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ワールドハウル  作者: シンク
3章 それは曖昧だけど確かなもの
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27話 一人でいる時の思考は止まらないものです

「どうしてこんな事に……」


 僕は小さく溜め息を吐き、自室のベッドに横たわりながら喫茶店での出来事を追想します。

 変わったメニューの面白い喫茶店だと思ったのはつかの間、変な常連客っぽい二人に絡まれてからは後輩を連れて別の場所に行きたくなった気持ちは今でも鮮明に思い出せます。

 その上あの人に呼び出しまでされたせいで、貴重なゆっくりできる時間が今の今までなくなってしまった事を考えていると、イライラしか募っていきません。

 これでは良くないと思い、僕はパソコンの電源を入れていつものゲームを起動させました。

 事前に知っていた事ですがアップデートの通知が表示され、そのまま了承するとアップデートが始まります。


「マップの拡張に攻撃系の追加。補助職は追加要素無しですか」


 追加要素を確認し、わざとらしく独り言を呟きながら僕はフルフェイスヘルメットに似たデバイスを手に取ります。

 最新の物はここまで大きくも重くないらしいですが、今はこの型落ち品でも十分使えるので買い換えは考えていません。

 長い事使っているせいで変に愛着の沸いたデバイスを眺め、昔の事が勝手に思い出されます。

 弥生を誘う前、ラビと組む前後の今と比べてかなり尖っていた自分の姿が容易にイメージされいきます。あの頃は今とは違うチャンネルでPVP(人殺し)をしていたのだから当然といえば当然なのでしょう。


「いなかったらメインで紛争チャンネルに潜りますか」


 僕がもともと遊んでいたのは最近弥生と一緒にいたチャンネルではありません。

 このゲームには皆のよく知るRPGのような、初心者から中級者向けの『冒険チャンネル』と上級者向けの『紛争チャンネル』という二つのチャンネルが存在します。

 紛争チャンネルとは冒険チャンネルとは違い、PVP(対人戦)を目的としたチャンネルです。

 マップや登場するモンスター等に大きな違いはありませんが、紛争チャンネルの方が経験値は多いようです。

 しかし、そこでは自分が設定したプレイヤー以外は全て敵であり、普通のチャンネルとは違って街等の安全区を除いた場所で不意打ちしてもペナルティはありません。

 それどころか倒したプレイヤーの数だけポイントが入るのでもはや別のゲームと言っても過言ではないでしょう。

 感覚的にはFPSのようなものですが、やはりレベルや職によって一撃でしとめる事が難しくもあります。

 特に僕の場合、プレイスタイルのせいで戦闘時間は長くなりやすいのです。

 ソロでの戦闘方法、多少は変える必要がありそうですね。

 昔の戦闘を思い出しながら今できる戦闘方法を考えていると、軽い鈴の音と通知が届きました。

 そうやらアップデートが終わったようです。


「とりあえず街にでも行ってから決めましょう」


 僕はデバイスを被りながら期待を込めて言葉を宙に放ち、あの世界に潜る事にしました。






 数秒程視界が暗くなった後、目の前には自然の豊かな街が広がっています。

 メニューを開くと無意識に自分の表示名『百合音』が目に入る事でやっとゲームが始まった感覚が湧きました。

 僕は現実(リアル)より軽い腕を真上に伸ばし、軽く回して動作確認をした後にフレンドリストを確認します。

 弥生の名前が見えました。オンライン表示の横を見ると、どうやら同じ街には居るようです。これならすぐに会えます。

 これなら急ぐ必要もありませんので、とりあえずメールを送ってからアップデートの詳細を確認する事にしました。

 確認していない内容は確か武器種の追加でしたか。その中に槍系が見え、無意識に弥生の言っていた事を思い出してしまいます。パラなんとかと言っていましたが、もしかしたら隠しイベントによる先行実装でしょうか。

 それらの説明を見ていると、メールの通知音が聞こえました。

 視界の端に映るそれを開き、僕は差出人の名前だけを確認して中身を開かず説明の続きを読み進めます。

 ビンゴです。入手方法から名前までピタリと一致する槍が追加されていました。


「……意地悪ですね。どこかのゲーム攻略本ですか?」


 性能についての項目を読んだ瞬間、思わず気持ちが口から漏れてしまいました。

 なんと既存の武器なら扱い方などが書かれている場所に「続きは君自身で確かめてみよう」などと書かれていては、仕方の無いことだと思います。

 実装されて間もないのでしばらくは隠しておきたいという事でしょうか。

 期待して見ていたせいで、その分の虚無感が全身に襲いかかる感覚がします。

 端から見たら相当がっかりしているように見えるでしょう。

 そんな気分のまま僕は倒れるように近くのベンチに腰掛け、頭の中を整理していると後ろから聞き覚えのある声が聞こえました。

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