静かな始まり。
......
風の音が鳴り響く夜の森。空には分厚い雲が広がっていた。
雲から降ってくるのは純白の雪。
雪は少女の手に触れると静かに消えていった。
「風邪ひくぞ。もう戻れ。」
1人の青年が少女にそう告げた。
少女は「うん」と頷き青年の待つ小屋に戻った。
「アト...雪が懐かしく感じた。」
少女は椅子に座り俯きながら青年、アトに言った。
「ルナ、自分の記憶を取り戻すのも大事だが、たまには食事をしたらどうだ?」
1年前、俺はルナがこの森で傷だらけになっているのを見つけて拾った。
ルナはどうやら記憶を無くしているらしい。
「いらない。お腹、空かない。」
ルナは依然俯いたままだ。
「俺一人だけで飯は寂しいな。」
ルナについて分かっていることが2つある。
その内の一つは、ルナは食事を必要としないという事だ。
ルナは、1年前この家に来てから1度も食事をしていない。
それでも普通に生きている。
それともう1つ。
「アト、これ。」
ルナは俺に小さく折りたたんだ紙を渡してきた。
広げてみるとそこには何語か分からない言葉が書かれていた。
「これは何処で?」
聞くと、ルナは俺を見てドアの向こうを指さした
「外、雪に埋まってた。」
「雪に埋まってた割には綺麗じゃないか?」
俺は不思議に思い、食い気味に聞いた。
「..魔法の紙。」
「なるほど...」
俺は疑うことはしなかった。
魔法という存在があることはルナの存在で理解していたからだ。
ルナは魔法を使える。
「なんて書いてあるんだ?」
ルナは音読を始めた。
「拝啓報われない人々よ。無能な君たちに地球は勿体ないだろ。
半分。いや全部。私たち選ばれた人間に渡さないか?」
ルナは俺の方を見てきた。
「続きを。」
ルナはまた音読に戻る。
「さすれば。殺さず奴隷として向かい入れてやろう。
日にちはまた手紙を送るとしよう。近いうちに。」
ルナは読み終えると紙をたたんで机の上に置いた。
俺は大きなため息をついた。
「これが誰に届いてるかなんて分かってないんだろうな...選ばれた人間って奴らは。」
俺はさぞかし頭が悪い連中なのだろうと思い食事を続けた。
「どうするの?返信する?」
俺は手を止めてルナをじっと見つめた。
「そうか...ここにある選ばれた人間って奴は魔法を使える人間って事か。」
ルナは頷くと俺をじっと睨んだ。
「ここにも、いるよ。」
「あぁ、そうだったな。」
俺は今置かれてる状況が心の奥から楽しいと思い始めた。
1年前ルナを拾ってから俺の人生は変わった。
「なぁ、ルナ。もしさっきの手紙断ったらどうなる?」
「多分。戦争。」
「だよな。」
俺はルナに思わず笑みを零しながら言った。
「断ろう。戦ってやろうぜ。選ばれた人間って奴らと。」
「タダで渡すくらいなら全力でもがいてやろうぜ。ルナ!」
ルナは少し笑っているように見えた。
「うん。」
ルナは頷き手紙の返信を描き始めた。
これから始まるのは地球の未来をかけた2人の、静かで大きな戦いの物語。
始めて小説を書いてみました。初めましてHisuiです。
このお話は回を重ねる事に面白くなっていく予定です笑
少しでも多くの方に見てもらえると嬉しいかもしれないです!
最近寒い季節になってきたので皆さん風には気をつけてください。
次回もお楽しみに。