婚約破棄ものに登場する厳しすぎる王妃教育について
最近「小説を読もう」においては、婚約破棄をテーマにした作品が多くみられる。そう行った作品の中で、主に婚約破棄を行う、もしくは了承する原因となるのは、体調を崩すほどの厳しい王妃教育によって発生した相手との心理的距離または価値観の違いである。作品によっては、頭痛、腹痛、嘔吐などを催すものであると書かれていることもある王妃教育であるが、その実態について詳しく描写されているものを見たことがない。王妃教育について具体的に説明しているものがない中で、王妃教育とは何らかの身体的、心理的異常を引き起こすほどの厳しさを有するものであるという前提が当たり前のように使用されるのはいったい何故であろうか。その謎について迫っていきたいと考えている。
そもそも王妃教育とは一体なんであるとされているのか。まず代表的なのは、王妃に必要な作法、心構えを学ぶことだろう。また作者によって設定された貴族社会のルールについて認識していることも重要だ。次に、作者によって設定された文化度に相応しいレベルでの学問の習得が必要であると考えられる。この際、数学、物理、化学などの分野より、政治、経済、歴史などの分野がより高レベルな次元での修得が必要だと考えられる。つまり、暗記を必要とする学問だ。最後に、世界情勢についての知識(偉い人の名前、力関係、各国の特性など)を身につけていることも非常に大事だろう。こちらも暗記を必要とするものである。以上が一般的な王妃教育とされているものだと考えられる。しかし、これを幼少期から身につけるだけでは体調不良を引き起こすことができるとは到底思えない。ここで、疲労による体調不良とはどういった状況で起こるのかを考えていきたい。
疲労による体調不良とはいうが、その多くはストレスによって引き起こされているものであると考えられている。中でも人間関係が上手くいかないことが原因でストレスを感じることが多いとされている。ということは、王妃教育を受ける少女はおそらく人間関係のストレスによって体調不良を起こしている可能性が高い。ではその場合に考えられる人間関係とはなんだろうか。まず、家族との関係について考えていきたい。よく作品中にある少女の家族との関係としては、すでに婚約者が馬鹿なため、両親は優秀で、関係が円満なパターンが多い。ここにストレスが発生するとは考えにくい。次に、友達との関係だが、ここでは大抵上手くいっている描写しかされないので、考察を控える。続いて使用人、または教師などの雇われている人との関係だが、主人公は人がいいので、慕われていることが多い。ここにも特にストレスが発生するとは考えにくい。最後に婚約者との関係だが、これは当然上手くいってない場合が多い。が、そんなに頻繁に会っていないことに加え、ヒロインと呼ばれる少女が来るまでは表面上は上手くいっているので、それが原因で体調不良になるほどのストレスを感じるとは思えない。では、主人公は一体どこでストレスを感じるのか。最も可能性があるのは、ヒロインが学園に入学し、自分の婚約者との距離を縮めている最中ではないだろうか。王妃教育を受ける一方、婚約者とヒロインが仲良くしていることにストレスを感じ、体調不良を引き起こすというのは十分に納得がいく。しかし、主人公の多くは王妃教育を修了してから学園に入学するため、やはり主人公が王妃教育によって体調不良を起こすはずがないのである。加えて、疲労による体調不良は運動や、睡眠などによって改善できるので、王妃教育の中に運動が含まれているようならなお体調不良になる可能性を削減できるのである。
以上の考察から、頭痛、腹痛、嘔吐などを引き起こす王妃教育は存在しないといっても過言ではない。ではこれらの発想はいったいどこからきたのか。王妃教育について書くにあたって、ネットで調べてみたところ、韓国ドラマが多くヒットした。ストーリーとしては、今まで一般人として過ごしてきた主人公が何らかの事情で、王妃教育に取り組むが、突然変わった環境に適応できず、ストレスを感じ、体調を崩すといったところであった。つまり、王妃教育とは体調を崩すほど厳しいものであるという発想はここからきていると考えられる。だが、婚約破棄ものにおいては、少女は幼い頃から王妃教育を受けている点で、韓国ドラマの主人公とは決定的に違うのである。婚約破棄ものに登場するヒロインであれば、王妃教育によって体調不良になることも考えられなくはないが、幼い頃からその環境に置かれている主人公にはその可能性が極めて少ないと言える。以上で王妃教育についての考察を終了する。