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ワールドハウル  作者: シンク
1章 森の狩は慎重に
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6話 追憶と現在

 金属がぶつかる激しい音と助けを求める声が響く。反射的に俺の足は動いていた。

 昔同じような経験をした事を思い出し、身震いする。あの時はぎりぎり間に合わず、取り返しのつかない事になってしまった。だけど今回は間に合う。間に合わせる。

 声のした方でウトが必死に猪の攻撃を受け止めている。受け止めている大剣を支える細い腕は震えていて、とても辛そうに見えた。


「今助けてやる!」


 彼女に言葉を投げかけると同時に、俺は高く飛び上がり猪の側面を斬りつけた。攻撃のエフェクトと同時に現れる数値は決して高くはない。怯みもしない様子を見る限り、これだけでは足りないようだ。


「ちっ!それならこれでどうだ!」


 着地と同時にもう一度飛び跳ねる。今度は相手の後方に向かっての行動だ。後ろ足の付け根を狙って攻撃すれば体勢を崩すはず。そう確信して勢いよく剣を振った。

 しかし現実は無情である。結果から言えば俺の剣は空を斬った。彼女の悲鳴と共にウトは猪に振り払われ、そのせいで狙っていた場所には土煙しか残っていない。

 視界の悪い中、周りを確認する。幸いにも猪と自分の間には何もない。目の前の木の幹に足を着け、再び相手に向かって飛び跳ねた。

 目前には猪の後ろ姿が見える。今度こそ大丈夫だ。

 ──そう信じた直後、俺の体は横に吹き飛ばされた。






 私は何をしているのだろう。勢いよく敵に向かっていくケントさんの背中を眺めながら、状況を理解していない自分がいた。

 武器を構えたは良いものの、敵の狙い所が分からない。そんな小さな理由で動けなかったのだろうと思うと、自分が少し情けない。


「弥生、戦闘です」

「えっ!? あっ、はい!」


 自己嫌悪に浸っている中、名前を呼ばれて振り返る。

 百合音は先に行った少年、ケントさんを指差しながら話を続ける。


「彼の攻撃に合わせてください。援護はします」


 百合音は杖を取り出し、何かを詠唱し始めた。横目で私を睨みつける。多分早く行けという意味だろうけど少し怖い。

 他人に攻撃を合わせるのは初めてではない。現にここに来る途中でウトが処理しきれなかった敵を、私がカバーしてきた。

 ケントさんが猪の側面に向かってジャンプしている。ウトの時と同じだと考えれば、自分は誰も居ない方向から切り込めば良い。仲間が増えたからと言ってやる事は多分変わらないはず。

 一度頷き、呼吸を整える。

 覚悟を決めて私は『突進』を使い、猪の後ろ足目掛けて突っ込んでいく。

 直後、私の予想とは少し違った現象が起きた。ケントさんの攻撃が効いたのだろうか、猪が前進してしまった。一度発動したスキルは一連の動きが終わるまで止められない。隙を晒す羽目になるが、幸い敵は逆の方を向いている。連続でスキルを発動させれば何も問題はない。はずだった。


「避けて!」


 目標に当たる少し手前でケントさんが視界に入ってきた。

 彼も既に勢いが付いていて止まる事ができない。

 ぶつかると分かった瞬間に叫んでみたが、彼が振り向いた直後に大きく音を立ててぶつかってしまった。

 吹き飛ばされたケントさんのHPバーが2回ほど削れる。1度目は弥生の攻撃で、2度目はその衝撃で敵に叩きつけられた時のものだ。両方とも減少量は少ないが、自分の攻撃でもあまり減らないところを見ると、彼のレベルの高さが(うかが)える。

 画面端に『パーティメンバーを攻撃しています』と赤い警告表示が出た事に少し焦りを感じた。


「ぐっ!痛てて……」

「ごっ、ごめんなさい!」


 猪の足元に落下し、剣を地面に突き刺して彼は立ち上がった。

 とりあえず攻撃を当ててしまった事を謝り、頭を下げる。

 動く猪の足を避けるように恐る恐る近くまで寄ると、彼は私の顔を見て微笑み、肩に手をかける。


「大丈夫。少し落ち着いて。ね?」

「はっ、はい」

「こういう事は慣れてるから気にしないで」


 彼はそれだけを告げると再び猪に向かって飛び上がり、今度は敵の足元から斬りあげる。続けて空中で剣を持ち替え、流れるように逆袈裟斬り、真横からの回転斬りの順で繰り出し、高速で敵のHPを削っていく。剣が薄い赤色に光っているので多分スキルによる連続攻撃だろう。

 敵の頭辺りではウトが自慢の大剣を振り回している。ケントさんの流れるような攻撃とは違い、敵に当てる度に反動で少し動きが止まっているが、一撃の重さを考えると仕方のない事だろう。

 そんな二人の攻撃でも倒れないどころか、反撃すらしてくる敵の姿を見ていると恐怖さえ感じてしまう。

 助けに戻りたいのにさっきの出来事のせいもあって足がすくむ。

 どうしたらいいか分からなくなり、振り向くと百合音が腕を伸ばし、手の平をこちらに向けていた。


「……え?」

「弥生、手を出してください」

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