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124 始まりの先駆者誕生間近でした。

 アルマニア枢機卿の弾劾と、大精霊の断罪がくだされた海洋諸国同盟一行が所持していた遠距離通信魔法具が、一斉に鳴り出した。

 恐らく、大精霊の断罪が執行されたのだろう。

 可及的速やかな対応指示をあおぎにきたのか、騒動が起きた理由を問い合わせにきたのかだと思うが、誰一人応対する事ができないほど事態に打ちのめされていた。


「ミーアさん。大変申し訳ないけど。貴女の大精霊の助力を願うわ。この馬鹿な一行を国元に帰したいの。対価は、これでどうかしら」


 使い物にならなくなった一行をさっさと見限り、責任を取らせる為だろう。

 アルマニア枢機卿猊下は、フィディルの転移を希望された。

 で、対価に出されたのは、南国の海洋諸国でしか繁殖できない作物と、メインであろう魔法薬が数瓶に、希少価値が高い深海で採取可能な鉱石と宝石の原石。

 魔法薬は錬金術師や薬師が目標と掲げるどんな状態異常も回復させる万能薬と、死者蘇生薬だ。

 おい、人外さんから死者蘇生はするなと、忠告貰ってるんだがな。

 こんなの、渡してよいのかね。

 後、鉱石と原石は地味に嬉しいから、貰えるなら貰いたいけど。

 対価にしては、支払い過ぎな気がする。

 と、疑問視していたら、魔法薬はフィディルに渡された。

 ん?

 もしかして、私に使用しろと言いたいのかな。


「どうぞ」

「ありがとう。では、これ等は回収していくわ。ああ、後日、これ等が迷惑かけた国々とこの国には、きっちりと賠償はさせるわ。もし、その件で横槍を入れる国があったら、エルネストを通じて私に連絡ちょうだい。私が対処するわ」


 フィディルは難なく扉を繋ぎ、アルマニア枢機卿猊下に開けた扉を示す。

 私、承諾してないのですけどね。

 それだけ、海洋諸国同盟一行が堪忍袋の緒が切れる行為をしたんだろう。

 フィディル達的にも、早い退場を願ったらしいな。

 アルマニア枢機卿猊下も、破門したとはいえ、海洋諸国同盟一行は自分の教区の住人。

 最後まで面倒は見る模様だ。

 それにしては、彼等一行の扱いはぞんざいで、首根っこひっつかまえ扉の外に放り投げている。

 それから、私に残りの対価のアイテムを渡して、一礼してから自分も扉を抜けていった。

 いやはや、苛烈で潔い人でした。


「では、件の真珠関連問題は一応は決着がついたとするかねぇ」

「まあ、近隣諸国や大国の問い合わせは止まないでしょうが。こちらは、私が対処致しますので、問題は無いかと」

「そうですね。外交関連はバウルハウト侯爵に一任します。どのような圧力をかけてこようが、国の方針は個人の財産を外交手段に使わないとします。それから、ミーア様は我が国の貴族位を叙爵しましたが、名誉職位に準じ、臣下ではない事も披露して構いません」

「はっ、女王陛下の御心のままに」


 やれやれと、問題が片付いたと判断した宰相閣下と、遠回しに強請るであろう他国への牽制を示唆するシェライラのお父さん。

 女王陛下も個人所有の財産没収はあり得ないと通達を出す。

 うん。

 本当にごめんなさい。

 安易に希少価値のアイテム世にだしちゃってさ。

 後始末させるのも、私が責任取ってやらないとならないのに、奔走させちゃってだし。

 今度、侯爵さんにはシェライラから聞き出して、お詫びの品を献上しますわ。

 勿論、女王陛下や宰相閣下辺りにも。


「それでは、宰相。私は、ミーア様の領地に行かせて貰いますので、留守を頼みますね」

「はい、話は聞いてますよ。ですが、必要はないかもしれませんが、念の為に護衛は連れて行くのが条件ですからね」

「うむ、愚息を呼びに行かせましょう。暫し、お待ちを」


 んん?

 女王陛下が、両手をあわせて満面の笑みで宰相閣下に報告する。

 私は意味分からないんですが。

 何故に、うちにかいな。

 国防大臣のユークレス卿は部下を走らせに行った。

 ああ、アルマニア枢機卿猊下が扉から出ていった後、フィディルが繋いでいた何処でもフィディルは解消しているので、扉を開けたら王城の廊下に出る元の扉に戻っている。

 それと、フィディルとエルシフォーネとアリス以外の守護者はまた隠行した。

 グレイスなんかは、人見知りを発揮していの一番に消えている。

 私を侮辱した一行がいなくなり、怒りより人見知りの方に意識が向いた為だ。

 まあ、グレイスの事情を知らない面々は、断罪が終わったからいなくなって当然と思われているんだろうな。


「ミーア様。少し遅くなりましたがマーベリック子爵のご令嬢の錬金人形が完成致しました。できれば、監修をお願いしたいのです」


 マーベリック子爵?

 ああ、ナイルさんの事か。

 そうだった。

 ナイルさんの生家は子爵家だったわ。

 いかん。

 子爵家よりアルバレア侯爵家が頭に入っていた。

 それに、エメリーちゃんが祖母の守護者を引き継いだんだったわ。

 完全に忘れてたや。

 あはは。

 女王陛下が、爵位を不当に剥奪された不祥事を、錬金人形を下賜する事で払拭する目的が含められていたんだっけ。

 齢六歳で最年少記録の、守護者契約成立。

 やっかみもあるだろうが、後ろ楯に名を連ねるのはアルバレア侯爵家親族だけではない。

 爵位剥奪を回避させようと助力してくれた、先代子爵家の友人の貴族院長老さん達や、恩人の忘れ形見を守ろうと意気込む方々もいて、半ば喧嘩を売る側が可哀想に思える大貴族の方もいる。

 なので、私の名は最終手段で待ち構えているらしい。

 まあ、大精霊が六柱も契約している、生きた大自然災厄製造元だしね。

 事情に明るい大貴族達にしたら、敵回すな超危険人物指定だわな。


「大変お待たせ致しました。あれ? 父上、招かざるお客人はどうされましたか?」

「うん? 奴等なら、担当枢機卿猊下が連行して帰られた。お前は、女王陛下の護衛として、バーシー伯爵の領地に同道せよ」


 あー。

 確か、ユークレス卿の次男のフレッド氏か。

 不敬を働いた兄の代わりに、騎士団総長に任命された人だ。

 一番役職の高い人材を護衛に回して、王城の警備はどうするんだか。


「はっ。では、王城警備には、副総長の指揮の元、近衛第二隊と紅蓮騎士団を配置致します」

「うむ。王城の警備は、その部隊で構わない。城下町の警備は、紺碧騎士団と翡翠騎士団で回すよう提案する」

「ですね。そちらの二騎士団は、平民出身者と平民に寛容な貴族の次男以降の者達が所属しており、城下町の民人の心象も良いですから。では、その様に」

「承知致しました。ですが、女王陛下の護衛が総長お一人で大丈夫でしょうか」

「構わん。と言うより、王城よりバーシー伯爵の領地の方が、女王陛下には居心地が良く、安全面でも信頼がおける。何しろ、あの領地には常駐する精霊の数は計り知れん。国が滅ぶ間際にでもなったとしても、あの領地には被害は及ぶ事もないだろうと言うのが、姿無き賢者殿のお言葉だ」


 何か、うちの農園の評価がかなり凄い判定になっておりますが。

 単なる、精霊のおちびちゃん達の休息場なだけなんだけど。

 休息させてくれるお礼に、農作業のお手伝いとか、農作物への成長のお助けとかしてくれているだけなんだけど。

 端から見たら、精霊の楽園として有名になっちゃったんだろうな。

 フレッド氏や部下の人は感心した様子で、こちらを伺っている。

 まあ、彼等がどう感想を抱こうが、国防大臣のお墨付きを戴けるほど安全地帯と認識されているのを覆すのは労力の無駄になるだけだと思われる。

 もう、いいや。

 諦めて、反論はしないでおこう。


「では、早速行きましょうか」

「女王陛下。お荷物等、準備はよろしいので?」

「はい。必要な物は、エルに預けてありますから」

「畏まりました。それでは、馬車の用意を……」

「あっ、それも、必要ありません」


 あー、はいはい。

 何処でもフィディルですね。

 王城から、うちの農園までの距離は馬車で五日はかかります。

 が、時間短縮にての移動を希望ですね。

 フィディルに視線で合図して、必要魔力を渡す。

 アルマニア枢機卿猊下の時は、フィディル自身の魔力で繋いでいたけど、今回は私の魔力を対価にして繋いでもらう。


「マスター、繋ぎました」

「ありがとう。じゃあ、女王陛下と護衛の総長さん。行きましょ」

「はい」

「……はぁ。了解致しました」


 女王陛下は転移魔法ならぬ、時空を繋いだ転移方法に興味津々で、移動する私の後に続く。

 殿(しんがり)は繋いだ扉を閉めるフィディル。

 隠行しているうちの子達も扉を通り抜けたら、そこはもう荒れ地が農作物が豊かに実る土地へと変化した、我が農園である。

 しかも、フィディルは家の中ではなく、玄関口から外に出た先に繋いでいた。


「はっ? こ、これが、転移魔法ですか? 与太話しではなかったのですね」

「正式な転移魔法ではなく、時空を繋いだ転移手段ですけどね。魔法に明るくない人にしたら、転移魔法の部類に入るんでしたっけ」

「いや、自ら体験して理解致しました。何時かの、無礼を謹んでお詫び致します」


 総長さんが、素直に頭を下げる。

 何時かって、初対面時の暴言かな。

 あれは、転移魔法が廃れたというか、行使できる魔法師がいなくなり、旧文明の転移魔法装置でしか転移できないのが常識になっていたから、仕方がないのは知った。

 ので、別段腹は立たなかった。

 良識ある方達からは、人前で披露したら勧誘が酷くなると忠告されて、心配されたなぁ。

 その割には、使用頻度が多いのは、勧誘されても断れる爵位貰ったり、人外さんの子飼な過保護なお目付け役のお姉様達が噂の火消しをしてくれていたりするからだけど。

 それに、実力行使して排除できてしまえるからもある。


「シェライラさんの飛空魔法も習得してみたいと思いましたが、時空魔法も習得してみたいです」

「シャロン。飛空魔法は習得可能ですが、時空魔法は適性不足で習得は叶いませんよ」

「そうですか。でも、飛空魔法は習得可能なのですね」

「ええ、ですが。飛空魔法を習得する前提条件は、風魔法を上級にしなくてはなりません。中級で停滞している現状を鑑みると、飛空魔法の習得はかなり先になりそうですよ」


 総長さんの傍らでは、女王陛下とエルシフォーネが飛空魔法習得の件で話が弾んでいる。

 飛空魔法か。

 私には大地属性と相反してしまうから、習得不可能なんだが。

 ネタ衣装を着たら、見えない足場ができて浮いている様に見える体験は出来るのと、時空魔法の足場作製でこれまた浮かぶだけは出来る。

 ただし、時空魔法の足場の維持には大地属性のデメリットで、大地属性を持たない魔法師に比べて消費が激しくて乱用できない難点があるので、滅多にやらない。

 一度高度から落ちかけて、お子様ズを泣かしたのもあり、やらないと約束した。

 うん、ネタ衣装着たら落ちないので、宙に浮かびたかったら着ればいいだけだしね。

 しかし、ネタ衣装は恥ずかしいのもあって、普段使いにはしないから、飛空魔法は憧れのままでいいや。

 謝罪する総長さんには気にしてないのを伝え、談義をする女王陛下とエルシフォーネには、来訪した目的を思い出させて、次に行こう。

 さあ、エメリーちゃん。

 聖母教会が実質無くなり、新しい守護者契約の先駆者となろうか。

 それから、今日はお祝いだ。

 どんなご馳走がいいかなぁ。

 楽しみだね。

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