あくまで私の、クソゲー論。
さて、始めようか。
クソゲーとはなんなのか。
端的に言うならば、『クソ』の『ゲーム』である。
では具体的にどのようなゲームが『クソゲー』なのだろうか。
バグが多いことなのか、それとも攻略不可能のゲームを差すことなのか。
否。
あるいは難易度が調節できていなかったり、作画が崩壊しているゲームを差すのか。
否。
はたまたコンセプトと異なっていたり、発売延期を延々とし続けることなのだろうか。
否。
そこに答えなどない。
答えることなど誰にもできない。クソゲーソムリエ、クソゲーマニアたちがいるように、『クソゲー』というジャンルの括りで楽しむものがいる。楽しむべきものたちがいるのに、どうして我々が否定できようか。定義することができようか。
クソのようなデバックや、クソイミフなシナリオ、クソお粗末なグラフィックに、それら諸々のクソ要素。クソのオンパレード。そつなくクソ。絶対のクソ。
それがクソゲー? それは価値観の相違ではないだろうかと考える。
では、根本的に『クソ』とはなんだろうか。いかにクソであるか。どうクソであるか、我々ゲーマーは常に論議している。否定することや定義することは、個々の価値観により断定は不可能だ。しかし、論議を展開させていくことで、さまざまな視点からの考察が可能であり、我々が共通で得ている『クソ』という認識を再確認することができる。
詰まるところ、『クソ』というのは我々の常識での最大公約数でしかないわけだ。幅広いゲームの中で独断と偏見で選択しているに過ぎない。『クソゲー』と呼ばれているゲームを楽しんでいる者もいるというのに、なんという矛盾なのだろう。
だからこそ、この矛盾を解消するため我々は常に言葉を交えていかなければならない。そして『クソ』という言葉の意味を見出すために、我々は戦い続けていく。
この世にクソゲーが市場へ進出し続ける限り。
この世にクソゲーを求める者がいる限り。
この世にクソゲーに対して我々が論じる限り。
クソゲーは終わらない。
一つの例としてそんな『クソゲー』を安易に手を出したゲーマーの日常を覗いてみよう。
「ははっ! これが噂のクソゲーか! どれくらいつまらないかやってみよう!」
ゲームのコントローラーを握りしめる。カチカチッと画面に映っているテキストを読み進めていく。
『この四大大陸には朱雀、玄武、青龍、白虎が神として崇められており、それぞれの信徒たちが普及している』
なんか始まったぞ!? 開幕から意味不明な世界観と設定を押しつけられたんだが!
『普及している信徒たちはそれぞれ、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタといった宗派があり、またアルファとベータは王国推進派と呼ばれ、ガンマ、デルタは穏健保安派と区切られていた。王国推進派は~』
まるで頭に入ってこないんだが。
メモでも用意して、頭を整理したほうが良いのであろうか……。
と、とりあえず、作業的に読み進めていこう。
『俺の名前は勇者バラン。伝説の騎士だ。
勇者に選ばれし者が受け継ぐ白銀の鎧を身に纏い、竜の紋章が描かれている黒きマントが俺の装備だ』
「はぁ、そうですか」
読み進めていたら、勇者が出てきた。
このバランという男、よくもまぁベラベラと話すやつだ。
さっきの世界観の説明だけで一時間経過しているのにもかかわらず、今度は自分のことを独り言のように呟き始めた。
『魔王が世界征服を企み、それを阻止するために俺はいる。
魔王を倒す唯一の腱』
これは誤字であろう。おそらく、腱ではなく剣だと思う。
そんな膠原繊維の塊で魔王を倒せるわけがない。
『伝説の腱、ファントムデスクリムゾンだ』
「勇者が使う名前の剣じゃねええよ!」
思わずツッこんでしまう。
大体、デスってなんだよ? この勇者は闇落ちしてるのか?
そういう設定なんだろうか?
『勇者様~』
なんか現れた。唐突に立ち絵がねじ込まれてきた。一人の女性がなんの脈拍もなく乱入してくる。おそらく、ヒロインかな。
気がつけば、背景もどこかの城内に変わっていた。
ここはどこなんだ!?
『勇者様~。大好きです~。抱いてください』
出会い頭で好きとかなんとかって。
なんの展開もなしに、心も股も開いていく姿は異様でしかないんだが。そういうお仕事の方なのかな。
そもそも誰なんだ、あなたは。
あと、ここはどこなんだ。
そして、一体何を見させられているんだ。
あとヒロインであろう女性のお顔が崩壊している。自爆寸前のセ○みたいな顔面をしている。
『駄目ですよ、クック姫』
この方、姫だった。名前にセンスの欠片もない。モン○ンのモンスターみたいな名前をしやがって。
待て待て。そうなると、この城は姫が住んでいるのか。詳細な説明がないので、察することしかできない。
『ずるいですわ、クック姫。私もバランさんのことを好いておりましたのに』『私も』『私もよ』『私だって』
いきなり、一気に女性キャラが増えた。ご丁寧なことにそれぞれの女性には立ち絵が用意されている。ただし、キャラが増えすぎてしまったため、バランの顔面が見切れていた。
『大丈夫。皆大好きだよ!』
はっきりと勇者バランは言い放つ。
顔面が見切れているだけでなく、本来見えてはいけないクズの部分も見切れていた。
もうこの世界は駄目みたいですね……。
『何をしてるんだね。クック姫』
国王らしき風貌の男が現れる。さらにキャラが増えたことで、勇者バランは立ち絵から姿を消す。
『お父様! 私達四人は、バラン様と結婚します!』
まさかのカミングアウト。結婚という流れになっていたのは驚きだ。姫も含め好意を向けているのは五人なのに、一人ハブられているのは些細な問題だろう。
『ならん! 頭を冷やせ!』
ごもっともだ。この世界は一度頭を冷やした方がいい。製造元から出直してこい。
『てめえええ! 国王! お前だけは許さねえええええ!』
突如、激昂し始める勇者バラン。
バランよ、もうお前はわけわからんよ。
そんなバランの激昂をみて、女性組らは、
『勇者様……!』『流石、勇者様です!』『ありがとう、勇者!』『ウホッ!』
数々の称賛が浴びせられていた。
一瞬、ゴリラがいた気がするが気にしない。
『来い! 勇者よ!』
『行くぞ! 国王おおおおおおおおおお!!!!』
勢いよく殴りかかる勇者のどこに正当性を見いだせるだろうか。感情移入が湧かないどころか、最早悪役の所業だ。
あと魔王、どこいった?
戦闘に入ると思いきや、画面がブラックアウト。
カチカチとボタンを押しても、何も反応しない。
ただの虚無。
「死ねええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
俺は勢いよくゲームのコントローラーを投げ飛ばした。
お分かり頂けただろうか。
『クソゲー』が集い、論じる場所は修羅の国と云われている。
またの名を貴族のお遊びとも伝えられており、安易に手を出すと火傷どころでは済まされない。平民は死あるのみだ。
だとしても。
だとしても、我々は平民であっても『クソゲー』を検証し、批評を続けるであろう。
プレイをするだけで吐き気を催すものがあったとしても、白目全開で失神するようなことがあったとしても。
そして、多くの屍を乗り越えて苦しんだとしても、笑いへと昇華できるように。
地雷を踏んだゲーマーが報われるように。
そうでもしなければ。
わざとではないのに『クソゲー』をしてしまったゲーマー達が、不憫でならないじゃないか。
『クソゲー』は価値観の相違だと述べたが、それでもできるなら良ゲーと出会えるほうが良いはずだ。『クソゲー』を求めている層は置いとくとして、一般論では良ゲーを買い、全力で楽しむ。
そう、ゲームは楽しむものだ。楽しんでこそのゲームである。
ここからは、個人的な考えを述べる。私からはただ一つだけ。
『クソゲー』よ。
滅びよ。
四 呼んだ?
(仮)
八