3+3=3
「このままだと絶対後悔するっ……」その藤谷の声が泣いている。その声がまた聞こえてくる。
「逃げたってきっと……また、あの……スケート場の時のことが起きてっ、しまう……」
さらに込み上げるものがドッと襲いかかってきたのを櫻は感じた。
それ以上にあの、自分の内側で渦巻いて待ち望んでいる感情をよりはっきり感じられている。
「そうさせてしまう私たちで……ごめんっ……」
――突然わけもなく勝手に、そして打ち克ちたいというのに、自分の首が頭を振ってしまう。
「それでも自分のことは、自分でも守れるようになってほしいのっ!」
頭を振ってしまう。――今でもまだ諦めたくない気持ちが内側で激しく渦巻いているのにっ。
「苦しいのも痛いのも嫌なんでしょ!? そう思うなら、それは生きたいってことなんだよ!?」
藤谷に助けられた時のことも、鮮明に思い出された。それだというのに頭を振ってしまう。
「櫻に一番後悔させたくないのっ。今の気持ちに打ち克ってっ!」
櫻は歯を食いしばる。そして打ち克ちたい。なのに肉体が、身体が、勝手に頭を振り続ける。
――そうしてしまう中、背中で、服を絞るように力を増す藤谷の拳の動きを感じた。
「お願いだからぁああああっ――――!!」藤谷の高く掠れて喉が壊れてしまうそうなほどの、必死の懇願に胸の奥底をぶん殴られた。――なのに、なのに、まだ頭を振ってしまう。
ずっと、そうさせられた。――自分が嫌になるほどさせられた。
いや、そうするしかないらしかった。もう堪え切れないらしい。精一杯らしい。
もういっそ逃げ出したい気持ちに負けそうなほど、その気持ちが激しい。――でも嫌だッ! 藤谷と一緒に、美喜たちのところへ帰りたいッ!! これ以上、藤谷の気持ちも、美喜たちの気持ちだって裏切りたくない!! だからっ、頭を振るのを止めようと頑張って全身を力んで、抑えているはずなのにどうしてッ!! どうして止められないッ!! どうしてッ!!
突然、自分の内側が後ろへ引きずられていく感覚に襲われた。――強制入空間移動の感覚だ。そしてその感覚が消える。櫻は目を見開いて、床に両膝をつく藤谷と、一瞬で変わった純白の床を見た。しかしそれで、予め言われていた休憩の十五分が終わったことに気づいた。
櫻は、下を向いたままでいるが、名残惜しいように、それでも離れていく藤谷が分かる。
――突然胸を強烈な力で蹴り飛ばされた。後ろへ転がされる。転がっていくのが止まらない。
しばらくすると転がらなくなったが、横たわることしかできないような気がした。
再開したから蹴られたのかと思うと、櫻は重い体を強引に動かして、藤谷の方へ顔を上げた。
最初の時と同じように、数メートル先で横並びの藤谷たちに、見下ろされている。
「藤谷が理由なんだろ!? 思い出せっ! 藤谷から受けたものを残さず思い出してくれ!!」
片山に必死に叫ばれた。――しかし、もう思い出している。内側で激しく渦巻いている。
後は肉体さえ動いてくれれば、なのだ。――それでも練磨の続きが始まっている。
片山の拳銃から蒼白い光が光ったと思えばまた、左肩を壊された。――なのにまだ動けない。泣いても泣き足りなくて泣き叫ぶことしかできない。こんなのでは動きたくても動かせない。




