33ばあ
4
気がつくと天井にヒビが入っている。それに見覚えはあった。そしてふと、初めての練磨の後に貸してくれた空き部屋だと櫻は、テーブルの上の布団で気づいたがまだ、自分に腹が立つ。
「百合奈ぁ~……どこぉ〰〰? 百合奈ぁ〰〰……」
突然、何だか眠たがりながら、弱々しく鬱陶しそうな感じの真梨の声が聞こえたから、廊下に出て右を向いたが出口への道しか見えないので左を向くと、遠くで真梨がよろめいている。
とろんと目をつむって、コテン、と今にも眠りこけそうな頼りなさで、ゆっくり歩いてくる。
……真梨とは信じられなくて、混乱しそうになったがとにかく、恐る恐る、櫻は、近寄った。
恐る、恐る、場違いなゾンビのような背の高い真梨の近くに達して、とにかく肩を揺すった。
「真梨、真梨、起きなきゃ」と揺すりながら、何だか酔っぱらいを宥めているみたいに思った。
揺すって、揺する。また揺すって、その直後にやっと、真梨の目が半目になった。
「あぁ~……櫻がいたぁ……櫻がぁ~ァアッ――!?」急に真梨が大口を開けて目を剥いた。
さらにはバタバタと四五歩くらい身を退いていった。その間もびっくりが止まらないから、櫻も目を見開いていた。だから真梨と見開き合っている。そして何も聞こえてこない。
何よりも真梨が、生命の危機感で女が失われたような顔のまま、固まっている。
櫻はそれが恐い。恐過ぎる。なんか言え。心が狭苦しい。
と、諦めたようにがっかりと脱力した真梨が、さらには目元に影を作って忙しなく迫りくる。と櫻は右手を噛まれたように掴まれた。そのまま真梨が進むから櫻は自然と体を後ろへ向けて、車に引きずられているかのように引かれていった。
そういえば真梨に近づいた時に通ったな、と思いながら、すぐに達した食堂への曲がり角を右折して、櫻は連行される。首で冷汗が伝う。いくつも伝う。ネトネトしてきそうな勢いだ。




