未だに転生できない僕は神様のお手伝いをしています。
この世には多種多様な生物がいます。
生物たちは生きるものの義務として最後に死という大仕事を迎えます。
そのひとつの仕事を終えた魂を別の器に入れ替えてまた新しい生物にする。
それが神様の仕事なのだそうです。
全ての魂は使い回しで宇宙の最初期からその数はほとんど変化することがなかったそうです。
全ての魂には役割がある。それが神様の口癖であり、例外である僕には少しばかり寂しい言葉でした。
僕の魂は、用意されていたどんな器にも収まることが出来なかったのです。
僕は悲嘆にくれました。自分はなんてどうしようもないやつなのだと。いっそ死んでしまいたいなどと。いや、もう死んでいるのですが。
しかし、そんな僕に神様は言いました。
「私の仕事を手伝ってみないかい?」
神様はいつまでも転生ができない僕に、慈悲をかけてくださいました。
僕はその恩にいつかーー
「さぁコロン、おいで。今日のお客様だ」
「はい、神様!」
……回想の時間は終わりましょう。
こうして、今日も僕は神様の仕事をお手伝いするのです。
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それはとても天気のいい日のことでした。
天気がいいと言っても天界は基本雨の降ることは無い場所なのですが。
しかし本当に今日は天気がいい。雲一つない、というのは天界でも滅多にない事だそうで、絶好の洗濯日和だと僕は神様の衣類を自作の物干し竿にかけます。
僕たち魂は、生前に来た服がイメージとしてこびりついているので着替える必要は無いのですが、神様はここで暮らす御方。人を導く立場としてそれなりの格好をすることを自身で義務付けているそうです。
「コロン、本日のお客様がいらっしゃったよ」
「はぁい、ただいま」
神様は、僕達魂のことを『お客様』と呼びます。
なんでも、神様はたまたまこのように人を導くという仕事に付いただけで、自身と魂たちには何ら優劣の差などないというのです。
僕には全く理解のできないことですが、神様がそういうのならそうなのでしょうと、あまり深く触れずに納得しています。
今日の魂がもう神様の家で待っておられるということで、急いで家に戻り、紅茶をお出しします。
その魂は、ぶくぶくと太った図体にスーツ。そしてモノクルのメガネという、なにかで見たことのありそうな見た目の男性でした。
「やぁ僕。お茶をありがとう。ところでこんないいところには初めて来たよ。先程の麗人は僕のお母様かな? もし良ければ商談を持ちかけたいのだけれど」
「いえ、あのお方は神様です。ここは神の暮らす土地。貴方は死んでいるので、商談はもう叶わないかと思われますが?」
「ははは、僕、その年にしては冗談が上手だねぇ! うちの息子が君くらいの時にはまだ、文字を読むことにも手間取っていたように思うよ。それが今じゃあ立派な開業医として色んなところで役に立っているらしい。僕もいつか息子の病院に遊びに来ないかい? あいつは子供が好きだから」
男性は、今も尚自分が死んだということに築けない様子で、僕の言ったことに対してケタケタと肩を揺らし、そして嬉しそうに自分の息子の話を始めました。
「やぁやぁ、お客様。ここまでお疲れ様でした。さぁ、あなたの次の生について、たっぷり相談しましょうか」
「ふはは、貴女まで冗談を申されるか、ご麗人。次の生とはまた大掛かりな」
なかなか自身の死に気づかない男性に自覚を持ってもらうために、神様はいつも通りその人のプロフィールを読み上げます。
神様いわく、不思議なことが突然起こると、その前にあった出来事が自然と頭に浮かんでくるという自己の体験談からこの方法を取っているのだそうです。
「マルコ・ロッツォリーニ、享年58歳。1代で大商会を築き上げた凄腕の商人と私は聞いています。死因は公には老衰による衰弱死、実際は息子さんがあなたのお酒に盛った毒による服毒死ですね」
「貴女はさっきから一体何を?」
男性は、何かを思い出したかのように一気に血の気の引いた、青ざめた顔をしました。まぁ、そもそも引く血がないのですが。
「貴方は今回の生の役割を全うしました。なので次の生の役割を決めましょうか」
「……私はまだ、何も成し遂げていない、何もやりきっていないのです。こんなところで諦めるわけには……」
「貴方は前回の生もそのように私に告げて終えましたよ。貴方の前世は、痩せこけた大地に住む貧しい男でした。貴方は自身が貧困で苦しんだことから、自分も含め、多くの人を貧しさから救いたいと願い、各地を転々として生活をするようになりました」
「……」
「そして、やっとその活動が日の目を浴びてきた時、貴方はたまたま森の中で居合わせた猟師に、猪と間違えられて弓で射殺されてしまったのです。その後この場所に来た貴方も、今と同じようにこんなところで諦めるわけには行かないと言っていました」
「……息子は、どうして私を殺したのでしょう。私は、彼とそれなりに上手くやってきたとおもっていたのです」
神様は小さく咳払いをすると、自身の懐から一冊の本を出しました。
「どうぞ、これを見てください。これが貴方の今回の生を記した本です」
「はぁ」
訳がわからないというふうに男性は気の抜けた返事をしましたが、それでも男性はその本を手に取り、ページをパラパラとめくり始めました。
そして、その指が後半のページをめくっていくにつれて、男性の顔が少しずつ暗くなっていきます。
「私は、息子の病院へは絶対に行かなかったのです。彼が財力で得た地位だと罵られるのは嫌だったし、彼自身も私が来ることを望んではいなかった。しかし……」
「ええ。息子さんは貴方があと数日すると、全身の皮膚が焼け爛れたようになり、そして痛みを味わいながら死ぬという苦しい病に犯されていることを知ってしまった。もう、その死の運命からあなたが逃れられないということを知ってしまった」
「だから、私が苦しむ前に、気づかれないように私の命をたったのですか」
「そのようです。貴方の担当医も、奥様、娘様にも了承をとった上で、家族全員で下した決断だったそうです」
そんな会話が行われているあいだ、僕は本の内容がきになり、男性の後から、男性の開いていた最後のページを盗み見しました。
そこには『父さん、もういいんだ、貴方は十分に多くの人を救ったよ。戦争で本当の父母を失った僕を、ここまで立派に育ててくれたんだ。他にも貴方に感謝している人は沢山いるさ。色々な人を苦しみから救ってくれた貴方苦しむ姿なんて誰も見たくはないんだ』と、書かれていました。
随分勝手な言い分だ、と僕は思いました。
だって、当の男性はもっと生きていたかったと言っているのですから。
しかし、男性はこう言いました。
「最後の最後で救われた気分です。私は、しっかりと多くの人を救えていたのですね」
そして穏やかな笑みを浮かべ、本を閉じました。
「それでも、私にはまだ使命が残っています。全ての人間を救うまで、私は何度でもそのような役割を持った人間に生まれ変わりたいと思います。神様、ここで商談なのですが……」
「ええ、乗りましょう。貴方がこれから救っていく人類が、どのような行く末をたどるのか、この場で談義しましょう」
男性は神様と長く話し込んだ後、再び貧しい人々を救う役を持った器に転生をしました。
今度は、紛争地帯で難民に無償で治療を施す医者として、世のために働くことを決めたのだそうです。
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全ての生き物の行いは、どうやっても完璧な善にはなりえません。
どこまで行っても、偽善から極悪の間のどこかにしか当てはまることの出来ないのが、生き物の性なのだと思います。
しかし、それは生き物の選んだ生き方。初めから、辛いことだけじゃない。良いことも悪いこともすべて受け入れると、決めた上で転生していったあまたの先人達の偉大なる成果です。
偽善だろうと善であることには変わりない。
殺される事で救われる者もいて、殺すことで報われる者もいる。人間だけじゃなく、そのほかの生き物達も。
どこまで行っても、僕達生き物は完璧な善にはなり得ない。それでも、僕はその中に輝くものがあると思うのです。
いつか来て欲しいと願う自身の転生に思いを馳せながら、僕は今日も、神様と一緒にお客様を待ちながらお茶をします。
「お、仕事のようだね、さぁコロン、支度を頼むよ」
「わかりました!」
こうして僕は今日も、またひとつ、新しいことを学ぶのです。自身が、これからどう生きていくかを決めるために。
初めてオンリー自分で短編を書いたんですけど自己完結式なんで内容がわからないかなって人のために補足を(ノシ 'ω')ノシ バンバン
コロンは転生するために世界が用意をしてくれるはずの体が用意されず、世界からも不要と切り離されてしまった魂です。
前世で何をやってしまったのか、何もやっていないからなのかは分かりませんが世界全体の不都合だったとかなんとか。
そんなコロンを拾ってくれた神様は善性の塊のような人です。
ちなみにあの空間では神様理論こそが正論になっちゃってるので神様が言ってることはたいてい通るということをコロンは知らずにただ話し合いの光景を見ています。
と、まぁ、補足にならない補足をしたところで暇つぶしにもう一度読んでいただけると、今度はまた、1度か2度くらい角度を変えてみることができるかもしれません(ノシ 'ω')ノシ バンバン(微妙)
読んで下さりありがとうございます(*´ω`*)
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