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2度目の君

ピピピッ!ピピピッ!


目覚まし時計が部屋中に鳴り響いている。


俺は、ダラっと口から唾液が出ており、ニヤニヤとした感じで寝ていた。


ピピピッ!ピピピッ!


なかなか、目を開かない僕。


ピピピッ!ピピピッ!


バタン


目覚まし時計が置いてあった棚の上から落ちた。


はっとその音で目を覚ます。


布団から飛び起き、時計を見る。


「は…」


ベットの上から動き出し、支度をし始めた。


着替え、ジャケットを身に付けると、


ちらっ


何かがジャケットをポケットから落ちた気がした。


下を見ると、そこには、小さなもの。


カーペットの上から拾い上げる。


その拾い上げたものを手にして、見ると、


そこには、"癒しのネコカフェ"と書かれていた。


そして、"華"という名前が書かれていた。


「…」


それを見てニヤニヤとする俺。


頭の中に昨日の彼女の微笑みが浮かんでいた。


ピロピロ、ピロピロ


スマホが鳴っていた。


はっとすると、時計を見る。


「やばっ!」


カップに注いだコーヒーを一気に飲み干し、家を出た。


その名刺を再び、ジャケットのポケットに俺は、入れた。


仕事に走りながら、汗を流し、向かっていた。


すると、そこに、


「おい」


その声に俺は、振り返る。


「あー…」


「はよっ」


「おはよう」


龍と会い、仕事場へと向かった。


向かいながら、話していた時、昨日のことが出て来た。


「昨日の、あれ、やばくなかった?」


「…え?」


「まさか、高松さんがあの真面目さ…」


「…そうだな…」


「なぁ…」


龍が俺に話していた時、


「おはようございます」


女の人、昌美である。


同僚だ。


「おはよう!」


龍が返す。


俺もそれに続けて、


「おはよう…」


そう言った。


彼女が通り過ぎて行き、再び、龍は、口を開き始めた。


「彼女さ、かわいくない?」


「…そうだな」


彼は、いつもこんな感じである。


「でもさ、昨日の希ちゃんも、かわいいかったな〜」


声の調子をさっきよりも上げる。


「時間…」


「あっ!」


俺がそう言うと、彼の足も少し早くなり、急いで、タイムカードを押し、エレベーターに乗り込んだ。


エレベーターの2階に着くと、彼は、


「じゃあ、また、あとで」


そう言い、急いで、その場から去って行った。


彼が降りた後、3階でエレベーターが止まる。


開いたドアの目の前から、


俺は、即座に、


「おはようございます!」


そう言い、お辞儀を45度くらいでした。


高松さんである。


「おはよう」


そう答えてくれ、乗り込む。


乗っている間、暫く沈黙が続いていた。


上がっていくエレベーターに緊張感が漂っている。


突然、彼は、口を開いた。


「昨日のことなんだけど…」


「…はい…」


「他の奴らには言うなよ」


「……はい…」


照れているのか、何なのか、わからなかったが、誰にも知られたくなかったらしい。


「あの…」


「何だ?」


「もしかして….よく…」


「よくでもないが、時々だ…」


そして、エレベーターのドアは開いた。


「どうぞ….」


「あっありがとうございます…」


気まずい空気の中でも、俺は、エレベーターから降りた。


ふーぅ


息を吐き、自分の所属している部署の自分の席まで歩いた。


すれ違う上司らに、


「おはようございます」


「おはようございます」


「おはようございます」


………


そして、やっと、席まで着き、


ふーぅ


再び、息を吐いた。


「昨日のあの子…」


思わず、ニヤニヤとしてしまった。


はっとする。


仕事!仕事…


パソコンの電源をつけ、立ち上げていた。


すると、


「おはよう」


同僚の河合。


「おはよう」


そう、僕に声をかけ、隣の空いた席に座る。


「ねえ、今日、飲みに行かない?」


「…」


彼女とは、他の奴らと都合が合わない時や一緒に行くこともあるが、二人の時が多い。


「なんか、先約でもある?」


そう聞かれ、頭の中に浮かんだのは、昨日の彼女だ。


たったの一度しか、会っていない人なのに、何度か会ったことのあるような、感覚がある。


しかし、俺は、


「いや…別に…」


そう応えると彼女は、


「じゃあ、決定ね、忘れないでよ」


「…うん…」


その場からあっという間に去って行った。


パソコンがやっと立ち上がり、仕事を始めていた。


ポツポツ、ボツポツポツ…


少ししてから、


「営業、行ってきます」


上司に声を掛け、鞄を手に持ち、席から離れようとすると、


それを聞いていたのか、彼女は、


「行ってらっしゃい」


そう声を掛けてくれた。


「うん…行ってきます」


俺はそう言い、その場から離れた。



ボタンを押し、エレベーターに乗り込んだ。


下へ順調に下がっていく。


そして、エレベーターが2階で止まった。


ドアが開いた。


「お疲れ様です…」


同僚の山下である。


彼女は、いつも下を俯いており、もし訳なさそうな感じである。


「お疲れ様」


エレベーターは、動き出した。


ほんの一瞬ではあるが、沈黙だった。


俺から話を切り出そうと考えるが、何を話したらいいのか、わからず、そのまま、あっという間に下へ着いてしまった。


俺は、ネクタイを整え、取引会社に向かった。


日差しは強く、ジャケットを着ている俺は、汗だくにだった。


ハンカチをジャケットのポケットから手に取り、テカテカと光っている額を拭う。


「よし!」


取引会社の近くまで来て、ネクタイを再び整え、汗をハンカチで拭い、身だしなみを整え、中へ入って行った。


受付にいた女の人に俺は、声をかけた。


「〇〇会社の菊池と申し上げます、△△様は、いらっしゃいますか?」


すると、


「少々、お待ちくださいませ」


そう言い、


「こちらに座っててください…」


俺は、彼女が指した椅子に座った。


彼女は、その後に、お辞儀をして、一度その場から去った。


………


………


………


時計を見る。


待たされてから、30分くらいが経過していた。


はーぁ


ため息を吐く。


ハンカチで、首元を拭った。


ネクタイを整えていると、


「やあ、こんにちは」


中年の男性が俺の目の前に現れた。


俺は、座っていた椅子から直ぐに立ち上がり、


「お世話になっております、金丸社長」


そう言うと、


「まあまあ、こちらへどうぞ」


社長が自ら俺を招き、待っていたかのように、微笑んでいた。


「では、ここにどうぞ」


そう言われ、


「失礼致します」


座った。


俺が口を開こうとすると、社長から口を開いてしまい、だらだらと行われる結果となってしまった。


その話の途中に、


「相手の方はいるのかね?」


「相手の方ですか?」


「お付き合いをしている方とか、心に決めている人とか」


「…いや…今のところは…」


しかし、その時には、彼女という存在が頭の中に浮かんだ。


何故だろう…


何かと言うと、彼女のことが出てくる…


何故だ…?


まだ、たったの一度しか、会っていないのに…


そんなことを思っていると、


「そうかね…」


この時、俺は、思った。


でも、口にはしなかった。


「うちに、2人、娘がいるんだけど…一人は、婚約すると予定があるがみたいだが、どうも、長女の方がね…」


「…」


「どうだ?」


「え?」


「良かったら、どうだ?」


俺は戸惑う。


そんな戸惑った顔を見て、


「一度、会ってみるか?」


推してくる。


「…はい…」


そういうしか、なかった。


だって、断れるはずもない。


そこで、断って、気まずくでもなってしまったら…


勿論、契約もなしにされてしまうだろう。


心の中で、ため息を吐いた。


気分が良さそうな社長に契約をもらい、俺は、


「ありがとうございました」


お辞儀をして、お礼をし、その場から去った。


社長の娘に会う日まで決められてしまった。


そこから、少し離れたところで、足を止め、


はーぁ


息を吐いた。


再び、足を動かし、歩き出していると、


「あっ…あの…」


その声に振り向く。


振り向くと、目の前に現れたのは、


「あの…昨日、お店に来てくれた方ですよね?」


「え?」


「…」


「…」


「…」


「あー!」


彼女は、俺の様子に微笑んだ。


「昨日は、ご来店、ありがとうございました」


そう言い、お辞儀をした。


「あっ…いいえ…」


「また、宜しかったら、是非」


「…はい」


「今、お仕事ですか?」


「…あっ…はい…」


「お昼、食べましたか?」


「…いいえ…まだ…」


「じゃあ、宜しかったら、一緒にランチでも」


「…はい…」


彼女は、微笑んだ。


あるレストランに向かっている途中に、


「何の、お仕事をされているんですか?」


「…〇〇関係の…」


「へー、そうなんですね」


「あっ…あの…」


「うん?」


かわいい。


そう思った。


思わず、見惚れていると、


「何ですか?」


彼女は言う。


「あ…あの…今、お出掛けですか?」


「いや、一応、仕事です」


俺に彼女は持っていた鞄を見せ、行った。


「私、昼間は、普通のOLですよ」


「…そうなんですか…」


「それで、夜、あそこで働いてるです」


「そっか…」


続かない会話。


「あっ!着きましたよ」


目の前にあった店は、オシャレそうレストランだった。


「よく、ここに、来るんですか?」


「はい、おいしんですよ」


彼女は、俺にそう言い、俺の手を引っ張った。


店の中に入ると、


「何名様ですか?」


店員さんに聞かれ、彼女は、


ピースをした感じで、


「二人です」


そう応えた。


直ぐに、店員さんは、席を案内してくれ、俺たちは、席に着いた。


彼女は、テーブルの横にあったメニューを取り出し、パラパラとひと通りめくる。


「うーん…」


悩んでいるようだ。


見開きのページの中で、目をチラチラと動かす。


少しして、


「よし!これ!」


そう言い、決めたようだった。


「何する?」


まだ、メニューの中から、選んでいるところだった。


「うーん…」


悩んでいたが、あまりにも待たせてしまったら悪いと思い、メニューを中で目に入ったものを指して、


「決めた」


そう言った。


「じゃあ、呼ぶね」


彼女はそう言い、ピンポーンと呼び出し音を押した。


すると、店員さんは、来て、


「大変お待たせ致しました」


そう言い、笑顔で迎えた。


「ご注文は、お決まりでよろしいでしょうか?」


「はい」


彼女はそう店員さんに応え、メニューから指を指しながら、これとこれ…


子供のようである。


彼女が口を開くのが止まると、僕の方に店員は、笑顔を向けた。


「〇〇〇とコーヒーを下さい」


「コーヒーは、いつ、お持ちになりますか?」


「食後で」


そう答えると、操作を止め、


「以上で、よろしいでしょうか?」


「はい」


二人して、ハモった。


少しお互いに照れる。


「かしこまりました、どうぞ、ごゆっくり、して下さいませ」


そう笑顔で言い、小さくお辞儀をして、その場を去って行った。


彼女は微笑んでいる。


そして、口を開いた。


「そう言えば…お名前…」


「…あ…」


「あ…私は、河井華と言います」


「俺は…えーと…菊池亮平です…」


「亮平さんか…」


「…」


「じゃあ…亮さんね」


「え?」


「私のことは、華でいいよ」


「え?」


彼女は、微笑んでいる。


「亮さんは、あのお店来たの、此間が初めてだったよね?」


「…うん…」


「そっか…」


「亮さんは、あいう店、好き?」


「え?」


「そういう、タイプには見えなかったから…」


「あの時は…上司に誘われて…」


「あーそうなんだ」


「もしかして、高松さん?」


俺は、首をこくっと縦に振った。


「そっか…」


少し悲しそうな顔をする。


「あっあのさ…」


「うん?」


「いや…何でもない…」


「え?何?」


「いや、本当に何でも….」


リンリンリン、リンリンリン


スマホが鳴る。


「はい」


「菊池さん?」


「はい、そうです」


………


そして、電話は、切れた。


「どうしたの?」


「…いや、別に…」


「良かったら、また、来てね!」


「え?」


「お店に!」


「…うん…」


彼女は、微笑んだ。


それから、他にも色んな話をした。


そして、


「じゃあ」


微笑みながら、小さく手を振り、行ってしまった。


僕の胸は高鳴ったまま、仕事場へと戻っていった。

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