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出会い

まだ、風も空気も冷たい冬。


透き通った空気で、空には、小さな星が、キラキラと一生懸命に輝いている。


ふーぅ


息を吐けば、自分の息は、白い。


はーぁと息で、温めようとする手も冷たい。


厚めのジャケットを着て、首には、マフラーが巻かれている。


そんな季節の時だった。


俺は、公務員として、役所で働いている。


22歳で大学を卒業して、小学校の先生を目指していたが、教職員の試験を失敗してしまった。


それから、臨時職員として、役所で、働いた。


給料は、安いが、割と安定は、しているだろう。


そんな臨時職員の期限が切れる直前の時だった。


「菊地!」


上司から、呼び止められた。


「はい!」


そう言い、上司のところに行くと、


「この書類作成、やっておいて」


「…はい」


指示通りに、仕事。


俺は、その場で言えなかった。


明日で期限は、切れてしまうのに、断れず、デスクに向かった。


「…」


明日から、俺は、ここにいないのか…


パソコンを開き、立ち上げ、パソコンと向き合いながら、書類作成を始めた。


書類を作成をしていると、


「菊地!」


その呼び止めに、


「はい!」


部長である。


俺は、呼ばれた部長のところに行くと、


「どうする?」


「…」


「明日で、契約が切れるだろ」


「…はい…」


少し間が空く。


「実は…お前が良ければ、何だけど、正式な職員として働かないか」


「社長からも、言われてるんだ…」


「どうする?」


心の底から、僕は、うれしかった。


だけど、まだ、諦めた訳ではない。


考える時間は、なかった。


なんて言ったって、明日、契約が切れてしまうのだから。


「…」


「突然で、難しいとは、思うが、どうか」


こんな良い話があるのだから、これも良い運命なのかもしれない。


そう思いながらも、少し違和感を持つ。


本当に、それで良いのだろうか…


悩む。悩む。


すると、部長から、


「今、やっている仕事は、終わったのか」


「いや、まだです」


「そっか…」


少し間が空いてから、


「それとも、臨時職員の期間、伸ばすか?」


「…」


俺の反応に、部長は、


「取り敢えず、今、やっているものを片付けた後でもいいから、帰る前に、教えてくれ」


「…はい」


「一度、戻っていいぞ」


「はい…」


俺は、デスクに真っ直ぐに戻り、書類作成を再び、再開。


ポツポツと打っていく。ポツポツ、ポツポツ。


その中で、


「お先に失礼します」


そう声を掛けながら、先に帰っていく、人達。


「菊地、お疲れ」


「お疲れ」


同僚である遼である。


「じゃあな」


「うん」


彼は、正式な職員である。


職種の身分は、違うけど、同じくらいに入り、同じ歳である。


仕事帰りに、よく、一緒に飲みに行ったり、仕事が休みの日に、出掛けたりする友達みたいなところもある。


パソコンに目を戻し、ポツポツと打ちながら、向き合う。ポツポツ、ポツポツ。


暫くして、


はーぁ


息を吐き、


「やっと、終わった…」


口から溢れる。


身体をグーンと伸ばし、椅子の背もたれに寄り掛かかる。


気が付いたら、時計は、18時半であった。


「…」


デスクの上に載ったカップの中に残ったコーヒーを一気に、飲み干した。


はーぁ


息を吐き、パソコンを閉じ、椅子から立ち上がった。


早歩きで、上司のところに行き、


「出来ました!」


出来上がった書類を提出すると、


「お疲れ」


そう言い、簡単に、作成したものを目に通す。


俺の視線に気付いたのか、


「先に帰って良いぞ」


そう言う。


「部長のところに行ってから、帰ります」


そう言い、エレベーターの前まで来る。


ボタンを押し、来るまで待っていた。


……


はーぁ


ため息が出た。


まだ、悩んでいるのだ。


どうしよう…


それでも、取り敢えず、俺は、部長のところに向かった。


「失礼します!」


部長のいる場所のところに行くと、


「お疲れ、仕事は、終わったのかい?」


「はい….」


二人の間で、少し間が空く。


「で、決めたかね、どうするのか…」


まだ、少し悩んでいたが、


「このような良いお話を頂き、ありがとうございます!」


そう言い、お辞儀をした。


微笑みながら、


「そのまま、残るかね?」


「はい、宜しくお願い致します!」


そう言い、再び、お辞儀をした。


すると、


「そうかね、それは、とても、良かった」


微笑みながら、そう言う。


「では、また明日から、宜しくね」


「はい、宜しくお願い致します!」


再び、そう言い、お辞儀をして、


「失礼しました!」


そう言い、その場から、去った。


そして、自分のデスクに戻ると、上司はまだいた。


パソコンと向き合っている。


しかし、俺は、自分のデスクに戻ると、即座に、鞄を持ち、まだ、残っていた上司に、


「お先に失礼します!」


そう声を掛けると、


「お疲れ、菊地、飯、まだだろう」


「はい…」


「一緒にどうだ?」


「…」


「俺とじゃ、嫌か?」


「とんでもございません!」


「じゃあ、今から、帰る支度するから、先に下のロビーに行ってて」


「分かりました…」


俺は、


「失礼します!」


そう言い、その場から去り、先に下のロビーへ降りて行った。


下のロビーのソファーに座って待つことにした。


人があまりいなく、いつもよりも広く感じる。


少し寂しい空間。静かな空間。


そこに、


ピロロロ、ピロロロ


右手に持っているスマホが鳴る。


開いてみると、メールが来ていた。


"飲みに行かねぇ?"


同僚の瀧からだった。


彼も、よく、一緒に飲みに行くが、比較的に、休日が多い。


"これから、高松さんと、食事することになった"


送った瞬間、直ぐに、既読になった。


「早っ!」


思わず、口から溢れる。


そして、


"俺も行っていいかな?"


そこに、


「ごめんな、行こうか」


そう言い、歩き出した。


通って行くタクシーに合図をする上司。


それが目に入ったのか、タクシーは、止まった。


ドアが開く。


「乗って」


「…失礼します….」


タクシーに乗り込み、雑談が始まった。


「高松さん、田中から先ほど、メール来まして、一緒に行ってもいいかと…」


「いいぞ、おいでって」


彼に返信を返すと、再び、直ぐに既読になった。


"向かう"


そんなことをしている間に、タクシーは、止まる。


「この近くのお店なんだよ」


そう言い、タクシーの運転手さんに、お金を渡す。


「え?僕も払います!」


慌てた素ぶり。


その姿に、


「いいよ」


俺が、1000円札を彼に伸ばすが、断る一方で、結局、俺は、渡すことを諦めた。


それから、歩いた。


会話が少ない。


間を持たせようとしてくれているのか、雑談をしてくれる高松さん。


歩いていると、途中で、


「ここだよ」


足を止め、手でその場所を指す。


大きなビル。


「え?」


……


「このビルの3階にあるんだよ」


「え?3階?」


自分の目を疑った。


表札には、3階は、"癒しの猫カフェ"と書かれていたからだ。


「ここですか…?」


俺は、目を見開いた。


「付かぬ、質問ですが、あの、よく、ここには、来られるのですか?」


「時々ね」


すんなりと答えてくれた。


そこに、瀧が合流する。


「すいません、お待たせしてしまいまして」


「じゃあ、行くか」


彼に案内されながら、階段を上っていく。


……


暗い階段。


一段が意外と高い。


3階に着くと、"癒しの猫カフェ"と書かれている表札。


彼は、そのドアを開け、


「こっち、こっち」


そのドアから奥へ奥へ案内されながら、入って行くと、


「ようこそ、癒しの猫カフェへ」


女の人が現れた。


猫の耳をくっ付けており、頰に、髭。


そして、服装も、猫。


尻尾まで、付いているし。


……


「何ここ?」


思わず、口から溢れた。


猫なんて、いないではないか。


……


瀧もこの光景に、呆然としている。


「ご主人様、お疲れ様でございますにゃーん!」


「ありがとう….」


微笑む女の人。


高松さんを見て、


「お席をご案内致しますにゃーん!」


その猫の格好を女の人は、俺たちが座ったのを確認した後、彼にメニューを渡す。


「本日は、如何しますかにゃーん?」


さらに、メニューを俺にも渡された。


……


目を思わず見開く。


何なんだ!ここは!


もう、幻想でしかない。妄想の世界なのだろうか。


自分の全てを疑う。


この世界は、何なんだ!


高松さんは、口を開く。


「何がいい?」


「え?」


「 オムライスでいいか?」


「はい….」


ピンポーン、ピンポーン


「はーい」


直ぐに来た。


「オムライス3つ」


「了解致しました」


「こちらのメニューは、如何ですか?」


高松さんは、


「25番….」


瀧も、


「俺、13番」


二人が答えた後、僕にその女の人の視線が来た。


「お任せします….」


「了解致しました」


……


今でも信じられない光景に、怖くなる。



暫くして、


「13番のユアンにゃーん、宜しくお願い致します、ご主人にゃーん」


「…」


白くて、頰に髭がくっ付いていて、猫耳を付けている。


白猫である。


次に、


「25番の希にゃーん、宜しくにゃーん」


明るく、可愛らしい。


どちらかと言うと、白猫だけど、三毛猫らしい。


「かわいい!」


瀧がそう言うと、


「ありがとにゃーん」


瀧の鼻が伸びている。


それから、少しすると、


「華にゃーん宜しくにゃーん」


普通の女の子って感じである。


微笑んでいる。


俺の隣に座る。


「ご主人様にお会いできて、うれしいにゃーん」


無邪気な微笑み。


心を掴まれた。


「…」


これは…夢?夢でも見ているのか…


「お待たせ、致しました、オムライスでございます」


テーブルの上に、3つ、オムライスが載った皿が出て来た。


とろっとしたふんわり卵。


ちょうど良い味のケッチャップご飯。


「おいしい…」


思わず、口に出る。


「良かったにゃーん」


「…」


癒しだ。


なんて言ったって、その微笑みが。



これが、彼女との出会いだった。

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