お茶会
アリスはエルフとオークのお家から出て、再び始まりの村へと歩いていく。その後は特に何もなく、無事に村に着いた。あいかわらず入り口には門番さんが立っていた。多分出ていく時と全く同じ位置にいたね。
村に着いたアリスは、クエストをクリアした報告のために村のギルドへ向かったよ。その道中、相変わらず他の村人には出会わなかったね。
ギルドの中には、美人メガネの受付嬢。これも前と変わらない。何も変わらない。アリスが現れても微動だにしないね。アリスがとことこ、と受付に行くと、アリスがしゃべろうとする前に、
「クエストをクリアしました」
と言って、お金をくれた。どこからか報告があったのかはわからないけど、どうやらこれでおつかいクエストは完了のようだ。アリスは受付から100Gと書かれた金貨もらった。それで用は済んだとばかりに受付嬢はまた沈黙したよ。
「1Gって何円なのかしら」
そんなことを呟きながらアリスはギルドを出る。お金を使いたかったみたいだったけど、ギルドでは使う場所はなかったし、受付嬢もいつの間にかいなくなっていた。もう用はないとばかりにいなくなっていた。だから、まぁ、いいかって、思ってさ。そんなで、どうしよっかなって、とりあえず村をぶらぶらしていたよ。
「へい、彼女お茶しない?」
そんな時だったよ。アリスがとてもレトロな誘い文句を聞いたのは。アリスがその声のした方向を見るといつの間にかすごく長いテーブルがあった。さっきまで絶対そんなものはなかった、とアリスは驚く。それは白いテーブルクロスがかかっていて、100mくらいの長さがあるテーブルだった。そんなものがあれば絶対気付くはずだったけど、なんでか知らないけどアリスは気が付かなかった。そして、テーブルのずっと端の方を見ると、1番端っこに男の人が1人、あとその両サイドに十数人くらいの女の人が座っていたよ。みんなでお茶とお菓子を楽しんでいるようだ。でもテーブルはすごく長いのにみんな端っこにかたまっている。さっきの声の主はその男の人だった。それにしてもさっきの誘い文句はかなり古いね。昭和かな?
アリスが、急に現れたテーブルと誘い文句に驚いていると。
「さぁ、ハニーこっちへ来ておしゃべりをしないか?」
いつの間にか、テーブルの端に座っていた男の人がそこにいて、アリスに話しかけていた。10代の若者で金髪、金目、王冠、マントの組み合わせで明らかに王子っぽい人だったよ。
「あっ、ちょっと」
アリスが特に何も言わないでいると、それを肯定と取ったのか、アリスの腕をつかんで連れて行っちゃった。
アリスが連れていかれたのはテーブルの端の王子様ッポイ人の隣の席。その王子の他にはメイド、シスター、女騎士、魔法使い、エルフ、ダークエルフ、猫耳娘、犬耳娘などなど、いろんなタイプの女の子が座っていた。みんな綺麗だった。でもアリスが席に座ろうとすると、
「あなたの席はありません」と王女っぽい女の人がアリスをにらんできた。かわいい顔が台無しになるような表情だった。きれいでも性格は悪いようだね。「えっ、なんで?」とアリスが言い返すと、王女はむっとしてそっぽを向いてしまった。
「すまないねぇ、彼女は人見知りだから、ところでお茶はどうだい?」
王子がフォローに入るそしてお茶を勧めてくる。
「あー、じゃぁいただこうかしら」
そうアリスが返事をすると、王子がメイドさんにお茶を入れるように言った。そしたらメイドさんはティーポットを持ってきてアリスのところにやって来て、ティーポットの中身を道に流して、空になったティーポットの中身をティーカップに注ごうとしたよ。もちろん中身はないから何も出てこないんだけどね。
「ちょっとなにするのよ」とアリスがそう注意すると。「どうやらこれでお茶はなくなったようですね」とすまし顔でそういう。ここまでくるとわかるけど、どうやら女の人たちはアリスの事を歓迎していないようだね。
「ずいぶんと失礼ね」
「招かれていないのに、お茶をいただこうとするなんてそっちの方が失礼よ」と犬耳娘が、がるるると犬歯を見せながら言った。
アリスと女の人たちがにらみ合っていると、「みんな、この子を新しくハーレムに加えたいんだけどどうかな?」と王子っぽい人が空気を読まずにそういった。
「はぁ!?」とアリス。
■ ■ ■
そこから色々と彼らの事情を聴いたのだけど、どうもその王子っぽい人は、ハーレムっていっていうすごい力持っているようだった。ナデポとか、ニコポとか女の子を落とすためのスキルがいっぱいあるそうだ。そして、そこにいる女の人達は皆、彼のお嫁さんなんだって。王子さまはそのスキルを使って色んな女の子を落としていったみたいだね。
でもある日、神様のお嫁様の巫女さんを落としたら、神様が怒って彼らの時を止めちゃったらしいの。それで話が全然進まなくなったんだってさ。王子様も女の子たちも何もできなくなっちゃって困ってるらしいの。たまに神様の力が弱くなる時期があって、その時だけこうして人の目につくことが出来るようになるみたい。
ただ、その時にやることと言えば新しくハーレム要因を追加するだけみたい。今回のアリスみたいにね。
王子さまは1歳で言葉を喋ったそうだ。その段階でメイドさんを篭絡し、2歳でお城の書物を全て読破し、家庭教師をゲット、そして3歳になると色々な活躍を発揮し、王女様や近衛騎士など多くの女性を落としていったよ。もはや、その女好きレベルは肉体にも刻まれているようだね。
だから彼にとって、ハーレム要因を追加することは義務のようなものなのかもしれない。その表情には自らの生きがいを謳歌しているようなキラキラ感が存在していた。まぁ、ぶっちゃけると女の子が足りないんだってさ。でもなんでか女の子たちはハーレム追加を嫌がるみたいだね。




