2+1=3
また真っ暗闇に呑み込まれている。あの、白なのか紫なのか、それとも青紫か、赤紫なのか分からない、そんな光の粒々と靄が蠢くのが、ここでも見えている。
墓石のような台形の台座がある十字架に、磔のようにされてしまった。裂けるように切れてしまいそうなほどワイヤーで、膝立ちする両足のふくらはぎと、両腕を縛られている。首は、細すぎるワイヤーで緩め(ゆる)に巻かれているが、これ以上顔を下を向ければ首に食い込んでしまう。
思考にフィルターがかかっているような、そして頭も体の感覚も酷く重くぼんやりしている。風邪薬の副作用か何かでぼーっとしているようだ。全身がその感覚にどっぷり浸かっている。
頭が上がってくれない。これ以上背筋を伸ばせられない。が、――あんな練磨の後だというのに――思考はそれなりに働いている。それはS.I.X.のおかげなのかな、と思った。
S.I.X.が生かしてくれる、と藤谷から言われたことを、ふと思い出した。
ただ、今は、アンチリファードの拠点の地下に閉じ込められている。黒い内壁の広大な暗闇の中だから、空間を捉えられない。奥行がちっとも分からない。僕が再現化された本心に依存していないから、ルニ・オーソナーに依存させたい。それだけの理由でここに落とされた。
落とされる前をまだ覚えている。それが、今の自分の存在を証明する唯一の拠り所になっている。あの雑木林に近い道で、子ども連中と再会したが早いか、顎を殴られて記憶が飛んだ。気がつくと、病院の中のようなアンチリファードの拠点で、すでに磔にされていた。そして、S.I.X.を、非公式改造済の腕脳と交換されてしまった。さらにはここへの穴――不思議と平面に見えるほど暗闇の穴に、今の状態で棄てられた。意外とそこまで反発しない、クッションのような着地点だったから、どこもケガはなかった。しかし、余計に不安になった。




