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ワールドハウル  作者: シンク
2章 強気の洞窟探検
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16話 閃光から裏切

 (まぶた)を貫くほど強い光に視力を奪われ、私はその場に座り込んでしまう。

 ダンジョン内で物が見えない状態はかなり危険だ。幸いにもノンアクティブモンスターしかいないので、襲われる心配もないがそれでも恐怖を覚える。

 手探りで立ち上がろうとする手前、私は誰かに体を持ち上げられ、移動する振動が体に伝わる。直後、ノンアクティブモンスターしか居ないという前提が爆発音と共に崩れ去る。


「弥生、戦闘だ」


 荒々しく地面に降ろされ、冷たい感覚が背中に染みる。

 頭を起こし、徐々にクリアになっていく視界の先には、数秒前まで予想すらしていない光景が広がっていた。

 やたらと広い空間は変わらないが、私が居たであろう場所の地面は抉れ、あれだけ居たモンスターはほぼ全て消えている。

 代わりに体が石で出来た巨人、通称ゴーレム型のモンスターが立っていた。

 黒曜石のような黒光りする鉱石で作られたその体は、森のボスだった猪よりも一回り以上大きい。

 頭上の名前を確認するも、やはり赤文字で『クリスタルの守護者』と書かれていた。

 先ほどの爆発音はこのゴーレムのせいなのだろう。師匠の言う通り、戦闘が始まったようだ。いつまでも倒れている場合ではない。

 私は即座に槍を取り出し、地面に突き刺して杖代わりに使って立ち上がる。

 その時に下を向いたのが悪かったのだろう。攻撃されかけている事に気付いたのは、間近で大きな音が鳴った後だった。


「危ない! 『全変換魔法盾(フルマジックシールド)』!」


 師匠の声が響き、ゴーレムの腕が弾かれた衝撃で地面が割れる。

 突き出した両手の先に出現した大きな魔力の盾は、役割を終えるとすぐに消滅してしまった。

 どうやら私を狙って放たれた攻撃から、師匠が割り込んで助けてくれたようだ。


「ありがとうございます! すぐ戦闘に戻りますので……」

「待て。君では一撃で死ぬ。経験値が惜しければ帰還スキルで先に安全なエリアへ」


 (あらかじ)め決めておいた拠点に移動するスキルは戦闘中でも使えるが、発動から効果が表れるまでタイムラグがある。師匠が守ってくれるだろうが、そんな保守的な行動をしてしまっては、この世界で強くなっても意味がない。


「師匠! せめて一緒に戦わせてください!」


 声を張り上げ、逃げない事を主張する。この言動自体無謀かもしれないが、これでいい。


「一緒にって、一撃で死ぬって事は避けるのに失敗したら死亡(デス)ペナルティ付くよ? 死んだら道中で得た経験値位はロストするけどやるの?」

「うっ……でも、私はこのゲームを始めた時に逃げないって決めました! 逃げるくらいなら立ち向かって死ぬ方がマシです!」


 広い部屋に私の声が僅かだが反響する。先程攻撃を弾かれたゴーレムが体勢を立て直している姿が視界の端に映るが、そんな事はどうでも良い。


「はぁ……どうなっても知らないよ? もう庇う方法もないし」


 僅かな沈黙の後、困惑した表情を浮かべ、師匠は溜め息を吐いた。

 私の返事を待たず、ゴーレムの近くまで走り、自身の掌を中心に魔法陣を展開した。


「吹き飛べ! 『上級爆裂魔法(ハイエクスプロージョン)』!」


 爆発音が耳を貫く。魔法陣から戦争映画さながらの迫力を持つ大爆発を起こし、立っていた地面ごと敵を吹き飛ばしたように見える。

 師匠は魔法の発動と共に飛び上がり、爆風を利用して私の近くに着地した。

 ダメージの表示こそ見えないが、相手はその巨体が吹き飛ぶ程の攻撃を受けている。無事で済むはずがない。


「すごいですね! 次は私が出ま……師匠?」


 張り切って槍を回し、ゴーレムに攻撃を仕掛けようと体を屈めた私の手を師匠が握った。

 少し緩く、けれど振り払えない程しっかりとした手つきだ。

 意味が分からず師匠の方を向くと、静かに首を横に振られた。


「ごめん。『集団強制移動魔法(マステレポート)』」


 師匠が魔法を発動し、今度は私達が緑の光に包まれる。あの一撃で終わってしまったという事だろうか。師匠の顔を見ていたら目が合うもすぐに逸らされてしまった。

 どういう効果か気になりログウィンドウを開くと、緑の光は消滅してしまった。


「嘘……今までどこでも使えたのに?」


 師匠の方にも同じようなログウィンドウが表示されたのだろう。そこには『移動不可エリアです』とだけ記されていた。

 あの魔法の正体は移動魔法だったらしい。けれどもどうしてこのタイミングでそんな魔法を使う必要があったのだろう。

 予想外の展開で師匠は困惑しているようだが、敵も待っていてくれる保証がない以上、すぐに確認しなければならない。


「師匠、どうしてこのタイミングで逃げるような魔法を……」

「アイテム使って逃げろって言われても従わなかったでしょ? だから少し時間を稼いで強制的に。まぁそれも無駄に終わったけど」


 確かに逃げろと言われても私は玉砕を選択した。これは百合音さんに誘われた時から目標としていた理想の自分、強気な自分になる為に必要な事だ。

 ゆえに、私にはそうなれないと否定された気になり、感情に任せて声を張り上げそうになる。しかし、直前の行動を思い出し、その感情を一旦飲み込む。

 自分から戦闘に参加すると言いつつも、師匠に最初の一撃を任せてしまっている。自己嫌悪に陥っていると、森でのボス戦と重なり、今度も何もできなかった自分に悔しさを感じる。


「君の戦いたいという気持ちは分かる。けど私の魔法はあいつには効いていない。動きは止めれてもHPバーは全く減っているようには見えないんだ。加えて圧倒的火力。私のシールドは攻撃を体力の代わりに魔力で受けるものだが、一撃で半分も持っていかれた。私のレベルでもパーティを組まなければ倒せない相手に、君は挑むの?」


 師匠の口調はまるで諭すように静かだが、どこか怒りを感じるようなものだった。現実(リアル)ではこのように言われた場合、私の返事は必ず相手の都合の良い方向に答えてしまっていた。ここでもそう答えてしまっては何も変わらない。

 

 ――なので、私の答えはこれしかなかった。


「師匠、ごめんなさい。私は逃げるわけにはいきません」

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