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この気持ちは2

「それにしても…」


「…」


「高松さんがこんなところに来るって意外だよな」


「…」


「菊池?」


「…」


「おい!菊池!」


「そうだな…」


「…」


「…」


「なんか、お前、さっきから、可笑しいぞ」


「…え?」


はっとした俺。


すると、暫くして、


「よろしくにゃん」


「夏美ちゃん!」


「…」


「よろしくにゃん」


「にゃん」


「…」


そんな時、


「お待たせいたしましたにゃん」


「おー!やっと来た!」


ビールである。


「夏美ちゃんは、なんか、飲む?」


「なっちゃんでいいよ」


「おーーー!」


「なっちゃんは、何か、飲む?」


「うん!」


彼女は微笑む。


その彼女の微笑みに彼は惹かれたのか、突然、さっきよりもテンションが高くなる彼。


着いていけない…


でも、その気持ちは、わかる。


自分もそうだから。


彼女に会えること、ただ、それだけでも、あの微笑みが一瞬だけでも見れることは、俺を惹いていくのだ。


そんな時だった。


俺の目の前に現れたのは…


「ごめんね、亮くん」


「…」


「にゃーん」


彼女の姿。


微笑みながら、俺のところに来た。


さり気なく、隣に座る彼女。


どきどき


心臓が高鳴る。


しかし、その一方、なんか、もやもやする。


何なんだ?


「亮くん?」


「…いや、何でもない…」


続けて、少し動揺しながらも、


「なんか、飲む?」


俺は口を開いた。


すると、微笑みながら、


「いいの?」


今日の彼女は、白猫で耳が垂れている。


いつもは、まだ、3回だけだけど、耳が立っている白猫だ。


尻尾もくるりとしている。


いつもと違う白猫姿の彼女。


「何にしようかなにゃん」


「…」


俺の隣に座って、メニューから選んでいる。


「うーん…」


悩んでいる彼女。


その姿もかわいい。


「うーん…じゃあ…」


俺を見る。


そして、


「これがいいな」


そんな目をして、メニューを指す。


彼女が指したものを目で辿る。


グレープフルーツのサワーだった。


「いいよ」


すると、微笑みながら、


「ありがとう」


やばい!やばい!


天使!チョーーーーーー天使!


かわいい。可愛い過ぎる!!


心の中のテンションがマックスしていく。


さっきまでしていたモヤモヤは、どこかへ消えて行った。


はーぁ


幸せのため息。


なんか、もう…


そんなことを思っていると、


「亮くん!」


「うん?」


ポケットから、封筒を出す。


そして、俺にその封筒を


「はい」


「え?」


「開けて見て」


「え?」


「いいから」


俺は、その封筒をそっと開け、中身を出す。


すると、


「え?」


「これ、あげる、亮くんに」


「え?いいの?」


彼女は、微笑みながら、首を縦に振る。


「…ありがとう…」


それは、この店の割引券だった。


いつでも来てね


「…うん…」


なんか、複雑な気持ち。


何なんだろう。


そんなことを知る由もない彼女の微笑んだ顔を見て遠く感じた。


そして、ビールを口に運び、グイグイと喉に通して行った。


それから、


はーぁ


ビール、最高!



それから、毎日のように、俺は、この店に来るようになった。


そして、ある日、


高松さんは、先にこの店に入っていた。


「いらっしゃいませにゃーん」


龍も一緒だった。


あと、同僚の貴之もその時はいた。


龍が、


「今日も行こうぜ」


「…うん…」


「え?どこに?」


割り込むように入って来た。


「飲みにだよ」


「おー!俺も入れて!」


「いいぞ」


そういう会話を交わして、タクシーに乗り込み、来たわけで…


「あれ、高松さん?」


貴之は言う。


「あーそう!」


「え?え?え?」


「意外だよな」


「高松さんってそんな人だったっけ?」


二人は、そんな話をしていた。


「でも、この店、高松さんから教えてもらったんだよ」


「えー!まじで?えー!」


「なあ!菊池!」


「…」


「菊池?」


「…」


「菊池?」


ある光景に俺は、呆然としていた。


高松さんの座った席の隣に、彼女がいたのだ。


「どうした?」


「…」


「菊池?」


俺は、はっとした。


「…うん?」


「大丈夫か?」


「…うん…」


そんな時だった。


「大変、お待たせいたしましたにゃん」


俺たちの目の前に現れたのは、クリーム色の猫姿。


「54番の花火にゃん」


「おー!」


興奮気味の貴之。


それから、少しして、


「ビールと今日のおつまみの盛り合わせにゃん」


「おー」


また、少しして、


「34番のあゆにゃん」


続けて、


「よろしくにゃん!」


「おー!」


そんな中、俺は…


高松さんといる彼女を見ていた。


俺といるよりもさらに、あの天使の微笑みで…


胸が痛い…


「もっと、飲みますか?」


「あー」


高松さんのグラスにお酒を注いだ。


なんか、幸せそうな彼女の顔。


「高松さん、今日もお仕事だったですか?」


「あー」


楽しそうだ。


「あの…では…」


高松さんにそう言い、彼女は、暫くして、俺のところに来た。


「ごめんね、亮くん」


その時、俺は、思った。


「なんか、頼む?」


「いいの?」


「…うん…」


彼女は、テーブルの上に置きっ放しのメニューを手にする。


そして、


「何にしようかな?」


俺の肩に彼女は、自分の頭を載せる。


どきどき


「うーん…」


「…」


そんな彼女に俺は、咄嗟に、口を開いてしまった。


「あのさ…」


メニューから視線を外し俺を見る。


俺は、彼女を見るわけでもなく、少し下を俯いた感じで、俺の横顔を見ている彼女に


「もしかして…」


「え?」


「…」


さらに、下を俯く俺。


「どうしたの?」


「…」


「?」


「高松さんのこと…」


「…?」


「好きなの?」


「…」


「…」


なんか、気付いてしまった。


高松さんがこの店に来た時、彼女の微笑みの顔はさらに天使で…


無意識に出ている表情なのだろう。


「え?どうして?」


動揺した彼女の姿。


「…なんか…違うって思って…」


「…そっか…」


気まずい空気が流れる。


すると、


「菊池!」


龍が俺を呼ぶ。


「え?」


「高松さん」


「…」


微かな小声で指を指している。


俺は、後ろを振り返る。


「うん?」


「…」


「…」


「高松さん…」


「お疲れ様」


「お疲れ様です…」


そう言うと、その場から去って行った。


「…」


「亮くん…」


突然彼女は口を開く。


「そうだよ」


「…え?」


「…」


「…」


「高松さんのこと、私、好きだよ」


「…」


呆然とした。


下を俯く彼女。


すると、


「華、これは?」


同僚なのか、名札には、紗里奈と書かれているのを首からぶら下げている。


「どうしたの?」


「…いや、別に…」


「…」


「亮くん、その話、また、あとで…」


その場から離れる前に俺のところから戻って来て、


「秘密だよ」


耳元で囁きながらそう言い、微笑んでその場から去って行った。


「…」


何とも言えない、複雑な気持ちが俺を襲って来た。


何なんだろう…


心に矢を刺されたような痛み。


まだ、俺は、この気持ちが何なのか、わからない。


でも、ただ、一つ、わかったことは、彼女が…


俺の上司である、生真面目そうな、この店に来ることが意外な、高松さんのことに…


好意を寄せていたこと。


胸に刺された矢は、さらにぐさっと刻み込まれた感じがした。


その時、はっとする。


この気持ちは…

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