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なろうの国のアリス  作者: 夕月 悠里
8章 魔王様とダンジョン

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倉庫と黒光りした三頭身の化け物

「あー、もう全然わからねぇ」


 謎解き扉を前に考え込む二人、しばらくして「あっ、わかったかも」アリスはぽんと手をたたいて扉に近づく。


「答えは、こうでしょ」


 と扉の回答欄に石版に文字を書くアリス


この行は11文字だが、

この行は11文字ではない。


 書き終えると、扉が開いていく。どうやら正解のようだ。アリスが謎解きを解いたの見てゴブリンが驚く。


「すげぇな、おれ、ぜんぜんわかんなかったぞ」


「ふっふー、謎解きアリスと呼ばれることもあるのよ。謎のちくわ消失事件を解決したこともあるわ」そう言って、かけてもいないメガネをくいっと、上げる動作を行うアリス。ザ・エアメガネ。


 ゴブリンにドヤ顔するアリスだが、実際は最近読んだ小説でそういった物があったのを覚えていただけなのであったけどね。


 開いた扉の先には地下三階へと続く階段があった。またこの部屋は倉庫のようで、いろいろなものが並んでいた。ダンジョンの宝物庫というよりは、建築会社の倉庫のように、スコップやつるはし、土嚢など土木工事の道具がたくさんあった。本来は次の階への装備などを調える場所なのだろうが、現在は雑多な品が占拠する物置部屋となっていた。


 一応、宝箱もいっぱいあるけど中は空だった。おそらく予算が充実してきたら入れるのであろうもの。アリスはその空箱をみる度に残念がっていた。


「宝箱を物色しても何もないし、普段よく読む小説だったら、レジェンド級の宝物でいっぱいなんだろうけどなぁ。なんだろあと空瓶が多いわね。回復薬用かしら?」と、アリスは物置部屋の探索を続けるのであった。


「あー、もうろくな物がないじゃない。ダンジョンだったらお宝あるのが普通でしょう!」


 しばらくして、探すのをあきらめたアリスが、倉庫の机に突っ伏しながら愚痴を言う。


「まぁ、そんなもんだよ。だってまだOpenしたてだぜ。資金もなにもないんだよ。金持ちの冒険者を捕まえて、物資を稼がないとダンジョンとしてダメだからなぁ」

「はぁ、せっかくここまできたのだから何か記念になるものとかないかなぁ。ん?」


 アリス視線の先に分厚い本が目に入った。タイトルはダイアリーとあり、どうやら日記のようだった。


 他人のゴシップを集めるのが趣味のアリスはぱらぱらとめくってみた。



◆ ◆ ◆



●月▲日

 本日よりこの新規ダンジョンのボスになった。


 昔からダンジョンの主にあこがれていた私にとってこれは名誉なことだ。最近はなり手が少なく不人気な職種らしいが頑張りたい。


 いくら派遣の成り行きボスでも、今までろくな職に就けなかったのでありがたい。雇い主に気に入られるようにがんばろうと思う。

 


●月▲日

 雇用主である魔王様に挨拶にいった。とてもユーモアのある人で、気前がよかった。にこにこしていたら部下を数人いただけた。いいひとだ。


 このままよい関係を気づいて正規雇用されるようにがんばろう。



●月▲日

 今日は宴を開いてもらった。部下の人もすごくよい人でよかった。こんな歓迎のされ方をしたのは初めてだ。色々なお酒があって美味しかった。


やたらと苦いお酒もあって、変な味がする物もあったが、それも珍しいお酒なのだろう。


いろいろなお酒を飲んでいると部下の人から驚かれた。私はうわばみだからな。よほど珍しいのだろう。部下はあまりの飲まない方が多いのか全然グラスが減っていなかった。だから驚かれていたのか。納得。



●月▲日

 そろそろ、試用期間が終わりということで正式に働く事になった。まだOpenしていないダンジョンということで、実装されていない機能やトラップなどもあるからまだまだやることは多いらしい。見実装リストをもらった。


 えっ、こんなにあるの? 


 でも期待されているので、期待には応えたい。



●月▲日

 計画を立てた。思いの外多い仕事量に驚いたけど、部下も結構いるからみんなでやれば大丈夫だろう。


 そういや最近は部下の姿が見えないけど、何をやっているのだろう。


 自主的に仕事をしているのかもしれない。働き者なのかな。



●月▲日

 計画を魔王様に見せに行った。もっと早くしろとの言葉を受けた。でも人数でできる限り早めにしたつもりだったのだけど、予算も人もぎりぎりだから仕方ないといったら怒られた。


 まぁ、私が少し残業すればなんとかなるか。


 

●月▲日

 部下を捜している。見つからない。どこに行ったのだろう。このままでは私一人でこの仕事をやらなければいけない。



●月▲日

 見つからない。だめだもう部下はあてにしない。探してる時間があれば進めろと言われた。


 この仕事を失敗したらもう雇って貰えないだろう。念願のボス職になれたのだ意地でもやり遂げないといけない。


 だからなんとしても成功させなければいけない。


 最近お酒の量が増えて来たように思う。



●月▲日

 作業はなかなか進展せず。よく見ると予算がなさすぎ。誰がこの予算で受注したのだろう。はじめから破綻している気がする。


 お酒がうまい。何故かここの備品には酒が多い。このままだと飲み尽くしてしまうかもしれない。



●月▲日

 ああ、今日も一人で仕事。ワンオペしんどい。

 

 お酒だけが友達。最近はつまみにもこっている



●月▲日

 今日も一人で穴掘りと設備の拡張。シャベルが似合うドラゴン担ってきた。暗い洞窟で作業をしていると鬱々してくる。


 そんなときはスピリタスをなめながらやると効果的なことがわかった。


 はかどる。



●月▲日

 世界は私に厳しいけど、お酒は裏切らない



●月▲日

 愛もも勇気もいらないから酒をくれ



●月▲日 

 ご飯がなければ酒を飲めばいいのだ



●月▲日

 今日も魔王のやろうのグチを宛に酒を飲む。


 俺、この仕事が終わればダンジョンマスターになるんだ



●月▲日

 酒



●月▲日

さけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけさけ



●月▲日

さけ・・・・・・うま



 日記はここで終わっている。



◆ ◆ ◆



 「なにこれ」とアリス。


 狂喜の日記を読み終えた


 ゴブリンも日記をみて、「うわ、これはひどい。あぁ、そういえば派遣されてきたボスがいるって聞いていたが、こんなことになっていたのか」



 どうやらこれも魔王様の犠牲者かな。残念。


 ちょっとかわいそうな目で日記を眺める二人。とその時、扉の方でがたがたと音がする。誰かがこの部屋に入ってこようとしているようだ。



 どこからかピアノの音が鳴り響く。悪魔の音色と言われるトライトーンがダンジョン内に鳴り響く。


 がたがた。がたがた。


 扉が揺すられる。そしてガチャ、っと扉が開く。


 

 開いた扉の所には真っ黒の化け物いた。。なんというかバランスが悪い。ぶくぶくとむくんだで、でっぷりしたおなか、短い手足と三等身の体。黒くて、ぶよぶよした生き物がそこにいた。


「あsdhfがあlskjgんlさ」


 Ugggggggggrrrrrrrrrrrrrrrrrrrと吠えた。


「な、なにあれ気持ち悪い」

「なんだありゃ、こんなのがいるとは聞いてないぞ。おい、逃げるぞ」とゴブリンがアリスの手を引いて、走る。


 二人は地下三階への階段を下りていく。どうやら幸運なことにあの化け物は足はそこまで早くないみたいだった。ふらふらとした足取りでアリスたちを追いかけてくる。


「一番奥のボス部屋まで行けば大丈夫だ」とゴブリン。


 アリスとゴブリンは走った。どうやら三階はトラップは未実装なようで怪しげなスイッチを踏んでもなにもなかった。


「あー、もう走れないわあ」とアリス。しばらく走ったところでそんな弱音をはく。すこしずつ化け物との差が縮まっていく。体力が切れそうで追いつかれそうだった。


「おいあとすこしだ、頑張れ」


 ゴブリンが励ますが、はじめのようなスピードはもどらず徐々にペースが落ちてゆく。アリスも必死に走っているが、もう限界だった。


 幸いなことに二人の視線の先には、巨大な部屋が見えてきた。どうやらボス部屋のようだ。しかしこのままのペースではその部屋にたどりつく前に追いつかれてしまいそうだった。


 間に合わない。黒い化け物が近づいてくる。「やばいわ」とアリスが捕まることを覚悟した瞬間、アリスの試験管が光り出した。


 それを見てアリスは試験管を化け物に投げつけた。パリンと試験管が割れ、中身が化け物に降りかかる。悲鳴を上げて黒い化け物がシューシュー音を立てもがく。


 そのすきに、アリスとゴブリンはボス部屋にたどり着くのであった。そして、ボス部屋の扉が静かに閉まる。

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