キジトラ☆161☆〜☆180☆
☆161☆『アダムが来るだって?あいつは火星で会議のはずだろ!』
バスホーファーが驚いた。僕はヒンメルからそこまで深く情報を教えられてない。あの時彼女は、僕を仲間にさせる事で精一杯だったからだろう。
『まぁ、理由はどうであれ奴が来る前に俺はひと息つかせてもらうぜ。疲れたんでね…』
☆162☆僕が産まれたタンクはガラスが割れ、床の部分は硫黄の匂いがする黄色い液体で濡れていた。バスホーファーの後をついて僕が歩くと、エッグもさらに、その後を付いて来る。しかし、今のところ殺される心配はない。僕とバスホーファーは床の綺麗なタンクを探すともたれて座り込んだ。
☆163☆『エッグ。お前達見張る。私はタンクの生物。マザーモス。全部リセットする。』
シグナルはぐったりとしているマザーモスの両肩を摑んだ。シグナルの片目はマザーモスを見てるがもう片方はしっかりと僕を睨み続けている。あきらかに警戒している。
『バス。マザーモスは殺されるんだね、』
☆164☆『あぁ…。お前がそのままだったら、次は俺達の番だな。』
『こいつ(エッグ)とか、あのシグナルは強いの?』
『マンティスは俺たちの仲間10人をあっと言う間に殺しやがった。でもマザーモスはマンティスより遥かに強い。』
『じゃあ、こいつらロボット達の強さはもっと上って事?』
☆165☆『お前ドラクエとか知ってるか?ひのきのぼうでスタートからいきなりラスボスと戦うようなもんだ。しかも、こいつらは地球製ではない。過去に悪意のある宇宙人が地球のリーダー宛に送ったものだ。』
『じゃあ、こいつらが最強の敵なんだね?』
『キジトラ…。残念だがもっと上が居るんだ』
☆166☆『そ、そんな奴に勝てるのかよ!僕ひとりで!』
『誰がお前だけで戦えって言った!』
『バスは変身出来ないただの人間じゃないか!』
『俺はカマキリを倒したぞ!お前こそ今はただの着ぐるみちゃんだろ!』
『着ぐるみちゃんって何だよ!僕だって、好きでこれを着てる訳じゃないんだ!』
☆167☆『けっこう似合ってるぜキャットちゃん!笑。そろそろ純情エネルギー溜まったんじゃないか?ナビに聞いてみろ。』
『変身出来たら、まっ先にオッサンを倒すからなっ!!えーと、純情エネルギーを教えてくれ!』
『Jawohl!キジトラ‥純情エネルギーは78%です‥変身は出来ません』
☆168☆『さっきより下がってんじゃねーか!』僕は叫んだ!
『このままじゃ本当に僕はレイヤーで終わってしまう!ナビ!教えてくれ!純情エネルギーの溜め方を!』
『くぁwせdrftgyまたつまらぬものをきってしまったlp!』
エッグは何かを喋ると僕の顔に機械の手を向けた!
☆169☆『エッグ言ってる。それ以上。騒ぐと。顔をくり抜く。』
3本指を広げたエッグの手の平、中心が黄色く光っている。
『わ、分かった!撃たないで!結構、自分の顔を気に入ってるんだ。』
エッグは僕の冗談には無反応だった。静まりかえった中で、僕たちは黙ってシグナルの行動を見ていた。
☆170☆『アダム様来るまで。マザーモス。私と。遊ぶ。』
『ベリベリベリッ!』
不気味な音と共にマザーモスの悲鳴が響き渡った!シグナルはマザーモスの両肩から一気に両方の羽根が付いた腕をもぎ取った。血しぶきを上げながら悲鳴を上げるマザーモスを僕は何だかかわいそうになった。
☆171☆シグナルは両方の羽根の腕を空に放り投げた。
『舞った。318枚。取れた羽根。数えた。』
『ドスッ!』
マザーモスの片手が僕らの足元に落ちた。本当に痛覚はないのだろうか?
『蛾の虫。アダム様。1番嫌ってた。』
『それは私の事かい!私はアダムの為に今まで尽くしてきたのに!』
☆172☆『尽くす。分からない。要らない。言われたら。自分もリセットするだけ。』
『お前達、機械には一生分からないだろうさ!』
『私達は機械。命令に従うまで。』
シグナルはタンクに手を伸ばすとガラスが簡単に割れた。液体から人間の子供を取り出した!
『例えば。これも。命令のうち。』
☆173☆シグナルは7歳くらいの白人少年の首を片手で摑んで持ち上げる。
「バス!子供だよ。」
ぼくは小声で話しかけた。この施設には100位のタンクが並んでいる。良く見れば濃い黄色の液体の中に様々な生物が居るのが分かった。
「あの子供はヒューマノイドだ。もう、必要とされないがな…」
☆174☆「あの子は、僕達が始末する予定だったのかい?」
「お前を復活させた後、エリア51毎、ここを爆破する予定だった。出来ればタンクの中身は見たくなかったが。」
「そうか…。マザーモスも、あの子もどっちにしても死ぬ運命なんだね。」
「あぁ、仕方ない。こっちも仲間を沢山殺された」
☆175☆少年は苦しそうにもだえると、目を開けた。
『お、お母さん…苦しいよ。助け…て』
マザーモスを見つけると細い声で助けを求めた。彼もマザーモスの能力で母と信じているのだろう。足をジタバタさせながら、シグナルの腕を掴んでいる。
『デビッド!お前のギフトで、そいつを倒すのよ!』
☆176☆デビッドと呼ばれた少年は苦しみながらもこちらを見た。彼はバスホーファーに視線を定めた。
『この人借りる!』
デビッドは叫んだ。
『ぐっ!身体が勝手に!』
バスホーファーは大きな拳銃を構えるとその銃口はシグナルに向けられた!
『改造銃。私を撃つ。それは無駄。効かない。』
☆177☆『駄目だ!腕の自由が効かねぇ!』
『バスっ!!』
シグナルに銃を向けるバスホーファーを気にせず、エッグは僕だけを牽制している。シグナルも片目だけは以前、僕を睨んでいる。
『僕を…離…せ』
そう言うと少年の人差し指が引き金を引く様な動きをした!
『ドゥガァーーンッ!!』
☆178☆もの凄い銃声と共に、反動でバスホーファーの両腕は跳ね上がった!シグナルの顔からは火花が走る!
『エッグ。透視ミス。威力。素晴らしい。評価する。』
シグナルの頬にはススが付いた程度で、何も変化はなかった。
『バカな!.50BMGの徹甲弾だぞ!微動だにしないなんて!!』
☆179☆バスホーファーは驚きの声をあげた。
『人間。遺伝獣。ヒューマノイド。全部弱い。私達機械。最強。』
シグナルは少年を引き寄せ、顔と顔を近づけた。
『こ、怖いよ…倒せないよ。母さん…』
少年は涙を流していた。マザーモスは、立ち上がるとフラフラしながらシグナルに近づいてゆく。
☆180☆『シグナル!デビッドを離せ!』
マザーモスは何度もシグナルに体当たりをした。彼女の身体からはもはや流れ出る血さえない。
『分かった。離して。やる。』
『パシャンッ!!』
とても嫌な音がした。シグナルは少年の首を握り潰した。身体は床に落ち、頭部は拳の上に乗っていた…。




