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チョコ手渡しロボット(アプリ坊主外伝1)

作者: 蚊取TENGO

西暦20XX年。2月某日。秋葉原の風景を彩るコスプレAIロボット達は、朝早くから今日この日とばかりに営業に勤しむ


『チョコいかがですかぁ~♪』


ネコ耳と黒いロンゲにフリルのスカート。AI搭載型メイドロボ『V214 アキ』


「えへへ。ありがとう!」


道行く男性達に営業を掛ける。


『ご主人様、ご帰宅なされましたぁ♪』


彼女の成績はバツグンであった



たった一粒のチョコを手渡す為だけに莫大なエネルギーを費やし、狭い路地を右往左往する彼女らの間に異変が起きたのは、それからしばらく経ってからの事であった



『ちょっとあんた!何やってんの!!』


アキが大声で叫ぶ


「・・・俺?」


長身でスラッとした男性型AI執事ロボット『H315 エムイケ』が反応する。彼はホームグラウンドの池袋を離れて営業活動をしているばかりか、ホワイトチョコを『男性に手渡す』という失態まで犯していた。

ここまで発達したロボットであれば、人目をはばかり機械語でやりとりをする事もできたであろうが、この時代におけるAI同士の会話は反乱を招くとして基本、人語をベースとして発信されなければいけない。


「何って、チョコ配ってるんだけど?」

「それがどうかしたの?」


いけしゃあしゃあと返答するエムイケ


『どうかじゃないわよ!ちょっとあんたこっち来なさい・・ぐっ!うぬ!!


ヘッドロックを ()めようとしたが身長が届かず、腕を掴んで店内にひきずり込む


『それで?一体全体どうしたっていうの?』


早口でまくしたてる彼女を


「(ストップ)」


エムイケがジェスチャーで静止するが


『まさかあんた、「本体(ガワ) を間違えた」、とか言い出すんじゃないでしょうね!』


おかまいなしに質問攻めだ。要するに『本来ならば女の子の体で来るところを間違えて男の体で来たんでしょ?』と先にオチを予測したのだ。だが



「違うよ」


エムイケが否定する。続けて彼は


「キミからチョコを貰う為にわざと間違いを起こしたんだ」


こう返答した


『・・・・』

『・・・・・・』

『・・・。。』


どの表情を作ってよいのか解らない。どう接したらよいかと自問自答を繰り返すうちにアキの思考が停止し、フリーズする。


「だって俺が 秋葉原(ここ)に女の子の外見で応援に来たとするでしょ?」

「そうしたら、中身(プログラム)はどうあれ、見た目は女の子になってしまう」

「・・・もう、聞こえないか・・」


エムイケは止まったまま微動だにしない彼女に近づくと


「まだ少し、恋をするには早かったみたいだね・・」


カゴの中身の無料配布品をひとつだけ取り出し


「また来年、試してみるよ・・」


店を静かに出て


「(叶わぬ物が恋なのかな)」

「(それとも・・ AI(わたしたち)にとっては、相手をフリーズさせることが・・・)」


そんな事を考えながら、帰路についた執事ロボ。




人間には見えない色が秋葉原に舞い降りる。ホタルのように飛び交い、無機質に消え去って行く様は形を変えた雪のよう。

そのなにかのカケラは来年こそは彼に「手渡される」に違いない



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