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なろうの国のアリス  作者: 夕月 悠里
プロローグ
1/30

なろうの国

 宵の帳がおろされて世界が闇に包まれようが

 小さな箱の窓の向こうはいつもいつでもきらびやか

 きらきら光る蜘蛛の糸が張り巡る

 旅を続けるぼくらの舟は

 案内人の小さなネズミに導かれ

 あっちこっちと大忙し


 そんな世界の片隅に

 ひろーい空き地がありました

 ある時ひとりの男が立ち寄って

 変わった種を植えたのです

 水の代わりに言葉を欲し

 光の代わりに創造を欲するものでした


 変わった種から芽がでて大きくなると

 葉っぱに浮かび上がるはなんとも不思議な物語

 観る人すべてを虜にするような面白さ

 好奇心と物珍しさに人々は集まり

 言葉を与え創造を惜しみなく注ぐのでした

 やがて種は大樹のように大きくなったのです 

 

 そこに浮かぶ物語は相も変わらず面白く

 一同夢中になって世界に引きずり込まれ

 主人公と一緒に世界をさまようようにして

 見たこともない摩訶不思議な世界へと

 獣や鳥とも仲むつまじく言葉を交わしながら

 なかば本気で世界の存在を感じさせながら


 やがて世界は完成し大樹の生長は止まります

 空想の世界も終わりを迎え

 人々は感動と絶望と手をつなぎ佇んでいました

 そのとき木から何かが落ちてきました

 それは「次は君たち」と書かれた種でした

 種を拾った人々は朗らかに「次はわたしたち」と叫ぶのでした


 こうして「なろうの国」はできたのです

 一人一人がひとつひとつ丁寧に

 我が子のように種を育てまた実を結ぶまで

 さあさあ、物語はまだまだ続く

 ぼくらの楽しい旅はまだまだ続くよ

 夢から覚めるまで


 君もこのたわいもない物語の種をうけとり

 その手で小さな植木鉢に植えておくれ

 子供の頃に描いた夢を土にして 

 思い出を肥料として、言葉を水として

 君のすべてを詰め込んで

 いつか芽が出て花が咲くまで


 そして願わくば次の種をまいておくれ 


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