立し、慈善事業を行う事で自身の価値を難あり物件だと知らしめた。

 これは、養護院や孤児院を営む権利を有するには、自身に子供が恵まれない体質的な問題があると認定されるからだ。

 まあ、自分に子供ができたら養護院や孤児院の子供達が疎ましくなり、養護院や孤児院が閉鎖されるのを法令として認めないと定められている事に理由がある。

 よって、マルローネさんは自分が子供に恵まれない体質だとして、ガンダル商会次期会頭との結婚を回避した訳だ。

 しかし、私が初めに知ったマルローネさんは既婚者だったがな。

 屑旦那との間に子供はいないと周知されているけどさ。

 うちの子達の目は欺けなかった。

 言いたくはないが、マルローネさんは娘を産んでいる。

 その娘の名は、エリーゼ。

 屑旦那が妻と不倫相手の娘と知らず関係を持ち、十代で母親になった少女。

  マルローネさんが不倫相手との間に産まれた娘で、以前に前領主のお手付きになった使用人夫妻の毒親の娘と話されたけどさ。

  実際は、同時期に産まれたが為に、夫妻相手側の実子が死産だったのもあり、不倫相手の奥さんがマルローネさんを脅迫して奪われた娘であった。

  ややこしいなぁ。

  不倫相手夫妻が実子としたのも、どうやら前領主にたかろうと企んでいたらしい。

 情報通のうちの子達から聞いて、近親相姦でなくて良かったと安堵した。

 だから、マルローネさんはエリーゼちゃんにとって良かれと思い、宰相閣下が薦めた場所に行かせ立身出世させようとした。

 又、思い違っていた場所から逃がす為に逃がし屋にお金を支払おうとして、私からお金をせびろうとしたり、働く子供達から給金を着服しようとした。

 挙げ句、逃がしたエリーゼちゃんとの新生活を送る為に、一生働かなくていい大金を得ようと、詐欺をしたと。

 結果、大金も得ず、うちの農園からも追い出された。

 今頃は、保護された冒険者ギルドで、私の悪口でも喚いているんじゃないかな。


「ふーん。じゃあ、こっちも独り言。商業ギルド長さんは、何しに我が家に来たのかな?」

「無論、返答も独り言です。詐欺行為を働いた女性は、バーシー伯爵の身内と声高に喧伝しておりましたので、その真偽と警告ですな。どうやら、例の女性はガンダル商会以外の数件の商会にも出向いております。まあ、ガンダル商会以外の商会は、我々の通達を把握されておりましたのでお断りしているので、被害はありませんでした。しかし、ガンダル商会はそうはいきません。仮契約とはいえ、バーシー伯爵が所有するランペリゼ農園と取り引きを結んでおります。商業ギルドは違反金と商いの制限を課しました。それから、ランペリゼ農園の所有者にも、通達致します。例の女性の身柄は、ランペリゼ農園にあります。女王国法に則り、ランペリゼ農園側にも罰則を課さねばなりません」


 テオドールさんは、如何にも苦渋の決断だと言いたげな表情で私を見た。

 私も貴族に叙爵されて、貴族院から分厚い法令が記載された書籍をいただいた。

 一応、一通りは目を通した。

 中には、悪手的な法令があり、貴族と庶民では圧倒的に庶民の分が悪い法令もあった。

 かといえば、庶民側が有利な法令もあり、矛盾している法令もあったりした。

 要は、裁判官の裁定で貴族が勝ったり、庶民が勝ったりしたり、賄賂問題が勃発したりで、幾度も解法がなされたりして、現在の法令に落ち着いた経緯が理由付けで記載されていた。

 で、けっきょくの処が、喧嘩両成敗みたいな感じになっていた。

 今回の場合に当て嵌めると、マルローネさんは雇用主でもあり、庇護者たる新米領主のわたしの名を使い、詐欺行為をした。

 だから、私の監督不届きとして、責任が発生して、罰則が適用されたのだ。

 まあ、大抵は罰金刑だけどね。

 私本人が裏で暗躍してマルローネさんを唆していた場合ならば、貴族位を剥奪か後継者に引き継がせ隠退し、庶民となり労働刑が課せられる。

 のだけど、私に後継者なんかいないから、国に領地は返還されて、貴族院の采配でうちの農園を存続させようとするのかな。

 ただし、そうなると精霊の恩恵は失われ、恵み豊かな農園ではなくなるのは確実だろう。

 うちの農園の農作物や希少種の家畜達の生産品目当てで、共同経営を名乗り出てきた某貴族や、未婚の私相手に結婚してやると宣う阿保貴族息子が頻繁に手紙を送ってきて、私の財産しか興味がない輩が続出中な為、醜聞な事案はそんな輩につけこまれるだけとは思ってはいた。

 留守番役のフォードさんとフェルトさんには、マルローネさんの監視をお願いしてはいたし、商業ギルドからも警告食らい、各商会にも通達して貰っていたのに。

 過去の伝手を頼みに、仮契約を結んでいたとはね。

 流石に、庇いきれないや。


「商業ギルドからは、加害者の監督不届きとして、ランペリゼ農園の所有者に罰金を納めていただけば、ライザスの町内だけの問題として処理致します。又、ライザス領主のガーデン子爵(シェライラ)には、事情説明は致します。その後、ガーデン子爵が王城へ報告なさるかは、彼の方のご意志に任せます」

「了解しました。フォードさんは、代官として罰金刑の通知が正式に届き次第、支払いを済ませてください」

「承知致しました。抗議や釈明はお出しにはならない方針ですね」

「まあ、あの人を自由にさせた責任は取らないとね。で、あの人が追い出された以降の子供達の様子は、どうなってますか?」

「比較的、落ち着いてはおります。が、動揺はされているのは分かりますので、包容力のある大人が側にいた方が良いと判断し、フェルトさんとナイル殿ご一家を宿舎に常駐していただこうかと」


 養父に騙され、養母に見捨てられたに近い子供達の状態が一番気になる案件だ。

 正直、私の名に泥がつこうが、醜聞が騒がれても、どうにでも対処できてしまえるので無視して構わないし、はなから他人の評価なんぞ気にもならない。

 貴族の名声欲とか権威欲とか、元一般日本人に求められてもねぇ。

 だいたい、こちとらスローライフ目指してるってのに、騒動が次々起きてるのはどうしてだろうか。

 いや、自分から関わった気もするか。

 何だか、人外さんは私に役割はないとか言いつつ、転生するきっかけになった勇者召還に関係した事案の解決に私を巻き込もうとしているみたいだし。

 でないと、今は行使できない魔法を付与したりしないよね。

 それから、女王国やこの世界の世直し的な役割りを、期待されているのかもと思うこの頃。

 あー。

 人外さん。

 ちょっと、夢にでも出てきて説明プリーズ。

 て、これは置いておいて。

 今は、子供達の精神的ケアが先だ。

 こちらの世界に、カウンセラーはいるのだろうか。

 いるなら、フォードさんに手配させよう。

 それまでは、申し訳ないけども、父親経験者の二人に任せますかね。

 アンナマリーナさんには、未婚だが母親役をお願いしとくか。

 そう遠くない時期に、ナイルさんと結婚するんだしね。

 お互いに、虫除け的な契約結婚だが。

 大分早いが、母親役の勉強にもなるしで、頑張ってくださいな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] エリーゼの母親ってどこかのメイド何じゃなかったのかな?? マルローネはメイドの仕事はやってなかったよね? 別のエリーゼ??エリーゼ二人いる? エリーゼって毒親から離されて養護院に来た…
[一言] 〉世直しを期待されてる 全く同じ事を私も思いました(苦笑) 偶然だろうけど此処まで続くと流石に関与を疑っちゃいますからね、ミーアさんの疑問は当然でしょう それにしても何処まで厚かまし…
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