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屋上だというのに山の中の樹海に入ったかのような感覚だ。安全を保証してくれる区域から逸脱した感覚だ。迷って、帰れなくなるんじゃないか? と激しい不安に呑み込まれていく。
僕は思い知った。第二の人生という、再現化された本心の別名の通りだと思い知った。
降り積もった雪のように、落ち葉が地面に敷き詰められている。枝も散らばっている。気をつけて歩いていても枝を踏む。その音が似ている。焚き火の木のパチッと跳ねた音に似ている。
沈み込むほど、そして独特な柔らかさの土。そんな土の面も、滑りそうな地面も踏んで進む。
ふと道が急に下がり出した。しかし、祐樹が小学生の頃に、平たい石を並べて階段のように作ってくれたそれがある。だから通りやすくはなっている。が、しばらくするとなくなった。
ここからは横歩きで、気をつけて下りていかないと滑る。後ろは見ないという約束の下で、先に祐樹と下りていく。美喜と藤谷がついて来やすいようにするのだ。道になっているように開けている木々の間を縫っていく。どこに足を置いても、ズルズルと滑ってしまいそうだが、そんな傾斜の中に、足を置いても滑らなそうな地面もある。それはだいぶ右の方にあったり、乱れて生えている木々の中で、一番近い木の根の辺りにあったりする。地面から盛り上がって出ている木の根が階段のようになっていたりもする。体を後ろへ傾けるようにして慎重に進む。
そうして下りていくと、平らな地面に下り立った。ここはまるで崖下だ。
森林の奥はまだまだ深い。しかしここは電波の圏外になる場所らしくて、祐樹の秘密基地に近いところだと祐樹が言っていた場所だ。そして言われた通りだ。左奥に青いビニールシートの屋根や、その下で汚れ過ぎている布のハンモックと、半壊したデッキチェアがある。
「この近く、に扉があるん、だよね」
「そうそう」と祐樹が、少し息を切らしている藤谷に返事をした。
みんなで下を見て、探しながら歩いていく。とすぐに、先を遮る倒木にぶつかった。
足だけで登れるほどの高さだったので、ここは美喜と藤谷から先に進ませた。
そして進む。進んでいく。その中で僕は、祐樹の言葉を思い出した。短い土管のような石を扉の近くに置いたから、井戸のようなものが見えるはずだと、祐樹は言っていた。
井戸らしきものは、だいぶ先の右側にあった。自ずと早歩きで近寄る。みんなとそうした。
そうして着いたと思えば、祐樹が、短い土管のような石から右奥の方で積もっている落ち葉を、蹴り払った。そのおかげで右へスライドして開ける扉が現れた。四角く埋め込まれている。ただ、扉の上下端の金属のわずかな仕切りが強引に反り上げられてある。その仕切りがまるで、扉を上へ持ち上げられないようにするもので、それが反り上がっているかのようだ。
と、祐樹の足音がザクザクと、右上へ遠ざかっていく。すぐに金属同士の当たる音を聞いた。
顔を上げると祐樹が、大きくて重厚な〝し〟の字のてこを持って戻ってくる。
「どうすんの?」と美喜の声がした。
「ああ、これちょっと工夫すると、認証確認に引っかからないで開けられるのさ」
祐樹がそう言いながら、扉の前にしゃがんだ。
扉にはスライドさせるための取っ手がついている。祐樹はそこを両手で持ち上げながら右へ動かし始めた。扉がわずかに動いて、最左と扉の間に隙間が空いた。そしてすぐに戻りそうだ。
と、祐樹がすかさずそこへ、テコの真っすぐな方の先端を刺して、戻るのを食い止めた。




