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自分はここにいる。手足顔首、神経の届く全ての箇所に力を入れている感覚が分かる。両腕を動かすと巻きつけられたワイヤーに慣れた感触がさらにキツく感じる。我思うゆえに我あり。しかし心の片隅の不安が治まらない。この自分の思考は本当に自分が思っていることなのかと。
――こんな、普段考えないようなことまで考えて、そしてそれをしつこく何度も繰り返すのを何時間も平気でいられない。それにはもううんざりだ。だから櫻は小さく頭を振った。
時間を無駄にはしていられない。やらなければならないこともある。
そう考え出した時、初めての練磨の時が、脳裏に蘇ってきた。
――その時とまた同じことになるかもしれないと不安になる。ひとりでに涙が溢れ出てきた。
恐くて堪らない。辛くて堪らない。もう、こんな辛い思いはしたくない。
そんな気持ちが今さら蘇ってくる。戦おうと自ら踏み出すことが、重すぎて難しい。自分で選んだことだと解っているのにだ。――そんな自分の甘さに嫌気がさす。小さく頭を振った。
このままじゃあ決意が鈍る。気持ちに邪魔されてしまう。
解ってんだろっ。これからはもう、今のような辛さも乗り越えないと生きられないって!
藤谷だってきっと、こんなような辛くて苦しい気持ちを踏み越えているんだぞ!
初心を忘れるな! 藤谷のことだけを考えろっ!
そう眉根を寄せながら、櫻は左手首の腕脳に意識を向ける。十秒が経ってもそれをやめない。
と、左手首に一秒くらいのヴァイブレータを感じた。――第一確認だ。
再び感じたヴァイブレータは第二確認。
最終確認のヴァイブレータも感じた。――目眩がしたかのように視界が分からなくなった。
同時に呼吸を忘れたように、空気を吸い込めなくなる。体の内側が後ろへ引きずられていく感覚。両耳の中で膜がパクパクと鳴るような音もパクパク鳴っている。――入空間移動の感覚。
それはすぐに治まったが、あまりの眩しさに目をきつく閉めた。まぶたの裏が朱く見える。




