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ワールドハウル  作者: シンク
3章 それは曖昧だけど確かなもの
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25話 再会は災害の始まり

 急に声をかけられ、肩に乗せられた手。

 その白い薄手の手袋を着けた手にはどこか見覚えがあった。

 振り返ってみてみると、金色の髪をした優しそうな顔が目に映る。


「人違いでしたか?」

「あっ、えっと……多分合ってます。確か……スノウさん、ですよね?」


 記憶を探り、昨日洞窟の奥でぶつかった彼女の名前をうろ覚えで口に出す。

 師匠は彼女の事を怪しい人だと言っていたけれど、実際はどうなのだろうか。

 彼女は私の返事を聞き、笑顔で再び口を開いた。


「そうです。昨日の件で申し訳なく思っていたところ、偶然姿を見かけたものですから声をかけさせて頂きました」

「そ、そんなに気にすることでもないと思います。怪我も無いですし……」


 申し訳なく思いつつも真っ直ぐ私を見つめる彼女の視線が辛く、私はつい目を背けてしまっていた。

 実際のところこちらに何も被害は出てない以上、スノウさんがそんなに謝る必要も無い。

 そう思うとなぜか私が彼女をいじめているようにも見えるこの状況はどうにかしたいと思えてきた。

 何か方法は無いか。考えていると視界の隅に通知が表示された。


「ご無事で何よりです。では昨日のお詫びも兼ねて何かしたいので、ここを抜けた先で少しお話しませんか?」


 表示された通知はパーティ申請で、空気を読むならこれに承諾したら一緒に行くことになりそうだ。

 レベル上げが当初の目的だったが、お詫びに何か貰えたりするのだろうか。そう思うとこれはこれで良いとも考えられる。

 私はこの二つを天秤にかけ、悩んでいるときに思わず彼女と目が合い、その微笑みに負けてつい了承するボタンを押してしまった。


「まぁ少しだけ。少しだけならいいですけど、待ち合わせがありますからその人から連絡がくるまででいいならなら大丈夫です」

「ありがとうございます。この辺りのレベルなら必要ないと思いますが、戦闘ではサポートが専門ですので困ったら頼ってください」

「分かりました。これからよろしくお願いします。えっと、火山の方向ですか?」

「はい。火山の方に小さな建物がありますので、そこでお話しましょう」


 私は彼女の言葉に短く返事をし、再び歩き出した。

 スノウさんは私のすぐ後ろを歩く形で一緒に移動している。

 先を歩くのは何か気恥ずかしいが、彼女はサポートが専門なのだから仕方がない。

 恥ずかしいとは思うが、同時に嬉しくもある。

 今の自分は昨日の師匠と同じように、何かあったら後ろの人を守る立場にあると思えたからだ。

 自分は短い時間でも強くなれた。その事実を歩きながら自分のステータスで確認していると、私は無意識のうちに笑みを溢してしまう。

 しかし、その表情は直後の出来事によって驚愕に変わった。


「うわっ!? てっ、敵!?」


 急な曲がり角を曲がろうとした瞬間、モンスターが姿を現したせいだ。

 死角から現れたモンスターは、私が戦闘態勢に入るのを待たずに武器を振り上げる。


「ちょっと待っ――」


 強くなれた事によって得た自信は過信になってしまっていたようだ。敵は既に攻撃を開始しようとしていると言うのに、自分は戦闘態勢はおろか武器すら取り出せないでいる。

 攻撃に当たってしまう。そう思って目を瞑った直後、間近で破裂音が響いた。


「弥生さん。大丈夫ですか?」


 スノウさんの声と同時にモンスターは光となって消え、なんとか窮地を脱する事ができた安心からか、私は全身の力が抜けるのを感じた。

 破裂音は彼女の攻撃魔法なのだろう。しかし師匠が爆発系の魔法を使う場面を何回か見ているが、何か違和感が残る。

 そういえば彼女はサポート専門と言っていたが、この辺のモンスターを一撃で仕留める威力の魔法を使ったように見えた。

 百合音さんが似たような職だった気がするが、彼女が攻撃魔法を使っているところは一度も見たことがない。

 レベルが上がれば使えるようになるのだろうか。さらに一撃という事は、スノウさんのレベルの高さを垣間見たと言っても良いだろう。そんな彼女を守らなければと思っていた自分が少し恥ずかしい。


「ごめんなさい。ちょっと考え事してて……」

「仕方ありませんね。ですが気を付けてください。あんまりぼーっとしてると後ろから打ち抜いちゃいますよ?」

「あはは。そうされないように気をつけます」


 私は愛想笑いでお茶を濁し、気を張りつつ先頭を早足で歩く事にした。


 彼女の言動に既視感を覚えた気もするが、それは些細な問題であった事をこの頃の自分はまだ知らないでいた。

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