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ワールドハウル  作者: シンク
2章 強気の洞窟探検
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14話 遭遇から秘密

「そろそろ説明した方がいいかな」


 師匠が歩きながら口を開いた。

 数歩後ろを歩いていた私は、待ちわびたと言わんばかりに聞く態勢に入る。地図を見せられてから今この瞬間まで、聞いても適当な言葉で濁され、焦らされていたせいで気になって仕方がなかったゆえの行動だ。


「今から行く場所は隠しエリアで、掲示板にも攻略サイトにも載っていない場所だね。多分見つけたのは私だけ。弥生くらいのレベルなら丁度いい狩り場だから期待しててね」


 顔は見えないが多分笑顔だろう。大きく揺れる尻尾とピクピクと動く耳が彼女の興奮具合を伝えている。


「最近見つけたばかりなんだけどーー」


 言葉を途中で区切り、師匠がいきなり真横に跳んだと思った次の瞬間の出来事だ。

 私は何かにぶつかり、思考が追い付いた時には背中は地に着き、天井を見上げていた。


「すみません。大丈夫ですか?」


 (いた)たと声を漏らしていると、絹糸のような綺麗な金髪の女性が顔を覗かせ、手を差し伸べてきた。

 手を取りながら女性の格好を確認する。真っ白いドレスに色白の肌。頭には髪と似たような色のティアラが見える。まるでどこかの国のお姫様のような姿だが、この人もプレイヤーなのだろうか。


「大丈夫、ですけど……あなたはいったい……?」

「私はスノウと申します。この先で少し用事が……あぁすみません。急いでいますのでこの辺りで失礼します」


 なにかを思い出した様に、彼女は私達の来た方へ走り去って行く。指示を仰ごうと横目に師匠を見やるが、顎に手を当てて何か考えている様だった。


「まぁ行き方は簡単だから、他の誰かが見つけててもおかしくないか」


 ようやく、ゆっくりだが歩きだした彼女は落胆した声で呟く。

 スノウと名乗った女性を追いかける事はしないが、目的地への足取りは重いらしく、先程より進むペースは遅い。

 続く私もゆっくりと、彼女の後ろをキープするように歩く。空気が少し重い。師匠と対峙した時とはまた違った重みに耐えかね、とりあえず話題を提供することにした。


「師匠、もしかしたら迷ってただけの人かもしれませんよ?」

「それはないね。見た目だけ変えてるとしてもあの装備はかなり高レベル。地図が売ってる事を知らない訳がない」


 師匠に言われてから私も知ったが、ダンジョンの地図というのは一定のレベルを超えれば街で買えるらしい。


「で、でも、あえて地図なしで来てる人かも……」

「その可能性もないことはないからね。でも故意にぶつかった様にも見えた。怪しい事この上ないね」

「怪しいって言ったら、師匠も初めて会った時は十分すぎるほど怪しかったですよ」

「確かにトレイン状態で驚かして悪いとは思うけど、そこまで言うかな……」


 人を疑う事が苦手な私は、なんとかこの話題を逸らしたかった。それにあの人、優しそうな声だったから大丈夫だろう。

 それより私の言い方が悪かったのか、師匠が若干不機嫌になったのがなんとなく声で分かった。


「あ、あの……そういえば私、師匠のことあんまり知らないので、その、今更ですけど自己紹介とかしてもらえると……」


 なんとか機嫌を直してもらおうと考えた結果、経験則からその人自身について語ってもらうのが一番という結論が出た。経験則とは言っても姉がそうだっただけで、師匠に通じるとは限らないがやってみる価値はきっとあったはず。


「んー……? 自己紹介か。確かにきっちり知っておいた方がいいかもね」


 振り向きながら最初にキョトンとした顔を見せるが、師匠はすぐに口角を上げながら向き直り、話を続けた。


「名前はラビ。種族は狐型の獣人(ワーフォックス)魔導師(ウィザード)でレベルは91。質問は?」

「えっと……白居(しらい)先輩と知り合い、ですよね?」

「まぁね。昔……ん? 今白居って言った?」

「えっ? あっ!? すみません! 今の無かった事にしてください!」


 質問を必死になって探していたせいで、つい口を滑らせてしまった。 白居と言うのは百合音さんの現実の名字(リアルネーム)だ。百合音さんには現実(リアル)の情報はなるべく言わない事を、ゲームを初めて最初にきつく言われていた。覆水は盆には返らない。今の状況を知られたら多分怒られるだろう。


「ふっ、そうか。リアルの知り合いって聞いてたけど後輩か」

「あの、師匠……?」


 短く、乾いた笑いの後、歩きながらでも聞こえてくる程大きなため息が聞こえた。

 百合音さんではなくて師匠に、後でではなく今お説教させるのかと私は身構えてしまう。


「今回はセーフだけど気をつける様に。私と百合音はリアルの幼馴染みだからね。まぁ分かったのはゲーム内で会ってしばらくした後だけど」

「そ、そうなんですか……」


 思っていたよりも深い関係だった事を知った驚きと、口を滑らせてしまった後悔のせいで、気の利いた返事ができないでいた。師匠から見たら多分目が泳いでいるように見えただろう。

 そんな後ろめたい気持ちを抱えて歩いていると、急に師匠が振り返って足を止めた。


「さて弥生。行き止まりだね。ここの壁を抜ければすぐそこだけど荷物の整理は?」


 言われて気付いたが、ここに来るまでに荷物が増えていた。

 ドロップアイテムのせいだが、装備できないレア以外の装備アイテムを捨てれば空きは作れる。

 私はその場でアイテム欄を開き、それらを容赦なく捨てていった。

 これで十分だろう。素材や消費アイテムの詳細は分からないが、空いたアイテム欄を確認し終え、報告をしようとした時のことだ。

 師匠の方を向いたらなぜかローブを脱いだだけなのに、かなり涼しそうな格好で立っていた。

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