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ワールドハウル  作者: シンク
2章 強気の洞窟探検
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9話 洞窟から妖狐

 森で皆と解散した後、私はクエスト報告を終わらせてから火山に向かった。

 火山へは森の方から洞窟へ入り、そこを抜ければ行けるらしい。

 そして私は今その洞窟の前に立っている。

 振り下ろすような風を全身で受けるも、まだ火山からは結構距離があるのだろうか熱風には程遠い。

 入り口には敵らしい姿は見えないが、いざ一人で冒険してみようと思うと不安だった。ゲームだと分かっていても見える岩は硬そうだし、触れてみるとゴツゴツとした感触が指から伝わる。現実世界リアルで冒険しているように錯覚しても不思議はない。


「……あれ?」


 怖じ気付いて踏み出せないでいると、いつの間にか洞窟の中から複数の足音が聴こえてきた。それどころか徐々に大きくなってきている。耳障りなモンスターの声が大量に聞こえるようになった数秒後、洞窟の中から小さな人型のモンスターが現れた。その姿は全身を赤いローブで包んではいるが、後ろの方から黒く大きな狐のような尻尾が見えた。

 その大きな尻尾と怪しい格好を見てモンスターだと確信した直後、信じがたい場面に遭遇してしまった。


「うわっ! ちょ、ちょっと!」


 私は慌ててそこから走って逃げ、大きく距離をとって様子を見ることにした。人型のモンスターに率いられるように、大量のモンスターが洞窟から出てくるのが見えたのだから仕方ない。

 コウモリやモグラ、ゴブリンのようなモンスターはそれぞれの武器を掲げ、さながら百鬼夜行のようにも見える。

 先頭を走る人型の物は私をちらりと見やると足を止めた。

 その赤い目は獲物を見つけた獣のようで、目があった瞬間に私は思わず後退りをしてしまう。

 ともかくその人型のモンスターはその場で振り向き、モンスターの群れに手のひらを見せ大きく叫んだ。


「上級氷属性範囲攻撃魔法(ハイ・スノウストーム)!」


 女性のような声が辺り一面に響き、洞窟からも反響して聞こえる程大きな声だった。声と同時に大量のモンスターの足下を囲むように魔法陣が一瞬にして広がる。次の瞬間、轟音とともに魔法陣から吹雪が発生し、吹き荒れた。そして彼らは人型の着ていた赤いローブに触れることなく、凄まじい勢いの吹雪に呑まれる。

 このエリアにはあんなスキルを使う敵も出るのかと感心すると同時に、仲間割れする事もあると記憶しておこうと思えた。

 吹雪の音、敵に攻撃が当たっている時の鈍い効果音が止み、死体の山が出来上がっていた。


「まぁこんなもんだよね。連れてきちゃってごめんね」


 築かれた山には目もくれず、赤いローブのモンスターは私に語りかける。笑顔を向けながらゆっくりと歩いてくる姿に多少の恐怖を感じ、私は後退りながら質問を投げる事にした。


「え、あ、あの……貴女、モンスターですよね?」


 その質問に彼女は首を傾げる。色や細かいものは違うが、フードや背丈のせいでその姿が百合音と重なる。


「あぁ、この装備のせいだね。今外すよ」


 納得したようにローブを脱ぎ、隠れていた部分が露わになる。

 黒い肩出しのシャツに黄色のショートパンツ。黒いショートヘアから真っ直ぐ上に伸びた狐のような耳。手はよく見ると爪が少し長く伸びていて、引っ掻かれたら痛そうだった。

 とりあえずモンスターではなく普通のプレイヤーだった。街でたまに見かけた獣人って種族だろう。


「そんなにじろじろ見られるとちょっと……」

「あ、その、ごめんなさい?」


 彼女は少し照れながら優しく目を細めて見つめる。その姿には先程感じた恐怖のカケラも感じない。それどころか私より身長が低いせいで自然に上目遣いに見え、揺れる尻尾も相まって可愛らしい雰囲気さえ感じる。


「まぁいいか。貴女が彼女の言ってた初心者の弥生?」

「そうですけど、どうして初心者だと分かったんですか?」

「それはもうプレイヤーとモンスターの区別も付かないんだもん。名前の表示を消しててもターゲットしてみれば分かるのに」


 抑揚のある話し方で説明する様子は、少し馬鹿にされているようにも感じられる。

 それを感じ取られたのだろうか、彼女は私の肩に手を当て、少し申し訳なさそうな表情を見せた。


「ごめんごめん。本当は百合音に手伝いを頼まれててね。私の名前はラビ。これからよろしく」

「よろしくおねが……って百合音さんに!?」

「知り合いだからね。用事があるから後を任されただけ」

「任されたって……」


 焦って何か言葉を返そうとしたが、彼女からフレンド申請が着たことが右下に表示されたせいで続きが出てこない。彼女の表情を確認し、頷かれたので承認ボタンを押し、私も申請を送ることにした。向こうにも承認されたと通知が着たのだろう。嬉しそうな声で再び話し始めた。


「レベリングの手伝い。必要でしょ?」

「まぁそうだけど……」

「決まりだね。それじゃあその前に」


 彼女は途中で言葉を区切り、何かを待っていた。

 それから数秒後、私の目の前にフレンド申請とは別の申請が表示された。

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