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なろうの国のアリス  作者: 夕月 悠里
8章 魔王様とダンジョン

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19/30

最寄りのダンジョンまで徒歩15分

 巫女さんが去っていくのを見送るアリス。まぁ、王子のハーレムがどうなったって私には関係ないけどって感じだったよ。それにしても女神様からもらった試験管は色々な使い道があるもんだね。



 ということで、特にすることもなくなったアリスは、しばらくまたぶらぶらと始まりの村を歩いていたよ。


「はぁ、次は何が起こるのかしらね。もう少し楽しいことがいいわ。それにしてもいい天気ね。お昼寝日よりだわ。ん?」


 アリスがふと上を見上げると、大きなバルーンが風に揺られていることに気づいた。デパートの大売り出しなんかで見かけるあれ。その垂れ幕には「新ダンジョンOpen!ここから徒歩十五分、こっち→」って書いてあったよ。


「ダンジョン? なんか楽しそう。行ってみようかしら」


 なかなかに怪しい宣伝だけど、ダンジョンという言葉に興味を引かれるアリスは興味津々。垂れ幕が示す方向を見てなにやら考えているようだった。せっかく異世界に来たのだからダンジョンくらい観光しなくっちゃね。と行く気満々でいた。



 そんなわけで垂れ幕の指す方向に進んでいくと、いくつかの看板を見つけた。


「最寄りのダンジョンまで徒歩10分。これは全く新しいダンジョン、是非お立ち寄りを!」だとか


「ダンジョンまでテレポートで10秒。新しすぎて時代が追いつかない!超有名ダンジョン建築家による作品!見ないと損損」


「クリア率0%!今までの難易度がまるで幼児レベル。キミはこのダンジョンから生きて出られるか?最凶のダンジョンがいまここに」


 といったあおり文句だった。看板の示す先を進んでいくといつの間にか森の中だったよ。


「おかしいわね、十五分以上歩いてるんだけど全然たどり着かないわ……どういうことなの」とすでに三十分以上歩いているアリスがグチをいう。でもアリスは看板に書かれた注意書きを見逃していただけだね。看板の注意書きにはこうあった


「※ただしケンタウロス基準」とね。スピードが違うらしい。



 それからさらに三十分くらいしてようやくアリスは森の切れ目を見つけた。そこには、「ようこそ魔王様の新ダンジョンへ」ってでっかいアーチがあった。


 そのアーチの先は広場のようで多くのモンスターがそこに集まっていた。一番近い所では、ゴブリンと思われる生き物がヘルメットをしていて、魔王建設というロゴが入ったシャツを着ている。頭にはちまきをして、作業着を着ていて、土木工事をしているようだった。


 他にもスケルトンや、コボルトなど、メジャーなモンスター達が土木工事をしているようだ。みんなお揃いのシャツとパンツをはいておりどこかの建築会社の集まりを思わせる。


 モンスターたちはどこからか土を運んでは土砂置き場に運んでいるようだった。アリスは見つからないように、こそっと近づいていった。


「はぁ、まったくダンジョンなんて手作りするもんじゃないよ。普通は野生のダンジョンを見つけるんだけどなぁ」


「まぁうちの魔王様は新参だから仕方ないよ、もうほとんどのダンジョンは開拓されてるし、天然物のダンジョンなんかもう絶滅寸前って聞いたぞ」


「世知辛い時代になったものだ」


 とゴブリンとスケルトンが会話しているのを聞いていた。


「まったく俺たちがこんなことしてるのも全部、あのお気楽な魔王様のせいだよな」


 と二人が向いた方向には、黒ずくめのマントと衣装を着ている人物がいた。


「おーいいくぞー」


 黒ずくめで頭に角の生えた魔王と思われる人物が、スケルトンの頭とその骨でゴルフやってるようだ。ボールの代わりにされているスケルトンはカタカタと小刻みにふるえている。いまから魔王が持っているその骨でたたかれる恐怖と戦っているのだろうか。


 魔王が何度か骨で素振りをしている。そして、フォームができたのか満足げにスケルトンの頭の所にいってフルスイングした。


 カコーン、といい音が鳴って頭はかなり遠くへ飛んでいった。


 パチパチパチ、と魔王の周りにいる部下、騎士や、悪魔などが拍手をする。魔王が笑顔で照れている。



「はぁ、あれだからなぁ、あのお気楽魔王は」

「おい、あんまり大きな声でいっちゃ、俺たちもああなっちゃうぜ。まったく、くわばらくわばら」


「いや、おまえもう死んでるから」


「ははっ、そうだったな。さ、作業に戻るべ」


 とゴブリンとスケルトンは元の作業に戻っていった。


「なんなんだろうあれ、ところでダンジョンってできてないの? 工事中?」と森の中から様子をうかがうアリス。


「度重なる仕様変更と見切り発車だからなぜんぜん追いついてねぇんだよこれが」と、アリスの背後から声が聞こえた。


 アリスが振り向くと、木の陰で寝ているゴブリンがいた。どうやら、さぼりらしい。そのゴブリンと目が合う。


「ところで嬢ちゃんもさぼりか? 新人? あまりみない種族だな。サキュバスか? それにしては色気がねぇが……。新人のうちからさぼるとはいい度胸だな。俺がいえた義理じゃないが、まじめに働けよ?」と、ゴブリンが言うので、


「新人? 違うよ。私、アリスっていうの、人間よ。ダンジョンの看板を見てここにきたのだけど入れるのかしら?」と正直に答えた。


「おぉ、そうかダンジョン目的か、じゃぁ魔王様に報告しなきゃな。全然お客が来ないないからあんな風になってんだ。客がいれば少しは落ち着くだろう」と、言ってから。


「らっしゃいませー、人間一名様ご来店でーす!!!」と、なぜか居酒屋風に大声で叫ばれた。さっきまでのさぼりモードはどうしたのだろうか。お客がいないとそんなものなのかもしれない。


 ゴブリンのその言葉に反応したモンスター達が一斉に集まり出す。あっという間にモンスター達に囲まれるアリスだった。


「いらっしゃいませ、当店は初めてですか」

「今日のおすすめです」

「一名様席にとおします」


 と、いろんな魔物に担ぎ上げられていつのまにか広場の中心に連れて行かれるアリスだった。そんなに客が珍しいのか、その広場にいたモンスター全員のお出迎えだった。


 広場の中心は魔王がゴルフしている場所で、魔王がアリスに気づくと持っていたクラブ代わりの骨を投げ捨てて、笑顔で近寄ってきた。


「やぁ、ようこそいらっしゃった我が輩のダンジョンへ、よろこべ、お主がダンジョンお客第一号だ!」


 多くの魔物に担ぎ上げられながら、アリスは、最近オープンしたダンジョンの第一号として入ってくれないかと頼まれるのであった。


 案内役件、逃亡防止役として、お供にさっきのさぼりのゴブリンをつけられて行くことになったのだったよ。


「強引だなぁ全くと」とアリスはつぶやくけれども、その顔は少し楽しそうだったよ。

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― 新着の感想 ―
 お邪魔しています。  軽いノリのモンスター達、とっても可愛いですね。ひょっとして、魔王様もおちゃめなのかな? ダンジョンの中が楽しみです。
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