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ワールドハウル  作者: シンク
2章 強気の洞窟探検
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13話 不意から激励

 ラビさんの手元から放たれた火球は止まらない。放った本人の目つきは鋭く、私の方を向いていた。やはり私のやり方が気に食わなかったのだろう。罰として放たれたのなら受けるしかない。

 諦めた私が目を瞑った次の瞬間、顔の横を何かかが通り過ぎたと思ったら後ろの方で爆発音が聞こえた。


「敵は1体とは限らない。これは何が相手でも言えること」


 ラビさんが攻撃を外したのだろうか。しかし彼女がこの距離で外すとは思えない。思わず目を見開いていたのだろう。目が乾くような感覚がする。

 状況に追いつけず惚けていた私だったが、彼女の言葉をようやく理解し、音のした方を振り向く。

 周りには岩で作られた壁しかないが、ふと下の方に目をやるとコウモリ型のモンスターが転がっている。モンスターのHPバーは既に空になっており、少しの間見つめていたら光になって消えてしまった。


「絶対気付いてなかったでしょ? 危なかったね」


 どうやらラビさんは私に襲いかかってきた敵を倒してくれただけらしい。今日初めて彼女に助けられた気がする。お仕置きでなくて良かったと安堵し、私は近くの壁にもたれかかった。

 束の間の安息を堪能していると、ラビさんが微笑みながら私の近くまで歩いてきた。


「まぁでもレベルは上がったんだね。それじゃあ……」


 言い切る前に彼女は手をこちらに(かざ)し、私は無意識に目を瞑ってしまった。

 そして暗闇の中、何かが私の頭に触れた。それは優しく撫でられているような、どこか心地よく、安心できるような感覚だった。

 恐る恐る目を開けて見るとラビさんと視線が交わる。彼女はそれに気付くと先ほどより温かい笑顔となり、私を見つめた。


「ラビ……さん?」

「そんなに怖がらなくていいよ。レベルアップおめでとう。頑張ったね」


 注意散漫だと怒られると思っていたが、褒められてしまった。そして撫でられているような(・・・)感覚ではなく、実際に撫でられていたのに気付くには時間がかかった。意外にも不快感無く、この仮装世界(ゲーム)内で初めて優しくされたせいか、吸い寄せられるように抱きついてしまった。

 思い返せばここ最近まともに褒められた記憶もなく、こうして優しく褒められたのなんて何年ぶりだろうか。学校や自宅にいても常に優秀な姉に比べられ、成功しても当然のように思われていた日々を思い出していると、ラビさんの声が耳に入ってきた。


「まるで小さい子みたいだね。私より背が高いのに」


 その声はいつも違って聞こえた。戦闘時の低いトーンとも違う。どちらかと言うと若干上ずって聞こえた気もする。早口だったが怒っている様子はない。これは甘えても良いと言っているのだろうか。


「ラビさん……」

「まぁ次からは終わったと思っても油断しない事。それから――」

「あの、ラビさんって……先生みたいですね」


 ラビさんの言葉を遮るように、自然と吐露してしまった。

 吐露とは言うものの、今思った事をそのまま考えずに言葉にしてしまっただけなので、ニュアンスが違う気もする。それでも言った後で考え、確かにこんな厳しいけれど優しい人に教えて貰えるなら良いかもしれないと思えた。


「先生か。確かに今は教えているから先生みたいに見えなくもない、けど戦闘技能とかを教えているから師匠って呼んでくれても……」

「じゃあ今から師匠って呼びます! これからもよろしくお願いします」


 少し距離を取って私はラビさん、もとい師匠に向かって頭を下げた。困惑する師匠の口から冗談のつもりだったのに、という呟きが聞こえた気もするが気のせいだった事にした。






 その後、私達は洞窟を進みながらレベリングを続け、時折休んでは師匠に戦闘時の注意点や、洞窟の奥に出現するモンスターについて等教えてもらっていた。

 今は何度目かの休憩中で、私と師匠は腰掛けるのに適した岩に並んで座っている。


「弥生、この洞窟の全体図は見た事ある?」

「そうですねー……実はここ、初めて来たので全く分かってないんですよ」

「そうだろうと思った。少し待ってて」


 師匠は目の前で指を動かし、何やらメニュー画面を弄っているようだった。その様子を眺めていると、突然私の目の前に地図が表示された。びっくりして後ろに転びそうになるが、お腹に力を込めて踏ん張る。それからどうにか座り直し、再び地図を眺めることにした。


「えーっと……これは……ここの地図? ですよね?」

「そう。そして中央辺りの青い点二つが私達のいる場所だね。次に目指す場所はここ」

「あの、師匠。本当にそこですか?」


 師匠は私の前に表示された地図を指差し、これからの行き先を告げる。どうみても普通ではない場所に驚く私を尻目に、師匠はいたずらに微笑むだけだった。

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